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「サラダ好きのライオン/村上春樹」の感想 [本/文学芸術]



村上ラヂオ3: サラダ好きのライオン (新潮文庫)

村上ラヂオ3: サラダ好きのライオン (新潮文庫)

  • 作者: 村上 春樹
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2016/04/28
  • メディア: 文庫


【サラダ好きのライオン/村上春樹/12年7月初版】
村上春樹のアンアン週刊連載の1年分のエッセイです。
10年前に1年連載、今回は2年の連載で終了したようです。(村上ラジオは全3巻です)

80年代の初頭からこの人の本を読み始めて、そろそろ30年ほど楽しみに読んでます。
ずっと読んでると、なんとなく夫婦仲まで透けて見えてきます。
最近は奥さんとうまくいってるなぁ。最近はだいぶ奥さんに頭あがらないなぁとか^^

円熟のエッセイで、すごく肩の力が抜けてきてます。
甲本ヒロトのボーカルがブルハのときは硬くて、ハイロウズになったら力が抜けたみたいに。

そういえば村上氏、テレビやラジオには1度も出演したことが無いようですね。
すべて断ってるそうです。1度くらい見かけたことがあるような。
あ、村上龍だったか^^


以下に心に残った部分を転記します。


<女性の怒り>
僕なりに、女性全般について長年抱いている説がひとつあります。
それは「女性は怒りたいことがあるから怒るのではなく、怒りたいときがあるから怒るのだ」
ということだ。

~中略~

結婚した当初は、何が起こっているのかさっぱり理解できなかったが、
回数を重ねるうちに「そうか、そういうことなのか」とおおよその仕組みがわかってきた。

相手が怒っているときは防御を固め、おとなしくサンドバック状態になるしかない。
自然災害に正面から立ち向かってもまず勝ち目はないからだ。
賢明な水夫のようにただ首をすくめ、何か違うことを考えながら、無法な台風が過ぎ去るのを待つ。

風がやんだら、そろそろと頭を上げ、慎重にあたりの様子をうかがう。
そして事態は一段落したようだと判断したら、
あとはいつものこっちのペースに戻って「ふんふん」と鼻歌まじりに適当にやっていればいい。
でもやがてそのうちに、あれあれ、まずいなまた頭上に不吉な暗雲が・・ということになる。



<文章の書き方>
~~文章を書く時には、できるだけ読者に対して親切になろうと、ない知恵をしぼり、
力を尽くしています。エッセイであれ小説であれ、
文章にとって親切心はすごく大事な要素だ。少しでも相手が読みやすく、
そして理解しやすい文章を書くこと。

でも実際にやってみるとわかるけど、これは簡単なことじゃないです。
わかりやすい文章を書くには、まず自分の考えをクリアに整頓し、
それに合った適切な言葉を選ばなくてはならない。
時間もかかるし、手間もかかる。いくぶんの才能も必要だ。
適当なところで「もういいや」と投げ出したくなることもある。~~以下略。



<キリギリスはセミだった>
イソップに「アリとキリギリス」の話がありますね。
あれはそもそも「アリと蝉」の話だった。
ギリシャには蝉がいたから、イソップはごく普通に蝉の話を書いた。
ところがそれでは北方のヨーロッパ人には話の意味が理解できないので、
蝉をキリギリスに変えてしまった。

日本人なら逆に「ああなるほど、あれは蝉だったんだ。だったら話はよくわかるよ」
ということになりますよね。夏には賑やかに騒ぐんだけど、秋風が吹く頃に落ちぶれる。



マムフォード&サンズでリトルライオンマン♪



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コメント 24

rtfk

彼女や妻と真剣に喧嘩していた頃は
精神的に辛かったこともありましたが
今は彼のようにちょいと達観した感じもありますね☆
平和を求めるオヤジなのであります~(^m^)
仕事は嵐のようですが(汗)

