これから世界で起こること

  • 作者: 中原 圭介
  • 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
  • 発売日: 2012/08/10
  • メディア: 単行本


【これから世界で起こること/中原圭介/12年8月初版】

オーソドックスな1冊。情報源が日経新聞という著者は、
まるで会社の上司のような視点で物事を洞察します。斬新なところはないけど、安定している^^;

マクロ経済本や未来予測本は、いろんな著者のものを読みたいです。
三橋貴明や吉田繁治はすごいけど、同じ人の本ばかり読んでいてもケミストリーがない気がするので。

どちらかというと文章の人。
会社の予算書なんかで「世界経済の今後」とかの一文を書いたりしないといけない立場の人は、
案外ネタ元になっていいかも。可もなく不可もなくの論理展開は、
サラリーマン重役を納得させる安定感があります。ああいう文章は、中庸な表現が好まれますしね。

彼が今後をどうみるか簡単に。その前に補足すると、世界の2011年のGDPの構成比は、
以下の4極で7割です。世界のGDPは約5000兆円、日本のGDPは約500兆円です。
(参考サイト:http://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2011/2011honbun/html/i1110000.html
EU:26%
米国:23%
日本:9%
中国:9%

全体:少なくとも今後5年は停滞、低成長となる。欧州債務問題は長期化し、
少なくとも5年間は世界の主要国は「財政再建」という重荷を負う。
各国とも財政赤字が大きい為、財政出動は困難。
新興国も先進国からの投資資金引き上げやインフレで暗雲。

米国:QE3を最後の金融相場として、中間層の喪失による停滞が続く。この先5年が正念場。

欧州:欧州共同債の発行をドイツ国民が耐えたとしても、
日本と同様の失われた10年に突入する。
13年のドイツの議会選挙でメルケルが勝てば、
「私の生きている限りない」という欧州共同債の発行がなくなり失われた20年になる。

中国:今後数年は地方政府系投資会社の破綻や、それに伴う銀行の不良債権増加、
中小企業の大量倒産と雇用情勢の悪化、格差の拡大による政情不安が一気に押し寄せる。

日本:海外の経済状況の低迷が続いていれば、浮上しない。失われた30年になる。

著者の提言:投資をしても儲からないので自己投資をしよう。
みんなで本を買って読もう(笑)。新聞を読もう。
大切なのはお金ではない。自分や家族が幸せを感じることだ。

あの~本は好きだし暇なのでよく読んでますが、図書館で借りてます。それでもいいですか?

よく自己啓発系の作家が、結論として本を読むことを提言しますが、
マクロ経済本を読んだつもりが、自己啓発本のようなオチで苦笑しました。
みんなが本を買えば、出版業界の方は儲かりますからね。ある種のポジショントークでしょうか。

以下に読書メモを。








<QE3の実施が最後の金融相場をつくり出す>
量的緩和はモルヒネ。過去2度の量的緩和は世界的に資源や食料の高騰を招き、
新興国に混乱を招いた。QE3によってつくり出される金融相場が米国経済にとって最後の一手。
利用すればするほどその効果は薄れてくる。

⇒たしかにQE2のときに比べて、メタルの反転が早かったですね。
とくにニッケル相場なんか1ヶ月で反転しましたし、上げも15%ほどしかなかった・・・


<シェールガス革命とは>
米国のエネルギー事情を一変させた。
シェールガスとは泥や砂が固まってできる頁岩(英語でシェール)、
と呼ばれる岩に閉じ込められた天然ガス。
従来これは天然ガスに比べて採掘が困難とされてきたが、技術革新で回収技術が確立された。
現在でも米国の天然ガス生産の2割以上を占める。その埋蔵量は現在の米国のガス消費量の100年分。
さらに調査を行なえば100年分ぐらいは見つかるといわれている。

米国の貿易赤字は半分は海外からの原油の輸入。海外原油への依存度が低下すれば、
エネルギー安全保障は根本から変わる。

予測のレベルだが、米国は「石油社会」から「ガス社会」への転換を図ろうとしている。
例えば自動車は、日本やドイツに劣るハイブリッドや電気自動車に変わって、
ガス自動車を次世代のスタンダードにし、中核技術を米国が抑えようとする。


<EUの今後>
EU誕生の意義は「安全保障」にあり、最大の目的は「平和維持」にある。
その本質を踏まえれば、EUやユーロが解体や崩壊へ向かうことは考えられない。

欧州の長い歴史で2回の大戦に比べれば、
今回の債務危機は小さなつまずきといってよい程度の問題。

紆余曲折があっても、最終的にはドイツとそれ以外のEU諸国が折り合って、
債務問題解決に向けて前進していく。


<生命保険は生活費を削って入るべきものか>
厚労省が発表している生命表によると、日本人で60歳までに死ぬ人の割合は、
総人口のわずか0.3%前後。つまり生命保険に入っていても、
早く亡くなって保険金を受け取る人は、1000人にたった3人しかいない。

俗に生命保険はマイホームに次ぐ人生で2番目に高い買い物。
2万円/月の保険料で10年で240万円、30年で720万円にもなる。

人の価値観によるが、どうしても入りたい人は、
3000~5000円/月程度の医療保険が生保と比べて割安。


<イージーカム、イージーゴー>
簡単に手に入れたお金は、簡単に失う。欧米流の金融資本主義社会には違和感を感じる。
我々はコツコツと身につけた仕事の経験や技量で生きていくべき。




米国だけで68.5百万枚もアルバムを売ってる(Cold playより売れてる…)
ジョージストレイトで、イージーカム イージーゴー♪




(広告)