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【銀行員は25万人⇒5千人になる】~「世界大激変/長谷川慶太朗」より要約まとめ [本/Biz経済]


世界大激変

世界大激変

  • 作者: 長谷川 慶太郎
  • 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
  • 発売日: 2016/07/29
  • メディア: 単行本


【世界大激変/長谷川慶太朗/16年8月初版】
いつもながら長谷川慶太朗の話はデカイ。
メガバンクの頭取に会ったとか、この話はチェコの財務大臣から聞いたとか。

今回も伊勢志摩サミットの裏話を書いてるのですが、むかしからサミットに縁があるみたい。

1975年にサミットが始まって(米、英、仏、西独、伊、日の6カ国)、
1979年にアジア初のサミットが東京で開かれた。議長は大平総理。
著者は大平総理から相談を受け自宅へ呼ばれた。

「長谷川君、どうしたらいいだろう。首脳のうち面識があるのは2人しかいない。
あとの5人は面識がない、どういう対応をすればいいかね」

「総理、一番大事なことは黙っていることです。
けっして話し相手を探して動き回るようなことをしてはいけません。黙って座ってればいい。
そうすると必ず誰か話しかけてくる。その話しかけられたことに対して答える。
それだけでよい。受け身でいらっしゃるのが一番です」

サミット後すぐに呼ばれ、
「長谷川君、君の言うとおりにやったらうまくいったよ」と喜んでくれた。

「総理」の山口氏みたいなもんでしょうか。

長谷川氏の分析によると、受け身でいても問題がないということは、
当時は国際舞台における日本の存在感は薄かった。日本の首相と特段話をしなくてもよいと。
37年前は日本の地位が低かった。


以下に読書メモを。長谷川本のメモは、いつもながら面白いです。


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<中国のインフラ進出は失敗した>
インドネシアで中国が請け負った高速鉄道が一向に進まない。
契約して6カ月なのにまだ測量が始まらない。

2016年5月の伊勢志摩で、招待されたインドネシア大統領が会場で安倍首相に会って、
「これからは日本中心でやっていきたいから、1200キロのジャワ島高速鉄道を日本にお願いしたい」
と頼んできた。

安倍総理は「わかった。中国は入ってこないのだね」と念を押して承諾したという。
おそらく中国が日本から奪い取ったはずのインドネシア新幹線計画は、事実上キャンセルになる。
結局日本が引き受けることになる。




<オバマの広島訪問は7年越しの交渉>
第一次安倍内閣で洞爺湖サミット準備にあたっていた2008年から要請していた。
ブッシュの時は実現しなかったが、なぜ今回実現したのか?
大統領だけでなく、国務省も現職大統領の広島訪問を快諾した。
端的にいえば、日本という国の力がそれだけ大きくなったから。




<サミット大改革>
伊勢志摩サミットで、安倍首相主導のもとで大改革が行われた。
最大のポイントは「G7がアメリカの国際的な役割の一部を分担する」という。
これまではアメリカ主導で取り決めていたことを、今回のサミットからG7が話し合って、
将来路線を決めていくという方針を提言し実行したのだ。

具体的には行政分野を10項目に分け、各分野で担当大臣が出席する事前会合を日本で行い、
責任者がきちんとその分野の方向性を決定するシステムに改めた。
アメリカはその提言に抵抗せず、むしろ歓迎の意向を示した。
自らの負担が軽くなるからである。

欧州からも反対の声は出なかった。
いくら議長国でも、日本がリーダーシップをとるのは正直よい気はしないだろう。
もともとサミットは、社交の場として欧州からの発案で始まったものであるし。

なぜ異議を唱えなかったのか?自国経済の状況が悪いから。
万一金融危機が生じて銀行倒産が起きれば、日本に相当の支援を求めざるを得ない。
長期資金に余裕があるのは日本だけなのだ(詳細は本書で)。

欧州は当初中国に同じことを期待した。
何か事が起これば、AIIBが長期資金の出し手になってくれると。
それゆえ何度も欧州首脳は中国詣でを行っている。
メルケルは4度も、キャメロンもオランドも。しかし期待は外れた。
中国経済の実態はボロボロだった。

サミット直前の熊本地震も日本の評価を高めた。
大惨事が起こっても、暴動略奪が起きない。再度世界は日本の実情を目の当たりにした。
世界の常識で考えられないのは、自衛隊が全員丸腰で救助支援に出動した点。
日本では当たり前だが、軍が非武装で出動というのはありえない。
このようなニュースや映像に接して世界中の人が一番強く感じるのは、
日本は信用できる国ということである。




<デフレ体質への転換に成功した日本>
世界はこれから日本のような長期デフレに陥る。
欧州でなぜ金融危機が起きるかというと、経済がデフレへ転換したからである。
日本は1990年代から始まった「失われた20年」で、完全にデフレ体質に転換することができた。
ムダ肉をそぎ落し強靭な経営体質へと転換をはかることである。それを日本の銀行はなしとげた。

