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橘玲の中国私論~中国のバブル崩壊はいつ? [本/Biz経済]



橘玲の中国私論---世界投資見聞録

橘玲の中国私論---世界投資見聞録

  • 作者: 橘玲
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2015/03/06
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


【橘玲の中国私論/橘玲/15年3月】
『日本人の心の中には、
「中国はうまくいくはずがない」「うまくいっては困る」
などのねじれた思いが横たわっています。
その思いが「中国の現実」を正しく見ようとはさせない。』

まさに僕のことかと。
まぁしようがないです。あれだけ激しい反日を見せつけられたら。

人は鏡です。

中国本は、いろいろと読んでます。
インパクトのある順に、小林よしのり、三橋貴明、長谷川慶太朗、宮崎正弘、石平など。
たいてい中国はこんなひどい国で、信用したらダメだよという。
おかげで中国嫌いが増幅してしまった。

中国シンパ本は、副島隆彦や孫崎享なんかがありますが、
中国嫌いを中和してくれるほどではない。

橘玲はすぐれたライターで、いつも視点が冷静です。
とくに「残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法」が名著で、
以降たまに新作を読んでます。

本書は素晴らしかった。
中国には中国の事情がある。橘玲は公平に提示します。
Aという意見があって、Bという意見もある。私はこう思う。

今の中国、というより歴史も含めて、中国のすべてが理解できます。
今年の新刊では「AIの衝撃」と並んで、素晴らしい本だと思う。
息子にも買って送りつけたいぐらい。
こういう中庸な理解が大切だと。
ま、「いらんわ」って言うでしょうけど。

全編知識の宝庫なので、読書メモを書ききれない。
ぜひ本書をご一読されるのがよろしいかと。
3つだけ以下に。

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<中国の錬金術の正体>
中国の経済成長で外資の割合は低下し、
2010年には自己資金の割合が全体の8割になった。
464兆円の自己資金である(細かいことは本書で)。
この資金はどこからくるのか?

無から有を生み出す錬金術のからくりは中国の急速な都市化にある。
中国では土地は公有制で地方自治体が所有する。人民は使用権を売買する。

この30年で4億人の人口移動が起き、都市化にともない、
九州より大きな土地が宅地へと開発された。
農地を宅地に換えるには、農民に対する補償が必要となる。

中国の地方政府は、1平米あたり10元とタダ同然で農民より仕入れた土地を、
1000倍の1万元で販売することで巨額の利益を生み出した。

中国では都市開発により、日本のGDPに匹敵する富が1年間で生み出されている。
ところがこの巨額のマネーにかかわることのできる人間は、
地方政府の共産党幹部などごくわずかしかいない。

しかし富への扉は閉じられようとしている。
・農民の権利意識の向上でタダ同然で土地を仕入れることができなくなった。
・不動産価格の上昇が鈍ってきた。

現在の中国総人口13億人のうち、都市部の居住者は6.7億人と半数になった。
訪日観光客のような海外旅行をする中国の富裕層は2000万人と推計される。
富裕層の下には、海外旅行に行けないけど家に1台は車を持てる中産階級が1億人いる。

都市部人口の残った5.5億人のうち、
2.4億人は農民戸籍のまま都市に居住する最底辺労働者。
3.1億人は都市戸籍を持ちながら中産階級になれない予備軍。





<人口ボーナス>
藻谷氏の「デフレの正体」で広く知られるようになった、
経済成長が生産年齢人口に大きく影響されるという理論。
インフレは貨幣現象で人口動態とは無関係との批判もなされたが、
藻谷氏の主張は、90年代後半から注目された人口経済学とほぼ同じ。

各国のデータを比較検討すると、
生産人口比※が上昇するにつれて不動産価格が上がりバブルが大きくなり、
ピークを過ぎるとバブルが崩壊する傾向が現れる。
(※生産年齢人口÷非生産年齢人口)

DSC_0621.JPG

日本の生産人口比がピークになったのはバブル崩壊の1990年。
アメリカは2007年でサブプライムバブルが崩壊した。
ギリシアとポルトガルの転換点は2000年、アイルランドとスペインの転換点は2005年で、
いずれも不動産バブル崩壊が起きている。

生産人口比が下がり続ける日本ではもはや不動産バブルは起こらず、
遅れたバブルで賑わう国も、生産人口比を見れば崩壊の時期を予想できる。
本書では2020年ごろに中国バブルが崩壊すると予想している。




<北京コンセンサスとは~経済支援対象国に民主化や自由化を求めない>
アメリカの善意は途上国の人々を不幸にする。
貿易の自由化や民営化を押し付ける、IMFや世銀の「ワシントンコンセンサス」は、
スティグリッツやポールコリアーなど一貫して批判している。

