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【亡国の農協改革/三橋貴明】の要約読書メモ [本/Biz経済]


亡国の農協改革 ――日本の食料安保の解体を許すな

亡国の農協改革 ――日本の食料安保の解体を許すな

  • 作者: 三橋貴明
  • 出版社/メーカー: 飛鳥新社
  • 発売日: 2015/09/08
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


【亡国の農協改革/三橋貴明/15年9月初版】

「2015年に始まった安倍内閣による農協改革が、
日本の地域社会と安全保障を崩壊させ、日本国滅亡への歩みを、
後戻りできない形で進ませることになった。」

著者はすべての国会議員に本書を謹呈したそうです。
国会議員が、農協改革の危うさを理解できてないと。

さっそく要約読書メモを。







<安全保障とは何か>
対中国の防衛面ばかりを、意味するものではない
・国土を外国から防衛する、防衛安全保障。
・国土を大規模自然災害から守る、防災安全保障。
・国民を犯罪から守る、防犯安全保障。
・国民を飢えから守る、食料安全保障。
・国民に安定的にエネルギー(電力など)を供給する、エネルギー安全保障。
・国民に高品質で安価な医療を提供する、医療安全保障。
・非常事態時でも物資の流通を実現する、物流安全保障。




<農協が地域を守っている>
協同組合の事業目的は利益最大化ではない。
組合員や地域住民の生活のために、多少の赤字が出てもサービスを継続する。
他の事業や地域における黒字で補てんし、全体で収支の帳尻を合わす。
株式会社だったら、単体で赤字になる事業や地域から撤退する。

農協は過疎地域の「買い物難民」や「医療難民」にサービスを提供したりする。
農協のほかに、地域を消滅から守る組織はほとんどない。
日本の地域を消滅させたいなら方法は簡単だ。農協を無くしてしまえばいい。

農業という地方経済の中心が瓦解するのはもちろんのこと、
買い物や医療などのインフラが消滅し、地域は消滅する。




<土木技能実習の7割が中国人>
現在安倍政権は、土木建築分野の人手不足を理由に、外国人技能実習制度の拡大、
「外国人労働者」受入れをすすめている。日本は防災安全保障を外国人労働者に依存するようになる。
世界屈指の自然災害大国で、自国の防災安全保障を外国企業や外国人に頼っていいわけない。
しかも、2014年技能実習生17万人弱のうち、中国国籍が7割を占めている。




<アメリカは穀物に1兆円の補助金を出している>
アメリカはコメ、小麦、トウモロコシという穀物3品目について、約1兆円の輸出補助金を出している。
アメリカの農業の生産性は高く、穀物の価格は安い。その上補助金までつけて外国に穀物を売りさばく。

アメリカは国家として食料を、「世界をコントロールする一番安い武器」と位置づけ、
官民一体となり外国市場におけるシェアを広げていってるのだ。




遺伝子組換え作物(GMO)問題>
アメリカは世界にGMO作物(農薬まみれ作物)を売り込む。モンサント、カーギルなど寡占状態。
GMO作物の栽培が始まったのは1996年。人間が食べはじめてまだ20年たってない。
(ラットの動物実験では、GMO大豆を食べたラット新生児群の半数が死亡)

GMOの市場開拓は凄まじく、2014年時点で全世界の大豆作付面積の82%がGMO化されている。
トウモロコシは30%、綿が68%。
世界の需要が急増したことで、害虫や除草剤に対する抵抗力の強いGMO(遺伝子組換作物)が普及した。

ひどい話だが、モンサントはGMOで地域の種子を席巻したのち、種子価格を引き上げる。
インドの農家はGMOを導入し、毎年モンサントから種子を購入する状況に追い込まれ、
種子価格を引き上げられたため、自殺者まで出ている。

日本では加工食品の原材料としてGMOを使用する場合、GMO使用を表示する義務がある。
日本は農協(JA全農)が持っている「全農グレイン」という穀物会社が、管理を徹底している。
この会社を穀物メジャーと中国の国策会社が欲している。農協を株式会社化して買収したいと。

「全農グレイン」はモンサントやカーギルにとって目障りな存在。
対日輸出作物で30%のシェアがあり、穀物メジャーの競合相手になる。
農薬まみれGMOを仕分け管理しており、これらの作業は穀物メジャーにとってコスト高になる。
3割といえど、一定シェアの競合先がそういうサービスをしていれば、メジャーもやらざるを得ない。

対日穀物輸出の利益最大化を邪魔する全農を排除したい。
M&Aをしかけ、株式を買い取り、自社の資本的支配下に置きたい。
ところが全農は協同組合であり、自社の支配下に置くことはできない。
2015年安倍内閣は、農協改革で「任意で株式会社化しても構わない」とした。