都市銀行はバブルまで11行あったが、現在は3行になった。
著者がメガバンクCEOから聞いた話では、あるメガバンクは新宿駅周辺に11もの支店があったが、
現在では2つに整理統合したという。一等地にあったあった不動産の多くを更地にして売却した。
また20年間の間に給与も大幅に減った。




<長期資金に余裕があるのは日本だけ>
現在世界の金融界で日本だけが長期資金に余裕がある。
3大メガバンクは、アメリカを中心とする海外大企業の有望な融資先を多く持っている。

豊富な長期資金に対する世界からの需要は高まり、大規模インフラ整備、
シッピングローン、エアプレーンローンといった造船や航空機製造の資金提供も、
日本の独壇場になりつつある。

中国の造船業は壊滅した。なぜかというと長期のシッピングローンが組めなかったから。
中国の金融機関にはその余裕がない。いま中国金融のカネづまり、信用不安は相当に厳しい。
日本のようにすぐに長期資金を出せる金融機関が存在しない。




<中国のゾンビ企業>
現在中国には16万社の国有企業があるが、多くがゾンビ企業になっている。
余剰人員は600万人といわれている。これをリストラしたとすれば、関連する企業で、
さらに多くの人々が失業してしまう。リストラは容易に行えない。

また中国企業は最後は党幹部につながっている。
多くの場合企業を潰すということは、党幹部をつぶすということにほかならない。
したがって中国の場合、経済合理的な改革などできない。経済改革は即、権力闘争へ発展してしまう。
習近平が党内融和を望めば、ゾンビ企業も温存される。




<中国の深刻な資金逃避>
資金逃避で日本国債の爆買いが進み、人民元がどんどん国内から逃げている。
中国社会の末期症状的な危機感は、日本への八つ当たりという形となった。
16年4月の岸田外相と王毅外相の会談で、日本に対する要求の三項目に、
「日本国内で盛んに反中国、中国崩壊論が流布されていることに関し、それを取り締まれ」
事もあろうに他国の言論の自由にまで踏み込んでいる。要するに完全に切羽詰まっている。
そのような言論があるから、日本企業が中国へ投資しないのだと本気で思っているのだ。




<アメリカの繁栄は続く>
アメリカ経済は好調で長期的に安定する。
デフレ社会に適応している。アメリカの経営者は革新的で経営者の交代が容易に進められる。
シェールガス革命も大きい。

先進国で唯一人口が増えている。
年間300万人増えていて、自然増で200万人、移民で100万人増えている。
これは大きな活力となる。社会インフラの整備はまだまだ必要になる。
地下鉄の延伸工事も至る所で行われている。NYの地下鉄は約6200両。
ちなみに東京の地下鉄車両数は約4000両。




<北朝鮮問題>
著者が得た情報では、金正恩がどうしても国際社会の勧告を受け入れない場合、
中国が人民軍を北朝鮮内に侵攻させ、政権を打倒したうえで、
自らコントロールできる傀儡政権を打ち立てる、という方針で米中は合意に達したと。

アメリカは基本的には黙認という形で、人民軍の北朝鮮侵攻を認めるが、
金政権を倒した後は、早期撤退という条件を付けたという。

じつは中国は北朝鮮をほとんどコントロールできていない。
これまで北京とのパイプ役を果たしてきた北朝鮮高官はみな、金正恩の手で粛清された。
そのような状況で核開発がすすみ、金正恩の権力が絶対的なものになっていけば、
その矛先がいつ自分たちに向かってくるかわからない。


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<世界的デフレの流れは止まらない>
デフレが進行するのはなぜか?
最大の理由は、もはや国家総力戦のような大戦争が起こらないからである。
どんなに金融緩和をしても、供給過剰が続く限り物価は上がらない。
大戦争のような巨大な消費があって初めて物価は上昇する。
アメリカの圧倒的優位の下で大戦争が起こりえないとなれば、インフレになどなるはずがない。




<マイナス金利の大激震>
収益の大部分を国債運用で賄ってきた多くの金融機関は、苦しくなっている。
国債依存率はメガバンクより地銀のほうが高い。
それよりさらに厳しいのは生保である。銀行より国債依存度がさらに高いから。
このままいくと運用益を出せる対象がなくなってしまう。

生保は日本生命をはじめとして相互会社で上場していない。
相互会社は資金調達やM&Aにおいて不利である。今後は第一生命のように株式会社にせざるをえない。

金融マンは保守的であるから、尻に火がついて動き出すのは来年であろう。
来年になったら、バタバタと地銀の統合、第二地銀の統合、生保の株式会社化が急速に進行する。

さらに厳しいのは農協。資産運用の大部分を国債に依存している。
農協は現在日本最大の地主。土地を担保にカネを借り、跡取りがいなくて担保流れで農協の所有になる。

農協が所有し、無耕作のまま放置されている土地は、岡山県一県分に相当すると言われているが、
もっと多いのではないか。これがわかると一気に批判されてしまう。
誰か意欲のある法人に管理運営を任せればよいのに、なぜ無駄に放置しているのかと。

