競争と公平感―市場経済の本当のメリット (中公新書)

  • 作者: 大竹 文雄
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2010/03
  • メディア: 新書


【競争と公平感/大竹文雄 10年3月初版】
2010年度ダイアモンドのビジネス書1位、日経新聞ビジネス書3位という帯につられて読んでみました。
阪大の経済学教授が、新自由主義を主張する本。語り口は淡々と落ち着いたものです。

「日本は資本主義の国のなかで、なぜか例外的に市場競争に対する拒否反応が強い。
私たちは市場競争のメリットをはたして十分に理解しているだろうか

また、競争にはどうしても結果がつきまとうが、そもそも私たちはどういう時に公平だと感じるのだろうか。

本書は、男女の格差、不況、貧困、高齢化、派遣社員の待遇など、身近な事例から、
市場経済の本質の理解を促し、より豊かで公平な社会をつくるためのヒントをさぐる。 」


いかんな~、TPP交渉の最中にこういう新自由主義万歳の本を大々的に売り出しては。。
読んだ人はみんなTPP賛成派になってしまうじゃないですか。

自由競争で儲ける人は最大に儲けて、貧しい人にきっちり再配分すれば万時うまくいく、
との資本主義の根源思想は理解できます。

だけどようやく豊になった日本は、いろんな意味で諸外国との間には規制を設けて、
国富をプロテクトしないといけません。

TPPとはアメリカです。参加国は多いですが、GDP比率は以下。
(米67%、日本24%、豪5%、その他多数国)by日経三橋記事

「2015年までに農産物、工業製品、サービスなど、すべての商品について、
例外なしに関税その他の貿易障壁を撤廃する」

あの金融サービスや、法律サービスを受け入れますか?
公共投資の官需に米国企業を内国民待遇の保障ができますか?

自由貿易は、べつにリカードの話を持ちださなくても、安いものが手に入るということは
(安い賃金の国から)、誰でもわかります。

自由貿易とはインフレ対策なのです。
インフレに襲われてる国は、TPP参加はメリットがあります。
だけど日本は世界で唯一といってもいいようなデフレ国です。
なんのメリットもありません。

英、独は過去20年間で約40%程度のインフレ。
米、中、韓は約2倍前後のインフレです。
もちろん日本はインフレ率はほぼゼロです。

今はTPPに参加するタイミングではありません。



<非正規労働者について>
最近、会社の派遣社員の女の子に、お茶くみをさせたらダメとか、庶務業務をさせたらダメとか、
規制がきびしくなってます。要は派遣を社員にしなさいと政策で導いてるわけです。

雇用の3割が非正規労働者で、その雇用調整が問題になっています。
最近声高に言われるのは、男性の非正規が増えたからです。

もともと女性は90年代の半ばで約5割が非正規に対し、男性は3%程度でした。
男性(30半ば以下)非正規が2008年で15%まで増え、
男女合計の非正規の割合が2割から3割に増加したことが、所得格差や貧困で問題になっているのです。

これまで企業側は、不況の調整弁として、派遣社員の雇用調整をおこなってきました。
日本は歴史的に正社員の解雇規制がガチガチだからです。

急に派遣社員を社員にしなさいといっても、企業としても生き残りを賭けてるため、
はいそうですかとはなりません。請負にシフトしたり、それも規制が強まれば、
欧州のような個人事業主との請負契約とかいうような、抜け穴探しは永遠に続きます。

じゃあどうすればいいか?著者の案は
・正社員にも負担させる仕組みをつくる
⇒派遣切りには、社員の給与削減や解雇を条件とする
・税金と社会保障による再配分
⇒失業率が上がれば、所得税率を上げ再配分する。

まあそうなんでしょうけど、普通のサラリーマン(男性の85%の正規社員)は猛反対するでしょう。

結局、企業の業績を上げることしか、解決策はないと思います。
・通貨安、適度のインフレ
・需要創造
でしょうね。米国のQE2みたいにばんばん量的緩和を行って、
公共投資(必要なものに)で需要を政府が創出する。

インフレと通貨安で、輸出企業は息を吹き返し、官需で国内雇用も復活します。

そういう明日をみてみたいです。



♪♪♪♪♪
きのうアマゾンで注文した、サラガザレクの3枚目新譜から。
昨秋に出てたようです。近年の女性ジャズボでは一番の掘り出しものとおもい、
唯一デビュー作から買い続けてます。

今作はユーロジャズ(独)のトリオセンスからオファーがあって、
共作となってます。トリオセンスはキースジャレットを尊敬してるようで、
そういえば音もケルンコンサートの影響が感じられるような。

ノラジョーンズの昨秋の新譜(フューチャリング)と迷いに迷って、試聴しまくってサラに決めました。
triosence ft. sara gazarek - like the wind (live 2010)



(広告)