お岩さんは実話なのか~「円楽の大江戸なんでも番付」より [本/歴史地政]
円楽の大江戸なんでも番付: 江戸の暮らし・文化の謎をオモシロ調査!
- 作者: BS朝日『円楽の大江戸なんでも番付』制作チーム
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2016/01/27
- メディア: 単行本
【円楽の大江戸なんでも番付/BS朝日番組制作チーム/16年2月初版】
円楽というより、楽太郎のほうが通りがいいように思いますが。
格付け大好き日本人。
今にはじまったことではなく、江戸時代人々がこぞって読んだ刷り物があったそうです。
それが「見立て番付」。番付とは相撲の力士の階級をあらわす順位表ですが、
見立て番付は、それにならいあらゆることを東西に分けて格付けした、ランキングの元祖。
BS朝日で放送中の内容を本にしたものです。
グルメ、名所、美人、職人、長者、いろんなランキングがある。
江戸の文化、風俗にどっぷりつかれます。
ちなみに「東海道中膝栗毛」という十返舎一九の作品がありますが、
なぜ膝栗毛というのか、ご存知ですか?
じつは栗毛というのは「栗毛の馬」のこと。
その栗毛の馬を旅の脚とせず、自分の脚を脚とした、つまり徒歩での旅行を表してるとのこと。
へ~、知らなかった。
さらっと読んでボツ本にするつもりでしたが、以下の3つが面白かったのでメモ残しておきます。
・なぜ越後屋
・お岩さんは実話か?
・飛脚屋は儲かった
(広告)
<なぜ越後屋>
三井財閥の源流「越後屋」。初代三井高利が創業。
その呉服部門を分社化したのが三越。三井と越後屋から一字ずつ取ってる。
「越後屋が 見えそうなものと 富士で言い」
店の大きさ、にぎわう客が、遥か富士のてっぺんからもわかりそうという一句です。
江戸の長者番付では、東西の大関より大きく書かれた勧進元(興業の元締め)として記されてます。
越後屋はなぜ繁盛したか?
①店先売り
それまでは屋敷に行って注文を取ったり商品を届けるのが一般的だったが、
お客に来てもらう方法に切り替えた。当時としては画期的な方法。
同時に「現金掛け値なし」を宣伝する。
それまでは盆暮れの年2回のつけ払いが原則。
信用のない一見客は、いくら現金を持っていても買うことができなかった。
また値段を高く設定して、値引き交渉で下げていくのがふつうで、これを掛け値といった。
三井高利はこの常識をくつがえし、最初から安く現金販売することで、
現金さえあれば誰にでも商品を売ることで評判になった。
②マネキン
店の天井から仕立てた実物の呉服を吊るした。
マネキンと同じで仕立て上がりがイメージできた。
当時は反物を買って各自が仕立てるのがふつうで、実際に着られるようになるまで時間がかかった。
越後屋は客の要望があれば、即日仕立てもした。
③布の切れ端販売
庶民はせいぜい2着しか持ってなかった。それもだいたい古着。
新しく買えなくても、新しい生地を少し買って補修したり、おしゃれに縫い付けたりしたい。
流行の生地を安く切り売りしてもらえるのを、江戸の女性は喜んだ。
④アウトレット
傷物や時季外れを値引き販売した。
⑤カリスマ店員
天井から人の名前を書いた札を垂らした。
接客の上手な店員は客の間で評判になった。活躍する店員の横には見習いを必ず2人つけた。
現場研修をさせつつ、チームとして働かせた。
⑥組織
越後屋の従業員は13~14歳で雇われる。
見習い期間を経て、「平手代」という店の表に出る売り子になる。
そして29歳ごろに「上座」になり、「組頭」「支配」と出世し、
はじめて通い勤や妻帯が許される「通勤支配」という重役になる。
このとき平均で40歳を超えていた。
さらに「後見」「名代」と出世すれば、最後は「元締」。
これは三井全体の経営にかかわるゴールといえる重役。
ただし出世するのはほんの一握り。
1742年に採用された35名の出世状況を見ると、
26人が平手代どまり。元締になれたのはたった1人。年によっては元締は出ないこともあったという。
⑦チラシ(引札)やポスター
引札は長屋の隅にまで行きわたるほど配られた。
旅人の手にもわたり、田舎にはないものなので珍しい。
越後屋の名前は全国に知れ渡った。
またチラシの効果測定もしていた。
チラシをまいた翌月から、6割売上が伸びたという記録も残っている。
また鮮やかな錦絵(ポスター)も活用した。
美人モデルや人気力士を有名な絵師に書かせ、
その背景に越後屋のシンボルマーク(丸に井桁三)を入れた。
⑧傘の貸し出し
シンボルマーク入りの傘を貸し出した。
雨ともなれば、江戸の町は越後屋の名が花盛り。
傘には大きく通し番号が書かれていて、1500番まであった。
さすが大店は違うと思わせて、じっさいはそこまでの傘は作っていなかったと。
こうした仕掛けの結果、越後屋は江戸のみならず、
京都、大阪など合わせて9店舗を誇る大企業になった。
⇒「越後屋、おぬしも悪よのう」「お代官さまにはかないません」「ムッフッフッフ」
という慣用句は、べつに越後屋が悪事を働いたからではなく、
あまりにも有名店だったからかと。
(広告)
<お岩さんは実話か?>
実在の人物だけど話は創作。
お岩さんの本名は田宮岩といい、実家の田宮家はいまの新宿区四谷に居を構える幕府の御家人だった。
そんなお岩さんが眠る寺が、豊島区巣鴨の妙行寺。彼女が愛用した櫛と鏡も収めてある。
お岩さんが亡くなったのは1636年2月22日。
東海道四谷怪談が歌舞伎で演じられたのは、その189年もあとになる。
じつはお岩さんは評判の貞女で、怪談にあるような事件とは無縁のまま一生を終えた女性。
田宮家は御家人だったけど夫は稼ぎが少ない。
夫婦そろって奉公に出て懸命に働き、危機を乗り越えた内助の功が評判となった。
お岩さんは幽霊の代名詞ではなく、良き妻の代名詞だった。
なぜ夫婦の美談が恐ろしい怪談話になったのか?
