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「火花/又吉直樹」とボブマーリー [本/文学芸術]


火花

火花

  • 作者: 又吉 直樹
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2015/03/11
  • メディア: 単行本


【火花/又吉直樹/15年3月初版】
「火花」読まれました?
なんか2015年に一番売れた本だそうです。250万部。
これ、オールタイムでもけっこう上位にくるんちゃうやろか?

歴代ベストセラー本ランキングです。
1981 窓ぎわのトットちゃん        黒柳徹子   580万部
1998 五体不満足            乙武洋匡   480万部
2003 バカの壁             養老孟司  432万部
1995 脳内革命             春山茂雄   410万部
1945 日米会話手帳                  360万部
1982 気くばりのすすめ          鈴木健二   340万部
2001 世界の中心で愛をさけぶ      片山恭一   306万部
1970 冠婚葬祭入門           塩月弥栄子 300万部
1987 サラダ記念日           俵万智    280万部
2009 もしドラ              岩崎夏海   270万部
2005 国家の品格            藤原正彦   260万部
1982 積木くずし            穂積隆信   250万部
2004 頭がいい人、悪い人の話し方   樋口裕一   250万部
1987 ノルウェイの森(上・下)       村上春樹   220万部

おどろきの、「ノルウェーの森」超えです。
なんでこんなに売れたんでしょう。

それにしてもデータがちょっとおかしい。調べてみました。
2010年末の時点で、「ノルウェーの森」は国内だけで1095万部突破。
上下巻、文庫合わせての数字です。

現時点では村上春樹は国内売上より、国外売上のほうが多いようなので、
世界売上合計では、2000万部を超えると思われます。

それと、なんで司馬さんが入ってないの?
ぜったいおかしい。これまた調べてみました。
2005年の時点で司馬さんの「竜馬がゆく」は2125万部、
「坂の上の雲」は1475万部、司馬作品売上10位の「世に棲む日々」でさえ445万部です。

ま、こういう統計はあんまり正確じゃないということか。
とはいえ、「火花」が歴史に残るベストセラーということに、まちがいない。
村上春樹や司馬遼太郎を別格としても、セカチューやもしドラなみに、世間をにぎわした。

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作者について。
ピース綾部というのは、熟女キラーとして、なんとなく知ってました。
テレビで見て、すごく印象に残った。だけどピース又吉は知らなかった。

これって「マタヨシって読むんやんね?」と後輩に聞くと、
「いや、マタキチです」と自信たっぷりに答えられた。
調べてみると「マタヨシ」やん、あかんやん、先輩にウソ教えたら。

ふだんテレビあんまり見ないから、タレントさんのことあんまり知りません。
いや、正確にいうとテレビは1日1時間ぐらいは見てます。
晩酌時に見てる。地上波じゃなくて、ケーブルです。
ニュースチャンネル、スポーツチャンネル、音楽チャンネルをザッピングしてる。
ニュースを30分、音楽30分ぐらいかな。さいきんは猛虎キャンプレポートばかり見てた。
みんな地上波って見てるのかな。




読んだ感想です。
すごく不安になる。なんでだろう。登場人物が危なっかしいからかな。
オチというか、着地点が見えないんですよね。破滅的な展開はあまり読みたくない。
ま、純文学だからそういうのがいいのか。

それから、この本はボブマーリーの本です。
いちばん印象的なラストシーンは、ピストルズでもなくクラッシュでもない。
ボブマーリーが流れます。

小説というのはワンシーンです。人生もそうかもしれない。そして永劫は瞬間にほかならない。
この先はどうなるのか?これをボブマーリーにラストで歌わせてる。
夢があれば、人は生きられる。


「サラダ記念日」といえば、ホテルカリフォルニアです。
読者の頭の中にあるいろんなものが、音楽によって浮かびあがる。
「火花」の場合は、ノーウーマンノークライ♪

ジョンレノンが主夫になり、ミックジャガーは社交界やディスコに寄りそう。
パンクロックが出てくるまで、世界の若者は、ロックをボブマーリーの中に見た。
ボブマーリーは、ある時代の希望であり夢だった。