民衆によって選ばれた指導者は、独裁者より大きな権力を行使できる。
だからこそデモクラシーは三権分立や法の支配など、権力を制約する仕組みが不可欠だ。
しかし残念なことに、アフリカの国の多くはこうした制度や慣習を欠いている。

そんな世界に民主主義を導入すると、
当選した政治家は多数派の支持に応えるべく利権を独占し、
少数派を排除弾圧する。それは内戦に発展し、独裁政治より悲惨になる。

アフリカだけではない。ウクライナの混乱も、ユーゴ紛争も、イラクの混乱も、
すべて民主的な選挙を契機に始まった。

デモクラシーは国民国家を生み出す高度な統治技術だが、
民族や宗派の対立を抱える社会にとっては劇薬になる。
イラク国民はいま、自由や民主政より、
生命の危険がなかったフセインの独裁時代にもどることを願っている。

「北京コンセンサス」は次のような特徴をもつ。
・中国企業の経済的利益を重視する。
・エネルギー資源の確保を目的とする。
・国際政治における中国の影響力拡大を目指す。
・相手国の人権や政治体制にいっさい条件をつけない。
このようにして中国は、中南米やアフリカの独裁政権に巨額の援助を行うようになった。

援助の条件としては、
・台湾を国家として承認しない。
・日本の国連常任理事国入りを阻止する。
・中国の人権問題を取り上げた国連決議に反対票を投じる。
独裁政権にとってはきわめてハードルが低い。




この本によると、中国の鬼城(ゴーストタウン)はすさまじい。
鬼城になるとわかっていても、誰も濁流を止められない。
巻頭カラー、中国ゴーストタウン・ベスト10の解説が楽しいです。
廃墟マニアはぜひ^^


月明かりは廃墟に落ち♪
夜風は呻く♪

ゴーストタウンには♪
心焦がす煌きはなく♪
ただ影が長い♪

そこには色あせた思い出が横たわる♪


ポコでゴーストタウン♪ 



ゴースト・タウン

ゴースト・タウン

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: ヴィヴィッド
  • 発売日: 2006/04/15
  • メディア: CD



関連図書:
【AIの衝撃 人工知能は人類の敵か/小林雅一/15年3月初版】
http://donhenley.blog.so-net.ne.jp/2015-04-25

【残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法/橘 玲/2010年9月初版】
http://donhenley.blog.so-net.ne.jp/2010-11-11

【地方消滅/増田寛也/14年8月初版】
http://donhenley.blog.so-net.ne.jp/2015-04-21

【中国崩壊前夜/長谷川慶太郎/14年5月初版】
http://donhenley.blog.so-net.ne.jp/2014-06-14


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コメント 6

song4u

中国、北朝鮮、南朝鮮。
国家レベルで分かりあえる日は遠いですね。
否。無いものねだりかもしれないと思い始めました。

5年、10年では、どうひっくり返っても不可能。
20年、30年(次世代)なら少しは可能性あり?
と言うか、20年、30年も経ったら分かりあえても遅い気がしますね。
by song4u (2015-06-02 22:54) 

heroherosr

中国の人とはいつかは分かり合える日が来ると思っていますが、もう一つの国は未来永劫分りあえる日は来ないでしょうね。
by heroherosr (2015-06-03 18:06) 

みかん

人は鏡、まさにそう思います。

残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法、という本も
この本も読んでみたい!ですが、こういった経済・社会的な
本はいつも途中で挫折してしまいます^^;。。。

白人からみると、我が国も中国もK国も見ためからは
区別がつかないようで、そこで競い合っているのかと思うと、
バカバカしいなーとほんとに思います。。。
by みかん (2015-06-03 22:06) 

don

song4uさんこんにちは~
そうですよねぇ。
戦後70年でも、いまだに文句言ってます。
反日テレビや報道がなくなれば、
そういう感情がなくなるかもしれませんが。

やめる気はゼロみたいですから[__犬]
by don (2015-06-05 12:41) 

don

heroherosrさんこんにちは~
いや、いつかはわかりあえると信じたいです。[__犬]
by don (2015-06-05 12:42) 

don

みかんさんこんにちは~
見た目はおなじですもんね。
それがなぜ中身がこうも変わってしまうのだろう。
それが文化や風土というものかもしれませんが。

むかしは日本も金持ちケンカせずだったのですが、
最近は余裕がなくなってきて・・・[__犬]
by don (2015-06-05 12:44) 

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