原発のウソ (扶桑社新書)

  • 作者: 小出 裕章
  • 出版社/メーカー: 扶桑社
  • 発売日: 2011/06/01
  • メディア: 新書


【原発のウソ/小出裕章/11年6月初版】
ぼくはこれまで原子力推進派でした。

①石油文明から電力文明へ移行したい。海水からウラン抽出技術で日本が石油に頼らなくてもよくなる。

②資源エネルギー庁発表のデータでは原子力発電はコストが安い。

③ここ数年のCO2削減の流れから、原子力ルネサンスとも言われる高需要が予想され、
不況のおり各企業とも新市場に期待している。

④ロックフェラー&ロスチャイルドの両陣営ともウラン利権を有しており、
原子力ルネサンスは彼らの描いた絵。

要はこれまで世界を動かしてきたロスチャイルドの描いた、原子力ルネサンスの絵があり、
それに経済メリットや国益が感じられたからです。
 
これまでも環境派・経済派の両派の書いた本を何冊か読みましたが、
経済派の意見のほうが論理的だと感じていました。

だけど3.11で揺さぶられ、この本1冊でひっくり返されたかもしれません。

日本が核武装できたらもう原発止めてほしい。今なら技術者がいるので3年で開発できます。
核の抑止力は絶大で、核保有国どうしの戦争はおきていません。
北朝鮮や中国など理不尽な保有国のいる東アジアで、
経済大国でお人よしの日本が丸腰でいるのは安全保障上、非常に不安定です。


以下に原発反対(まだ半信半疑ですが)となった読書メモを。
・火力で電力需要は十分賄える。
・原発をやめて、送電発電分離し自由化すれば電力代は安くなる。
・やっぱり被爆はこわい
・使用済みの「核のゴミ」は処分できない








<水力・火力で電力需要は賄える>
水力・火力だけで最大需要電力量(真夏の数日間の午後)が賄えます。
この本にあるグラフを見ると、1990年代に賄えない時期もありましたが、
企業の自家発電をプラスすれば十分に賄える範囲です。

日本の電気の30%は原子力発電ですが、発電設備全体の量から見ると18%にすぎません。
火力発電所の稼働率が48%で、原子力発電所の稼働率が70%なので、
原子力の割合が増えているのです。

原子力発電を全部止めても、火力発電所の稼働率を70%まで上げれば電力需要は賄えるそうです。
それでもまだ火力発電には30%も余力があり、これに各企業の自家発電もバックアップとしてあります。

いまなぜ電力不足かというと、火力発電所も被害を受けたのと、
止めてる発電所を復旧する必要があるからです。



<日本の電気代は2003年まで世界で1番高かった>
この本によれば世界で1番になってますが、調べてみると下記サイトのとおり、
イタリア、ドイツについで主要国で3位レベルです。
ドイツもイタリアもフランスから電力を輸入してるからでしょうか。
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/4105.html

どちらにしてもなぜ日本は電気代が高いか。電力会社は独占構造のなかで、
電気事業法で「利潤」を出すことが保証されてるからです。利潤の決め方は以下。
ぼくたちは総括原価を電気代として電力会社に支払っています。

総括原価 = 必要経費(減価償却費+営業費+諸税)+適正利潤
適正利潤 = レートベース × 5.25~7.2%(報酬率)
レートベース= 固定資産+建設中資産+核燃料資産 + 運転資本 + 特定投資 + 繰延資産

一目瞭然ですが、適正利潤は「資産」が大きければ増えます。

原発は一基数千億円と言われる巨額の資産です。たくさんつくれば資産は巨額になり、
電力会社は利潤を増やすことができます。火力発電の時よりも。。



<被爆限度量>
年間1ミリシーベルトは1万人に1人ががんで死ぬ確率の数値。
それはがまんしてというのが現在の法律。
これを安全基準でなく、「現実の汚染」にあわせて年間20ミリシーベルトに引き上げようと、
原子力安全委員会は検討をはじめています。

年間10ミリシーベルトで1000人に1人、20ミリなら500人に1人ががんで死ぬ確率です。

文科省は福島県内の学校の安全基準を、年間20ミリシーベルトを根拠に定めました。
逆算して1時間あたり3.8マイクロシーベルト未満の空間線量率の学校は、
通常どうり校舎や校庭を利用させるというものです。

反対の声は当然多く、内閣官房参与の小佐古東大院教授は、
「自分の子供にそうすることはできない」と抗議の辞任をしました。



<放射性廃棄物の処理方法はめどがたってない>
かんたんに言うと、発電に使用した「核のゴミ」はガラス固化して地中300~1000m深くに保管します。
管理期間は1~100万年です。人類が生きてる保証もありません。
毒性を除く技術はまだ発見されていません。(宇宙に飛ばすのはコストがペイしません)

原発で使った使用済み核燃料は3パターンの道があります。
①そのまま地中深く保管
②ウラン燃料再処理工場で再処理してMOX燃料として普通の原子炉で再利用。
灯油ストーブにガソリンを混ぜるようで危険。⇒最後は地中深く保管
③核燃料サイクル(高速増殖炉)で再利用。もんじゅの実験はめど立たず。
⇒これも最後は地中深く保管

ながらく新書1位となっていた話題の1冊は、やっぱり名著でした。
原発問題は、だいぶ喉元をすぎたかもしれませんが、推進・反対の両派に読んで欲しい1冊です。

メルトダウンどころか、メルトスルーが予想される状態で、冷温停止状態と言えるのでしょうか。。
タイマーズでメルトダウン