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【フィナンシャルタイムズの実力】要約まとめ [本/Biz経済]


フィナンシャル・タイムズの実力

フィナンシャル・タイムズの実力

  • 作者: 小林 恭子
  • 出版社/メーカー: 洋泉社
  • 発売日: 2016/01/21
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


【フィナンシャルタイムズの実力/小林恭子/16年2月初版】
なるほどねぇ、と納得した一冊。
新聞の未来、メディアの未来、果ては週末ブロガーやSNSで情報発信してる人まで、
いろいろと参考になる本だと思う。

2015年7月の、日経新聞によるフィナンシャルタイムズの買収。
びっくりしましたよね。ちょっと価格が高くない?

・欧州系メディアの株価は通常、営業利益の12倍前後で取引される
・フィナンシャルタイムズ(以下FT)の買収額1600億円は、営業利益の35倍
・アマゾンのジェフベゾスが、ワシントンポスト買収で支払った金額の2倍

今後FTの家賃(ロンドンは賃料が高く、年間40億円)も負担する羽目になるかもしれない。
日経が高額(日経の年間売上とほぼ同じ)でFTを買えたのは、上場企業ではないから。
一般の企業であれば、投資に対するリターンが不明確なため、株主に説明できない。

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フィナンシャルタイムズとは何か?
富裕層向けの新聞です。
FT読者の平均世帯年収は約2900万円。
読者の62%が経営幹部、71%が国際企業に勤務、79%が海外主張に出かける。
英国で一般人がFTを手に取ることはほとんどなく、購読者の大部分が英国外に住んでいる。
世界中の富裕層、エリート層に向けた新聞がFT。

一方の日経を読む人。会社員55%、主婦14%、無職9%、学生6%・・・
個人年収の平均が664万円、世帯年収で924万円。ほかの全国紙より読者年収がはるかに高い。
とはいえFTとは大きな差がある。

日経が得意なのは事実発見、FTの得意は分析&論評。
交流のある日経記者とFT記者のやりとり。
「なんで取材に行かないの?」 by日経記者
「それは通信社の仕事では?」 byFT記者
少なくともFTでは速報ニュースの処理を求められてない。
必要なら通信社電(ロイター通信やAP通信)をつかえば済む。

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フィナンシャルタイムズの課題。
いかに若い層の読者に読んでもらうか?
金融情報の端末市場を牛耳るロイターやブルームバーグがある一方で、
新興メディア「ビジネスインサイダー」や「クオーツ」があり、
紛争現場から生の情報を伝えるメディアも次々と勃興している。
こうした情報の荒波の中で、いかに目を留めて読んでもらえるか。
メディアとしてどんな個性を出してゆくのか?



編集権の独立を維持できるのか?
オリンパス事件を最初に報道したのはFT。日経は無視し、最初の1週間はオリンパスの代弁者だった。
東芝の粉飾決算。日本ではこうした犯罪は犠牲者がいないと考えられるが、
米英では株主の権利が強いため、株主が犠牲になったと考える。
FTは株主の権利に比重を置いた姿勢であり、日経がそうであるかは疑わしい。



FT記者の買収決定時のツイッターでの感想。
わりと牧歌的。記者名は省略。
・1日中ドイツ語の勉強してたのに。(直前までドイツ企業が買収すると報道されていた) 
・きざな同僚が日本語でメールを送ってきたわよ。
・日本語は大学でちょっとやっただけだな。
・日本って完全に僕の大好きな国さ。
・レックスコラムを、今からすぐにアニメで書くよ。
・名刺は両手で受け取るんだよ、みな覚えておくように。
・営業利益の35倍か、これはすごい。尊敬するよ。
・グループの中でFTだけに絞ったら、70倍になるんじゃないか
・人員削減はないのか。
・編集方針に変更はあるのか。
・日本に移動ということもあるのかな。
・オフィスが売却対象になってないということは、どこかほかの場所に移るのかな。



まあ、いろいろと不安ですよね。FTの人たちは。
以下にその他の読書メモを。

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<イギリスの紙の新聞の発行部数推移>
日刊全国紙(イギリス)の発行部数推移は以下。
2005年1200万部、2010年1000万部、2015年684万部。
10年間で510万部の下落。つるべ落とし。




