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「吉原手引草」の感想 [本/文学芸術]


ご無沙汰しています。
資格試験が無事におわりました。ようやく読書の秋です。

吉原手引草 (幻冬舎文庫)

吉原手引草 (幻冬舎文庫)

  • 作者: 松井 今朝子
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2009/04
  • メディア: 文庫


【吉原手引草/松井今朝子/07年3月初版】
たぶん今年読んだ小説のなかでは一番面白かったでありんす。2007年の直木賞受賞作品です。

作者の松井今朝子は祇園の料亭の長女として生まれ、
早稲田の演劇科を卒業後松竹に入社し、歌舞伎の制作に携ります。
退社後は歌舞伎の研究家・脚本家になります。そういう経歴なので、江戸期の風俗や文学に造詣が深い。
いわゆる生まれながらの専門家です。

付け焼刃でなく深い見識をもったまま、もしドラのような極上のストーリーを書いた。
この本を読めば、江戸期の吉原のシステムがよくわかります。

女衒、引手茶屋、たいこもち、やり手婆、指切り屋、床廻し、新造、女芸者、花魁、
彼らがどのような仕事をしていたか。

ちなみに主人公は一言もしゃべりません。
ある人物の消息を尋ねて吉原内のいろんな立場の人に聞き込みをします。
すべて一人称で女衒やら、たいこもちやらが、自分の仕事をコミカルに語りながら、ある人物を回想します。
それをつなげていくと、最後に秋晴れのような清清しい気分になります。
おもわず、む~と唸ってしまいました。直木賞おそるべし。。




江戸の暮らしが見えてくる!吉原の落語 (青春新書インテリジェンス)

江戸の暮らしが見えてくる!吉原の落語 (青春新書インテリジェンス)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 青春出版社
  • 発売日: 2011/10/04
  • メディア: 新書



【吉原の落語/渡辺憲司/11年10月初版】
江戸の男たちには二つの大きな夢があったそうです。
一つは伊勢神宮の参拝で、もう一つが吉原で羽目を外すことです。

著者は江戸文学が専門の立教大の名誉教授。
吉原のシステムはこの本1冊でだいたいわかります(吉原手引草より詳しい。当たり前か)。
新書なので3時間ほどで読めるし、15席の落語のあらすじの後に、教授の江戸風俗の解説がありんす。

・江戸の男女比
1721年(享保六年)の調査では江戸の町人の人口は50万人でした。
武士の数は大名の機密事項なのではっきりはわからないですが、50万人近くいたようです。
(全国では武士1割、農民8割、工商1割)
享保六年の江戸の町人の男女比は、男32万人、女18万人だそうです。
武家の男女比はこの本には出てませんが、ググると江戸の武士階級の男性比率は7割だそうです。

圧倒的に男が多いので、あぶれるものも多く、
夜でも提灯がいらない不夜城のような吉原はあこがれだったようです。

・遊女の基本的な値段
時代時代で異なりますが、1750年以降のランクでみてみます。
※この本では、1両を8万円(1文20円)で換算してますが、
前に読んだ武士の家計簿では、現代の賃金換算では1両を30万円としています。
中を取って1両=20万円(1文50円)くらいでみとけば良いでしょう。

「呼出」最上級
料金は不定。10両でぎりぎり。
揚げ代(遊女の料金)は最低1~2両、引手茶屋への祝儀、妓楼への祝儀、飲食代、
芸者やたいこもちへの祝儀、禿・新造への祝儀で十両がMINとなる。
落語の紺屋高尾の染物職人の久蔵の給金は3両/年。久蔵は3年働いて高尾に会いに行った。
この本の落語では一番、ジンとくるいい話です。

「昼三」
揚げ代が昼でも夜でも三分の遊女。一両が4分だから4分の3両。
1両が4000文なので、3000文。腕のいい大工の日当が450文。
呼出は見世に並ぶことはしないが、昼三の中には並ぶものがあり、それ以下の遊女は並ぶのが原則。

「附廻」
料金は2000文

「座敷持」
附廻より安価な遊女。一応上級遊女なみに自分の部屋を持っている。
江戸も末期になると座敷持までを花魁と呼ぶ。

「部屋持」
部屋持ちというが自分専用の部屋はない。大部屋をついたてで仕切った割床で客と接する。1000文。

「切見世」
もっとも安価で、100~500文程度。
最安値は線香を立てて燃え尽きるまでが100文で、
燃え尽きると100文足して延長(なんかキャバクラみたい)。
もっとも1本で終わるはずがないそうです。庶民の多くはこの切見世女郎を相手にしていたようです。



