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「名作裁判 あの犯人をどう裁く?」~''罪と罰/ドストエフスキー''のあらすじ [本/文学芸術]



(056)名作裁判 あの犯人をどう裁く? (ポプラ新書)

(056)名作裁判 あの犯人をどう裁く? (ポプラ新書)

  • 作者: 森 炎
  • 出版社/メーカー: ポプラ社
  • 発売日: 2015/03/03
  • メディア: 単行本


【名作裁判 あの犯人をどう裁く?/森炎/15年3月初版】

一粒で二度おいしい一冊。
名作のあらすじ(完全ネタバレ)&批評と、法律の知識が身につくという。

『元裁判官が徹底指南!
「罪と罰」「模倣犯」「羊たちの沈黙」「1Q84」「容疑者Xの献身」など、
犯罪をテーマにした名作文学や名作映画たち。
もしそこに登場する犯罪者たちが実際に逮捕されたとして、
あなたはその犯人がどのように裁かれ、どのような判決を受けるか、想像できますか?

本書では、誰もが名前くらいは聞いたことのある15の名作を題材に、
元裁判官が実際に犯人に判決を下していきます。
刑事裁判における罪の裁き方を知ると同時に、
人が人を裁くとはどういうことかを考えられる一冊です。』



ちょっと前、次男と白木屋で晩飯食ってるときに、この本の話しました。
(下宿してるけど遠くないので、たまに一緒に外食する)
それと「罪と罰」のところを少し読ませた。以下の感想。

・本書をネタにした講義があったら面白そう。
人文系の授業で、「文学部唯野教授/筒井康隆/1990年初版」を読み解くという講義があるそうで、
同じようにこの本をネタに、法学系の授業があったら面白そうと。

・法律家の書いた文章だけど読みやすい。
難解な「罪と罰」を、ものすごくわかりやすくまとめてる。



この本で取り上げている名作は以下の15作品。

・罪と罰/ドストエフスキー
・ウエストサイド物語/ロバートワイズ
・陽のあたる場所/ジョージスティーブンス
・異邦人/カミュ
・太陽がいっぱい/ルネクレマン
・死刑台のエレベーター/ルイマル
・勝手にしやがれ/ジャンリュックゴダール
・赤と黒/スタンダール
・ゴッドファーザー/」コッポラ
・俺たちに明日はない/アーサーペン
・羊たちの沈黙/ジョナサンデミ
・容疑者Xの献身/東野圭吾
・模倣犯/宮部みゆき
・悪人/吉田修一
・1Q84/村上春樹



かの有名な「罪と罰」のあらすじ要約と、本書での判決は以下。

ドストエフスキー
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『主人公ラスコーリニコフは、自分をほかの大勢の人々とは区別された存在(非凡人)であると考え、
その頭に描く理想的な自分と、貧しさゆえに大学を続けられなくなった実際の自分を比べて、
今の境遇から脱するために、金貸しの強欲な老婆を殺して金品を奪っても許される、
という論理を立てます。

非凡人が有害無益な者から金を奪ったとしても、それを社会のために役立てるなら、
むしろそれは有益であり正しいことであるはずだと。

ある暑い夏の夜、斧を隠し持って間借りしているアパートから金貸しの老婆の家に向かい、
さほど良心の呵責を覚えることもなしに、斧で老婆を惨殺します。

ところが犯行を終えたとたん、ラスコーリニコフは殺人の現実に苦しめられることになります。
頭では思想による「正しい殺人」を行ったはずでも、
斧で人を殺めた皮膚感覚と血のにおいからは、逃れることができません。
それと計算外に、殺人の現場にたまたま帰ってきた老婆の妹まで殺害してしまった。

混乱と苦悩の中にあって、ラスコーリニコフの非凡人の思想と殺人哲学は、容易に揺らぐことなく、
度重なる予審判事の追求からさえ、なんとか持ちこたえさせていました。
しかし、一人の貧しい少女ソーニャの生きざまを知ることで、その考えは大きく変化し崩れてゆきます。

自分の身を売って家族の生活を支えるソーニャ。しいたげられ、さげすまれ、
憐れまれるそんざいでしかないソーニャは、ラスコーリニコフに、
「なぜ殺される他人の痛みを感じ取れないのか」
「金貸しの老婆と私たちのどこが違うというのか」
と問います。そしてラスコーリニコフのために震えながら祈る。

その魂の震えに触れてラスコーリニコフは、過去にソーニャが自分の身を売る決意をした時に、
一度自分を殺したこと。しかし自分を完全に犠牲にすることで、よみがえったに違いないことを直感します。

そしてソーニャが他人を自分と共にある者として感じられるのは、
犠牲の痛みと復活の救いによるものであることを悟ります。

ここにおいて他人と自分を「凡人・非凡人」と区別し、
他者との共感を拒むラスコーリニコフの思想は敗れざるを得ません。
同時に、それまでソーニャのような者を救うべき対象とみていたラスコーリニコフは、
ソーニャによって救われることになったのです。

エピローグは、様々な葛藤の末に罪の十字架を背負うことを決意したラスコーリニコフが、
ソーニャから授けられた粗末な木の十字架を身につけて自首し、
金貸しの老婆とその妹を殺害した経緯をありのままに述べて最終幕を迎えます。
ラスコーリニコフは、懲役8年(シベリア送りの強制労働8年)の刑。
ソーニャは一緒に行きましょうとシベリアまでついていく。』