ちなみにモンサント社の社員食堂では、GMO作物の提供を禁止している。

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<農業への政府支出の国際比較>
そもそも農家の所得に占める財政負担が、主要国で最も少ないのが日本。
日本の農業所得に占める財政負担の割合は、15.6%。
アメリカは全体で26.4%、穀物農家に対しては50%前後。
欧州に至っては、フランスが90.2%、イギリスが95.2%、スイスが94.5%・・・
信じがたいほどの高水準になっている。

欧州の農家がかせぐ所得の90%以上が、税金から支払われている。
ほとんど公務員と同じである。なぜそうしているか。
そうしなければ外国との競争に敗れ、自国の食料安全保障が崩壊してしまうからだ。
日本同様に人件費が高く、広大な農地に恵まれていない欧州諸国は、
外国と競争すると、生産性の違いから敗北する可能性が高いからだ。

日本国民は、日本の農家が主要国の中で「最も保護されていない」という現実を知るべきだ。




<構造改革先進国ニュージーランド>
ニュージーランドは日本に先行して構造改革を行った。
政府の各種規制を撤廃し、農業への補助金も廃止。結果どうなったか。
地方の公立病院は消滅。国民の医療費負担は激増。
郵政改革が実施され、地方のコミュニティの中心だった郵便局は3分の1に激減した。
地域住民は病院や郵便局が消え、都市部へ過剰流入した。

消費税が導入され、所得税の累進課税最高税率は66%から33%に引き下げられた。
労働規制の緩和が行われ、労働組合や政府の保護が消滅した結果、
パートタイムで働く労働者ばかりが増えてしまった。




<TPPで沖縄の島々が無人島になる日>
TPPに加盟し、砂糖の関税が撤廃されたとする。
沖縄の島々でサトウキビを生産してる農家は、次々に廃業する。
離島で生活ができなくなり、住人は次々に沖縄本島や鹿児島に移住する。
やがて無人島になり、中国の漁民が住み着くようになる。




<日本の場合都市部への人口集中はまずい>
日本は世界屈指の自然災害大国。
安全保障上の観点から、日本列島の各地域に住民が分散して居住しなければまずい。
経済力や、土木などの技術力があっても、それが分散されてないといけない。




<日本で共産革命が起きなかった理由>
農地改革が行われたのも大きかった。
改革前(1945年11月)の小作地比率46%が、改革後(1950年8月)には10%になった。
農地を売り渡した地主は176万戸。売り渡しを受けた農家は475万戸と総農家数の8割弱になった。
マッカーサーは「共産主義に対抗するため、これより確実な防御はありえない」と語った。




<日本の関税率は低い>
日本の農家ほど「保護されてない」農業は、世界に類例をみない。
関税にしても、わが国の平均関税率は主要国のなかでは低い。
日本よりも関税が低い主要国はアメリカだけである。

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<農協は株式会社後には買収される>
かつてカナダには4つの農協があった。
紆余曲折があり2012年に、欧州の資源メジャーであるグレンコア社に5000億円で買収された。
カナダの農協は、欧州系株式会社に変わってしまった。

オーストラリアの農協も、2010年にカーギルの支配下に置かれてしまった。

カナダやオーストラリアの例を見るかぎり、農協の株式会社化と、
「グローバル企業による買収」は直接結びついている。




<日本の農協の国際的な評価>
国際協同組合の世界大会において、レイドロウ会長は以下のように述べている。
「日本の農協は、生産資材の供給、農産物の販売をしている。
貯蓄信用組織であり、保険の取扱店であり、生活物資の供給センターである。
医療サービスもあり、ある地域では病院の診療や治療も提供している。
農民にたいして営農指導をし、文化活動のコミュニティセンターも運営している。
総合農協がなければ、農民の生活や地域社会は、まったく異なったものとなる」

またICAのジョンストンいわく、
「日本の農協は、アジア環太平洋における、最大のサクセスストーリー」と絶賛している。




<TPPのサービス(金融)の狙い>
アメリカは日本に対して、JA共済の市場を明け渡せと言ってきている。
TPP加盟後は、「金融サービスのイコールフィッティング」ということで、
農林中金とJA共済は農協法から切り離される。すなわち総合農協制度の崩壊だ。

各地の単位農協は、利益を出すことが難しい経済事業に特化させられ、経営破たんし、
新たに参入してきた「農業株式会社」の資本参加に置かれることになる。
地域は消滅に向けて、転がり続ける。

