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本/文学芸術 記事一覧
2014年09月30日:  現代の海運・造船と「村上海賊の娘/和田竜」
2014年05月24日:  ピアノの森24巻/一色まこと
2014年03月04日:  スナックちどり/よしもとばなな
2014年02月18日:  恋しくて/村上春樹編訳
2014年02月04日:  きみはダイジョブ?/石田衣良
2013年10月29日:  海賊とよばれた男・上/百田尚樹
2013年10月02日:  「舟を編む/三浦しをん」の感想
2013年09月28日:  「ハートカクテル イレブン/わたせせいぞう」の感想
2013年05月25日:  「フィフティ・シェイズ・ダーカー/ELジェイムズ」の感想
2013年05月18日:  色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年/村上春樹
2013年04月23日:  ギリシアから来たソフィア/三橋貴明&さかき蓮
2013年01月19日:  【あらすじと結末】フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ / ELジェイムズ
2012年10月20日:  「真冬の向日葵/三橋貴明」要約まとめ
2012年09月15日:  「サラダ好きのライオン/村上春樹」の感想
2012年08月07日:  「清須会議/三谷幸喜」の感想
2012年06月05日:  「永遠のゼロ/百田尚樹」の感想
2012年05月05日:  「コレキヨの恋文/三橋貴明」の感想
2012年05月01日:  「苦役列車/西村賢太」の感想
2012年04月14日:  「野蛮人の図書室/佐藤優」要約まとめ
2012年03月13日:  なぜ印象派は売れたのか?「印象派で近代を読む」より

現代の海運・造船と「村上海賊の娘/和田竜」 [本/文学芸術]



村上海賊の娘 上巻

村上海賊の娘 上巻

  • 作者: 和田 竜
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2013/10/22
  • メディア: 単行本


【村上海賊の娘/和田竜/2013年10月初版】
これ、寝る前に読まないほうがいいです。止まらないので寝不足になります。上巻474p下巻499p。1時間に80pぐらいで読むと、合計12時間です。1pに書かれてる分量は半分から3分の2ほどなので、わりとスピーディに読めます。

それにしても本屋大賞は面白い。ここ3年は楽しみに読んでます。ただ毎年4月に発表されますが図書館の予約がすごい。半年待たされました(図書館の粋な計らいで上下巻セットでまわってきた)。


村上水軍と言えば、むかし因島の取引先を担当してたことがあって、数か月に一度は因島に通ってました。三原から高速船で30分ぐらい。船内には瀬戸の花嫁が流れ、島々は風光明媚です。行くと取引先の人と一緒によく飲みました。魚は最高に美味いし、島の人々は義理人情に厚く、みんな朗らかでやさしい。あの人たちに不義理したらあかんなぁと、社内でもよく言ってました。

島の人たちがよく言ってたのは、因島は美人が多い。海賊がいろんな所から美女を奪ってきたので、その血が混じって美女ばかりになった。東ちずるを見てみいと。たしかに飲み屋の娘さんも美人やったし、美人だらけだったような気もします。思い出が美化されてるのかもしれませんが^^

思い出と言えば、泊まると通ってた船員バーがありました。造船の島で修繕ドックもあったので、最盛期には世界の船員がたくさん来てたらしい。和風の店が多いので、パブのような船員バーはいつも大入りだったそうです。店には世界の船社グッズがおいてありました。

何回か通ったときに、当時世界最大の船社だったMAERSKのキャップをめざとく見つけて、「これ欲しいなぁ」というと、気前よく譲ってもらいました。なんでもそこのバーの奥さんは、デンマーク/コペンのMAERSK本社にも招待されたことがあるそうで、船員がいつもお世話になってるからと、すごい歓待をうけたそうです。

書きながらどっかにキャップがあったなと、ごそごそ探してみました。

DSC_0427.JPG

懐かしい。。

ご存知の方も多いと思いますが、瀬戸内は海運と造船が盛んです。とくに瀬戸内の一杯船主はギリシャ船主と並んで世界の船価を動かしています。

造船の方はどうでしょうか。2014年の竣工量ベースは以下の状況です。


(日本の造船ランキング)
1.今治造船グループ 2,998,370トン
2.ジャパンマリンユナイテッド 2,616,446トン
3.大島造船所 1,295,272トン
4.名村造船所グループ 1,168,178トン
5.常石造船 731,264トン
6.新来島どっくグループ 692,351トン
7.三井造船 635,844トン
8.川崎重工業 562,449トン
9.三菱重工業 459,763トン
10.佐世保重工業 342,127トン

これを見てあることに気づかれた人は、相当にディープです。

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結局、村上水軍vs大阪方になっています。まず大阪方ですが、3位と4位の造船所は、サノヤスを加えて川筋三社と呼ばれてました。大阪の木津川沿いにかつて造船所があったからです。1位、5位、6位はもろに村上水軍勢力圏です。ちなみに2位は住重、IHI、日造、NKKの造船部門合併会社です。日立は川筋系で、IHIは呉や播磨をメインと考えれば、瀬戸内系でしょう。

彼ら水軍の魂は、時を超え、舞台を世界に変えて今でも競い合っています。ある意味、凄い事ですよね。


動画の下に内容に触れます。小説は予備知識なしで読むほうがいいので、読まれる予定の方はスルーを。
STYXでカム・セイル・アウェイ♪ さあ一緒に船出しよう♪


小説の舞台は、信長の大阪本願寺攻め(石山合戦)です。信長は腐敗した仏教勢力とぶつかってました。大阪本願寺、比叡山延暦寺、高野山。このうち要所にあった大阪本願寺、比叡山延暦寺は優先順位が高くて攻めている。本能寺の変がなければ高野山もいってたでしょう。

で、大阪本願寺攻め。本書では天王寺合戦から第一次木津川口海戦までを描いてます。
天王寺合戦wiki
第一次木津川口海戦wiki


歴史小説といえば、司馬さん以外はあんまり読んでないのですが、司馬さんは長いのが多い。大河小説です。わりと史実に近い。対して、こういう一点を切り取った歴史ものは、まだ余地が残されてるのかもしれません。大きな流れの史実は変えられないけど、細かく切り取るとファンタジーを書ける部分が多い。

本作では村上武吉の娘「村上景」が、石山合戦で獅子奮迅の働きをしたことになってる。ネットで調べてみると、もちろんそんな史実はありません。フィクションです。



この本を面白くしてるのは、「美の基準の違い」です。ヒロインの景は、嫁の貰い手のない悍婦(かんぷ=じゃじゃ馬女)で醜女(しこめ)です。ただし醜女とはいっても、ハーフのような顔立ちで、当時の美の基準からみると醜女であると。
瀬戸内では醜女かもしれないけど、南蛮人を見慣れた商都・堺では「えっらい べっぴん」と言われる。

それから海戦も面白い。詳しくは書きませんが、そんな戦法が木津川海戦で取られたのかと、3回ぐらい唸りました。冒険活劇には戦闘シーンがつきものですが、絶体絶命のときに「なるほど、その手があったか」と思わせれば、作者の勝ちです。

これだけ面白い作品だと、映画化するのは目に見えてますが、誰が村上景を演じるのか楽しみです。特に景と張り合う琴姫との、美の対比が鮮明であってほしい。景は当時の醜女「高い鼻、大きい目、長い首と手足、小さい頭」で、琴姫は当時の美人とされる「顔はのっぺり、目は細い、おちょぼ口、色白で太り気味」です。




さあ海を渡ってチャールストン湾に行こう♪
(黒人奴隷の受入れ湾)
アメリカにはジャングルもないし♪
食べ物にも不自由しない♪
トラもライオンも毒蛇もいない♪
楽しいところさ♪
さあ、アメリカへ向かって航海しよう♪

ランディ・ニューマンでセイル・アウェイ♪





(本屋大賞関連記事)
【海賊とよばれた男・上/百田尚樹/12年7月初版】
http://donhenley.blog.so-net.ne.jp/2013-10-29

【舟を編む/三浦しをん/11年9月初版】
http://donhenley.blog.so-net.ne.jp/2013-10-02

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ピアノの森24巻/一色まこと [本/文学芸術]


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【ピアノの森24巻限定版/一色まこと/14年5月23日初版】
マンガって何度も読み返しちゃうんですよね。面白いマンガはとくに。今回も昨日から3回以上読み返してます。アホやなぁ^^

マンガに救われた人生です。20代、30代はハードな人生でした。とにかく自分の時間がない。30代はきつかった。子育て、老親の介護、仕事は毎晩深夜帰宅。奥さんはいつも怒ってる。すべてが自分の小さな肩に乗っかってきました。つらくて何か癒しが欲しい。

本を読んだり映画を見たりゲームをしたりするのは、パワーがいります。まとめて時間を確保しないといけない。その点マンガは読むのにパワーはいらないし、時間も細切れでOKです。娯楽の帝王。キングオブレジャー。究極の癒し。誰にも気を使わなくていいし。

仕事やら自分の人生は思い通りにならなくても、マンガの世界は胸のすくことばかりです。サラリーマン金太郎なんか、でっかい仕事をバンバン決めちゃうしモテモテだし。読んでる間は自分が達成したような気になったりして。マンガの世界で自己実現。ていうか逃避ですね^^

10年ほどマンガを毎週8~10冊読んでました。幹線道路沿いにマンガ10万冊、1冊30円レンタルの店があって、週末になると通ってました。図書館でも本を毎週数冊借りてましたが、マンガと本が並んでるとどうしてもマンガのほうを読んでしまうのが人情というもの^^

そんなわけで、その10年間だけでも4000冊ほどのコミックを読んじゃいました。そんだけ読むといっぱしのマンガ評論家になってしまいます。あのときにコミック紹介系のブログでもやってたらよかった。何のメモも残してないので、何を読んで自分がその時どう感じたか、きれいさっぱり抜けてます。

自称マンガ評論家の僕が、今でも唯一自分でわざわざ購入してるのは、ワンピースとピアノの森だけです。この2作品は鉄板です。

(限定版に付属してるCD。クリックで拡大)
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4年前にピアノの森について書いてたので、再掲を。

『ピアノの森を読まれたことがない方に、簡単なご紹介を。

「森の端」と呼ばれる風俗街の、娼婦の息子に生まれたカイ。ひとが蔑むこの街から、足抜けできない状況の中で、母子ともに明るく生きていきます。(ブルージーやなあ)

そんなカイは、森にすてられたピアノがたったひとつのおもちゃでした。カイの子供から青年への成長を描いた作品です。

小学校編もおもしろいのですが、その後様々な人との出会いにも恵まれて、いま19巻では、ショパンコンクールの2次予選の舞台に立っています。かれは12人のファイナリストに残れるのでしょうか。。

このピアノの森は不定期連載なので、次巻がでるのに1年ほど待つ時もあります。今回ははやくて4ヶ月でした。

ピアノの森の作中の演奏を読みながら、アルゲリッチやポリーニやルービンシュタイン、アシュケナージ、ホロビッツなんかの演奏をあわせて聴いてると、なんだか幸せを感じます。

フィクションを読む場合、僕の場合は、小説よりマンガに優位性を感じます。

その世界に入るのに、小説は時間がかかりますが、マンガは一瞬で入れるからです。

同じようなスタイルのマンガ(日本人が世界に挑むまでの道のりを描く)では、

・バイクレースGP500を舞台にしたしげの秀一「バリバリ伝説」


バリバリ伝説 全20巻完結 (スペシャル版) (KCスペシャル) [マーケットプレイス コミックセット]






・ゴルフのセントアンドリュースで二クラウスと死闘を演じるちばてつや「あした天気になれ」

あした天気になあれ-アシスタントプロトーナメント編- 全6巻完結(文庫版)(ホーム社漫画文庫) [マーケットプレイス コミックセット]







・テニスのウインブルドンセンターコートの感動のラストがこころに残る浦沢直樹の「HAPPY」
(YAWARAより、つよく惹かれる部分がある)


Happy!全15巻完結(完全版)(Big comics special) [マーケットプレイス コミックセット]








・世界的なロックバンドに成長するハロルド作石「BECK」


BECK 全34巻完結セット (KCデラックス)





なんかが、名作としてこころに残っています。 』




(限定版に付属してるCD。クリックで拡大)
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このマンガの唯一の難点は、ハンターハンター並に寡作だと言うこと。手元のマンガを見てみると、
21巻:11年11月初版
22巻:12年8月初版
23巻:13年5月初版
24巻:14年5月23日初版

まあ見事に1年1冊です。だからずっといつ出るか検索する必要がある。

本作はいよいよ集大成。ショパンコンクールのファイナリストとして、カイが演奏します。まるまる一冊カイの演奏です。他の演者なんかを読んでる時は、じらされてるんですよ。はやくカイの演奏が読みたい。なんせ4年も待たされた。長かった~。