主人公(徳永)にとってのボブマーリーが、師匠(神谷)なのかもしれない。




以下あらすじというか、内容について。

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売れない漫才師の生活を描いてます。
師匠(といっても4歳違い)との、笑いに関する哲学のやりとりが現役芸人ならでは。
ピースの漫才を見たことないんですが、知ってる人なら味わい深いかも。

火花というタイトルは、主人公(徳永)の漫才コンビ名がスパークスだから。
師匠(神谷)との出会いのシーンが、花火大会だから、ということか。

花火大会のステージで、強烈な漫才やってた他のコンビの神谷と飲みにいき、
その場で徳永は弟子入りします。「本を読め、偉人伝は面白い、オレの偉人伝を書いてくれ」
こう師匠は弟子に依頼する。

笑いの求道者である師匠神谷は、破滅的人間です。
弟子の徳永のほうが売れてしまう。なんかこういう展開いややなあ。
現実世界はそんなものかもしれない。ゴロゴロ転がってる話か。
だから僕たちは、ハッピーエンドのサクセスストーリーを読みたい。
サクセスを自分に重ね合わせて、ひとときの夢を見る。

徳永が売れたといっても、一過性のお笑いブーム。
けっきょく中ヒットで過ぎ去ってしまう。そして相方の結婚を機にコンビを解散。
引退を決意します。相方は携帯ショップ店員、徳永は駅前の不動産屋で働き始める。

10年ぐらい前の、「エンタの神様」のお笑いブームを思い出します。
あのときの超売れっ子芸人たちは、いまどうしてるのだろう。

師匠(神谷)は、破天荒な生き方で借金をつくり、1年ほど姿をくらましたあと自己破産。
それでも、お笑いをやめない。このあとどうなっていくのか、というところで物語は終わります。
徳永の青春は終わり大人になったけど、神谷はずっと夢を見てる。
まるでボブマーリーのように。


若手お笑い芸人の、約10年間の青春を描いた小説でした。
ふつうの学生やサラリーマンと違い、売れないお笑い芸人という、低い目線から見上げた社会。
不安に感じたのは、不安定な主人公たちのポジショニングからかもしれません。




以下にいくつか目についた表現を。


神谷さんは偉人と呼ばれる人達の人生が綴られた伝記を貪り読んでいたらしい。
「絵はな、表紙とな途中に少しだけやったんちゃうかな。あとは全部活字」
神谷さんは、活字が多い本だったということを強調したいようだった。
「新渡戸稲造が何者か知ってるか?」
「五千円札の人ですよね?」
「そうや、あの人も色々やった人やねんで。そんなんも書いてたわ」
「そうなんですね。何をした人なんですか?」
「忘れたけど、読んだ時は感心したん覚えてるわ」



「お前のコンビ名、英語で格好ええな。お前は父親になんて呼ばれてたん?」
「お父さん」
「おい、びっくりするから急にボケんな。ボケなんか、複雑な家庭環境なんか、
親父が阿呆なんか判断すんのに時間かかったわ」
「お母さん、お前のことなんて呼ぶねん?」
「誰に似たんや」



僕は神谷さんを、どこかで人におもねることの出来ない、自分と同種の人間だと思っていたが、
そうではなかった。僕は永遠に誰にもおもねることの出来ない人間で、神谷さんは、
おもねる器量はあるが、それを選択しない人だったのだ。両者には絶対的な差があった。



エジソンが発明したのは闇。



帰り際に、「握力が強過ぎるゴリラ同士の握手みたいやったな」と言われた。



長時間にわたり、審査する方は更に疲弊していて不憫だったが、
彼らが正確にネタの善し悪しを判断出来ていたかには些か不安もあった。
肉体はぶっ倒れれば、そこが限界だとわかるが、審査する方の思考が正常に機能してるかどうかは、
側で見ていてもわからなかった。



実際に僕の家は裕福ではなかった。・・・
姉が紙のピアノで「ねこふんじゃった」の練習をしていた話を何度も繰り返しぼくに話させた。・・・

IMG_1489[1].JPG

姉の通うヤマハの教室を覗きに行くと、他の生徒達は演奏しているのに、
姉だけエレクトーンの前の椅子に座った状態で、落ち着きなく周りをうかがい、
エレクトーンの裏を手で触ったりしていた。なぜ弾かないのだろう?母も不安そうに姉を見ていた。

