「女のいない男たち/村上春樹」書評と要約 [本/文学芸術]
【女のいない男たち/村上春樹/14年4月初版】
冷えたロゼでも飲みながら、軽く読むのに適した本です。ロゼって当たりハズレが少ない。この前シダックスの飲み放題で飲んだ、ロゼのグラスワインですらうまかった^^
村上春樹の恋愛短編集です。前作「恋しくて」も恋愛ものでしたが、恋愛ものは普遍性があって共感が得やすい。そういえばJDサウザーが「ぼくはラブソングしか書かない」とか昔言ってたような気がしますが、恋愛ものはロゼみたいなもので、たいてい面白いです。ぼくみたいなオッサンが読んでも、遠い日の郷愁を思い出す。
「女のいない男たち」。まえがきにありましたが、ヘミングウェイの短編集「Men without women」とは少し趣きが違います。ヘミングウェイは男だけの世界、こちらは、いろんな事情で女性に去られてしまった男たち、あるいは去られようとしている男たち。
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ふと気になって生涯未婚率を調べてみると、平成22年で男性20%、女性11%です。これが現在20歳前後の若者が50歳になるころには、男性35%、女性27%になるそうです。3分の1は結婚しない。どんな日本になっているのか・・
本作には、村上春樹のまえがきが8ページも書かれており、これが結構読んでて面白い。一部をいかに。
「短編小説をまとめて書くときはいつもそうだが、僕にとってもっとも大きな喜びは、いろんな手法、いろんな文体、いろんなシチュエーションを短期間に次々に試していけることにある。ひとつのモチーフを様々な角度から立体的に眺め、追求し、検証し、いろんな人物を、いろんな人称をつかって書くことができる。そういう意味では、この本は音楽でいえば「コンセプト・アルバム」に対応するものになるかもしれない。
実際にこれらの作品を書いているあいだ、僕はビートルズの「サージェント・ペパーズ」やビーチ・ボーイズの「ペット・サウンズ」のことを緩く念頭に置いていた。そういう不朽の名作と自分の作品集を同列に並べるのはいうまでもなくまことにおこがましいのだけれど、(あくまで)イメージとしては、つもりとしてはそういうものなのだと思って読んでいただけると、作者としてはありがたい。」
収録作品は以下。
・ドライブマイカー
最愛の妻を亡くした役者のその後。北海道の中頓別町からの苦情で、架空の町名「上十二滝町」に変更されている。
・イエスタディ
生まれも育ちも東京の男が、阪神ファンが高じて「関西弁」を完璧にマスター。その幼馴染の女の子と、関西出身で東京弁をマスターした早稲田の学生である「僕」の話。
・独立器官
本書のハイライト。「僕」がまるで村上春樹のようです。実話なのかな・・
・シェラザード
伏線未回収^^なんとなくカズオイシグロの「私を離さないで」を思い出す。あっちは回収されたけど。
・木野
妻を会社の同僚に寝取られ、会社を辞め離婚し、バーを開業する。不思議な出来事がおき、いつもの村上ワールドになる。
・女のいない男たち
本書ではいちばん小粒。ブラックアイドピーズとかゴリラズとかが出てくるけど、聴いてるのかな。
本書から心に残った部分を以下に。
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「すべての女性には、嘘をつくための特別な独立器官のようなものが生まれつき具わっている、というのが渡会の個人的意見だった。どんな嘘をどこでどのようにつくか、それは人によって少しずつ違う。しかしすべての女性はどこかの時点で必ず嘘をつくし、それも大事なところで嘘をつくことをためらわない。そしてそのときはほとんどの女性は顔色ひとつ、声音ひとつ変えない。なぜならそれは彼女ではなく、彼女に具わった独立器官が勝手におこなっていることだからだ。」
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「世の中には大きく分けて二種類の酒飲みがいる。ひとつは自分に何かをつけ加えるために酒を飲まなくてはならない人々であり、もうひとつは自分から何かを取り去るために酒を飲まなくてはならない人々だ。」
![cap059s[1].jpg](https://donhenley.c.blog.ss-blog.jp/_images/blog/_459/donhenley/m_cap059s5B15D.jpg)
⇒ジャックレモンをまねて、マティーニのオリーブを4本まで並べたことがありますが^^;