釈迦に説法ですがショパンコンクールは5年に一度です。しかも1位なしがある。85年にブーニンが1位で、90、95年は1位なしです。2000年にユンディリが1位になったときはすごいインパクトがあった。

ショパンファンには申し訳ないのですが、ショパンのピアノコンチェルトってあんまりいい曲だと思わなかった。個人的な好みはミーハーなので、ラフマニノフ#2(アシュケナージの演奏が好き)とか、モーツアルト#20(ぱぱゼルキンの演奏が好き)がいいと思ってる。コンチェルトだけラフマニノフとかにして欲しい。でもそれだとショパンコンクールにならない^^

で、今回限定版(1600円)を買いました。限定版は2005年ショパンコンクール1位のブレハッチの演奏したファイナルのピアノコンチェルト#1がCDで付いてます。これがいい。

ぼくはアルゲリッチファンだったので、アバドとアルゲリッチのCDを聴いてました。じつはこの演奏はあまりインパクトがない。いちおうクラシック本では名演とされてるものです。これより聴きやすい。この曲こんなに良かったっけと思わされます。オケもピアノも両方素晴らしい♪ほんとに。

限定版かどうか迷ったら、1000円高いだけなので、こちらを強くおすすめします。CDには全29pの解説冊子もついてます。


えらそうに書きましたが、子供の頃バイエルで挫折した軟弱モノで、今では単なるカラオケ好きなおっさんですので、深い突っ込みはご勘弁を<_ _>

探してみると、同じ音源の2005年ショパンコンクール時の動画がありました。



CD付き ピアノの森(24)限定版 (モーニングKC)

CD付き ピアノの森(24)限定版 (モーニングKC)

  • 作者: 一色 まこと
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/05/23
  • メディア: コミック



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スナックちどり/よしもとばなな [本/文学芸術]


スナックちどり

スナックちどり

  • 作者: よしもと ばなな
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2013/09/27
  • メディア: 単行本


【スナックちどり/よしもとばなな/13年9月初版】
スナックが好きなので読んでみた本です。作者はよしもとばなな。この人の本を読むのは初めてかも。やっぱり小説家というのは、状態を言葉で表現するのがうまい。人物描写なんか、あぁこういう人物は、そういう表現で説明できるな、今度この表現を真似て、ある状態のことを説明してみよう。とか。小説を読むという事は、表現の幅が広がるということなのでしょう。

ところでスナックって絶滅しそうな雰囲気があります。かつてのスタンドはほぼ絶滅しました。昔は諸先輩が後輩を交際費で連れて行ってくれたりしましたが、交際費が絞られたり、僕らの世代がスナックにあまり通わなかったりで、社用以外でスナックに通ってる若い人は、少なくなったと思います。プライベートで歌うときはボックスに行きますしね。

若いころ20歳ほど年上の上司に連れて行かれたスナックやラウンジは、そんなに面白い物じゃなかった。だいたい先輩たちのお気に入りの女性は、ぼくらより年上だし同年代の女の子がいなかった。いたとしてもあんまりチャラチャラと話するのは上司への印象が良くないのではないかと考えたり。

結局自分が会計をコントロールできるようになってからは、行くのが楽しくなりました。店でも顔になるし、自分で差配できるのは楽しいです。そこに好みのかわいい子がいたりすると最高っす。だけどいい時代は長く続きません。経費削減やらポジションが変わったりとか。驕る平家は久しからず[もうやだ~(悲しい顔)]

今は会社近くに3000円セットのスナックがあるので、仲間内でカラオケボックス代わりによく通ってます。ボトルもジョニ赤が3000円。50代の歌好きのママさんが一人でやっています。1人3000円ぐらいの居酒屋で飲んで、みんなマイボトルを入れてるスナックに行って、1日6000円/人です。それぐらいなら小遣いの範囲で月に何度か通えます。

これが繁華街店だとセットが5~7000円になり、ボトルもジョニ赤が5000円以上と高くなる。小遣いで何度も通おうという気が失せます。こればっかりはきれいなお姉さんがいると、人件費が高くなったりするのでしょうがないのですが。


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スナック談義は横においといて、ストーリーです。アマゾンの紹介記事は以下。
『40歳を目前にして離婚した「私」は、幼なじみで従妹のちどりと偶然同時期にヨーロッパに滞在し、一緒にイギリスの西端の田舎町・ペンザンスに小旅行に出かけることになった。ちどりもまた、心に空洞を抱えていた。幼い頃に両親が離婚した後、親代わりに育ててくれた祖父母を相次いで亡くし、ひとりぼっちになってしまったのだ。さびれた海辺の町で、二人は昔話にふけり、互いの人生を振り返る。とりわけ思い出されるのは、ちどりの祖父母が経営していた、「スナックみどり」の光景だった。常連たちがまるで家族のように寛いだ時間を過ごし、またそれぞれの仕事に帰っていく。そこにはささやかだけれど、しっかりとした幸福感が満ちていた。そんな思い出を確かめ合いながら、二人は少しづつ寂しさを埋めていく。』

よしもとばななや村上春樹なんかの純文学系は、文体はライトなんですが重い部分があるんですよね。読者に考えさせる。愛別離苦とどう向き合うか。美しくないセックス描写を挿入して、人間は本能に翻弄される動物なんだと思い起こさせる。欲しいものが手に入らない感情をどう処理するか。好きじゃない人とどうやってさらっと距離を置くか。極めて仏教的なアプローチを、小説を通して具現化している。そう思います。ストーリーを単純に楽しむ大衆文学系とは、少し違った楽しみ方になります。



以下に気に入った部分を。

・夜の時間が、お酒の力でのびていくのがわかった。酔ってくると窓ガラスがきれいに見えるようになる。そして、このような集中の世界でしか考えられないことがたくさんあるのを私もまた知っていた。

・そのシステムを回しているエネルギーの質が私に合わなかっただけで、深く考えなければ、離れて眺めていれば、なんとすばらしい人だったのだろうと思う。

・スナックは、行き場をなくした人たちの心の最後のよりどころなんだよ。

・先の約束をひとつする度に、未来に小さな光がひとつ灯った。それを実感できるくらい弱っていた。このころずっと今日を泳ぐのでせいいっぱい、明日は溺れるかも、そんな感じだったことをこの町に来て私は悟った。



そうなんですよね。ちょっとしたイベントごとを、少し先にポツポツと入れておく。するとそれを楽しみに生きていける。それすらなくなると、人は息切れするのだと思います。

お互いにがんばっていきましょう~。


先を照らす光を見つけて♪
あなたは泳いでいく♪

Malene MortensenでThe Light Up Ahead♪ 
数年前にタワレコで衝動買いしたジャズボです。そういうことたまにありますよね^^北欧の歌姫とかで、けっこうエレキギターが目立つ作品でしたが、このmvは一人でたどたどしいピアノを弾いてます。



今もってカスタマーレビューがないCDを買ってしまったという^^;けっこうギターワークが軽快で、今でもよく聴いてます♪

アゴニー・アンド・エクスタシー

アゴニー・アンド・エクスタシー

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: インディーズ・メーカー
  • 発売日: 2009/08/26
  • メディア: CD





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恋しくて/村上春樹編訳 [本/文学芸術]


恋しくて - TEN SELECTED LOVE STORIES

恋しくて - TEN SELECTED LOVE STORIES

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2013/09/07
  • メディア: ハードカバー


【恋しくて/村上春樹編訳/13年9月初版】
今日は短編集なので、軽めで。表紙は竹久夢二の「黒船屋」とのこと。
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文庫本が出たら手元において、たまに読みたい一冊です。短編集は好きで結構読んでるのですが、すぐにストーリーを忘れてしまいます。例外的に覚えているのは、高校時代に何度も読んだ作品です。オーヘンリーの短編集はオチがあって面白い。「水車のある教会」「よみがえった改心」あたりは最高に好きです。ピートハミルの「ニューヨークスケッチブック」も何度も読んだなぁ。幸せの黄色いハンカチの原作が入ってる短編集です。

本書は村上春樹が選んだ9編と自作1編の全10作の恋愛短編集です。正確にはアリス・マンロー 「ジャック・ランダ・ホテル」だけは、柴田元幸氏(米文学研究者)に電話して「柴田さん、何か面白い恋愛小説を知りませんか?」「う~ん、困ったなあ。僕は恋愛ものみたいなのにはとんと縁がない人間なんですが、そうだなあ、これなんかどうでしょう?」と推薦された作品だそうです。

まさかそれが13年のノーベル文学賞受賞者の作品になるとは、なにかの因縁があるのかもしれません。

10篇の作品は以下です。各編の終わりに村上春樹の寸評があります。あとがきも面白い。

マイリー・メロイ 「愛し合う二人に代わって」
⇒高校時代に知り合ったピアノが得意な内気な男の子と、ダンサーを夢見る女の子の恋の行方

デヴィッド・クレーンズ 「テレサ」
⇒大柄な14才の少年が、同じクラスの女の子に恋して彼女の帰宅の後をつけ、彼女の秘密を知る

トバイアス・ウルフ 「二人の少年と、一人の少女」
⇒高校生の男2人と女の子1人の三角関係

ぺーター・シュタム 「甘い夢を」
⇒24歳の青年と21歳の女の子が同棲をはじめ、何をしても楽しい時期の話

ローレン・グロフ 「L・デバードとアリエット」
⇒16歳の少女と43歳の元オリンピック水泳選手の恋の話。大河ドラマを思わせる壮大な展開

リュドミラ・ぺトルシェフスカヤ 「薄暗い運命」
⇒30代の未婚の女性と42歳の男の不倫の話。わずか4ページ

アリス・マンロー 「ジャック・ランダ・ホテル」
⇒若い娘と駆け落ちした亭主を、オーストラリアまで追いかけて

ジム・シェパード 「恋と水素」
⇒ナチ党員のゲイのカップルの恋。1937年のヒンデンブルグ号爆発事故に絡む

リチャード・フォード 「モントリオールの恋人」
⇒49歳の弁護士男と33歳の公認会計士女の不倫話。

村上春樹 「恋するザムザ」(書き下ろし)
⇒カフカの「変身」後日譚


ビギンの「恋しくて」♪ 10年ぐらい前によく歌いました。当時の上司がチークが好きで、スローなこの曲を入れるとよく踊ってました。だいたいは韓国バーか中国バーですが^^;日本人のラウンジ系と比べると3割ほど価格が安くて、密着度が高いという。あれも一種の束の間の恋なんでしょうか。皆さんもたまには恋してますか?


恋といえば、やっぱり松山千春の「恋」かなぁ。昭和の女の歌なんでしょうね。よくみんなカラオケで歌います^^



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きみはダイジョブ?/石田衣良 [本/文学芸術]


きみはダイジョブ? (日経プレミアシリーズ)

きみはダイジョブ? (日経プレミアシリーズ)

  • 作者: 石田 衣良
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
  • 発売日: 2013/11/09
  • メディア: 新書


【きみはダイジョブ?/石田衣良/13年11月初版】
石田衣良の池袋ウエストゲートパークシリーズは面白いです。2010年の10巻以降新作が出ていませんが、今後どうなるのかなぁ。他にも「約束」「波の上の魔術師」「アキハバラ@DEEP」あたりは傑作でしょうね。直木賞取った「4TEEN」はもうひとつですが^^;

新作のエッセイが出てたので読んでみました。ここ3年ほどのR25と日経プレミアムPLUSへのエッセイを集めたもの。エッセイは作家の立ち位置がわかります。ざっと読むと、
1.原発は嫌いだけど、経済のために動かすべき。
2.アベノミクス賛成
3.憲法改正は反対
4.尖閣・竹島は棚上げでいい。中韓とはビジネスの為もめない方がいい。
5.世界はグローバルでタフな場所になりつつあるが、隣国へのヘイトスピーチは論外

上記の理由。
1.日本の貿易黒字は1年間で3兆円。LNGの輸入代金は3兆円を超える。
3.自民党の改正草案が気に入らない。
4.20年後、東アジア3国で世界のGDPの4割を押さえる。刺激せずに成熟を待つ。
5.タフでなければ生きられない。優しくなければ生きている価値がない。

上海でサイン会をやると、300人が行列をつくって熱烈歓迎だったそうです。石田衣良(本名は石平さん)は稀有なストーリーテラー(大衆文学)なので、海外翻訳でも人気が出るのでしょう。「人は鏡」と言います。良くされたら、良くしてあげたいという気持ちは、よくわかります。

