苦役列車 (新潮文庫)

  • 作者: 西村 賢太
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2012/04/19
  • メディア: 文庫


<苦役列車/西村賢太/11年1月初版>
前田敦子、森山未來で12年7月からロードショー予定の原作本です。
2011年の芥川賞受賞作で、中卒の芥川賞作家として、また受賞時のコメント、
「そろそろ風俗に行こうかなと思っていた」が話題を呼び、異例の売上げとなりました。

ふだんあんまりフィクションは読まないのですが、
ソネブロの映画ブログで珠玉の記事を書かれてる青山実花さんが、
西村賢太にハマッテおられるとのこと。
ふと興味をもち読んでみました。⇒http://aomikamica.blog.so-net.ne.jp/

ぼくは水戸黄門が好きな底の浅い人間で、主人公が不幸になっていくと、
こちらまでドキドキしてきます。つい重ねてしまうんです。だからつらい本は読みたくない。
つらいことは現実だけでいいじゃないですか(笑)ちなみにこの本は全然つらくない。
だからじっくりと考えながら読むことができます。

ひさびさに聞いた日本のブルーズでした。読めば色々と思うことがあります。
文体は、著者が趣味としてる古本めぐりからか古色蒼然。目についたのは、
原因のことを、因と何度も書いてることです。因なんて仏語ですよねぇ。
よく司馬さんが、誰が→たれが、みたいなもので目につきます。
ついまねしちゃいそうです(ウフフ)。

著者がテレビでも公言してて、コンプレックスを見事に克服してるので書きますが、
性犯罪者の息子として中卒で労働に従事し、
社会の底辺からものを見てるからこそ書けることがあります。
いったいたれがそんなことが、今の日本の文壇で書けるでしょうか。
「なんとなくクリスタル」の正反対にいる、地に足のついた偽善のない青春小説です。

私小説ということで、作者に大いにかぶるところがあります。
ひさびさに大笑いした(最近笑ったことが少ない人は、ぜひ大笑いしてください)、
以下の動画と本で書いてることが同じなんです。いわゆるフュージョンです。
動画で大笑いしたあとにこの本を読むと、そのフュージョン具合にニヤリとします。
https://www.youtube.com/watch?v=nLL8X_0QC6Q

主人公の北町貫多(著者は西村賢太)が飲む酒は40代でも宝焼酎です。
あれは4Lで2000円なんです。トリス4Lの2800円と双璧の、アルコール単価が最安値ゾーンです。
飲む酒からしてブルーズ臭がびんびんです。

そういえばブルーススプリングスティーンが、
「キャデラックに乗ってたら、ブルーズは歌えないよ」と、
たしか80年代くらいに言ってましたが、その後のスプリングティーンは別として(笑)、
西村賢太はどうなるのでしょうか、今後が楽しみです。


スプリングスティーンの歌では、心に沁みるハイウエイパトロールマンです。
粗暴な弟をなんとか更正させようとしていた兄が、
たぶん殺人をおかしてしまった弟を職務で国境まで追いかけます。
兄はカナダの国境5マイルのところで、ハイウエイの横に車をよせ、
watched his tail-lights disappear する歌です。


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