ちなみに米国はTPPを米韓FTAをモデルとするべきと言ってるが、
現在の韓国は日本に先行して農協が解体されてしまった(株式会社化され分社化)。




<やっかいなのはTPP>
ISD条項:
政府の規制強化で「外資系企業」が損害を被った場合、
世銀傘下の国際投資紛争解決センターに提訴されるというシステム。

たとえば株式会社化した全農をモンサントやカーギルが買収したとして、
それを日本国民が問題視したとする。
そこで日本政府がカーギルの持ち株比率に制限をかけようとすると、間違いなくISDに提訴される。

本来食糧安保の基幹たる全農の資本構成をどうするかは、日本国の主権の問題だ。
しかしTPPは国際協定であり、国内法の上に立つ。
日本がTPPに加盟すると、主権に基づき外資規制をかけることすら困難になる。


ラチェット規定:
ラチェットとは一方向にしか動かない爪がついた歯車のこと。
「規制を緩和方向にしか動かせない」という意味。

日本がTPPに加盟し、投資関連のラチェット規定が定められると、
我が国はISDがあろうがなかろうが、例えば全農に対する外資規制をかけることができなくなってしまう。

われわれ日本国民は、主権に基づき食糧安保を構築する自由を、
輸入品に関税をかける自由を、外国資本に規制をかける自由を、失うことになる。
TPPは国民の主権を制限することで、一部の投資家や企業家の自由を確保するための協定なのだ。


心ある国会議員も危機感を持ってるようですが、TPPは秘密交渉で、
国会議員でさえ中身をわかってません。

危機感すらもってない国会議員は、せめて本書を読んで、
どうすべきか考えてほしい。



コーヒーは飲みたいけど♪
遺伝子組換食品はきらいだ
モンサントに力を貸すことなしに
一日を始めたい

モンサントよ♪
農家の自由にさせてやれよ

ヴァ―モントの人たちが♪
遺伝子組換え表示を投票で決めたのは
何が入っているか知りたかっただけ

モンサントとスターバックスは♪
ヴァ―モント州を訴えた

ニールヤングでA Rock Star Bucks A Coffee Shop ♪



ロックですよね♪

ザ・モンサント・イヤーズ(DVD付)

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  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
  • 発売日: 2015/07/29
  • メディア: CD




関連記事:
【㈱貧困大国アメリカ/堤未果/13年6月初版】
http://donhenley.blog.so-net.ne.jp/2016-11-12

【脱資本主義宣言/鶴見済/12年6月初版】
http://donhenley.blog.so-net.ne.jp/2012-08-25






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コメント 4

song4u

農協がこんなに意義深いというのは、率直に言って驚きました。
だけど仰る通りですねえ。異議なし!って感じです。
カーギルは良く知らないのですが、モンサントの横暴&性悪については
かなり強力な鉄槌が必要だと思います。
どう考えても許せない、絶対に許してはいけない会社だと思います。

TPPについては・・・
当たり前の話だなあ、というのが第一印象でしょうか。
米国の常識に合わせられるほど今の日本に余裕などは無いと思うし、
そもそも合わせるべき双方の常識のギャップを、一体どれほどの人が
理解しているのでしょうか?
危ういですよね、あり得ないほど危うすぎますよね。
ちょっと信じ難い気がします。
by song4u (2015-10-14 22:02) 

みかん

donさん、おはようございます。

ニュージーランド、日本に先駆けて改革していたのですね。
非正規雇用者が増大しているところなど、日本もすでに
そうなってきてますね。。。

ところで、Don Henleyの「The Boys of Summer」ですが
こちらのロックチャンネルで、よく流れております。
これまで、てっきりブライアン・アダムスの曲かな?
などとボンヤリ思いながら、運転中に聴いておりました^^; 
by みかん (2015-10-14 22:44) 

don

song4uさんこんにちは~
ぼくも農協に関してはネガティブなイメージしかなかったので、
びっくりしました。

モンサントのCEOがニールヤングのファンだそうで、
「誤解がある、話し合いたい」とか言ってましたが、
その後はどうなったのか。

TPPはそのまま妥結しそうです。
徐々に国のかたちが変わっていくんでしょうね。
今のままでいいと思うのですが[__犬]

by don (2015-10-15 12:29) 

don

みかんさんこんにちは~
そろそろテキサスも秋でしょうか。
よく夏の終わりにかかる曲ですよね。

和訳はここのサイトが詳しいです
http://onemusic1.blog133.fc2.com/blog-entry-323.html

ブライアンの「サマーオブ69」も名曲ですよね。
どちらもカラオケでよく歌います。

ところで今日は二日酔いなので、テンションがあがりません。
早く家に帰って、寝たいです[__犬]
by don (2015-10-15 12:40) 

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