反逆の日本経済学

  • 作者: 田村秀男
  • 出版社/メーカー: マガジンランド
  • 発売日: 2013/01/23
  • メディア: 単行本


【反逆の日本経済学/田村秀男/13年1月初版】
ここ5年ほど新聞記事やブログでフォローしてる田村秀男氏。著作を読むのは初めてです。日経記者として、ワシントン時代はプラザ合意でプラザホテルへ取材に行ったり、アジア通貨危機時は香港支局長として各国を飛び回るなど、多くの経済変動を要人との接触で、肌で感じ取っています。現在は、早稲田大学院講師、産経新聞論説委員。円安推進、脱デフレ、反増税のスタンスです。従来型のハコモノ公共工事は利権の問題から反対しています。

著者は鳩山総理時代に首相官邸に呼ばれ、100兆円の日銀資金創出による量的緩和策を提言しています。その時政策が実現していたら、今の日本の惨状はなかったかもしれません。顛末は本書に譲ります。

著者の提言策の要旨は以下です。

<増税なしの100兆円日本再生計画>
日銀が100兆円の資金を発行して、政府に渡す。政府は100兆円の日本再生基金を設置する。100兆円は民間を競わせ、日本の復興再生プランを出させる。政府は優れた技術開発、投資プロジェクトを選び、投融資する。日銀はそのぶんお札を刷る。量的緩和を行なうから円安になる。すると米国債の円換算価値は増えるので、日銀財務は潤い健全化する。円安につれてデフレも緩和する。政府は資産を別の資産に置き換えるのだから債務は増えない。

100兆円の資金供給についてもう少し詳しく。日本政府(財務省)は、外国為替資金特別会計で米国債を中心に日本円換算で100兆円の外貨資産を持っている。円高是正の為替介入を行なった結果である。この介入資金は政府短期証券という一種の短期国債を発行して、金融機関から貯蓄を吸収して調達する。つまるところ国民の貯蓄が米国債に置き換わるわけで、円高が進めば為替評価損が膨らむ。国内貯蓄は本来、国内投資に振り向けるのが経済のイロハ。貴重な国民貯蓄を外貨運用で巨額の損失を受けない方法をとるべき。

ならば政府(財務省)は、米国債をそっくり日銀に売却し、日銀の資産に置き換えてはどうか。日銀は政府から譲渡された外貨資産相当の日銀資金を発行し、政府に支払う。電子送金して政府の口座に振り込めばよいだけだ。新規に国債を発行する必要も、輪転機を回してお札を刷る必要もない。言わば1円も使わずに100兆円を創出できるのだ。円安ドル高にもなる。


<素晴らしい政策なのに何故財務省は反対するのか>
利権である。100兆円分の外貨資産を運用委託するのは、国内外の大手金融機関。単純に米国債の売り買いを繰り返すだけの操作なのに、年間で数千億円の手数料収入が見込める。しかもこの運用委託契約は、密室で行なわれる「随意契約」である。この巨大利権に銀行大手が群がり、財務官僚は天下りなどさまざまな見返りを受ける。そんなおいしい利権を財務官僚が日銀に譲渡することはありえないのだ。


その他の読書メモを。


<ソロスチャート>
外国為替相場というものは、株式相場よりはるかに先を読むのが難しい。世界の外為関連取引は1日あたり400兆円前後にのぼり、このうち日本円は130兆円程度もある。日本政府が10兆円規模の資金で外為市場に円売り介入しても効果は一瞬で、円高は止められない。

愚直一筋、外為介入して米国債を買い上げてきた日本政府は、2012年2月末で約40兆円の為替評価損を被った。資金の元はわれわれ国民のカネである。

対照的に海外の投資ファンドは通貨投機で稼ぎまくる。代表例はジョージソロスで「ソロスチャート」と呼ばれる為替相場分析手法を開発して広めた。このチャートは実は小学生でもつくれる。

円ドル相場の場合、日銀とFRBがそれぞれ供給する通貨(マネタリーベース)の割り算をする。円資金額をドル資金額で割ると、1ドルに見合う円の額が決まる。FRBは2008年9月のリーマンショック後、現在までドル資金発行量を3倍増やした。

⇒12年7月で日銀は1.3倍程度。円高理由がよく理解できる。日銀は日本企業が円高で苦しむのを放置した。とくに韓国企業と技術格差が少ない家電業界の苦悶は悲劇だった。(自動車はまだ技術格差あり)ソロスチャートと為替の乖離部分は、両国の実質金利差が考えられる。


⇒ウォーレンバフェットのバリュー投資もそうですが、相場の真理はシンプルな計算で判断できるものが多いですね。


<実質金利>
実質金利とは、インフレ分を加味した金利。実質金利が高いということは、その国の通貨の預金や国債の価値が高いことを意味する。今の日本はデフレであり、インフレ率はマイナスである。ということは、日本の実質金利はデフレ分だけ上乗せされて高くなる。11年で比較すると、日本の実質金利は0.5%程度、米国はインフレ率が3%台と高いので、実質金利はマイナス3.5%となる。日本は米国を4%も上回る実質金利となる。

⇒日銀がインフレターゲット2%を目標とするとアナウンスすると、日米の実質金利差が縮小するので、 円安になる。エルピーダやシャープの悲劇は、日銀と財務省による人災です。ぼくは家電業界じゃないけど許せない。何故やれることをやらずに、多くの日本企業を見殺しにできるのだろう…
 

⇒小学生でも見ればわかるように、円高になるとGDP(消費と投資と輸出)は連動して下がります。もっといえば税収はGDPに連動しています。あたりまえですが。TPPには反対ですが、アベノミクスを続ける限りは安倍内閣を支持します。



No one can better this   誰もうまくできないよ#59126;
Please forgive me     どうか許してほしい♪

Bryan Adams - Please Forgive Me ベタなラブソングですが^^;




(広告)