ようやく異変に気づいた先生が姉の側に寄って行くと、姉は「音が出ない」と言った。
すると先生が当たり前のように、エレクトーンの電源を入れて、姉も途中から演奏に加わった。
姉は緊張で身体が強張り、異常に両肩が上がっていて無様だった。
いつもは優しくて頼りがいのある姉のこんな姿を見ていると、なぜか僕は胸が苦しくなり、
眼から涙が溢れた。「なんで、あんたが泣いてるの?お姉ちゃん頑張ってるで」
と言った母の眼も赤かった。その夜、家に帰ってからも姉は無言で紙のピアノを懸命に弾き続けていた。



でも、ずっと笑わせてきたわけや。それはとてつもない特殊能力を身につけたということやで。
ボクサーのパンチと一緒やな。無名でもあいつら簡単に人を殺せるやろ。芸人も一緒や。
ただし、芸人のパンチは殴れば殴るほど人を幸せに出来るねん。
だから事務所やめて、他の仕事で飯食うようになっても、笑いで、ど突きまくったれ。
お前みたいなパンチ持ってる奴どっこにもいてへんねんから。



神谷さんが、「なんで、ライブバージョンやねん!」と湯に浸かりながら叫んだ。
これは、受付で借りたボブ・マーリーに対しての言葉だろう。・・・
神谷さんはやかましいほどに全身全霊で生きている。
生きている限り、バッドエンドはない。僕達はまだ途中だ。これから続きをやるのだ。
神谷さんの言葉を無視して、
ジャマイカの英雄はエビシンゴノビーオーライと世界に向かって唄い続けている。・・・




いい友だちと出会い♪
いい友だちを失った♪
輝く未来の中で 過去を忘れてはいけない♪
だから 涙をふいて♪
もう泣かないで♪
僕がいなくなっても♪
すべてうまくいくよ(エビシンゴノビーオーライ)♪

ボブマーリーのベストを聞くと、
たしかにNo Woman No Cryは、ライブバージョンが入ってます。
彼の名盤でLIVE!というアルバムがありますが、それと同じ音源です。
(Along The Wayの前のハウリングが同じ)

スタジオバージョンは軽いです。
ライブバージョンのほうがあきらかに重厚でカッコイイ。だからベストにもライブバージョンが入ってる。



Live

Live

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Island
  • 発売日: 2001/06/12
  • メディア: CD




(関連記事)
【ボブマーリーの伝記】
http://donhenley.blog.so-net.ne.jp/2009-12-31

【俵万智3・11短歌集あれから/俵万智/12年3月初版】
http://donhenley.blog.so-net.ne.jp/2012-09-11


またね♪





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コメント 6

獏

donさん お早う御座います☆
火花は読んでおりませんが
レノンではなく ましてやジャガーでもなく
ボブ・マーリーだというのは
言い得て妙で 凄く納得しています(^m^)☆
獏のヒーローは・・・誰なんだろう???

by 獏 (2016-03-02 04:13) 

heroherosr

司馬さんの1位はやっぱり竜馬なんですね
まあそうだろうな
小説を読まなくなったので、最近の小説は全然分りません。
by heroherosr (2016-03-02 18:00) 

DEBDYLAN

ボブ・マーリーの名前が出てきて、
なんか読みたくなっちゃいました^^;

by DEBDYLAN (2016-03-03 00:35) 

don

獏さんこんにちは~
ヒーローですか。ウルトラマンとか^^
ウルトラマンは、やっぱりセブンがいいですよね。
子供の頃、紅白ぼうしをアイスラッガーにしてあそんでました。
でも、アイスラッガーがないときのセブンは、ルックスがまぬけになります。
[__犬]
by don (2016-03-03 12:35) 

don

heroherosrさんこんにちは~
ぼくもあんまり小説は読まないのですが、
「火花」は凄い売れたので、いちおう読んだこうかなと。
「読書ブログ」なのに、火花も読んでないなんて、ちょっと言えないかなと^^;
[__犬]

by don (2016-03-03 12:37) 

don

DEBDYLANさんこんにちは~
ボブマーリーのことを考えるといつも、
レッチリのギブイットアウェイのフレーズが頭に浮かんできます。
ボブマーリー・・・♪
ボブマーリー・・・♪
[__犬]
by don (2016-03-03 12:42) 

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