あのときはジャックレモンと同じように、取り去るための酒でした・・
「高槻は常習的な酒飲みのおおかたがそうであるように、アルコールが入ると口が軽くなった。おそらくはしゃべるべきでないことも、訊きもしないのに、自分から進んでしゃべった」
⇒酒飲んで、あんまりいらんことをしゃべらんようにしないと^^
ビーチボーズでペットサウンズ♪
「世の中には、二種類の人間がいる。ペットサウンズを好きな人と、好きではない人だ」と言ったのは村上春樹。なんの作品だったかな。
関連図書:
【恋しくて/村上春樹編訳/13年9月初版】
http://donhenley.blog.so-net.ne.jp/2014-02-18
【色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年/村上春樹/13年4月初版】
http://donhenley.blog.so-net.ne.jp/2013-05-18
【サラダ好きのライオン/村上春樹/12年7月初版】
http://donhenley.blog.so-net.ne.jp/2012-09-15
【小澤征爾さんと、音楽について話をする/村上春樹x小澤征爾/11年11月初版】
http://donhenley.blog.so-net.ne.jp/2012-02-11
【冬の夢/スコットフィッツジェラルド/09年11月初版】
http://donhenley.blog.so-net.ne.jp/2010-08-07
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2014-06-24 21:25
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コメント(10)
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女性が「嘘をつく器官」を持っている
同感ですなぁ(^w^)☆
そして男はそれを許す・・・
気づいていないことも多いのでしょうね^^)
お酒を飲んで・・・獏も気をつけねば(汗)
by 獏 (2014-06-25 06:11)
私は男ですが、嘘をつくための独立器官が生まれつき具わっているようです。
by heroherosr (2014-06-25 18:21)
なんか、ここ数年「取り去る」ために飲んでいることばかりのような気が・・・^^;
私の友人でも、48歳になる今も未婚の男が。。。
独身のくせに4LDKに住んでおります(笑)
by 銀狼 (2014-06-25 20:54)
donさん、おはようございます^^
昨晩、ちょうどロゼ飲みました~。 ドライブ・マイ・カー、
雑誌の切り抜き状態で持っていますが、苦情が来る前の中頓別町、
のままなので、レアですね(笑)
うーむ、三分の一は結婚しない未来。
日本はだいぶ小国になるのかな・・・ ^^;
来月、夫の会社の通販で日本の商品を買えるので、
この本、買います!! 楽しみ~♬
by みかん (2014-06-25 22:10)
僕は飲みたいから飲んでるんだけど。
ドッチだろう? ^^;
by DEBDYLAN (2014-06-26 00:08)
獏さんこんにちは~
二日酔いの日、昨日あんなこと言わなければよかった・・・・
と思うことチョイチョイあります。
by don (2014-06-27 12:36)
heroherosrさんこんにちは~
お、すごいですね。「口八丁手八丁」なお方でしょうか[__犬]
by don (2014-06-27 12:38)
銀狼さんこんにちは~
取り去る人の方が多いような気がします。
なんせ世知辛い世の中ですから^^
4LDKですか。独身貴族ですね[__犬]
by don (2014-06-27 12:40)
みかんさんこんにちは~
ロゼいいですよね。
ドライブマイカー面白いですよね。短編集の中でも好きな方です。
中頓別町の知り合いができたら、見せてあげたらいいと思います^^
3分の1が結婚しないと、半分ぐらいの人口になりそうです。
それぐらいのほうが住みよいでしょうけど、市場が小さいので
世界に対して文化の発信力(影響力)が弱くなるでしょうね。[__犬]
by don (2014-06-27 12:47)
DEBDYLANさんこんにちは~
単に合法ドラッグとして楽しみたいから飲んでるだけ、
というパターンもありますよね。
掘り下げてみるとどちらかに分類されるかも[__犬]
by don (2014-06-27 12:49)