<広告ブロック>
日本ではまだ大きな問題になっていないが、
ネット広告の提示を遮断する「広告ブロック」も悩みの種だ。
世界でこのサービスを使ってる人は1億9800万人ほど。
過去1年で利用者は前年比41%増加した。

米国では2015年6月までの1年間で4500万人が利用し前年比48%増。
英国では1200万人で82%増。
ネット利用者の割合でみると欧米で多い傾向にあるが、日本はまだ2%と低い。




<デジタル参加率の低い日本>
調査対象の12カ国で日本が12位なのは「デジタル参加」。
ニュース記事を、電子メールやSNSを通じてシェアする人はわずか14%。
レポートの日本分析は以下。
・オンライン参加率が低いのは、政治や社会問題を公に語ることを日本人は避けるから。
・日本ではネット上で匿名性を好む。
・デジタル参加者でも、75%がツイッターアカウントで匿名を使っていた。
・匿名は米、英、仏、韓、シンガポールでは31~45%程度。
・日本でフェイスブックが普及しないのは、匿名性が原因。




<FTの不正防止策>
かつては賄賂を受け取って記事を書いたり、癒着などがあった。
現在では、担当分野の株を持つことは禁止されており、
同じ分野を長期的に担当するのではなく、3~4年ごとに交代して癒着を未然に防いでいる。




<ジャーナリズム>
アングロサクソン系のメディアは「何物にも敬意を表しない」
ジャーナリストは「聞いてなんぼ」であり、聞かれる方もそれを認識している。

インタビューは真剣勝負のスポーツの試合のようだ。
ジャーナリストは本音を引き出すために工夫をする。
互いに最後まで言い終わらないうちに話し始めたり、同じ質問を繰り返したり、
相手を遮ったり、答えたくない質問には別のことを語り時間を費やしたり。

15年9月にはロバートデニーロが、「質問が失礼だ」といってBBCのスタジオを途中で出て行った。
15年4月にはロバートダウニーJrも、インタビューを途中でとりやめた。
英ジャーナリストは、ドル箱俳優でも遠慮しない。こんな例はきりがない。

⇒共存共栄、三方よしの精神を尊ぶ日本と、
ケルト人やインディアンを駆逐したアングロサクソンとでは、そもそものメンタルが違う。
東芝にしてもオリンパスにしても、つぶれてしまえば従業員や家族が路頭に迷う。
一緒になって解決策まで考えるのが、日本的ジャーナリズムでしょう。
どっちのジャーナリズムがいいとかの問題じゃなくて、思考のベースとなる民族の歴史が違う。
宗教も文化も食い物も違う。読者である日本人の求めてるジャーナリズムも違う、ということ。
とはいえ、「文春」的なジャーナリズムも求められてますが。




<メーター制を取りやめ、トライアル制を開始>
こつこつと電子版有料購読者を増やしてきたFTだが、
2015年3月からは成功のカギといわれたメーター制をとりやめ、廉価のトライアル制を導入した。
非購読者がFTコムにアクセスすると、1か月のトライアル制を勧められる。
料金は1ポンド(182円)だけ。

メーター制(月に数本の記事が無料)からの移行理由は以下。
読者は多彩なプラットフォームで、様々な記事を断片的に消費している。
読者と特定の媒体が結びつかなくなった。
そこでFTの記事を読むことをいかに習慣にするかが課題になった。
「月に数本が無料で読めるというメーター制では、習慣になりにくい」
「廉価トライアル制を導入してから、毎週新たに1000人以上が有料購読者に転換している」




<英国の階級制度のおおざっぱなくくり>
(上流/アッパークラス)
貴族、紳士階級、土地所有者など、先祖代々の資産を受け継ぎ、国内で最も富裕な層。

(上中流/アッパーミドル)
教育程度の高い家庭出身で自分自身も良い教育を受けた層。
弁護士、医者、軍隊幹部、学者、官僚、株式ブローカーなどで、文化的リーダーシップをとる。