星空の下 市場で幾度となく男に抱かれた♪
悲しまないで 言っておくけど
彼らはチェスの歩兵のようなもの
わかってほしい あれは慈善事業なの
甘い言葉もこの口からすべらしたけど 本気じゃなかった
だれが想像したかしら そんな私がこんなに取り乱すなんて♪

エラも、サラも、ジューンクリスティも、ペギーリーも、noonも、
上記のバースをはずして「いつからこんなになってしまったの、あなたにときめく」
という部分だけ歌ってます。ホリーコールやカーメンマクレエは娼婦のバースを歌っています。
個人的にはいれるべきと思います。

HOW LONG HAS THIS BEEN GONG ON/CARMEN McRAE



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コメント 14

せいじ

資格試験ご苦労様でした。

江戸は女性が少なかったんですね。
当時の寿命は未熟児などの乳児の死亡率を加えなければ
それなりに高かったようです。
女性は何故少なかったのかなぁ…
by せいじ (2011-11-20 18:26) 

mignon

大変お疲れさまでした。
一応女性の私としてはこういうお話は胸がぎゅーっとなりますね。
by mignon (2011-11-20 21:52) 

heroherosr

試験、お疲れ様でした。
私も今日試験が終わってほっとしています。
結果が気になるところですが、まずは勉強から開放された自由を楽しむことにします。
by heroherosr (2011-11-20 22:29) 

seawind335

試験、お疲れさまでした!

しかし、これほどまで極端な男女比の都市ってあったのでしょうか?
当時の♂は、相当競争率が高かったのですね・・・・(・_・;)
by seawind335 (2011-11-20 23:31) 

TAMA

こんばんは[__!]
試験お疲れ様でした。
大人になっても試験はついてまわりますね[__たらーっ]

「吉原手引草」面白そうですね[__るんるん]
読んでみようかしら?
by TAMA (2011-11-20 23:32) 

こしひかり

資格試験、お疲れさまでした~☆
これからまたたくさん本が読めますね^^!

男性の割合が多かったんですね。 とても面白く記事、
読ませていただきました。 江戸の暮らしの本、面白そうです。
by こしひかり (2011-11-20 23:41) 

伊閣蝶

資格試験、お疲れさまでした。
お仕事の関係もあってのことと拝察しますが、大変なことと思います。

洋の東西を問わず、娼婦という職業のもつ奥深い世界には、ちょっとした眩暈のようなものを感じます。
ご紹介頂いた本も、機会を作って是非とも読んでみたくなりました。
by 伊閣蝶 (2011-11-21 00:31) 

don

せいじさんこんにちは!ありがとうございます。

江戸は特殊なんでしょうね。武士は軍隊みたいなものなので、
男社会でしょうし、職人は工場みたいなものなので、これも男社会
でしょう。現代に生まれて良かったです^^
by don (2011-11-23 10:37) 

don

mignonさんこんにちは!
たしかに、本人の意思と関係なく親に売られるのはつらいでしょうね。
現代の風俗産業は、まさか親には売られてないでしょうから、
パチンコやらカード破産やら「身から出た錆」的な理由かなと
睨んでます。
by don (2011-11-23 10:42) 

don

heroherosrさんこんにちは!
試験お疲れさまでした。
やっぱり自由はいいですね。このまま安定した心やすらかな
暮らしが続いて欲しいところです^^
by don (2011-11-23 10:45) 

don

seawind335さんこんにちは!
当時の江戸に生まれなくてよかったです。
あ、殿に生まれれば大奥に入り浸って楽しそうですね。
不便な時代ですが、殿なら生まれ変わりたいです^^
by don (2011-11-23 10:51) 

don

TAMAさんこんにちは!
試験に受かろうが落ちようが、中身はなにも変わらないですけどね。
まあ、生きていくためにはしょうがないです。。

図書館にあるはずなので、ぜひ読んでみてください。
気分は江戸時代になります^^

by don (2011-11-23 10:56) 

don

こしひかりさんこんにちは!
この前のワインについてのご教示ありがとうございました。
しかし価格差4倍はひどいですね。日本も7~9ドル程度の
価格のものは多いですけど、味がそのレベルです。
はやく日本も3000円レベルのものが9ドル程度になって
ほしいです。
by don (2011-11-23 11:02) 

don

伊閣蝶さんこんにちは!ありがとうございます。
たしかに、めくるめく世界ですね。
なんともいえない照明の感じからして、非日常ですしね。

江戸の風俗、日本の先人はそれなりに洗練された仕組みを
構築してて、たいしたものです。歴史に学ぶことは、どんな分野でも
あるもんですね^^
by don (2011-11-23 11:13) 

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