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「小澤征爾さんと、音楽について話をする/村上春樹x小澤征爾」書評 [本/文学芸術]



小澤征爾さんと、音楽について話をする

小澤征爾さんと、音楽について話をする

  • 作者: 小澤 征爾
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2011/11/30
  • メディア: 単行本


【小澤征爾さんと、音楽について話をする/村上春樹x小澤征爾/11年11月初版】
この人の文章ってほんと美しいです。癒されるというか読んでると心が浄化されます。
枕元に「ポートレートインジャズ」と「もし僕らのことばがウイスキーであったなら」を置いて、
寝る前に少し読んで寝るようにしています。なんか疲れた頭にいいような気がするので。

村上氏は文章はリズムだと言いきります。その作家が長く続くかどうかは、文章のリズムを見ればわかる、
だけど誰もそんな評価をしないと。彼は何度かそのことを言ってるので、リズムって大事なんでしょう。








本作品は、マエストロのインタビュー集です。傑作「アンダーグラウンド」でもわかるように、
村上氏は優れたインタビュアー(聞き手)です。ジャズバーのマスター経験が生きてるのかな。

ボストン時代にマエストロの娘さんと仲良くなり、その縁でつきあうようになったそうです。
音楽以外の話をしてたようですが、興味深い話が多くこれは誰かが残すべきだと。

ぼくはそんなにクラシックに詳しくないので、本が面白く感じられるか心配してましたが、
まったくその曲を知らなくても楽しめます。読めばクラシックが無性に聞きたくなります。

それにしても、キラ星のごときスーパースター達との交遊がすごいです。
スーパースターというより、20世紀の偉人達のような人々です。

バーンスタインのアシスタント指揮者に、週100ドルの薄給で雇われるところから頭角をあらわします。
薄給のため他のアシスタントはアルバイトしますが、小澤氏は寝食を忘れて泊り込みでスコアをさらいます。
カラヤンにも師事していて直弟子扱いです。

桐朋の斉藤先生に、学生の頃から指揮者を叩き込まれたので、若いうちから相当のレベルであったようです。

グールドの家に行ったとか、パパゼルキンに信頼されピーターを頼むと言われたり、
ルービンシュタインにはうまいもの食わせてもらったとか、
アバドが小澤氏の後任でバーンスタインのアシスタント指揮者になったときに、
女性問題で巻き込まれたとか、ほんと色々あります。
クラシックの人たちは高尚なイメージが強かったのですが、彼らも生身の人間ですね。

史上初の100万ドル女優のエリザベステーラーと、膝突き合わせて音楽聴いたり、
才能があれば、交遊が広がるんだなあ。

この本、海外でも売れそうです。
名著「ホロヴィッツの夕べ」はジュリアード音楽院のデュバルが音楽的知識の深さと、
人あたりのよさ(便利屋)で、ホロヴィッツ夫妻に気に入られ、
友人として何度も自宅に招かれインタビューを重ねたものです。
 一種男芸者的な対応で、夫妻に取り入った風にも感じられます。
まあホロヴィッツ夫妻に畏敬の念を抱かない人はいないとは思いますが。

それに対して本書の2人は対等です。お互いへの尊敬が感じられます。
春樹氏の深い洞察により、マエストロは初めてその音楽的な意味に気づいたりします。
春樹氏の音楽的知識の深さと、それを言葉にしてコミュニケーションできる能力から、
マエストロのほうが軽く(長嶋監督みたいなもの)感じられたりもします。

ウイーン歌劇場の音楽監督という、マーラー曰く音楽界の頂点に立ったマエストロの、
(マーラーはその職を得るために、ユダヤ教からキリスト教へ改宗します)
リラックスしたポップな回顧は、世界中の春樹ファン、音楽ファンに受け入れられる、
歴史的な1冊になると思われます。これを最初に読める日本人は幸せです。

またクラシック入門にも最適です。クラシックジャーナル編集長の中川右介や、
高嶋ちさ子のクラシック本なんかも、わかりやすい入門ガイドブックとして面白いですが、
本書も同様かそれ以上の効果があると思います。


アルゲリッチ姉さんと小澤氏のリハーサル風景です。それにしても彼女は天真爛漫です^^




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コメント 16

rtfk

先日小澤征爾さんの若いころの修行時代を
ご自分で書かれた本を読みました(^w^)
それも作家ではないのになかなか良かったですね。。。

by rtfk (2012-02-11 15:45) 