四谷怪談の作者、鶴屋南北は、江戸に転がるあらゆる話を巧みに混ぜ合わせて、
このストーリーを創り上げた。こうしてできあがった「東海道四谷怪談」は、
1825年に日本橋の中村座で初演されるや、歌舞伎史上空前の大当たり。
しかしいつのころからか、役者や関係者が次々とトラブルに見舞われる怪異がおきるように。
⇒いや、これはぼくがお岩さんでも怒りますよ。
私の人生はこんなんちゃう。ええかげんにせえ!って。
<飛脚が儲かった>
江戸長者番付には、「町飛脚屋」「江戸飛脚屋」「京飛脚屋」とある。
米屋や両替屋以上に儲かっていた。
現代なら電話やインターネット、宅配便。
こうした通信情報システムを、江戸時代は1つの職業でまかなっていた。それが飛脚屋。
生みの親は秀吉。
江戸時代に入り、飛脚は飛躍的な成長を遂げる。
北海道から九州までネットワークを整備し、商売の範囲を拡大。
多くの飛脚を抱える飛脚屋は、全国展開の大企業になった。
飛脚は鈴を鳴らし、ぶつからないよう自分の位置を知らせるのがマナー。
江戸の終わりには、至る所で鈴の音が響く忙しさで、元締めである飛脚屋には仕事の依頼が殺到。
飛脚のシステムは「宿駅制度」。
宿場から宿場へ、駅伝のタスキをわたすように荷物を運んだ。
書状の場合、江戸周辺で25文(約225円)。
江戸から京都など遠方の場合は8両(約48万円)と高額だった。
スピードは、江戸-京都間の約500キロの道のりを、普通便で丸4日弱の90時間。
お急ぎ便で82時間、超特急便で60時間で運んだ。
かれらの走りはナンバ走り。荷物が揺れないように、本人に負担がかからないように走った。
遠くにいる彼女から♪
今日こそ手紙がきてるはずさ♪
ぼくは何日も待ったんだ♪
郵便屋さん ちょっと待って♪
行かないで ちゃんと調べて♪
ビートルズでミスター・ポストマン♪ ジョンのざらついた声がいい。
オリジナルはマーヴェレッツのヒット曲。戦地に行った恋人からの手紙を待つ女性の歌。
ビートルズやカーペンターズにカバーされたら、他の人歌いにくい^^
(関連記事)
【居酒屋の誕生~江戸の呑みだおれ文化/飯野亮一/14年8月初版】
http://donhenley.blog.so-net.ne.jp/2015-01-24
【お盛んすぎる江戸の男と女/永井義男/12年10月初版】
http://donhenley.blog.so-net.ne.jp/2012-12-15
【武士の家計簿/磯田道史/2003年初版】
http://donhenley.blog.so-net.ne.jp/2011-03-26
【吉原の落語/渡辺憲司/11年10月初版】+1冊
http://donhenley.blog.so-net.ne.jp/2011-11-20
「阪急電車」読んでます。一話目の宝塚駅面白かった。
こんな出会い、いいなあ~。
またね♪
ミスター・ポストマンって
オリジナルがあるんですか!
てっきりビートルズが作った曲なのだと思っていました^^;
私はどちらかというと、
カーペンターズの方が好きなのですが。
by 青山実花 (2016-05-25 23:37)
今はもう見かけませんが、佐川急便のトラックに書かれている飛脚のイラストもナンバ走りしていましたよ。
by heroherosr (2016-05-26 17:58)
青山実花さんこんにちは~
ぼくも最初はそう思ってました。
ビートルズはオリジナルが多いですから。
いい歌ですよね♪
[__犬]
by don (2016-05-27 12:29)
heroherosrさんこんにちは~
おもわず画像検索してしまいました。
ああ、ありましたね。こんな絵。
手足が同じ側が出るんですよね。
[__犬]
by don (2016-05-27 12:33)
こんばんは。
やっぱり楽太郎ですよね^^。
by DEBDYLAN (2016-05-30 21:05)
こんにちは~
三遊亭でしたっけ[__犬]
by don (2016-05-31 12:26)