ここから本書は10pを使って、判決を検討します。
帝政ロシアでもこのような判決で終わるはずがない。
現在の日本だったら、二人殺害の強盗殺人となる。
わが国では約70%の確率で死刑になる。

30%の確率で無期懲役になっても、仮釈放が認められるまでの期間は30年を超えている。
(最近10年間の統計で)

ラスコーリニコフとソーニャが一緒に生活できる確率、30%で30年後。
55歳と50歳になっている。それでもソーニャはついて行くのかという。。。



いかがでしたでしょうか。文学に造詣が深い法律家にしか書けない、
創造性に溢れた一冊になっています。



その他の読書メモを。

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<スタンダールの赤と黒は元ネタがあった>
スタンダールが活躍していた時期に、フランスで実際に起きた事件をモデルにしている。
元神学生のベルテが教会でミシュー夫人を撃って重傷を負わせ、死刑になったベルテ事件。

貧しい鍛冶屋の息子ベルテが、町の有力者であるミシュー家に家庭教師として入って、
夫人と親密な中になったこと、そのためミシュー家を追い出されたこと、
ベルテはその後別の有力者の家に取り入って、そこの令嬢とも関係したことなど、
主要な状況はすべて小説のシチュエーションとして取り入れられた。
主人公が死刑になる結末も同じ。



<羊たちの沈黙も半ば実話に基づいていた>
アメリカで実際に起きた2つの事件をつなぎ合わせ、合体させて作られている。
1つは近代犯罪史上最多殺人と言われたヘンリー・ルー・ルーカスの事件。
ルーカスは推定360人殺し、起訴件数で9人殺しの快楽殺人犯。
彼は死刑判決を受けたが、FBIがその異常心理を探求して、
未解決殺人事件の犯罪捜査に用いようとしたため、死刑判決を免れ寿命をまっとうした。
FBIに助言を与える見返りに、ジョージ・ブッシュ(当時テキサス州知事)から死刑判決の延期を得た。
この姿がハンニバルレクター博士として描かれた。

もう1つはエド・ゲインの事件で、ゲインは羊たちの沈黙のバッファロービルと同じことを現実にやっていた。
ゲインの自宅の内部は、羊たちの沈黙で描かれたとおりになっていた。



<容疑者Xの献身は迷惑だった>
あの時点でXがなすべき献身は、母娘にすぐに自首してありのままを話すようアドバイスすることだった。
・過剰防衛が成立する。
・前夫のつきまといが遠因。
母娘は不処分で終わる可能性が高かった。
つきまといの前夫を殺した母親は、執行猶予がついて刑務所には行かないですむ。
中学生の娘は家庭裁判所の措置で不処分で終わる。

殺人罪の法定刑の下限は「懲役5年」。
執行猶予がつけられるのは、3年以下の刑。
したがって殺人事件には執行猶予はつけれない。

しかし別途同情すべき事情がある場合は、酌量減刑という措置ができると定められている。
酌量減刑をした場合、法定刑の下限は半分にまで下がる。
そのため殺人事件でも酌量減刑をすれば、執行猶予をつけることが可能になる。



ハイロウズで「罪と罰」♪ テンション高いときにカラオケで歌う曲♪



次男が薦めるので読んでみました。さすが筒井康隆。まれにみる傑作本。
今年読んだ本では一番面白かった。25年前の本だけど今読んでもめちゃくちゃ面白い!

文学部唯野教授 (岩波現代文庫―文芸)

文学部唯野教授 (岩波現代文庫―文芸)

  • 作者: 筒井 康隆
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2000/01/14
  • メディア: 文庫



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コメント 6

heroherosr

一昔前は無期懲役でも十何年で出れたけど、今は30年以上なんですよね。
まあ、よっぽどのことをしたから無期懲役なんで、何年だろうと釈放されるのはぬるいと思います。
by heroherosr (2015-05-24 16:28) 

seawind335

これは、アイデアの勝利ですね!

以前は、無期懲役=終身刑と勘違いしていました。
恥ずかしながら・・・・(@_@;)
by seawind335 (2015-05-24 21:57) 

don

heroherosrさんこんにちは~
善良な市民の感覚からしたら、そうですよね。
しかし、牢屋でくらすというのはどんな気持ちなんだろう[__犬]
by don (2015-05-25 12:31) 

don

seawind335さんこんにちは~
いや僕も同じです。終身刑だと思ってました。
言われてみると、無期というのは期限無しなので、
早く出ることもある。読んで字の如しか[__犬]
by don (2015-05-25 12:33) 

みかん

名作裁判、これまでになかった視点で面白そうですね!
羊たちの沈黙、怖かったですね~。。。

次男くんも、これまた面白そうな本読まれてますね^^
さすがdonさんのお子さんです☆彡
筒井康隆はずーーっと前に読んで以来なので、
こちらもチェックしたいです。
by みかん (2015-05-27 10:49) 

don

みかんさんこんにちは~
え、怖かったですか?
怖いという印象はなかったなぁ・・
だいぶ子供の頃に見られたのでしょうか。

怖かったのはシックスセンスです。
しばらく夜暗いところにいるのが怖くなりました。

しばらく筒井本を読もうかなと思ってます。
「日本以外全部沈没」とか、「旅のラゴス」
が面白そうです。[__犬]
by don (2015-05-29 12:38) 

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