みかん

donさん、こんばんは[__夜]
ななんと、いま私も寝る前に春樹氏の「ウィスキー~」のエッセイ
読んでいます。 なんだか頭がほぐれますね[__わーい]
そしてポートレイトインジャズは気になっていたので注文していたら
昨日届きました! タイムリーでdonさんの記事を読み嬉しくなりました!
この本も面白そうですね[__猫][__ひらめき]
by みかん (2012-02-11 22:59) 

don

rtfkさんこんばんは!
お~、「ボクの音楽武者修行」でしょうか?
じつは同じような話を、昨日会社の喫煙コーナーでしました。
ぼくがこの本の話を、音楽好きの同僚にすると、rtfkさんの
ように、音楽武者修行はいいよ~との話になりました^^

by don (2012-02-11 23:10) 

don

みかんさんこんばんは!
シンクロしましたね[__犬][__ひらめき]
ぼくはこの2冊とアンダーグランドは図書館で借りた後に、
いつも手元で読みたいとの思いから、文庫本で購入しました。

どんな本を読んでいても、寝る前にはおっしゃる2冊を
読んで寝るようにしてます。(ほんの10分くらいですが)

読めば精神の平穏が保たれ、翌日人にやさしくできるような
気がするので[__かわいい]

ついでに酒とジャズの味わいも深まりました[__揺れるハート]
by don (2012-02-11 23:23) 

mignon

このお二人の組み合わせだけでもドキドキします[__爆弾]
今度読んでみますね。
donさんの記事を読んですっかり読書をした気になってしまう私ですが、
これは是非読みたいです。
ご紹介ありがとうございます~[__ぴかぴか]
by mignon (2012-02-12 00:56) 

seawind335

この本は、とても興味がありますね。
2人の組み合わせが最高だと思います。
by seawind335 (2012-02-12 11:06) 

DON

世界の小澤と村上春樹。
興味のある組み合わせですねぇ~(*^^)v
by DON (2012-02-12 15:46) 

don

mignonさんこんばんは!
二人とも「世界の」が枕詞につく人たちですからね。[__ぴかぴか]
あと長く世界レベルでやってる人は、イチローくらいしか
思い浮かびません。ほかに誰かいるかなあ[__犬]
by don (2012-02-12 22:57) 

don

seawind335さんこんばんは!
最高の組み合わせですね!いい企画です[__揺れるハート]
by don (2012-02-12 23:00) 

don

DONさんこんばんは!
興味津々です。二人とも深い世界を話してますよ[__犬]
by don (2012-02-12 23:04) 

せいじ

実は春樹の本まだ読んだ事ないんです…

経済がある程度発展してくると世界中で必ず春樹の本は売れるそうですね。
なかなかいないタイプの日本人ですね。
by せいじ (2012-02-13 09:13) 

伊閣蝶

この本、抜群に面白く、知的な興奮を呼び覚ましてくれます。
村上春樹がこれほどまでに音楽に造詣が深いとは、お恥ずかしいことながら全く知りませんでした。
彼の豊富な知識と素晴らしいリードで、マエストロは完全に胸襟を開いて応えているという感じがします。
小澤征爾の本というと、やはり「ボクの音楽武者修行」が真っ先に思い浮かびますが(実際、大変に面白い本でした)、武満徹との対談集なども非常に面白いものでした。
そうした綺羅星のような本の中でも、本書は筆頭ではないかと思います。
donさんが、村上春樹の著作を高く評価しておられることもあって取り上げられたのでしょうね。
大変嬉しく共感しました。
by 伊閣蝶 (2012-02-13 16:00) 

alba0101

ご訪問&コメントありがとうございます^^
バタバタしていまして....
コメントのお返しが遅くなりまして申し訳ございません<(_ _)>

小澤さんには いつまでもお元気で指揮を続けて頂きたいです...

by alba0101 (2012-02-15 10:54) 

don

せいじさんこんにちは!
世界で売れるというのは、なにかがあるのでしょう。
春樹の本を読む楽しみが残っていて、いいですね^^
by don (2012-02-18 15:22) 

don

伊閣蝶さんこんにちは!
すでにお読みでしたか^^
おっしゃるように、抜群に面白いですね。

「ボクの音楽武者修行」は読んでないのですが、
面白いと評判ですね。また機会があれば読んでみたいと思います。
by don (2012-02-18 15:29) 

don

alba0101さんこんにちは!
小澤さんには、長生きして欲しいですね。
by don (2012-02-18 15:31) 

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