以下に読書メモを。

<デジタル革命による破壊>
音楽業界はデジタルに根こそぎ変えられてしまった。CDはダウンロードや違法配信で売れなくなり、その変化を後押ししたiチューンズさえ、今では定額制の聴き放題ストリーミングサイトに席を譲ろうとしている。映像の世界も同じで、Huluのような定額制見放題サービスが近い将来、主流になるだろう。

本の世界でも、定額制読み放題サービスが始まろうとしている。音楽家はCDが売れなくても、ライブ公演や物販がある。けれど作家にはライブはない。作家の半分から3分の2が本を書くことでは生活ができなくなり、職業作家は時代遅れの仕事になるだろう。

⇒本のHuluは考えてもみませんでした。ある意味、日本の場合はどの街にもある図書館がそうなのですが。購入申請さえすれば、高額本とマンガ以外(除く小林よしのり)なら2週間ぐらいで何でも買ってくれます。

CDに関しても考えてしまいます。ツタヤにないものはアマゾンで買います。ツタヤはディスカスで月額980円で4枚まで借りれます。僕にとっては月4枚ぐらいがちょうどいいペースです。だけど思うのは、定額制の聴き放題サービスとの比較です。ダウンロードはできないみたいですが、どちらがいいのか。


<ノーベル賞事務局長の余計な一言>
中国の莫言受賞時の無用のコメント。「西洋かぶれしていないユニークな作家である」
無意識のうちに事務局長は莫言と村上春樹の比較をするという愚を頭のなかで冒してしまった。選外になった理由が、アジア作家なのに「西洋かぶれ」だからダメでは浮かばれない。そもそもノーベル賞が西洋のための賞だったということは忘れないほうがいい。


ダイジョブ♪
今度はきっとうまくいく♪
Christopher Cross でAll right♪マイケルマクドナルドが横にいます^^




なぜかいつもフラミンゴなんですよねぇ^^

Another Page

Another Page

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Warner Bros / Wea
  • 発売日: 1983/10/08
  • メディア: CD



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海賊とよばれた男・上/百田尚樹 [本/文学芸術]


海賊とよばれた男(上) (講談社文庫)

海賊とよばれた男(上) (講談社文庫)

  • 作者: 百田 尚樹
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/07/15
  • メディア: 文庫


【海賊とよばれた男・上/百田尚樹/12年7月初版】
「鐵造は自分の写真の代わりに仙涯の『堪忍柳画賛』という絵の複製を各支店に送った。その絵は一本の柳が風に吹かれているもので、『気に入らぬ 風もあろうに 柳かな』という賛があった。外地での商いにはさまざまな軋轢や衝突があるだろう、しかしそれらをうまく受け流し、大地にしっかり根を下ろせ、という鐵造の願いを、仙涯の絵に託したものだった。」

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出光は潤滑油は強いですね。高炉系のチャンピオン交渉(新日鉄vs出光)してたと聞いた事があります。

2013年の本屋大賞1位作品。ようやく図書館から回ってきました。2012年の「舟を編む」も面白かったけど、これも別格に面白いです。下手な自己啓発本を読むより、やる気が漲ります。息子らにも読ませたいと思うほどの本です。

なぜか?学生時代から新しい技術に着目し、その成長を直感で信じ、取り組んだというのが示唆に富むから。専門家は当時石油の将来に悲観的でした。ランプ用の灯油の需要は電気に取って代わられ、石炭が花形産業の主役でその座は揺るぎないものと考えられていました。製鉄所も火力発電所も船も鉄道も、富国強兵を支える燃料はすべて石炭でした。その後需要が爆発する自動車は、当時日本に9台しかなく遊び道具としか見られてません。

石炭との比較では熱効率は軽油や重油が石炭を上回りますが、精製コストや輸送(液体は運びにくい)コストを考えると石炭に軍配が上がる。その時点では使えないものの未来を信じ、その世界に飛び込んだというのが素晴らしい。

と、絶賛していますが上巻しか読んでいません。下巻は図書館であと84人待ちです。上巻と同時に予約しとくべきでした^^;「ピアノの森」ほどは待たされないと思うので、気長に待つか。楽しみが先にあるというのは、いいことです。

上巻はハードカバー380pだけど、結構軽かったので出張のお供にしました。移動や打合せの待ち時間がパラダイスとなりました。お、もうこんな時間かぁと。

ところで著者の遊び心でしょうけど、「永遠のゼロ」の宮部が登場するシーンは、なんだかグッと来ました。二つの小説が頭の中で重なり合って、世界観が広がります。

鳥山明のこの前終わった短期連載「銀河パトロールジャコ」の最終回に○○が出てきて、一挙に世界観が広がったのと同じです。頭の中で2つのものが繋がると、テンションが上がって1+1=3以上になる気がします。

前にも書きましたが、1+1=3以上のものはこの世にあるのか。
あります。結婚です!橋下徹なんか1+1=9になりました。
あんまり結婚を持ち上げるのもアレなんで、バランサーとして結婚の名言をついでに。

・結婚とは、当たりくじのない宝くじである。
・ずいぶん敵を持ったけど、 妻よ、お前のようなやつははじめてだ。
・ウェディングケーキはこの世で最も危険な食べ物である。
・あらゆる人智の中で結婚に関する知識が一番遅れている。
・結婚するとき、私は女房を食べてしまいたいほど可愛いと思った。今考えると、あのとき食べておけばよかった。
・女房に愛される技術というものは発明されないものだろうか。
・結婚したまえ、君は後悔するだろう。 結婚しないでいたまえ、君は後悔するだろう。


以下に読書メモを。


<原油の精製>⇒リアクタの原理が、とてもわかりやすい説明でした。
原油を指ですくってみた。どろっとした感触が異様だった。見た目は墨のようだったが、異臭がすごかった。
「臭いですね」
「ああ、硫黄が入っているからね。そのまま燃やすと悪臭で耐えられない。石油が長い間ランプに使われなかったのは、そのせいだ。精製技術ができて初めて石油が利用できるようになった」
「精製はどうするのですか」
「簡単に言えば蒸留だ。いったん気化させてから液体化する。原油にはいろんなものが混ざっているが、蒸留してやれば不純物はなくなる。それをさまざまな種類の油にわけていくんだ。原油から灯油、軽油、重油、揮発油、機械油などができる」
「どうやって、いろんな油に分けるのですか」
「それぞれの油は皆、沸点が違う。だから蒸留すれば、いったんすべての油は気化するが、それを冷やすと、沸点の高いものから順に液化していくわけだ」



<アメリカの歩み>⇒子どもでもわかるように、すごく端的にまとまってます。
「アメリカちゅう国は、石油が出るまではどんな国やったんや」
「1800年代までは広大な土地を持つ農業国にすぎませんでした。国を代表する産業は綿花と小麦くらいでした。綿花はヨーロッパに輸出できましたが、小麦は無理でした」
「それはなんでや」
「小麦は重いので、帆船で運ぶのは輸送費がかかって、ロシアの安い小麦に対抗できなかったのです」
「なるほどなあ」「商品というのは、運賃も値段の一部なんやな」
「でも、蒸気船の発明によって、輸送費が10分の1になったので、小麦が大量にヨーロッパに輸出できるようになりました。それでアメリカは耕作地を求めて西へ西へ開拓を始めたのです」
「ほう」
「同時に小麦を運ぶために鉄道の敷設がすごい勢いで始まりました。同じ頃、世界で始めての油田開発が始まりました。そして、世界最大の石油会社『スタンダード石油』と世界最大の鉄鋼会社『USスチール』が誕生したのです。鉄鋼産業と石油産業は互いに大きくかかわりながら急成長しました」
「面白いなあ。鉄と石油か」
「アメリカは今世紀に入ってから、鉄鋼業と石油業の発展を背景に、ものすごい量の自動車をつくりました。フォードという会社は世界一の自動車会社と言われています。自動車のエンジンは揮発油です。今、アメリカはすごい勢いで大きくなっています」
「国岡はんの話を聞いてると、石油というのは魔法の水という気がしてくるなあ」



<輸送船の悲劇>
アメリカは日本の工業生産力を殺ぐべく、南方から資源を運ぶ輸送船を狙った。その任務を背負ったのは潜水艦で、彼らの最優先標的は軍艦ではなく輸送船だった。

驚くべきデータがある。財団法人「日本殉職船員顕彰会」の調べによれば、大東亜戦争で失われた徴用船は、商船3575隻、機帆船2070隻、漁船1595隻の計7240隻。そして戦没した船員、漁民は6万人以上に上る。彼らの戦死率は約43%と推察され、これは陸軍軍人の約20%、海軍軍人の約16%をはるかに上回る数字である。

自らの身を守る手段を何も持たない船乗りたちは、命懸けで貴重な物資を日本に運び続けたが、それでも国内の需要を満たすことができず、国民は慢性的な物資不足に苦しんでいた。




柳よ 私のために泣いてくれ♪

Willow weep for me ♪
ジューンクリスティ21歳のとき、スタンケントン楽団での1946年録音です。声がカワイイ。




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「舟を編む/三浦しをん」の感想 [本/文学芸術]



舟を編む

舟を編む

  • 作者: 三浦 しをん
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2011/09/17
  • メディア: 単行本


【舟を編む/三浦しをん/11年9月初版】
紙の辞書の売上は98年の1200万部から、2008年には700万部まで減ってるそうです。一方でその間電子辞書は200万台売上を伸ばしています。減少した300万部は、無料検索に流れてるということでしょうか。国語辞典の代名詞の「広辞苑」は2008年に10年ぶりに改訂し、紙で34万部、DVD8500本も売れたようです。新語収集は2~3人で5年かけて、編集担当者は15人、各分野ごとの校閲の先生は165人、構成作業は20人で途中から編集も加わる。「舟を編む」と比べると、大掛かりな体制です。1冊8400円(DVDは10500円)なので約30億円の売上です。

従来のカネの配分割合、作者:10%、出版社:60%、取次:8%、書店:22%とすると、18億円が岩波の取り分でしょうか。広辞苑のような(中身は他の辞書の方がいいという声も多い)ブランドになれば、10年弱に1回改訂し、大掛かりな広告を仕掛けると、ちゃんとしたビジネスになるのでしょう。

みなさんは国語辞典をどんな時に引きますか?だいたい文章を書くときなので、サラリーマンの方ならEメールやレポートを書いたりするときに引くと思います。頭に浮かんだ語彙を、この使い方で良かったかなと確認したり。

いまはグーグルで検索してます。辞書を引かなくなった。だいたいデジタル大辞林とかgoo辞書とかがページの上のほうに出てきて、さっと確認して終わり。会社の同僚が国語辞典を手元において、それをいまだに引きながら文章を書いてます。「グーグルで検索したらエエヤン」と言っても、「アホですから、これが慣れてるし」と。むかしは国語辞典を引きながら文章を書くというのは、ある種の美徳のようにも思えましたが、いまはなんとなくアナログの象徴かもしれません。

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「舟を編む」は2012年本屋大賞。松田龍平主演でのヒット映画。読むつもりがなかったのですが、あまりに売れてるので一度読んでおこうと思い図書館予約。1年近く待ったような気がします^^;

259pで約3~4時間ほどで読めます。テンポがいいし、クスッとさせる部分も多い。何よりさすがに本屋大賞作品。皆がいいというものは、やっぱり面白いです。休前日の夜の11時すぎから読み始めて、夜中の3時に読み終わりました。途中でおけないぐらい面白かった。これはぜひ映画も借りて見てみたいです。

この本の以下の部分から、20年以上前に読んだ司馬遼太郎の「項羽と劉邦」を、もう一度読みたくなりました。

『項羽は敵にまわりを囲まれた際、恋人である虞美人との別れを惜しんで、こう詠った。「虞や、虞や、若を奈何せん(虞よ、虞よ、きみをどうしたらいいんだ)」いまこの場で、愛する人をいっそ自分の手にかけるべきか、より過酷な運命が待ち受けているかもしれなくとも、命を長らえてくれることを願って手放すべきなのか。極限の状況下で、愛ゆえに激しく思い乱れる男。心打たれる詩だ』

四面楚歌の究極の選択です。雑兵に陵辱される可能性やら、よくて敵軍の高位な人物の側室。自分が項羽や虞の立場に追い込まれたら、どうするか。結局、虞美人は○○しましたが。。






広辞苑 第六版 DVD-ROM版 (<DVDーROM>(HY版))

広辞苑 第六版 DVD-ROM版 (<DVDーROM>(HY版))

  • 作者: 新村 出
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2008/01/11
  • メディア: 大型本



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「ハートカクテル イレブン/わたせせいぞう」の感想 [本/文学芸術]


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【ハートカクテル イレブン/わたせせいぞう/2006年1月初版】
エビングハウスの忘却曲線によれば、人は暗記しても翌日には7割を忘れてしまうそうです。
意味のない丸暗記での実験なので、エピソードとして深く刻まれれば結果は違います。
年をとると物忘れが激しくなるのは、経験豊富になってくるとほとんどがルーチンになり、
新鮮味が薄れ、エピソードとして記憶に刻まれないからだと思います。

今週の飲み会で、飲み仲間の同僚と交わした会話の内容はほとんど忘れてますが、
30年前に友人がハートカクテルを評した言葉は、今でもなぜか覚えています。

「ハートカクテルを読むと、オ○ニーができなくなる」

作品に影響されて、自分を美しく律しようとする力が働くのでしょうか。

ハートカクテルは、80年代一世を風靡しました。
とても記憶に鮮明に残っており、将来はこんな洒落た生活をしたいなぁと、漠然と思っていました。
この本に影響されてJ.PRESSの紺ブレ買ったりした人もいるんじゃないでしょうか(僕は買いましたが^^)。

たしか前に住んでた街の図書館には、ハートカクテルが置いてあったので、
今住んでる街の図書館にもあるかなと検索してみると、一冊だけありました。
2006年出版の「ハートカクテル イレブン」。マンガ形式じゃなくて、絵本です。
本作はカレとカノジョの素敵な出会いのストーリーです。

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生活の色彩感が薄くなった僕のような人間には、もう一度潤いが蘇るような素晴らしい絵本でした。
最近、潤ってますか?

