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【桜風堂ものがたり/村山早紀】の書評と、本屋はどうすればいいのか? [本/文学芸術]


桜風堂ものがたり

桜風堂ものがたり

  • 作者: 村山 早紀
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2016/09/21
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


【桜風堂物語/村山早紀/16年10月初版】
2017年本屋大賞5位の作品。
犯罪系なんかの重いのは読みたくないので、今年はベスト10のうち7冊読みます。
今回は6冊目。とってもいい本でした。本好きには興味深い内容です。


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中堅の本屋さん。その書店員の物語です。
駅前の古い百貨店、その6階にある銀河堂。
百貨店も斜陽やし本屋さんも斜陽。だけど懸命にがんばって本好きな人たちが書店を支えてる。

ある日、中学生の万引き事件が起きる。
7年前の調査で、全国の書店の万引き被害額は年間2百億円。儲からない本屋の利益はふっとぶ。
主人公の月原は万引きした中学生を追いかける。中学生は目の前で車にはねられる。

中学生はいじめで万引きさせられていた。
本屋と主人公はネットから攻撃を受ける。中学生を万引きごときで追い詰めるなと。
嫌がらせは百貨店まで及ぶ。責任をとり月原は辞職する。
もちろん心優しい本屋の人たちは引き留めたが・・

本が子どもの頃から大好きな月原は、書店員としてしか生きていけない。
深く傷ついた月原をなぐさめたのは、ブログの世界。
彼は書評サイトを運営していた。

月原は書評サイトを見ることが好きだった。
自身も身元を隠して、書評ブログを長く続けていた。
ブログを通して交流していた小さな本屋さん、桜風堂のブログ更新が止まっている。
心温まる、素晴らしい書評をかくブログ。

月原はネット上だけの交流を好むタイプのブログ主だった。オフ会なんかには参加しない。
自分がブログで交流する人の前に姿をさらすことに、ためらいがあった。

リアルに会うとさまざまな面倒がある。自分の領域に入ってこられることへの不安もある。
ネットの世界では対面ではない気安さもあって、リアルでは口にしないような心情も吐露できる。

月原は意を決して旅に出た。桜風堂のブログ主に会いに。
会ってみるとブログ主は病に倒れていた。わけあって引き取った小学生の孫も途方に暮れている。
幼いころ事故で親兄弟をなくした月原は思う。

なんとかしてその子と、ブログ主の力になれないのか。

ここまでで全382ページの約半分。
このあと、物語は大きく展開して伏線を回収していきます。
とくにラストの面白さはすばらしい。
残りが10分の1ぐらいになってるのに、読み終わりたくない。
もっともっとこの本を読んでいたい。つよく思いました。

嫌な登場人物がいないんですよ。
主人公や周りにいる人たちは、けっこう薄幸で悲しい過去の人が多い。
だからこそ人の痛みがわかり、なんとかして人の力になろうとする優しいひとばかり。

読んでるとなんか、やさしい前向きな涙がこぼれます。

著者は、どんどんつぶれていく本屋さんを応援しようと、この本を書いたそうです。

そうなんですよね・・
本屋さんがどんどんなくなっていく。
ぼくなんか本屋と図書館しか行くとこないので、なくなると困るんです。

ほんとは近所の本屋でどんどん本を買って応援したいけど、
狭い家にはこれ以上本を置くスペースはないし、小遣いもないし。

本屋さんがどうなっているか、こんご本屋はどうしたらいいか、以下に考えてみました。


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書店数の推移、出版売上推移など本の現状


まず書店数の推移です。

書店数推移.jpg


続いて出版売上推移(紙)です。。

本の売上推移.png


2つを見比べます。
--------------------------------------
       書店数   売上高
2000年 21千店  2.4兆円 
2005年 18千店  2.2兆円
2010年 15千店  1.8兆円
2016年 13千店  1.4兆円
--------------------------------------


書店数も売上もほぼ6割弱。比例して減少してます。
ちなみに電子書籍は2016年で約2000億円の売上。コミックが7割を占める。
2千億÷1.6兆=13%が2016年の電子書籍の売上です。

アマゾンや楽天などのネット経由での本の販売比率は2016年で10.6%。
2016年販売ルート内訳概数は以下。
書店63%、コンビニ11%、ネット11%、出版&取次直販15%。

2009年販売ルート内訳概数は以下。
書店65%、コンビニ15%、ネット5%、出版&取次直販15%。

ネットの売上は2016年で、1.4兆円x11%=1500億円ぐらいでしょうか。
2009年にアマゾン&楽天の本売上が1500億円とのデータがあります。
計算が少し合わない気もしますが。

紙の本の売上が2割も減少するなか、ネットはシェアを増やして売上を維持しています。
2010年代に登場した電子書籍を加えれば、たぶん増えている。
そのぶん街の本屋が割を食ってるという。





なぜ本は売れなくなったのか?