二周年の記事にお祝いコメントありがとうございました☆
これからもよろしくお願い致します(^m^)

by rtfk (2012-09-15 13:15) 

heroherosr

もうキリギリスのイメージが頭にこびりついてしまいましたので、今さらあれはセミでしたと言われてもねえ、という感じです。
by heroherosr (2012-09-15 17:06) 

song4u

>怒りたいことがあるから怒るのではなく、怒りたいときがあるから怒る

まず、冷静さを装うために、ぼくはこう言います。
「この問題を、女性は・・・と特定して論ずるのはどうかと思います。
確かに女性には、こういう感じの人が多いような気はしますけどね」

更に、ぼくは思います。
ここでは「怒る」だけに限定されているようですが、「泣く」や「笑う」も
まったく同様なのではないか?
・・・そのように感じているところであります。

でも、決して口には出しませんよ。
ええ。出しませんとも、絶対!^^ゞ
by song4u (2012-09-15 20:48) 

U3

 確かに文章を書くのは難しいなぁ。ブログの記事さえ何度も推敲しているこのわたしにとっては実感だ。
by U3 (2012-09-15 20:53) 

Azumino_Kaku

こんばんは、
私はしばらく村上さんの小説を読んでいないような気がします。
女性についての記述はなるほどなぁと思います。
by Azumino_Kaku (2012-09-15 21:11) 

don

rtfkさんこんばんは!
こちらこそ、今後もよろしくお願い致します。
>今は彼のようにちょいと達観した感じもありますね☆
お~、達観されましたか^^

ぼくも争いごとを好まない、平和を求めるオヤジです[__犬]
by don (2012-09-15 22:49) 

don

heroherosr さんこんばんは!
たしかに、キリギリスの演奏家と言うのは、刷り込まれてますよね。

ただキリギリスという虫は、あんまりイメージができないんですよね。
蝉はそのへんにいっぱいいて、いつも見かけているので、
最初から蝉だったらよかったのにとも思います。[__犬]
by don (2012-09-15 22:52) 

don

song4uさんこんばんは!
でしょ~、普通は思ってても口にださないですよね。
だから村上氏もよほど、そのタイミングで痛い目にあってたのかな
とか、思ってしまいます。

彼はむかしエッセイは切り売りなので、小説家として消耗して
しまう。だからエッセイはできるだけ書きたくないとか言ってましたが、
毎週書いてると、つい日常の愚痴がでてしまったのかなとか[__ふらふら]
by don (2012-09-15 22:56) 

don

U3 さんこんばんは!
そうですよね、ブログの記事でさえ、推敲してしまいます。
村上氏のように、世界に読者がいると特に慎重になるでしょう。

今年もノーベル文学賞の英国ブックメーカーのオッズは、
村上氏が一番のようですね[__犬]
by don (2012-09-15 22:59) 

don

Azumino_Kaku さんこんばんは!
小説は、そんなに面白くないです。彼はエッセイが面白いと
思っています。彼の独特の文体が生きてくるのは、軽妙な
エッセイだとおもいます。[__犬]
by don (2012-09-15 23:01) 

mignon

>>怒りたいときがあるから怒るのだ」という
ことだ。
たぶんそのとおりだと思います。
泣きたいときも泣きたい時があるからです。
そうやってリセットします。
by mignon (2012-09-15 23:56) 

銀狼

「文章の書き方」・・・
グダグダの記事ばかり書いている私にとっては
非常に耳が痛いです^^;
by 銀狼 (2012-09-16 00:31) 

seawind335

「アリとキリギリス」の話は、初めて知りました。(^_^;)
女性にはあまり怒られたことがないので。。。。。いいのか悪いのか。
by seawind335 (2012-09-16 21:26) 