この本で心に残った部分を。

「パパ、虹の向こうには何があるの?」
パパは微笑んで歌った。
Somewhere over the Rainbow♪
Bluebird Fly♪

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バンクーバーオリンピック開会式で、カナダ国歌を16歳にして歌ったニッキのバージョンで、
Somewhere over the Rainbow♪  13歳のときのライブアルバム、上手いです。
カナダの美空ひばりみたいなものか。



HEART COCKTAIL eleven (講談社ハートウォームシリーズ)

HEART COCKTAIL eleven (講談社ハートウォームシリーズ)

  • 作者: わたせ せいぞう
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2006/01/12
  • メディア: 単行本



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「フィフティ・シェイズ・ダーカー/ELジェイムズ」の感想 [本/文学芸術]


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【フィフティ・シェイズ・ダーカー/ELジェイムズ/13年2月初版】
世界で8800万部とバカ売れ継続中です。世界最速4000万部突破、英国amazonではハリポタの7部作売上を抜いて最も売れた本になったとか。しかもたった3部作で。ちなみにハリポタの総売上は5億部ぐらいのようです。

映画版は2014年春撮影開始、2014年夏公開予定で、キャスティングは未定です。爆発的なセールスの割には、近所の本屋では見かけません。今ひとつ盛り上がりに欠けます。僕があまり行かないコーナーに置いてあるのでしょうか。たとえば、団鬼六先生の作品の横とかに。

フィフティシェイズオブグレーのときに、3部作のあらすじを書いたので、再掲はしませんが、現代のシンデレラ物語、ハッピーエンドです。水戸黄門好きな僕としては、幸せな気分を味わえるので、つい読んでしまいます。ふと思います。女に生まれて主人公のアナスタシアになってみたい。

いや、主人公じゃなくて作者のELジェイムズになりたい。印税がすごいでしょうね。10%として米amazonで9$/冊なので、9000万部x0.9$x100円=81億円。所得税で45%引かれても40億円程の手取りですかぁ。何の資本もなく、アイデアひとつで億万長者です。それにしても日本版は1作が2800円(上下で1冊が1400円)とは、高価すぎて買う人がいるのでしょうか。

ボリュームは400p超えx上下なので、結構あるのですが、セックスシーンを斜め読みすると、すぐに読み終えてしまいます^^;

読んでて思ったのですが、パターンはロッキー1~3みたいなものかな。1作目は、挑んで手に入れられない。2作目はすべてを手に入れる。3作目は新たなる脅威と新展開。そういう意味では、2作目の本作は、結婚というひとつのゴールに向かいます。しかしルームメイトのケイトとアナスタシアが離れたわずか16日間の間に、燃え上がり結婚まで行くというのは性急過ぎるような気もします。ロミオとジュリエットが出会ってから死ぬまで5日間でしたが、それにも匹敵します。

最近思うことですが、限定された状況下でキラメキは発生すると言うことです。人生をそのように捉えることができれば、常に感謝や幸せを感じることができると。

何かで読みましたが、幸福度が最も高いのは90代女性だそうです。残りの人生が少なく精一杯感謝し、楽しもうとするからです。定年まで後一年とか、この子の旅立ちまで後一年とか、リミットが見えてくると、何気ない今が幸せに感じられます。試験勉強中の限定された自由時間が、ものすごく楽しく感じるのも、同じようなものかもしれません。希少感と言い換えてもよいでしょう。

人はおぎゃあと生まれたときから、死に向かって突き進みます。砂時計は減る一方です。ある日それを体感することができれば、残りの人生は有意義なものになるかもしれません。体感するということは、つらい思いを感じるということでもありますが。この世はすべてトレードオフなのかなぁ。


He knelt to the ground and pulled out a ring And said[るんるん] 
Marry me juliet you'll never have to be alone
I love you and that's all I really know

彼はひざまずき指輪を取り出し言った
ジュリエット、結婚しよう
もう一人ぼっちにはしない
愛している。それがすべてだ

Taylor Swift - Love Story  全盛期のオードリーヘップバーン並に美しいと思います。




フィフティ・シェイズ・ダーカー (上) (リヴィエラ)

フィフティ・シェイズ・ダーカー (上) (リヴィエラ)

  • 作者: E L ジェイムズ
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2013/02/26
  • メディア: 単行本



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色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年/村上春樹 [本/文学芸術]


色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

  • 作者: 村上 春樹
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2013/04/12
  • メディア: 単行本


【色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年/村上春樹/13年4月初版】
村上春樹の小説というと、「1Q84」以来約3年ぶりです。その間は雑文集や、アンアンのエッセイ、小澤征爾との対談本、インタビュー集などが間を埋めています。新作は「1Q84」より面白かったです。円熟度合いからいうと最高傑作かもしれません(除くエッセイやノンフィクション)。30年来のファンの立場からすると、「風の歌を聴け」が一番です。当時を思い出し、自分の感情の記憶を刺激するからかもしれませんが・・・

村上ワールド。主人公が孤独に強い、人生のポジション争いから超越している存在。ここらへんに惹かれる
のかもしれません。

仏教の四苦八苦の観点で考えてみます。

「四苦は生・老・病・死の四つの苦しみ。八苦は四苦に、
愛別離苦(親愛な者との別れの苦しみ)、
怨憎会苦(恨み憎む者に会う苦しみ)、
求不得苦(求めているものが得られない苦しみ)、
五蘊盛苦(心身を形成する五つの要素から生じる苦しみ、煩悩)
を加えたもの。」

村上春樹の作品には、二苦(怨憎会苦、求不得苦)に対してタフな主人公が多いです。孤独に強ければ人に合わせる必要がない、人と距離を置ける。サラリーマンの椅子取りゲームなんかにも参加しない。出世なんか求めてない。

出世争いで身を削ったり悔しい思いをしたり、顔も見たくない上司やライバル。ここらへんで世の多くの人は心身をすり減らしていると思います。リアルタイムでそういう目にあったりしてる人には、彼の小説は一服の清涼剤になってるのではないでしょうか。僕らもこういう生き方をしたいなぁと。

つらい立場のときに笑顔でいられる人。いつも冷静で人に頼らない人。タフだなあと思い、そういう生き方のヒントを探しながら読んでる気がします。

つらいことがあっても、人に甘えず、騒がず、冷静に、自分で解決していきたいです。難しいなぁ。自分の弱さを痛感します。


以下に心に残った部分を。


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・限定された目的は人生を簡潔にする

・思考とは髭のようなものだ。成長するまでは生えてこない。

・メンデルスゾーンとシューマンの音楽を聴き分けることができた。

・つくるの部屋にはまずまずのステレオ装置があったが、それと一緒に姉が残していったレコードといえば、バリーマニロウとペットショップボーイズくらいだった。

・才能というものは肉体と意識の強靭な集中に支えられて、初めて機能を発揮するものだ。脳味噌のどこか のネジがひとつ外れ落ちてしまえば、あるいは肉体のどこかの結線がぷつんと切れてしまえば、集中など 夜明けの露のように消えてしまう。ただの虫歯一本で、肩こりひとつで、すべての美しいビジョンと響き が、ひゅっと無に帰してしまう。人の肉体とはかくのごとく脆いものだ。

・「レクサスっていったいどういう意味なんだ?」「よく人にきかれるんだが、意味はまったくない。ただの 造語だよ。ニューヨークの広告代理店がトヨタの依頼を受けてこしらえたんだ。いかにも高級そうで、意味 ありげで、響きの良い言葉をということで。」

・事実というのは砂に埋もれた都市のようなものだ。時間が経てば経つほど砂がますます深くなっていく場合もあるし、時間の経過とともに砂が吹き払われ、その姿が明らかにされてくる場合もある。

・おれたちは人生の過程で真の自分を少しずつ発見していく。そして発見すればするほど自分を喪失していく。

・僕はなんとかそのいちばん危ない時期を乗り越えた。夜の海を一人で泳ぎ切ることもできた。僕らはそれぞれ力を尽くして、それぞれの人生を生き延びてきた。そして長い目で見れば、そのときもし違う判断をし、違う行動を選択していたとしても、いくらかの誤差はあるにせよ、ぼくらは結局今と同じようなところに落ち着いていたんじゃないのかな。

・あの素敵な時代が過ぎ去って、もう二度と戻ってこないということが。いろんな美しい可能性が、時の流れに吸い込まれて消えてしまったことが。

・冷静でいつもクールに自分のペースを守る。いや、おれは冷静でもなければ、常にクールに自分のペースを守っているわけでもない。それはただバランスの問題に過ぎない。自分の抱える重みを支点の左右に、習慣的にうまく振り分けているだけだ。他人の目には涼しげに映るかもしれない。でもそれは決して簡単な作業ではない。見た目よりは時間がかかる。そして均衡がうまくとれているからといって、支点にかかる総量が僅かでも軽くなるわけではないのだ。


・「この演奏はとても見事だけど、リストの音楽というよりはどことなく、ベートーヴェンのピアノソナタみたいな格調があるな」エリは微笑んだ。「アルフレート・ブレンデルだからね、あまり耽美的とは言えないかもしれない。でも私は気に入っている。昔からずっとこの演奏を聴いているから、耳が慣れてしまったのかもしれないけど」



リストのルマルデュペイ♪



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ギリシアから来たソフィア/三橋貴明&さかき蓮 [本/文学芸術]


希臘から来たソフィア

希臘から来たソフィア

  • 作者: さかき漣
  • 出版社/メーカー: 株式会社自由社
  • 発売日: 2013/03/02
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


【ギリシアから来たソフィア/三橋貴明&さかき蓮/13年3月初版】
純愛小説。コレキヨの恋文、真冬の向日葵、に続く3部作完結編です。三橋貴明&さかき蓮の共作も3作目となり、パートナーシップが深化したのか、とても読みやすく面白くなりました。小説としては、やっぱり恋愛が絡むと面白いということか。

1作目から読む必要はありません。1作目、2作目の主人公が本作にも登場するので、読んでれば世界観がわかるというメリットはありますが、読みやすい3作目から読んだほうがいいような気もします。 ファーストガンダム見てなくても、Zガンダムが楽しめるようなもんです。

小説なので、ネタバレはしませんが、ふと、ありえるのか?と思ったのは、プラトニックのまま、求婚 できるのか?ということです。今の時代、そういう人はいるのでしょうか。

この本を読んで得られることのひとつは、ギリシャ神話と日本神話の知識です。主人公とヒロインが お互いの国の神々を紹介します。ギリシャも元は多神教でした。ただバルカン半島にあり、何度も周辺国に蹂躙される中で、キリスト教国(正教徒)になっていきます。

神話ってあんまり興味がわかないんですよね。日本神話といえばヤマタノオロチぐらいしか思い浮かばない。(退治したのは、アマテラスオオミカミの弟のスサノオノミコト)保守系の人が書いたものを読むと、よく日本神話がでるのですが、パラパラっと読んでスルーしてました。なにか荒唐無稽で、現実感がない。さらに今の自分の生活に全く関係ない。ギリシア神話もパッと思いつくのは、メドゥーサぐらいです。見たものを石に変える髪が蛇の女。怖いです。

