ケンカ国家論

  • 作者: 落合 信彦
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2013/03/06
  • メディア: 単行本


【ケンカ国家論/落合信彦/13年3月初版】
アサヒスーパードライ。ぼくの中の落合さんのイメージはそれにつきます。スーパードライが飛ぶ鳥を落とす勢いの90年前後に、この人のCMがバンバンかかってました。国際ジャーナリスト。なにかよくわからんのですが、カッコイイ大人。今が71歳なので当時は50前後の脂の乗ったトロの時代です。

この人バリバリの新自由主義者なんですよね。60~70歳ぐらいのアメリカ留学者、大前研一や竹中平蔵あたりの人らはみんなそうです。大きな政府が腐敗を生んで経済が立ち行かなくなって、サッチャリズムやレーガノミクスで小さな政府にシフトする時代かその前夜に米国にいた人たち。

たしかにインフレ時の経済政策はそれでよかった。だけど今はデフレ。バランスシート不況で需要がない。政府が公共投資でカネを使わないと、ますますデフレギャップが広がり、企業、個人、政府共に借金の負担感が増大します。こんな状況ではだれも設備投資しない。そこらあたりを頭では理解されてるとは思うのですが、沁みついたモノに囚われて抜け出せない。

いや、ぼくも町内会費は払いたくないし、増税も嫌です。自分のお金を既得権者に勝手に使われるのはご免です。根本は小さな政府を求めてます。しかしそれはデフレ脱却して安定インフレ状態になってから主張したいです。

落合氏のいいところ。安全保障の観点です。田母神俊雄や青山繁治と同じような考えを持っています。今の日本の現状は、猛獣や毒蛇がウロウロしているジャングルの中を、素っ裸で歩いているようなものだそうです。アメリカが守ってくれるというのは幻想でしかない。アメリカにとって日本はケンカをしてまで守る価値のある国ではなくなってきた。残された時間は多くないと。


以下に読書メモを。


(広告)





<ローマはなぜ滅びたか>
「自分たちの国は自分たちで守る」という考え方を捨て去ったから。平和に慣れきってしまい、国を守るという重要な仕事を、異民族ゲルマン人の傭兵に任せるようになった。ケンカを外注したのだ。結果、国家の衰退は止まらず、領土も異民族から侵食されるようになった。476年に西ローマ帝国は滅亡するが、この時に反乱を起したのはゲルマン人の傭兵隊長オドアケルだった。ケンカを他人任せにすることの代償は、かくも大きい。



<イスラエルはなぜアメリカに守られるか>
イスラエル擁護を最も強く訴えるのは、実はCIA。CIAはイスラエルの諜報機関モサドが常に優れた情報を収集していることを知っている。アメリカにとって有益で正確な情報を提供してくれるモサドがなくなれば、自分たちの力が大きく削がれると考えている。だから危機に際しては常にイスラエルを助けるべきと主張する。

かつてイスラエル首相のベギンは、米国からの援助を停止するという話が出たときに、「あなたたちは援助を与えてくれるかもしれないが、我々だってあなた方に与えている。それは情報だ。あなた方の援助は30億ドルだが、モサドの情報には金銭に代えられない価値がある」と返した。



<鉄の女とは>
サッチャーは「人命に代えても領土を守る」と断言した。フォークランド紛争のイギリス軍派遣には、国連もアメリカも反対した。しかし領土を蹂躙されて反撃をしなければ、いくらその後で国際機関やアメリカが説得しようが、ならずもの国家は応じない。(アルゼンチンは当時軍事政権)

サッチャーは領土は国家の基盤であることもよく理解していた。この紛争の中で彼女は「鉄の女」と呼ばれるようになった。



<日本国憲法とは>
1946年に公布され、それ以来一度も改正されてない。占領下でアメリカによって定められた憲法が独立国となって以降も60年以上変わらないままというのは異常である。同じ敗戦国であるドイツは、既に58回も憲法改正が行なわれている。スイスのように140回以上改正している国もある。世界は時代の変化に応じている。

なぜおとぎ話のような美辞麗句が続くのか。行政についての知識もあまりなく、憲法の歴史も知らないGHQの事務員や、日本に休暇で来ていたアルバイト学生などが日本の憲法を書いたからだ。これだけの屈辱的な扱いを受けた敗戦国はまずあるまい。今だに日本国憲法に誇りを持っていると発信する輩は、恥を恥とも思わない売国奴だ。



<12年9月11日のリビアの米国領事館大使殺害事件>
2000人の暴徒が米国領事館を襲撃し、79年のアフガニスタン以来の米国大使の殺害。9月11日という日付を見ても、アルカイーダの犯行だ。

オバマは機敏な動きを見せなかった。駆逐艦を2隻派遣しただけだ。テロリストの犯行であることをなかなか認めず、相手を刺激したくないという発想だった。アメリカはこれから4年間、オバマという「ケンカ」のできない男がリーダーであり続ける。それはアメリカが中国の覇権主義に歯止めをかけられなくなる事を意味するのだから、日本にとっては深刻な事態だ。



<13年1月16日アルジェリアの日本人殺害事件>
アルジェリアのイナメナスにあるガス田に、テロリストによる襲撃があった。外国人犠牲者は37人。うち10人が日本人技術者であった。アルジェリアの南にあるマリをアルカイーダが事実上支配し、フランスが介入して空爆を開始。テロリストの資金源として周辺国での誘拐は十分に考えられる状況だった。

本来なら情報機関が自国の企業にアドヴァイスするのだが日本にはそれがない。今回アルジェリア軍が取った行動を安倍総理は批判した。「人質の命を危険に晒すな」と。しかし人質の命よりもテロリストの除去を優先するのは世界の趨勢で、アルジェリアの特殊部隊は逃げたテロリスト1人を除いて全員を殺した。

安倍総理はキャメロン首相からの2回目の電話で、「アルジェリアをあまり批判しないほうがいい」となだめられたという。今回アルジェリア政府の対応を、世界各国は肯定的に評価している。



<モサド元長官へのインタビュー>
「007はどう思いますか?」
「我々のやってることに比べれば、あの映画の中の出来事は幼稚園児の遊びのようなものだ」

⇒たしかにこの本に書かれてある、スパイの世界は凄まじいです。


まだ007スカイフォール見てないんですよね。
しかしアデルは痩せてボンドガール並のルックスになりましたねぇ。




(広告)