松本ポン太

>おとなしくサンドバック状態になるしかない。

まさしくそうですね。ボクもボロボロのサンドバックです。

by 松本ポン太 (2012-09-17 14:56) 

don

mignonさんこんにちは!
じっとがまんしてたら、うつになってしまうので、
喜怒哀楽をパッと表して、リセットするのが
いいのかも。

ぼくは酒でパッといきます。翌日はよく後悔してますが[__犬]
by don (2012-09-17 17:43) 

don

銀狼さんこんにちは!
いや、グダグダじゃないですよ。
この前のWBCの記事なんか、すごくわかりやすかったです。

自分自身思うのですが、わかりやすい文を書こうと思うと、
すごい時間がかかるんですよね。費用対効果というか、
いつも時間との兼ね合いで、妥協してます[__犬]
by don (2012-09-17 17:47) 

don

seawind335 さんこんばんは!
>女性にはあまり怒られたことがないので
お~、素晴らしい!
金の草鞋を履いて探されましたか?[__犬]
by don (2012-09-17 17:50) 

don

松本ポン太さんこんにちは!
いずこも、おなじようで^^;

ぼくは玄関マットのように、踏まれ続けてます[__犬]

少しはソクラテスに近ずけたかも[__ふらふら]
by don (2012-09-17 17:54) 

青山実花

激しい喧嘩をするカップルを見ていると、
どちらかが怒り出した時、
必ず相手が言い返すせいで、
争いに発展するパターンが多いようですね。

つまり、村上さんの対応は、
平和に暮らす為の、
素晴らしい知恵だと思います。
多くの男性が実践されているようですが(笑)。
by 青山実花 (2012-09-17 22:21) 

don

青山実花さんこんばんは!
平和が一番です^^心の底から思います。

とはいえ、あまりに大砲を打ち込まれると、
たまには火縄銃で応戦します。
そうすると、さらに数倍の砲弾が雨あられと降ってきます。

そうやって人は学習をして、大砲が打ち込まれると、
防空壕へ逃げ込むようになるのです。

もっと色々と書きたいのですが、この辺にしときます[__犬]
by don (2012-09-18 21:50) 

みかん

そうですね、うむ。 怒りたいとき、泣きたいときがあるから
怒ったり、泣いたり、するかもしれません ^^;

春樹氏の本、読んでも次の作品を読むと、前の内容を
忘れてしまって、時間が経ってから再読してもまた新たな感触が
残る、稀な作家さんだと思います~[__喫茶店] このエッセイも、
読んでみたいなぁ。 私が日本に帰る頃、文庫化するでしょうか[__猫][__ハートx2]
by みかん (2012-09-26 13:01) 

don

みかんさんこんばんは!

村上春樹は文体でしょうね。この人の本は定期的に
読みたくなります。言葉を相当慎重に選んでて、
最適な表現をされてます。
読むほどに優しい気分になれる作家です。

やっぱり手元に置くのは文庫がいいですよね。
ぼくが持ってる春樹本はぜんぶ文庫です[__犬]
by don (2012-09-27 20:49) 

su-nya

村上さんの文は「へ?」と思うこともありますが
確実に口癖がうつってきたりもします。やれやれ、とか
以前は絶対に使わなかった言葉ですもん。

私は育児モードになってから
映画も小説もモード切替がうまくいかず長編は
鑑賞できなくなっていますが(;_;)いずれ読みたいリストにいっぱい
入っています。

女性論、奥様がサンプリングなんですかね。小説のモデルさんも?

にほんごであそぼ、という子供番組(秀逸な番組です。斉藤孝さん監修、野村萬斎さんとうなりやべベンこと国本武春さんなど、そうそうたるメンバーでブンガクを遊びます。子供だけに見せておくのはもったいない番組です。)でも

ちゃんと「アリとキリギリス」じゃなくて本当はイナゴなんだよ~と
歌ってました。♪
by su-nya (2012-11-18 03:57) 

don

su-nya さんこんばんは!

お子さんが今の年代だと、自分ひとりの時間は無いと思います。
ぼくは高校生二人で、いまは週に20時間ぐらいです。
これが20~30代は平日は深夜帰宅でゼロ。週末は家族行事で
3~5時間が自分ひとりの時間でした。ほぼ無いに等しかった。

いまあるゆとりの時間をどうつかったら、自分が一番ハッピーに
なれるか。マイペースでやっていけたらいいですね[__犬]
by don (2012-11-19 22:23) 

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