1週間もすれば、神話の知識なんかはるか忘却の彼方となりそうですが、とりあえず一旦書くことで頭の中に整理できてよかったです。よかったのかなぁ…

以下に読書メモを。

<ギリシアの概要>
ビザンチン時代は同じキリスト教徒(カトリック)の十字軍に侵略されて、コンスタンティノープルを落とされてからは、400年も異教徒のトルコ人に支配されて、やっと独立したらトルコやブルガリアと戦争ばかりになって、第二次大戦ではナチスドイツの支配下で何十万人も飢え死にして、戦争が終わったら共産主義者と内戦になって、内戦が収まったらファシスト軍事政権に国家を蹂躙された。

ギリシアには、大手製造業が一つも無い。度重なるクーデターや内戦、軍事独裁など、政変による混乱が続き、企業が安心して投資できる環境に長らくなかった。ある国において製造業を勃興させるには、国内社会の安定が不可欠。だから政治的混乱が断続的に発生している中東やアフリカ諸国において、まともな製造業を持つ国は、南アフリカのみである。


<ギリシア神話>
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ギリシア神話の世界はカオスから始まった。そこにオリンポスを持つ大地ガイア、闇の世界タルタロス、愛の神エロスが生まれた。この四神がギリシア神話の原初の神。

やがてガイアが、天であるウラノスと、海であるポントスを独力で産む。その後ガイアは息子であるウラノスと交わり、オケアノスやテミス、クロノスやレアなどティタン十二柱の神々を産んだ。

クロノスはガイアから依頼され、父ウラノスを襲撃する。ウラノスを倒し世界の支配権を握ったクロノスは、姉妹であるレアと結ばれ、女神ヘスティア、女神デメテル、女神ヘラ、冥界の王ハデス、海の王ポセイドンという五柱の神々が生まれた。

ところがクロノスは、王位を奪われることを恐れ、生まれた子供たちを次々に飲み込んでしまう。そこでレアは最後の子供だけでも助けたいと、クレタ島に行き、主神ゼウスを産む。無事に成長を遂げたゼウスは、クロノスの体内から兄弟たちを助け出した

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そしてゼウスを筆頭とするオリンポスの神々は、クロノスを長とするティタンの神々と決戦のときを迎える。ゼウスはティタンの神々を打ち負かすことに成功し、オリンポスの神々による支配を確立した。

その後ゼウスは多くの女神や人間の女性と交わり、その結実として、知恵の女神アテネ、音楽の神アポロン、月の女神アルテミス、戦争の神アレス、鍛冶の神ヘーパイストス、豊穣の神ディオニソス、ペルセウスやヘラクレスなどの半神半人の英雄が生まれた。さらにゼウスはフェニキアの王女エウロペとの間にも子をもうけ、それがミノス王、つまりクレタ島で勃興したミノス文明の祖となった。


<日本の神話>
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伊勢神宮の内宮は、日本の主神とでもいうべき天照大御神(アマテラスオオミカミ)を祀っている。外宮には食物や穀物をつかさどる豊受大御神(トヨウケノオオミカミ)が祀られている。二神とも女神である。

天照大御神は自らの孫であるホノニニギノミコトに葦原中国を治めることを命じた。これが天孫降臨。天照の孫が天下ったゆえに、天孫降臨という。舞台は日向の高千穂。ここでホノニギギノミコトは、コノハナサクヤヒメと結ばれ、ヒコホホデノミコトが生まれるヒコホホデノミコトの孫が、日本国の初代天皇、神武である。

アマテラスオオミカミとは、国生み、神生みの神であるイザナキノミコト、イザナミノミコトとの間に生まれた女神である。つまり日本の天皇陛下は、国の生みの親たるイザナキノミコト、イザナミノミコトの子孫ということになるのだ。


<P29.ジョンレノンについての小説の中の一節。祖父である総理の日記より>
昭和48年2月5日。昨晩、人に薦められ、ジョンレノンのイマジンという曲を聴いた。つたない語学力ながらも訳してみる。「想像してみなさい、国などないと。それほど難しくはないだろう。殺す理由も死ぬ理由もなく、そして宗教も存在しないと。想像なさい、皆が平和の内に生きることを」

国がない世界。もしかしたら将来的には本当に、国がない世界が誕生するかもしれないが、残念ながら殺す理由はなくならない。死ぬ理由も消えない。国家という共同体による制御をなくした民衆が、地球上で互いに互いから無限に奪い合う。勝者はすべてを手に入れ、敗者は喪失するのみ。歌詞の示すように想像するならば、そんな未来が私の眼前に現れる。

コミンテルンの世界革命論といい、ジョンレノンのイマジンといい、なぜ人はこうも簡単に国家を否定できるのか。理由は恐らく、彼らが実際に国家を喪失した経験を持たないためなのではなかろうか。国が存在しない世界を、それこそ想像してみたまえ。警察がない、消防がない、軍隊がいない。治安は崩壊し、外国の軍隊の蹂躙に手をこまねいているしかない。そんな状態が、平和の中で生きている、などと、果たして言えるのか。

2年前のニクソンショック以降、アメリカの銀行家たちが、資本の移動制限を緩和するよう、アメリカ政府に圧力をかけているという。愚かしいことだ。戦後何のためにブレトンウッズで、資本の移動の自由を制限したのか。各国の資本面の結びつきが強まった結果、一国の危機が他国に伝播し、世界的な恐慌状態を引き起こしてしまったという反省からではなかったのか。

国家による制限がなければ、個々人の欲望を抑えることは困難になり、金融家たちの独善的な所得拡大の欲求も制御できなくなる。世界的な金の動きの制限を排していくならば、いずれは必ず金融の暴走を招き、新たなる恐慌を生み出すことになるだろう。金融家も結局は、欲にまみれた一人間だ。彼らが自身の欲望を追求するために、国境線を越え、自由にお金を動かすような世界で、経済が健全に成長するとは到底信じ難い。


歌(詩)はいろんな解釈ができます。ぼくはこの歌は社会主義を通り越し、共産主義の歌だと思っています。マルクスの唯物史観によると、究極の進化系が共産主義です。ある意味理想の世界です。理想を歌ってるからこそ、みんなこの歌を聴くと、やさしい気持ちになるのだと思っています。今さらですが名曲です。

過去記事よりマルクスの唯物史観について、ご参考まで。
現在は資本主義(ハイエク)⇔社会主義(ケインズ)を行ったり来たりです。

唯物史観:
経済が歴史を動かすとするマルクスの説。生産力が生産性の向上によって生産関係にそぐわなくなった時、その矛盾を原動力として歴史も次の段階へ進むとする説。具体的には、
原始共産制⇒奴隷制⇒封建制⇒資本主義⇒社会主義⇒共産主義と進展すると主張した。

封建制から資本主義への移行は、工場での生産によって資本の蓄積が生じたことによって起こった。そして資本主義は様々な矛盾を抱え始める。マルクスによると、矛盾に溢れた資本主義は、革命によって壊され、生産力に応じた社会へと移行せざるをえない。次に来るのは能力に応じて働き、働きに応じて分配するという社会主義。あるいは能力に応じて働き、必要に応じて分配を受けると言う共産主義。

注:社会主義と共産主義の違いはググルとすぐに出ますが、簡単にいうと、大きな政府で高福祉型が社会主義、それが高度に発達して国家権力が死滅、無政府状態になり、私有財産がなくなり共有段階まで来たのが共産主義です。ふふっ中国共産党。名前変えたほうがいいと思いますが…。
     
     
(イマジンの和訳についてヤフー知恵袋より拝借)
Imagine there's no heaven, 想像してみよう、天国なんて無いと
It's easy if you try, やってみればたやすいこと
No hell below us, 僕らの足下には地獄なんてなく
Above us only sky, 僕らの頭の上にはただ青い空が広がっているだけ
Imagine all the people 想像してみよう、みんなで
living for today... 僕らは今日という日のために生きていることを

Imagine there's no countries, 想像してみよう、国なんてないと
It isn't hard to do, そんな難しいことじゃない
Nothing to kill or die for, 殺すことも誰かに殺されることもない
No religion too, 宗教もない世界のことを
Imagine all the people 想像してみよう、僕らみんなが
living life in peace. 平和な人生を送っている姿を

Imagine no possesions, 想像してみよう、財産なんてないって
I wonder if you can, 君にできるだろうか
No need for greed or hunger, どん欲も空腹も一切必要がない
A brotherhood of man, 人間の兄弟愛に満ちた社会を
Imagine all the people 想像してみよう、僕らみんなで
Sharing all the world... 世界のすべてを分かち合っていることを

You may say I'm a dreamer, 君は僕を夢想家だと言うだろう
but I'm not the only one, だけど僕はたった独りじゃない
I hope some day you'll join us, いつか、君も僕らといっしょになって
And the world will live as one. 世界がひとつになって共に生きれればいい





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【あらすじと結末】フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ / ELジェイムズ [本/文学芸術]


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【フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ/ELジェイムズ/12年11月初版】
Fifty Shades三部作で、世界売上6300万部達成だとか。ユニバーサルピクチャーズで映画化も決まってます。『ダ・ヴィンチ・コード』『ハリー・ポッター』を超える、史上最速ベストセラーとの事。

2作目がフィフティシェイズダーカー(13年2月発売)3作目がフィフティシェイズフリード(13年5月発売)と三部作を読んで話が完結します。これはその1作目です。

作者はロンドン在住の主婦。夫と二人の息子がいるELジェイムズ。もとテレビ局役員でwikiによると1963年生まれで10代の息子が二人いるようです、結婚して20年以上とも。

ネットで発表した趣味の小説をベースに書き上げ、米国の大手出版社から発売されるとハリポタを抜くほどの記録的ベストセラーとなりました。英語は第一言語4億人、第二言語4億人、話せる人が8億人なので(合計16億人)、単純に日本の10倍以上のマーケットがあるということか。
恵まれています。

小説というのは、あらゆる予備知識なしで読むのが一番面白いと思います。三部作のあらすじをイーグルスのTwenty-Oneの下に書いたので、本や映画を見る予定の方は読まないほうがいいかも。

21歳、人生は朝日のように始まったばかり♪





ワシントン州立大学の卒業を間近に控えた21歳のアナスタシアは、これまで恋らしい恋をしたことがない。ある日ルームメイトのケイトに頼まれ、超巨大企業のCEOにインタビューをする。

ケイトは学生新聞の編集長で、やっとのことで大学にも多額の寄付をするCEOのアポイントを得たのだが、風邪をひいてしまった。アナスタシアはケイトの代役だ。

インタビューに現れたCEOは、ギリシャ神のような美貌とクロイソス王の財力を持つ若き起業家、クリスチャングレイ。一目ぼれ、初めて会った瞬間、二人のあいだに恋の火花が散り、アナスタシアは生まれてはじめて恋心を知った。この人になら一番大切なものを捧げてもいい。

しかしクリスチャンには重大な秘密があった。彼はSMの世界の住人なのだ。鞭に手錠に足枷、調教にお仕置き。SMプレイの支配者として従属者である女性を肉体的に愛することしかできない。

クリスチャンは期限三ヶ月のSM契約を持ちかける。ふつうの恋愛に憧れるアナスタシアは、彼のものになりたいという気持ちや好奇心と、不安や嫌悪感とのあいだで戸惑い、揺れ動く。ましてや彼女はバージンだった。

クリスチャンがSM世界にのめり込んだのは、彼の生い立ちに原因があった。彼女とつきあううちに、彼はふつうの恋愛ができるようになるのか?二人の関係はどうなるのか。


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この第一作目は、SMに耐えられなくなったアナスタシアがクリスチャンの元を去るところで、終わっています。SMという屈折した愛情表現しかできないクリスチャン。しかし二人は深く愛し合っています。

翻訳版はまだですが、第二作は卒業して出版社に就職したアナスタシアが、クリスチャンの心の傷を癒しプロポーズされるまで。三作目は二人の子供ができ出版の仕事も成功するという。

イケメンな大富豪に惚れられて、彼の心の傷を癒し、素晴らしい家庭を築き、セックスの相性もぴったりという、現代のシンデレラストーリーでした。ハッピーエンドは好きなので、翻訳版最後まで読んでみようかな。ま、ほんとの人生はハッピーエンドの後、アフターシンデレラをどう過ごすかなんですけどね。

p.s. SMバーは何度か行ったことがありますが(ノンケですが、話のネタに)、ローソクを垂らすのは、あまり熱くありません。ああいう場所に集まる人は、人の痛みがわかる人が多かった。どうでもいい事かもしれませんが^^

(追記)映画の予告編です。ちなみに映画の5分の1はセックスシーンだそうで。初々しいカップルは要注意。




フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ (上) (RiViERA)

フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ (上) (RiViERA)

  • 作者: E L ジェイムズ
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2012/11/01
  • メディア: ペーパーバック





フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ (下) (リヴィエラ)

フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ (下) (リヴィエラ)

  • 作者: E L ジェイムズ
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2012/11/01
  • メディア: ペーパーバック




(関連記事)
【フィフティ・シェイズ・ダーカー/ELジェイムズ/13年2月初版】
 http://donhenley.blog.so-net.ne.jp/2013-05-25


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「真冬の向日葵/三橋貴明」要約まとめ [本/文学芸術]



真冬の向日葵 ―新米記者が見つめたメディアと人間の罪―

真冬の向日葵 ―新米記者が見つめたメディアと人間の罪―

  • 作者: 三橋貴明
  • 出版社/メーカー: 海竜社
  • 発売日: 2012/09/11
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


【真冬の向日葵/三橋貴明/12年9月初版】
故・中川昭一氏の不自然な酩酊会見、その後の急死、麻生、安部総理へのマスコミからの 異常なバッシングに、違和感を感じたすべての人が読むべき本。あれに何も感じない人は 読む必要はありません(笑) 裏でなにがあったか、中川の高校の同期の財務省の玉○国際局長は、女性と共に中川(酒に強い)を、わずかワイン2杯で酩酊させ、上司である中川がまともでないのに強引に会見させ、自身は異例の昇格を果たした。ここまで卑劣な男は許せない。

この本はフィクションなんですが、山崎豊子みたいなもんでかなり核心にせまってます。 結局、日テレのウジ○エと読売のナベ○ネが、財務官僚、民主党議員、など利害関係の 一致する人間と手を組み、自民の保守議員に対してアンチキャンペーンを張った。

それに朝日も同調したということでしょう。朝日新聞主筆若宮の「安部バッシングは朝日の社是」発言など、もうマスコミとは思えません。

欧米の先進国の多くでは、言論の多様性やメディアの相互チェックを確保するため、新聞社が 放送局を系列化する「クロスオーナーシップ」を制限・禁止する制度や法律が設けられています。 日本も即刻禁止し、広告税の導入や、諸外国並みの電波利用料(テレビ)とすべきであると。 だけどそんな政策を掲げると、すべてのマスコミから袋叩きにあうのでしょう。


以下に卑劣なマスコミが麻生、安倍、中川の3名に使ったプロパガンダ手法を明記しておきます。

<ネームコーリング>
対象となる相手に悪しきイメージをもたらすレッテルを貼り、それをひたすら繰り返すという手法。たとえば「麻生クーデター説」を何百回とメディアで繰り返し、「麻生=クーデターの首謀者」という悪印象を大衆に与える。

コミュニティに対しても影響を与える。周囲が「麻生クーデター説」を信じてる場合、その空気に逆らえば、自身のコミュニティからの排除の可能性が生まれる。




<バンドワゴン効果>
勝ち馬に乗れ。ある選択が多数に受け入れられている、流行しているという情報が流れた結果、
その選択への支持が一層強くなること。たとえば民主党の支持率が大したこともないのに、
実数以上に報道すると、国民の意思が影響を受け勝たせる効果が発生する。




<人格攻撃・非平凡化>
麻生が金持ちで高慢で一般人とはかけ離れた感覚をもつ存在である、というイメージを繰り返し報道させ、人気を落としていく。権力者が大衆と同じ境遇にあることを示して、民衆から安心や共感を引き出す、これを平凡化と呼ぶ。その逆で権力者が「大衆的でない」ことを強調し、民衆に疎外感を感じさせる方法が非平凡化。




<報道しない自由>
ダボス会議での麻生の素晴らしいスピーチや、IMFから日本への「人類の歴史上最大の貢献」という感謝の意などの功績を一切報道せず、ラーメンとかホッケとかホテルのバーとかの、政策に関係ない内容ばかりを報道する。




<カードスタッキング>
自分に都合のいいことのみを報じ、不都合なことは隠すという手法。アニメの殿堂は麻生の個人的な趣味というレッテルを貼り、その報道を繰り返す。総事業費58兆円もの大型景気対策をそのまま報じると、麻生首相が果敢な景気対策を行なおうとしているという真実を多くの国民が知ってしまう。

麻生の早期退陣を願うウジ家とナベツネにとって、その政策が功を奏し実際に景気が回復し麻生の手柄にされることは望ましくない。58兆円の景気対策のうち、わずか117億円のアニメの殿堂のみをクローズアップさせ、激しく批判した。



どう転んでもあと1年内には衆院選挙が行なわれます。今回の選挙の経済政策での主な争点は以下です。

自民党      VS    みんな&維新の会
ケインズ主義        新自由主義
デフレ時の政策       インフレ時の政策
TPP反対           TPP賛成
増税は景気回復後      景気回復を待たず増税
インフレターゲット     政策上デフレ維持
円の希薄化よる円安     円高維持

色々書くより、単純にケインズ VS フリードマンの対決です。デフレの日本にどちらが相応しいか、世界の潮流(アンチグローバル)や、40年続いたフリードマンからケインズ復権への流れ、などをみて各人が判断すべき事だと思います。

しかし朝日新聞は、社是のアンチ安倍と、取材拒否の橋下のどちらを優先するか見ものです。案外こりずに民主党を勝たせようとしたりして^^;


テイラースイフトで「チェンジ」 2番の歌詞がかなりいい歌です。まさに逆境での戦いの詩です。(日本語和訳つきのヨウツベ) 心の底から力が湧いてきます。


不公平な戦いをするのは大変だ でも強くなってきている♪
風向きが変わり 今夜は私たちが勝ち 立ち上がる♪

p.s.ニューアルバム「レッド」は10月24日発売です♪

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「サラダ好きのライオン/村上春樹」の感想 [本/文学芸術]



村上ラヂオ3: サラダ好きのライオン (新潮文庫)

村上ラヂオ3: サラダ好きのライオン (新潮文庫)

  • 作者: 村上 春樹
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2016/04/28
  • メディア: 文庫


【サラダ好きのライオン/村上春樹/12年7月初版】
村上春樹のアンアン週刊連載の1年分のエッセイです。
10年前に1年連載、今回は2年の連載で終了したようです。(村上ラジオは全3巻です)

80年代の初頭からこの人の本を読み始めて、そろそろ30年ほど楽しみに読んでます。
ずっと読んでると、なんとなく夫婦仲まで透けて見えてきます。
最近は奥さんとうまくいってるなぁ。最近はだいぶ奥さんに頭あがらないなぁとか^^

円熟のエッセイで、すごく肩の力が抜けてきてます。
甲本ヒロトのボーカルがブルハのときは硬くて、ハイロウズになったら力が抜けたみたいに。

そういえば村上氏、テレビやラジオには1度も出演したことが無いようですね。
すべて断ってるそうです。1度くらい見かけたことがあるような。
あ、村上龍だったか^^


以下に心に残った部分を転記します。


<女性の怒り>
僕なりに、女性全般について長年抱いている説がひとつあります。
それは「女性は怒りたいことがあるから怒るのではなく、怒りたいときがあるから怒るのだ」
ということだ。

~中略~

結婚した当初は、何が起こっているのかさっぱり理解できなかったが、
回数を重ねるうちに「そうか、そういうことなのか」とおおよその仕組みがわかってきた。

相手が怒っているときは防御を固め、おとなしくサンドバック状態になるしかない。
自然災害に正面から立ち向かってもまず勝ち目はないからだ。
賢明な水夫のようにただ首をすくめ、何か違うことを考えながら、無法な台風が過ぎ去るのを待つ。

風がやんだら、そろそろと頭を上げ、慎重にあたりの様子をうかがう。
そして事態は一段落したようだと判断したら、
あとはいつものこっちのペースに戻って「ふんふん」と鼻歌まじりに適当にやっていればいい。
でもやがてそのうちに、あれあれ、まずいなまた頭上に不吉な暗雲が・・ということになる。



<文章の書き方>
~~文章を書く時には、できるだけ読者に対して親切になろうと、ない知恵をしぼり、
力を尽くしています。エッセイであれ小説であれ、
文章にとって親切心はすごく大事な要素だ。少しでも相手が読みやすく、
そして理解しやすい文章を書くこと。

でも実際にやってみるとわかるけど、これは簡単なことじゃないです。
わかりやすい文章を書くには、まず自分の考えをクリアに整頓し、
それに合った適切な言葉を選ばなくてはならない。
時間もかかるし、手間もかかる。いくぶんの才能も必要だ。
適当なところで「もういいや」と投げ出したくなることもある。~~以下略。



<キリギリスはセミだった>
イソップに「アリとキリギリス」の話がありますね。
あれはそもそも「アリと蝉」の話だった。
ギリシャには蝉がいたから、イソップはごく普通に蝉の話を書いた。
ところがそれでは北方のヨーロッパ人には話の意味が理解できないので、
蝉をキリギリスに変えてしまった。

日本人なら逆に「ああなるほど、あれは蝉だったんだ。だったら話はよくわかるよ」
ということになりますよね。夏には賑やかに騒ぐんだけど、秋風が吹く頃に落ちぶれる。



マムフォード&サンズでリトルライオンマン♪



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「清須会議/三谷幸喜」の感想 [本/文学芸術]



清須会議

清須会議

  • 作者: 三谷 幸喜
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2012/06/27
  • メディア: 単行本


【清須会議/三谷幸喜/12年6月初版】
映画化が決定された、三谷幸喜の時代小説。
272pが3時間ほどでペロッと読めちゃうとても面白い本です。
さすがに脚本家だけあって、
各登場人物のモノローグ方式(独白・2~3pずつ)で物語が進行していきます。
しかも現代語訳です。ちなみに本能寺の変の信長のモノローグ部分を参考まで。
「今、ちょっと腹の皮を切ってみた。あ、意外と痛い。
お腹切るって結構、きついんだね。もうちょっといってみるか。あ、痛てててて。」

歴史小説にこの軽さが許せないタイプの人は、読まないほうがいいでしょう。
司馬さんだって娯楽作品ですが、あの人が小説を書くと、
その題材のものが古書店街から消えちゃうと言われる程の凄みがあります。
だから新史観でも史実のように思われちゃったりするのでしょうけど。

娯楽作品として読む、この1点にかけるととてつもない良作です。
現代語訳なので、これ史実?とか思っちゃう部分もありますが、
こちらも歴史マニアでもないし一々裏もとってないです。楽しけりゃ~ええじゃないか^^


以下に印象に残った部分を。

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<神輿は軽いほうがいいというのが世の習い>
司馬史観では秀吉は、三法師(信長の長男・信忠の息子)を推した事になっているが、
本書では最初信長の次男・信雄(バカ殿)を推している。
そのバカ殿を推す理由が神輿は軽いほうがいい。
ちなみに柴田は少し器量のある三男・信孝を推した。

p.s.司馬さんの新史太閤記の清須会議の部分は、全集でわずか10pほどです。
柴田の使者が秀吉との会話の中から、
信雄を推すと推測しただけで会議では当初から三法師を推しています。
もちろん本書のようなイノシシ狩なんかはありません。
会議もこの本のような4人の密室での会議ではなく、全員でやっています。
それと柴田勝家はもっと重厚です。。



<お市に袖にされた秀吉を黒田官兵衛がなぐさめる>
浅井長政との長男・万福丸の処刑に秀吉が立ち会った。
市がどれだけ頭を下げても秀吉は願いを聞かなかった。
信長に偽ってそっと仏門に入れることもできたはずなのに、秀吉は許さなかった。
それゆえ市に嫌われている。以下官兵衛のモノローグ

「一言申し上げておきますが、万福丸様の件に関しては、
殿は何一つ悔やまれることはありません。
戦において、勝ったものが負けた身内を処刑するのは世の習い。
生かしておくと、必ず将来災いのもとになります。
平清盛入道が、幼き源頼朝公と義経公の兄弟を救ってやったばかりに、
平氏は源氏に滅ぼされてしまったのです。」



<秀吉と官兵衛の会議状況の分析のシーン秀吉の独白>
さすがは官兵衛である。オレが試しているのを見抜いたから言うのではない。
オレは本気で聞いたのだ。並みの軍師なら、ここですぐさま自分の考えを述べるところだが、
官兵衛は違う。決して己の知恵をひけらかすことをしない。
知恵が回りすぎる軍師は、かえって主人に恐れを抱かせるもの。
恐れはやがて不信感となることを官兵衛は知っている。



<宿泊先の西覚寺での諸氏を接待後のねねの独白>
昔もこんな感じだった。藤吉郎は何かと言うと、家に人を連れて来ては、朝まで騒いだ。
最初はただの酒好き、遊び好きだと思っていたが、次第にそうではないことが分かってきた。
藤吉郎はそうやって人の心を掴み、情報を集めていたのだ。

