永遠の0 (講談社文庫)

  • 作者: 百田 尚樹
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2009/07/15
  • メディア: 文庫


【永遠のゼロ/百田尚樹/06年8月初版】

2013年の映画化が決定した、100万部ベストセラーの永遠のゼロ。
まだ読んでなかったので、映画化を機に図書館から借りてみました。

「僕は号泣するのを懸命に歯を喰いしばってこらえた。が、ダメだった」
とは故・児玉清。今年前半に読んだ小説の中では、一番面白かったです^^
といっても、小説はあんまり読んでないのですが#59124;

尊敬していた祖父とは血の繋がりが無く、祖母は子連れの再婚だった。母がもらした、
「本当のお父さんはどんな人だったのかな。私はお父さんの事を何も知らない。」
の一言から、海軍特攻隊として散った祖父の事を孫が調べるという話です。

フリーのジャーナリストの姉と、弁護士試験に落ち続ける弟という時間のたっぷりある二人が、
祖父の戦友を訪ね歩き、彼らの話から祖父がどんな人だったか輪郭がはっきりしてきます。

世の中には、大東亜戦争の事を良く知ってる人間と、ほとんど知らない人間の2種類がいます。
ぼくは後者のほうです。読めば読むほど、悔しく悲しい話なので長い間避けていました。
司馬さんも書かないですしね。

とはいえ健康な男なので、戦争映画は好きだし、小学校のときに図書館でのらくろは読破したし、
ジオラマにもハマりました。ウォーゲームにも熱中しました。
とくに「ミッドウエー海戦」と「ノルマンディ上陸作戦」は、友人たちとやりこみました。
ミッドウエーは戦い方次第で連合艦隊が十分に勝てます。所詮こどもの遊びですが。

小説のパターンとしては、浅田次郎の壬生義士伝や松井今朝子の吉原手引草のような、
いろんな人を訪ねまわって、その人の過去の輪郭がはっきりしてきて、
最後に極上の落ちがあるというスタイル。

「永遠のゼロ」の場合は、真珠湾から終戦の特攻までを、エースパイロットとして転戦するので、
大東亜戦争での海軍の戦記が、労せず頭に入ってきます。

真珠湾、ミッドウエー、ラバウル、ガダルカナル。。
とくにサイパンは戦前からの日本統治領で日本人町があって民間人も多く住んでいました。
日本国はここを絶対国防圏とし、真珠湾以来のZ旗を掲げて挑みます。
結果はレーダーや米軍の新兵器や、海軍パイロットの未熟さにより、
米軍には「マリアナの七面鳥撃ち」と言われる惨敗です。

米軍は実力のあるものが隊長になるけど、日本軍は兵学校を出たエリートが仕官になるので、
戦術指揮が未熟です。米軍パイロットの出動は週1回ほどのローテーションだけど、
日本軍のパイロットは連日出動の酷使で神経が擦り減ります。

米軍パイロットは撃墜されても、パラシュートで脱出して潜水艦が回収し、
熟練度の上がったパイロットが何度も出てくるのに対し、日本軍は一度撃墜されれば終わりです。
なんかもう読んでて悲しくなる。。

サイパンを陥とされギリギリまで追い詰められた日本は、
フィリピンをレイテ沖海戦で必死に守ります。
フィリピンを陥とされると、南方との連絡が途絶え石油などの資源が途絶えるから。

武蔵や瑞鶴を沈められながら肉を切らせて骨を絶つ決死の作戦が実り、
ハルゼーの艦隊が栗田艦隊の前におびき出されます。ここで米軍に奇跡が起きます。
史上有名な「栗田艦隊の謎の反転」です。連合艦隊は米軍を叩く絶好の機会を逸しました。
この翌日から日本軍は神風特攻を始めます。

その後は、沖縄ではヤマトの特攻もあります。沖縄が陥とされ本土はB29で民間人が虐殺され、
最後は原爆2発です。

この本から伺える失敗の本質は、マスコミの無能さ(開戦を国民に煽った)と、
軍エリートの官僚体質です。今となんら変わりありません。

そういえば、松本零士の戦場漫画シリーズで面白かった、
「スタンレーの魔女」という名作短編があるのですが、そのスタンレーが出てきます。
ニューギニアを南北に割る4000m級の山のことです。懐かしかった~。








以下にこの本から目についた部分を。
祖父がガダルカナルで戦死してるので、そこの部分は、とても印象に残りました。


<ガダルカナル>
ガダルカナルの兵士はこんな生命判断を行っていたといいます。
「立つことの出来るものは30日、座ることの出来るものは3週間、
寝たきりになったものは1週間、寝たまま小便するものは3日、
ものを言わなくなったものは2日、ままたきしなくなったものは1日の命」と。
結局総計で3万人以上の兵士を投入し、2万人の兵士がこの島で命を失いました。

2万人のうち戦闘で亡くなったものは5千人です。残りは飢えて亡くなったのです。
生きてる兵士の体にウジがわいたそうです。悲惨な状況でした。

海軍もまた多くの血を流しました。沈没した艦艇24隻、失った航空機839機、
戦死した搭乗員2362人。これだけの犠牲を払って、ついにガダルカナルの戦いに敗れたのです。

そして戦いが終わった時、海軍の誇る珠玉とも言える熟練搭乗員のほとんどが失われていました。
今にして思えば、この時、日本の負けがはっきりしたと思います。
しかしアメリカとの戦争はこの後2年以上も続いたのです。



<なぜゼロ戦と呼ばれたか>
ゼロ戦が正式採用になった皇紀2600年の末尾ゼロをつけた。皇紀2600年は昭和15年。
ちなみにその前年の皇紀2599年に採用になった爆撃機は、九九式艦上爆撃機、
その2年前に採用になった攻撃機は九七式艦上攻撃機、いずれも真珠湾攻撃の主力となった。
ゼロ戦の正式名称は、三菱零式艦上戦闘機。これは日本が真に世界に誇る戦闘機。



さだまさしで「兵士の手紙ときよしこの夜」、特攻隊の遺書を朗読する歌です。



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