放棄地の有効利用は、農地保護法の改正と同時に、農地行政を変えないといけない。
安倍首相はその方向で改革を進めようとしている。それに黒田ショックが拍車をかけている。




<銀行員を激減させるFT技術の進化>
FT技術の飛躍は素晴らしい。ソニー銀行は窓口がない。それがこれからの日本の銀行の姿である。
大銀行も新規採用を控えている。採用しても仕事に慣れるころには、多くの仕事場がなくなるからである。

決済革命は急ピッチで進む。
腕時計型のウェアラブル端末で、送金決済ができる。ATMへ行く必要がなくなる。
ATMが不要になれば、銀行の支店も要らなくなる。

銀行員は現在全国で25万人ほどであるが、おそらく今後は5000人前後となる。
近い将来、AIの活用で、トレーダーですら要らなくなるといわれている。
問題はリスクをどこまで計算に入れるかなどの判別である。これは人間でないと難しい。
その判断を行う人間は、5000人もいれば十分である。日本全国の銀行すべてで5000人である。
余った人間はサービス産業など、新たな市場へと転換しなければならない。




<自動車業界の未来>
自動車業界も世界的に見れば大飽和状態である。
中国が5000万台つくる能力があるといわれているが、現時点でじっさいに動いているのは、
1000万台程度に過ぎない。それでも世界的には供給過剰で、製品が余って仕方がない。

したがって再編ないし淘汰が進行せざるを得ない。結果的には上位4社しか残らない。
トヨタ、GM、フォード、それにもう1社。もう1社の座をめぐって熾烈な争いが行われる。
日産が三菱を傘下に置き、顔を出した。

VWの可能性は消えた。欧州メーカーの可能性はほとんどない。
ホンダも最後の1社に残るのは難しく、最終的にはトヨタと一緒になるとの観測もある。




<センサー事業が新たな製造業の柱になる>
センサー事業は右肩上がりで、2020年には約6兆円にまで市場が拡大することが予想されている。
現在のおよそ3倍の規模である。6兆円市場のうち4割以上を日本企業が握るのではないかと予想されている。




<EU解体で国境線の見直し>
東プロセイン地方は500年前からドイツ人が生活していた。
第二次大戦に敗れ、東プロセインの北半分はロシア領に、南半分はポーランド領とされた。
この地を追われたドイツ人は1500万人、強制移住の過程で300万人が死亡した。
これは一例に過ぎないが、戦後処理で連合国(=国連)の力で強引に国境を定めていった。
不満は至るところでくすぶっている。


東プロセイン旧ドイツ領.gif


チェコはEUに加盟しているが共通通貨のユーロに加盟していない。
加盟したくてもできないのだ。著者は当時チェコの財務大臣と面会時に、
「残念ながらユーロへの加盟は難しいでしょう」と聞いている。

戦後チェコは、ドイツ人が多く暮らしていたズデーテン地方を自国領とした。
その過程で400万人のドイツ人を強制移住させた。そのさい略奪や虐殺が相次いだが、
チェコ政府はチェコ人が犯した犯罪は罪に問わない、と宣言したのだ。
このことはいまなお両国間に影を落としている。ドイツ人はチェコを許していない。

独仏間のアルザスロレーヌ地方も同様である(以下略)。




<イギリス解体>
大英帝国は今後どうなるか?
連合王国は解体に向かう。スコットランドは独立しEUに加盟する。
スコットランドの一番の売りはスコッチ・ウイスキーである。
EUという大きなマーケットを捨てるわけにはいかない。

ウェールズ、北アイルランドもいずれ独立し、最終的にはイギリスはブリテン島の一部だけとなる。
これは歴史の宿命。
かつてスペインやポルトガルが世界に君臨したが、すべてを失って小国となっている。
英国も同じような道を歩む。




U2でブラディ・サンデー♪ 
あまりにも有名な歌なので歌詞も割愛しました^^
アイルランドでは今後、この歌を歌わなくてよくなるかも。



このアルバムでU2はブレイクしました。

War

War

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Island
  • 発売日: 2008/07/22
  • メディア: CD





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【総理/山口敬之/16年6月初版】
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またね♪

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獏

donさん こんばんは^^)
先日この世からなくなってしまう職業~という記事を読んで
息子たちにも送りました(^m^)
確かに単一のサービスや商品で食べている業種は
厳しいかもですねー☆

by 獏 (2016-11-04 19:02) 

don

獏さんこんにちは~
こればっかりは結果論ですしね。
今よくても、明日は我が身かもしれないですし。
息子らにも、生き抜いてほしいですね[__犬]
by don (2016-11-05 12:04) 

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