夫は本来暗い人間である。生まれながらに右手に障害をもっていたこともあり、
本人の話では、子供のときは、人と交わるのが苦手だったそうだ。
でも出世には人脈作りが欠かせないことを知った藤吉郎は、ある時一念発起し、
それ以来見違えるように明るくなった。

だから彼の明るさには無理がある。それが私には分かる。
酒の席の彼を見ていて、たまに胸が苦しくなるのはそのせいだ。
だから私も出来るだけお手伝いしたいと思う。

今も夫は、ただ皆と酒を飲んで騒いでいるのではないのだ。これがあの人の戦なのだ。
こうして人々の心を虜にしていくのだ。ここにいる人たちは、
直接会議とは関係のない人たちだ。でも藤吉郎は知っている。
大衆の人気を掴んだ者が、時代を動かすということを。


敵をできるだけ作らないように動く、秀吉の政治学は非常に素晴らしい。
でっかいのをおみまいするぞ、という米国の政治学を批判する、
ランディニューマンのpolitical science♪歌詞は以下のサイトの訳をご参考まで。
http://ameblo.jp/shionos/entry-10010597808.html
ハイロウズのアメリカ魂に通じるものがあります。




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「永遠のゼロ/百田尚樹」の感想 [本/文学芸術]


永遠の0 (講談社文庫)

永遠の0 (講談社文庫)

  • 作者: 百田 尚樹
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2009/07/15
  • メディア: 文庫


【永遠のゼロ/百田尚樹/06年8月初版】

2013年の映画化が決定した、100万部ベストセラーの永遠のゼロ。
まだ読んでなかったので、映画化を機に図書館から借りてみました。

「僕は号泣するのを懸命に歯を喰いしばってこらえた。が、ダメだった」
とは故・児玉清。今年前半に読んだ小説の中では、一番面白かったです^^
といっても、小説はあんまり読んでないのですが[ふらふら]

尊敬していた祖父とは血の繋がりが無く、祖母は子連れの再婚だった。母がもらした、
「本当のお父さんはどんな人だったのかな。私はお父さんの事を何も知らない。」
の一言から、海軍特攻隊として散った祖父の事を孫が調べるという話です。

フリーのジャーナリストの姉と、弁護士試験に落ち続ける弟という時間のたっぷりある二人が、
祖父の戦友を訪ね歩き、彼らの話から祖父がどんな人だったか輪郭がはっきりしてきます。

世の中には、大東亜戦争の事を良く知ってる人間と、ほとんど知らない人間の2種類がいます。
ぼくは後者のほうです。読めば読むほど、悔しく悲しい話なので長い間避けていました。
司馬さんも書かないですしね。

とはいえ健康な男なので、戦争映画は好きだし、小学校のときに図書館でのらくろは読破したし、
ジオラマにもハマりました。ウォーゲームにも熱中しました。
とくに「ミッドウエー海戦」と「ノルマンディ上陸作戦」は、友人たちとやりこみました。
ミッドウエーは戦い方次第で連合艦隊が十分に勝てます。所詮こどもの遊びですが。

小説のパターンとしては、浅田次郎の壬生義士伝や松井今朝子の吉原手引草のような、
いろんな人を訪ねまわって、その人の過去の輪郭がはっきりしてきて、
最後に極上の落ちがあるというスタイル。

「永遠のゼロ」の場合は、真珠湾から終戦の特攻までを、エースパイロットとして転戦するので、
大東亜戦争での海軍の戦記が、労せず頭に入ってきます。

真珠湾、ミッドウエー、ラバウル、ガダルカナル。。
とくにサイパンは戦前からの日本統治領で日本人町があって民間人も多く住んでいました。
日本国はここを絶対国防圏とし、真珠湾以来のZ旗を掲げて挑みます。
結果はレーダーや米軍の新兵器や、海軍パイロットの未熟さにより、
米軍には「マリアナの七面鳥撃ち」と言われる惨敗です。

米軍は実力のあるものが隊長になるけど、日本軍は兵学校を出たエリートが仕官になるので、
戦術指揮が未熟です。米軍パイロットの出動は週1回ほどのローテーションだけど、
日本軍のパイロットは連日出動の酷使で神経が擦り減ります。

米軍パイロットは撃墜されても、パラシュートで脱出して潜水艦が回収し、
熟練度の上がったパイロットが何度も出てくるのに対し、日本軍は一度撃墜されれば終わりです。
なんかもう読んでて悲しくなる。。

サイパンを陥とされギリギリまで追い詰められた日本は、
フィリピンをレイテ沖海戦で必死に守ります。
フィリピンを陥とされると、南方との連絡が途絶え石油などの資源が途絶えるから。

武蔵や瑞鶴を沈められながら肉を切らせて骨を絶つ決死の作戦が実り、
ハルゼーの艦隊が栗田艦隊の前におびき出されます。ここで米軍に奇跡が起きます。
史上有名な「栗田艦隊の謎の反転」です。連合艦隊は米軍を叩く絶好の機会を逸しました。
この翌日から日本軍は神風特攻を始めます。

その後は、沖縄ではヤマトの特攻もあります。沖縄が陥とされ本土はB29で民間人が虐殺され、
最後は原爆2発です。

この本から伺える失敗の本質は、マスコミの無能さ(開戦を国民に煽った)と、
軍エリートの官僚体質です。今となんら変わりありません。

そういえば、松本零士の戦場漫画シリーズで面白かった、
「スタンレーの魔女」という名作短編があるのですが、そのスタンレーが出てきます。
ニューギニアを南北に割る4000m級の山のことです。懐かしかった~。








以下にこの本から目についた部分を。
祖父がガダルカナルで戦死してるので、そこの部分は、とても印象に残りました。


<ガダルカナル>
ガダルカナルの兵士はこんな生命判断を行っていたといいます。
「立つことの出来るものは30日、座ることの出来るものは3週間、
寝たきりになったものは1週間、寝たまま小便するものは3日、
ものを言わなくなったものは2日、ままたきしなくなったものは1日の命」と。
結局総計で3万人以上の兵士を投入し、2万人の兵士がこの島で命を失いました。

2万人のうち戦闘で亡くなったものは5千人です。残りは飢えて亡くなったのです。
生きてる兵士の体にウジがわいたそうです。悲惨な状況でした。

海軍もまた多くの血を流しました。沈没した艦艇24隻、失った航空機839機、
戦死した搭乗員2362人。これだけの犠牲を払って、ついにガダルカナルの戦いに敗れたのです。

そして戦いが終わった時、海軍の誇る珠玉とも言える熟練搭乗員のほとんどが失われていました。
今にして思えば、この時、日本の負けがはっきりしたと思います。
しかしアメリカとの戦争はこの後2年以上も続いたのです。



<なぜゼロ戦と呼ばれたか>
ゼロ戦が正式採用になった皇紀2600年の末尾ゼロをつけた。皇紀2600年は昭和15年。
ちなみにその前年の皇紀2599年に採用になった爆撃機は、九九式艦上爆撃機、
その2年前に採用になった攻撃機は九七式艦上攻撃機、いずれも真珠湾攻撃の主力となった。
ゼロ戦の正式名称は、三菱零式艦上戦闘機。これは日本が真に世界に誇る戦闘機。



さだまさしで「兵士の手紙ときよしこの夜」、特攻隊の遺書を朗読する歌です。



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「コレキヨの恋文/三橋貴明」の感想 [本/文学芸術]



コレキヨの恋文 (PHP文庫)

コレキヨの恋文 (PHP文庫)

  • 作者: さかき 漣
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2015/02/04
  • メディア: 文庫


<コレキヨの恋文/三橋貴明/12年4月初版>
おもしろいですよ♪いわゆる読み出したら止まらないノンストップ小説です。
泣きそうになった所も数箇所あったし、噴き出すところもあります。
なんてゆうか、ハリウッド映画みたいです。

著者の三橋氏(たぶんもう説明不要の人になってるでしょうけど)が、小学館の編集者に、
「三橋さん、もしドラみたいな本書いてくださいよ」と頼まれて書いた本です。

「青天の霹靂で日本初の女性首相になってしまった霧島さくら子。
稀代の財政家・高橋是清に学び、経済政策を成長路線へと大転換。次々と大胆な政策を打ち出す…。
果たして日本は復活できるのか。泣いて笑って、日本と世界の経済の仕組みがストンと分かる、
人気エコノミストによる傑作小説。」

たぶん民意はこの本の中に詰まってます。多くの政治家に読んでもらって、
主人公みたいに日本を復活させてください。この本に書かれてるマクロ経済政策や、
外交政策を、そのまま実行すれば、かなりの確率で日本は再生できると思われます。

ちなみに主人公の女性のモデルは弔い選挙で衆議院議員になった小渕さんぽい。
麻生さんに頼まれて34歳独身で内閣総理大臣になります。さすがにこのへんは名前を変えてます。

だけど鳩山、管、小沢、野田総理あたりは実名で悪行を書かれてます(笑)。
まぁほんとの事だからしょうがないか。[ふらふら]

201X年ということですが、
第97代総理大臣ということは、野田総理が95代なので、1~2年先のイメージです(笑)

増税に走る官僚との対決、TPP、対中国の防衛問題(シーレーン)、円高、外国人参政権、
人権擁護法案etc、積み上がる難題を彼女はどのように解決していくのか。

エンターテーメント小説なので、ストーリーは伏せますが、彼女が手がけた2つの大きな法案を記します。
よく飲んだときに政治好きな同僚とウワウワ言ってる話なんですが、
公務員給料はGDP連動型にすべきで(ぼくらの業績連動型ボーナスといっしょ)、
日銀にはインフレ率、財務省&経産省にはGDP成長率の目標値を設定させて、
達成できなければ、減給やTOPに責任を取らせるべきであると。彼らは基本的に優秀なんで、
必死になって達成させてくるはずです。そういう方向に持っていこうとすると弊害になるのが、
以下の二つだと思います。

<日銀法再改正>
まず日銀法には大きな欠陥が2つある。
・日銀総裁の任命権は国会がもつが、その罷免権はこの世の誰ももたない。
・日銀はインフレ率の目標を日銀のみの判断で決定できる。

これを以下のように改正します。
・インフレ率の目標は政府が定め、日銀は独立した手段をもってその目標を達成する。
定められた期限内に達成できなかった場合、日銀総裁は説明責任をもつ。
説明が不十分な場合、国会は日銀総裁を罷免できる。

この「手段の独立」「総裁罷免権を政府がもつ」はグローバルスタンダードで、
世界主要国の中央銀行と同じにするだけ。


<歳入庁の設置>
財務省にだれも逆らえない元凶となっている、国税庁(=査察権、警察力)を切り離し、
厚労省傘下の日本年金機構など、社会保障関連の特殊法人と統合した「歳入庁」を、
内閣府の外局として設立するという法案。

そも徴税という行為は裁量範囲が広い。
裁量をフル活用すると企業や政治家は確実に脱税として処分されてしまう。
予算配分で大きな影響力をもつ財務省が、国税庁の警察力まで振りかざした日には、
日本の政治家や国民は全く逆らえなくなる。財務省への極端な権力集中が、
20年にもおよぶデフレの長期化という形で顕在化したのは間違いない。



歳入庁設置にはマスコミがいっせいに反対します。財務省と大手紙は長年にわたり癒着しているから。
元財務官僚は、天下り先のひとつとして大手新聞社の取締役というのが常態化してるそうです。
かれらは一体化し、新聞社とテレビはクロスオーナーシップ(新聞社がテレビ局を系列化すること)により、
同調します。ちなみに欧米はクロスオーナーシップは禁止されています。
メディアの相互チェック機能のために。

彼女と彼女のブレーンは、
マスコミや野党などの抵抗勢力とどうやって戦いこの法案を通していくのでしょうか?
前時代的なシャーベット色のスーツを着た社民党党首の総理!総理!とせまるアホ丸出しの質問には、
思わずニヤリとします。


この本映画化を目指してるようです。コレキヨには著者と親交のある津川雅彦氏や、
コレキヨに似てる西田敏行氏あたりが推されてます。ヒロインは30代半ばの美女ですね。
だれがいいのだろう^^
麻生元総理の役はそのまま本人でいいじゃないかとの意見もあります(笑)


さいごに小説なので文体に関して。三橋氏の文章は経済本としては、非常に読みやすく、
わかりやすい文章を書くのですが、小説には風景描写が必要です。ストーリーを追うタイプの読み手は、
そういう部分は読み飛ばすのでしょうけど、背景を目に浮かぶように流麗に描写されると、
小説の輪郭がはっきりして味わいが深まります。