新しい趣味を始めるとき、むかしは本屋でハウツー本を買ってました。
いまはインターネットでググります。ハウツー本じゃなくてネット情報ですましてる。

病気とかで不安になったとき、むかしは関連する本を買ってました。
今は検索して悩みを解決しています。

ファッション情報、グルメ情報、むかしは雑誌でした。
これも検索でことたりる。

読んでる活字の量は、あきらかに昔より増えています。
それが本からネットに移ったという事が大きいのでしょう。

要はしらべものが、ネットでことたりるようになった。
それから利便性の高いアマゾンからの購入が増えた。これが本屋が減った主因です。

電子書籍について。
キンドルは数年前に買いましたが、ほとんど使ってません。
ワンピースをキンドルで読みますが、めっちゃ読みにくい。
ほんとはマンガは紙の本で買いたいんだけど、もう置く場所がないんです。
スペースの問題で電子書籍にしています。だけどめっちゃ読みにくい。
ぼくのなかでは電子書籍はオワコンになってしまった。本はやっぱ紙に軍配。
電子は保管だけメリットがあります。




今後本屋はどうすればいいのか?


みなさんは、本屋さんや図書館は好きですか?
ぼくは大好きです。そこにいる人たちも、やさしそうな人が多い。

なんとか街の本屋に生き残ってほしい。

どうすればいいのか?

けっきょくメリットのある場所にしないといけないという。
人は利のある方に流れます。


①楽しい場所にする。
いけば楽しい。どうすれば楽しいか地域によって違うとおもう。



②行けば利のある場所にする。
どこかの企業が協賛して、本屋に行くとポイントが付くようにする。
そうすると本屋に人が集まる。マクドとかミスドとか、そういう洒落た事しないかなぁ。
消えゆく本屋、文化の守り人になった企業はイメージがアップする。
ぜんぜんちがう業界のトヨタなんか、広告費に年間5000億円使うのなら、
こういうところに投資してほしい。



③図書館との協業
まず各市町村の図書館は、予約サイトを共通化する。
全国共通図書館サイト。初期費用は国が出す。統一プラットフォームにする。

新刊の人気本、150人待ちとかじゃないですか。1年ぐらい待たされるんですよ。
読みたい人には地元の本屋が安く売る。地元の本屋と図書館との協業です。

費用はシステム統合によるリストラ費用から捻出。
早く読みたい人用に、シェア本(レンタル)にするか、個人本にするか、それで値段は変える。

今までなかったマーケット。新市場の創出です。
だいたい本の直接費は1400円3万部で14%だそうです。7%が紙代で7%が印刷製本代。
200円ぐらいが直接原価。価格政策ほか4Pはじっくり考えて。装丁もライトにするとか。



④街の本屋さん統一サイトをつくる。
もうアマゾンとかには個々の本屋は立ち向かえません。
合併は無理でも、ゆるやかな合弁とか提携しないと。
統一サイトで買うと、少し安くする。家への配達でなくて近所の本屋に取りに行く。
本を安くする補てんは、国の補助でいいじゃないですか。
コメ守るみたいに、日本語文化を、書店を守ろうよ。みんなで。

アマゾンなんか税金納めてないじゃないですか。日本へは定額の業務委託やゆうて。
その取りっぱぐれてるぶんと、本屋への補てんがバランスする額を補助とする。

アマゾン日本の売上2016年で年間1.1兆円。たぶん本が1500億円ぐらい。
経常5%として100億円弱は利益が出る。税率30%として30億円か。。

う~んちょっと足りない(笑)
30億は統一サイト合弁会社の運営費とする。
本を安くするのは、国の外資から保護名目の逆関税としての補助。
出版社もトータルで売上(利益)増えるなら、安くするのに協力してほしいなあ。



⑤紙の本のリサイクルを出版&本屋連合でやる。
電子書籍は読みにくい。でも本を買うと置く場所がない。
これの解決策はないのか。それを街の本屋が提供する。
たとえば月額制読み放題とからめる。月1千円で読み放題。
読み終わったらキレイな状態で返す。次の人がそれを読む。
出版に返本されるなら、読み放題リサイクルしたほうがいい。
返本率って30~40%もあるそうです。
ビッグデータ駆使したら上手くやれそうな気もするけど。





アレサフランクリンで、エイプリルフール♪
本のなかの架空本、月原が奔走して売ろうとしたのが「4月の魚(エイプリルフール)」。
アレサは洋楽ファンにはおなじみのシンガーです。
米音楽誌Rolling Stoneが史上最高のシンガー100人をランキング。1位がアレサでした。
このランキングは音楽ジャーナリスト、アーティスト、レコード会社やマネージメント会社重役など、
音楽業界関係者179人にシンガーのトップ20をそれぞれ選出してもらい、その結果を集計したもの。
2位レイ・チャールズ、3位エルヴィス・プレスリー、4位サム・クック、5位ジョン・レノン。




アレサの名盤貼ろうかとおもいましたが、こっちにします。著者があとがきに書いてました。
本書をかくきっかけとなった本、どうやったらこの店長が泣かない世界になるのだろうと。
『本屋の日常は過酷な闘いの連続だ。繰り返される万引き、達成不可能なノルマ、
限界を超えた作業量。何より給料が安く、満足に休みも取れない』

傷だらけの店長: 街の本屋24時 (新潮文庫)

傷だらけの店長: 街の本屋24時 (新潮文庫)

  • 作者: 伊達 雅彦
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2013/08/28
  • メディア: 文庫





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