(中中級/ミドルミドル)
上の階級よりは教育程度がやや低いブルジョアジー。
地元企業の経営者、大企業の中間管理職など。

(下中流/ロウワーミドル)
ホワイトカラーに従事するが、大学には行かなかった場合が多い。

(労働者階級/ワーキングクラス)
主としてブルーカラーの職に就き、教育程度はあまり高くない。

ここ数十年で、かつて中流以上が占めていた大学進学が、労働者階級に広がった。
ブルーカラーの両親の子どもが大学に進学し、ホワイトに就くことが珍しくなくなった。
人々の生活水準が上がり、教育程度、職種、富裕度で階級を定義付けることが困難になっている。
ミドル層の幅は、今では大きく広がった。




もし君が上流階級になりたいなら♪
笑って人をころせるようにならないと♪

労働者階級は生まれた時から搾取される♪
宗教やテレビで酔わされながら♪
労働者階級のヒーローになるのは大変さ♪



ジョンレノンでワーキングクラスヒーロー♪
動画探してると、カヴァーしてる人が多かった。デビットボウイ、オジーオズボーン、
マリリンマンソン、グリーンデイ、オールマンブラザース、シンディローパー・・。
みんなが歌いたくなる歌ということか。1970年ジョンの魂から。




大人のロック! 特別編集 ジョン・レノン 魂のサウンド (日経BPムック)

大人のロック! 特別編集 ジョン・レノン 魂のサウンド (日経BPムック)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 日経BP社
  • 発売日: 2010/11/17
  • メディア: 雑誌



(関連記事)
【5年後、メディアは稼げるか/佐々木紀彦/13年8月初版】
http://donhenley.blog.so-net.ne.jp/2013-10-15

【本当のことを伝えない日本の新聞/12年7月初版/マーティンファクラー】
http://donhenley.blog.so-net.ne.jp/2013-02-09


煎茶と玄米茶はどっちが体にいいのかな。朝からずっと調べてます。またね♪





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コメント 6

heroherosr

イギリスでの発行部数は10年で半分になっているんですか
日本はどうなんだろう、まあ減っているのはまちがいありませんが
by heroherosr (2016-03-20 15:24) 

DEBDYLAN

WORKING CLASS HERO。
憧れちゃいます^^;

by DEBDYLAN (2016-03-20 20:58) 

みかん

donさん、おはようございます。

ブロガーにも参考になる・・読んでみたいですね^^
買収時のFT記者のつぶやき、けっこうホッコリしてますね(笑)

>思考のベースとなる民族の歴史が違う。
まことにそうですね~。

民族の文化背景の違い、最近よく感じます。
やはりアングロサクソンの皆さんは主張が強い。

義理妹がドイツ人ですが、ひとくちに「国際結婚」
というけれど色々大変ですね(^^;)
旧東ドイツの方なので。。そう思うと色々腑に落ちます。

煎茶、最近飲まなくなって珈琲ばかりです[__あせあせ]
玄米茶や麦茶、ほうじ茶など、香ばしい系は結構好きで、
たまに飲みます[__猫]
by みかん (2016-03-20 23:10) 

don

heroherosrさんこんばんは~
2005年53百万部⇒2015年44百万部
だそうです。日本は八掛けですね。

日本は宅配システムが大きいです。
イギリスは宅配じゃなくて、みんな駅や店で買うそうです。
日本の雑誌みたいな感覚だと。
宅配だと、宅配料金が大幅に上乗せされるらしい。

新聞配達制度に守られた日本の新聞は、
減り方のスピードがゆっくりです。徐々に衰退。
時間はあるので、今のうちに手を打つべきです。
とはいえ、正直打つ手は思い浮かばないのですが。[__犬]
by don (2016-03-21 21:28) 

don

DEBDYLAN さんこんばんは~
カッコイイ歌ですよね。[__犬]
by don (2016-03-21 21:29) 

don

みかんさんこんばんは~
国際結婚、大変ですかぁ。
ベルリンの壁崩壊後ですよね。ものごころついたのは。
どんな「考え方の相違」があるのか、興味あります。
ま、身内のことは、心のうちにしまっておくのがいいとは思いますが。

いまぼくもコーヒー飲んでます。ワイン2合飲んだ後です。
残り少ないので、明日は帰りにスタバで豆買って帰ろう。
オリジナルブレンドか、ちょっと変わったのか。
どっちにしようかなぁ[__喫茶店]
by don (2016-03-21 21:38) 

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