そこの部分を執筆協力を頼んでいます。
そういう意味では文章をひり出すような航跡が感じられないので、
小説家の書いたものと比べると軽い感じがします。
が、補ってあまりあるストーリーの面白さと知見が、読むものをノンストップの世界に引きずり込みます。[新幹線]

Time, flowing like a river
Time, beckoning me
Who knows when we shall meet again
If ever
But time
Keeps flowing like a river
To the sea
Goodbye my love,
Maybe for forever

時は川のように流れ
時はわたしをも招く
二人が再び会うことはないとおもう
時は川のように流れつづけ 海へ
さようなら大切な人 永遠に 
(一部抜粋訳、don)

この本の内容とぴったりだったので。アランパーソンズプロジェクトでタイム♪
ロック史上最も有名なエンジニアですよね。ボブクリアマウンテンやグリンジョンズをも凌ぐくらい。
ミュージックエアで「狂気」を1時間特集しててボケーっとみてると、
アランパーソンズのミキシング能力は凄まじいです。
あの上下に動かすタイプのミキサーをサッサと動かすと、欲しい音がピタリ。神業でした。
これは2004年のライブなんで81年当時のボーカルのエリックではないです。
が、プロジェクトバンド、さすがにうまいです。もうスタンダードですね[るんるん]


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「苦役列車/西村賢太」の感想 [本/文学芸術]



苦役列車 (新潮文庫)

苦役列車 (新潮文庫)

  • 作者: 西村 賢太
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2012/04/19
  • メディア: 文庫


<苦役列車/西村賢太/11年1月初版>
前田敦子、森山未來で12年7月からロードショー予定の原作本です。
2011年の芥川賞受賞作で、中卒の芥川賞作家として、また受賞時のコメント、
「そろそろ風俗に行こうかなと思っていた」が話題を呼び、異例の売上げとなりました。

ふだんあんまりフィクションは読まないのですが、
ソネブロの映画ブログで珠玉の記事を書かれてる青山実花さんが、
西村賢太にハマッテおられるとのこと。
ふと興味をもち読んでみました。⇒http://aomikamica.blog.so-net.ne.jp/

ぼくは水戸黄門が好きな底の浅い人間で、主人公が不幸になっていくと、
こちらまでドキドキしてきます。つい重ねてしまうんです。だからつらい本は読みたくない。
つらいことは現実だけでいいじゃないですか(笑)ちなみにこの本は全然つらくない。
だからじっくりと考えながら読むことができます。

ひさびさに聞いた日本のブルーズでした。読めば色々と思うことがあります。
文体は、著者が趣味としてる古本めぐりからか古色蒼然。目についたのは、
原因のことを、因と何度も書いてることです。因なんて仏語ですよねぇ。
よく司馬さんが、誰が→たれが、みたいなもので目につきます。
ついまねしちゃいそうです(ウフフ)。

著者がテレビでも公言してて、コンプレックスを見事に克服してるので書きますが、
性犯罪者の息子として中卒で労働に従事し、
社会の底辺からものを見てるからこそ書けることがあります。
いったいたれがそんなことが、今の日本の文壇で書けるでしょうか。
「なんとなくクリスタル」の正反対にいる、地に足のついた偽善のない青春小説です。

私小説ということで、作者に大いにかぶるところがあります。
ひさびさに大笑いした(最近笑ったことが少ない人は、ぜひ大笑いしてください)、
以下の動画と本で書いてることが同じなんです。いわゆるフュージョンです。
動画で大笑いしたあとにこの本を読むと、そのフュージョン具合にニヤリとします。
https://www.youtube.com/watch?v=nLL8X_0QC6Q

主人公の北町貫多(著者は西村賢太)が飲む酒は40代でも宝焼酎です。
あれは4Lで2000円なんです。トリス4Lの2800円と双璧の、アルコール単価が最安値ゾーンです。
飲む酒からしてブルーズ臭がびんびんです。

そういえばブルーススプリングスティーンが、
「キャデラックに乗ってたら、ブルーズは歌えないよ」と、
たしか80年代くらいに言ってましたが、その後のスプリングティーンは別として(笑)、
西村賢太はどうなるのでしょうか、今後が楽しみです。


スプリングスティーンの歌では、心に沁みるハイウエイパトロールマンです。
粗暴な弟をなんとか更正させようとしていた兄が、
たぶん殺人をおかしてしまった弟を職務で国境まで追いかけます。
兄はカナダの国境5マイルのところで、ハイウエイの横に車をよせ、
watched his tail-lights disappear する歌です。


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「野蛮人の図書室/佐藤優」要約まとめ [本/文学芸術]



野蛮人の図書室

野蛮人の図書室

  • 作者: 佐藤 優
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2011/11/30
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


【野蛮人の図書室/佐藤優/11年11月初版】

タフでインテリな佐藤優のブックガイド。
「交渉術」ですごい人がいるもんだな、とファンになりました。

その後に小林よしのりの「わしズム」を小学館に圧力かけて廃刊に追い込んでから、
激しい論争が始まりました。アイヌ、沖縄問題です。
(どこがタフか、1日の睡眠時間が毎日3時間で、山のように本を読み、
酒の量が半端でない。ロシアでアントニオ猪木議員と、ウォッカ3本を二人であけたそうです)

まぁ小林よしのりと物書きが論争を始めると、たいがい物書きがボコボコにされて、
世論は小林よしのり側につきます。物書き側の意見は、誰も読まない固い言論誌に収録されて、
小林よしのりはゴー宣です。

庶民は小林氏が知識人をボコボコにするところに、カタルシスを覚えるのでしょうか。

そんな佐藤優ですが、外務省のラスプーチンの異名をとり、
国際情報局分析第一課での情報活動に従事した経験や、
宗男疑惑で512日間の拘留歴が、単なる知識人と一線を画します。
ノンキャリというところも人気の要因でしょう。

本書は週刊プレイボーイの書評連載をまとめたものです。
宮崎哲弥の「新書365冊」もなかなか面白い書評本でしたが、
本書は120冊くらいの書評本です。1冊を2ページほどで紹介していますが、
要旨が理解できる類のものではありません。佐藤氏のフィルターを味わうものだと思います。

以下に読書メモを

<経済学の効用/宇野弘蔵より>
人間ひとりの労働で、自分自身が生活するよりも多くの生産物を生み出してるのは、
自明であるにもかかわらず、資本主義体制下では貧困や失業が発生する。

⇒なんでかと考えると、結局資本家に搾取されてるということなんでしょう。
1回目は給料でサヤを抜かれて、2回目は金融商品(要は保険の一種)などでペテンにかけられて。
一部の資本家が一人勝ちしてます。

P.S.日本市場の売買は、株式の70%、国債の40%が海外ヘッジファンドです。
(保有高ではなくて、1日の売買数)今のヘッジファンドはロボットトレーディングです。
最大で1秒間に3000回だそうです。
吊り上げて、ピーク(個人売買が参入した時点)へ向けてポジショントークして、
その後に落として空売りで益を得る。個人投資家は長期保有でないと、儲からないはずです^^



<小泉八雲/かけひきより>
死刑にされる罪人が、恨んで仕返しをするという。そこで主人は証拠を見せろ、
首を切られても石に噛み付けと言い放つ。

瞬間首は切られ、ごろごろ転がった首は石のほうへ行き、一瞬必死に石にかじりついた。
屋敷のものはみな祟りを恐れたが、主人はまったく恐れていない。主人いわく、
「あの者の最後の意志は剣呑であった。それで証拠を見せるように言い、
あれの心を意趣からそらしたのだ。あの者は石に噛みつきたい一心で死んだ。
その一心は果たすことができたので、他はみな忘れてしまったにちがいない」

狡猾な主人は、罪人の最期の一念の恐ろしさを熟知してるので、
あえて石という偽の標的を与えたのだ。

佐藤優は言う。2002年の鈴木宗男疑惑のときの激しい自身へのマスコミバッシングに対し、
マスコミを恨んでいない。マスコミは石のようなものだ、
本当に悪いのは虚偽情報をマスコミに流した外務官僚だ。
仇討ちはマスコミでなく、外務省に対して行うべきだと小泉八雲から学んだと。



<統帥綱領/大橋武夫より>
組織において、リーダーシップはきわめて重要だ。戦場で、間抜けな兵隊がいる場合、
そいつが弾に当たって死ぬだけのことだ。しかし司令官がバカだと部隊が全滅する。
これは軍隊だけでなく、企業や官庁にも言えることだ。



<12人の怒れる男戯曲版/レジナルド・ローズより>
無罪を立証する必要はないのです。有罪が立証されるまでは無罪なんです。
あの少年は被告で、被告は何も証明しなくていいんです。発言しなくてもいいんですよ。
これは憲法で保証されていることです。

⇒黙秘権や裁判員制度について考えさせられます。白黒だけどすごい映画でしたよね!



<国家秘密>
佐藤優の経験からして、国家秘密(軍事秘密を除く)の95~98%は、新聞、雑誌書籍、
政府機関のHPなど誰もがアクセスできる公開情報から得られる。
ただし公開情報は玉石混交なので、有益な情報を選び出すコツがいる。
(コツとは、読書等で自分の知識量を増やしておくこと。
ある程度の知識が無いとそれがダイアモンドかどうか判断できない)



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なぜ印象派は売れたのか?「印象派で近代を読む」より [本/文学芸術]



印象派で「近代」を読む―光のモネから、ゴッホの闇へ (NHK出版新書 350)

印象派で「近代」を読む―光のモネから、ゴッホの闇へ (NHK出版新書 350)

  • 作者: 中野 京子
  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 2011/06/08
  • メディア: 新書


【印象派で「近代」を読む/中野京子/11年6月初版】

「怖い絵」のベストセラーで知られる中野京子(西洋文化史、ドイツ文学が専門の早稲田の講師)が、
印象派の絵を歴史的背景をもとに解説します。

たとえばドガのエトワール。
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従来の絵の解説だとテクニック論なのですが、彼女の解説は面白い。
バレエを習うのは裕福な家の出身で、大変な努力をしてプリマ(エトワール)になったというのが現代の感覚。
しかし当時のバレリーナはオペラの添え物でしかなく、売春婦と同義であり、
プリマとして踊ってるのは実力ではなくパトロンの後押し。
左の黒い燕尾服はパトロン。さらにオペラ自体も高級娼婦とブルジョワ階級紳士との出会いの場。


たとえばドガのアブサンを飲む人。
img_1464555_14403181_0[1].jpg
手前にあるのは新聞で、朝から飲んでると言う設定。一夜をともに明かした客と娼婦と想像できる。
安くてアルコール度数が高くすぐ酔える、貧しい人たちの酒が、
当時イギリスではジン、フランスでは黄緑色のアブサン。
アルコール度数が70%で水を混ぜると白濁する。
またニガヨモギ他の香草エキスをまぜた薬草系リキュールで、
言わばアルコールと麻薬を混ぜたようなもの。

アル中とは比較にならない激烈な作用があり(幻視、虚脱感、精神障害)、
印象派ではロートレックとゴッホがアブサン中毒。
(20世紀初頭に製造販売が禁止され現在販売されてるのは、名前だけ同じの似て非なる酒)
そんな強いアブサンを朝から飲まずにおれない、人生を放擲した女性の姿を描いてる。



(なぜ印象派は隆盛したのか)
一言でいえば印象派のパトロンはアメリカです。
裕福になったアメリカは美術館など箱物をたくさん建てました。だけどモナリザは飾れません。
そこでフランスでは蔑まれていた、新興勢力の印象派の絵を大量に高値で購入しました。
その後フランスにも価値が逆輸入されて、現代の印象派人気につながります。

なぜ印象派は蔑まれてたのか。
フランス官展の審査員は従来顧客の王侯貴族や教会など一部エリートが好む絵を選定します。
神話や歴史を総動員して「読む」知的な絵です。
新興勢力の印象派は美を描写しただけなので、そういう知的な部分がありません。
海外から評価されるまで、そんな絵が価値あるものだと思わなかったのです。




もっと知りたいロートレック―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)

もっと知りたいロートレック―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)

  • 作者: 杉山 菜穂子
  • 出版社/メーカー: 東京美術
  • 発売日: 2011/06
  • メディア: 単行本






♪印象派では一番好きなロートレック。伯爵家に生まれながら身体障害者として父から疎んじられ、
しかしその財力をもって娼館や酒場に入り浸り、社会の底辺に共感した作品群を数多く残しています。
BGMはモーツアルトの交響曲41番ジュピターで。カールベーム/ウイーンフィル/1949年です。




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