5年後、メディアは稼げるか――Monetize or Die?

  • 作者: 佐々木 紀彦
  • 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
  • 発売日: 2013/07/19
  • メディア: 単行本


【5年後、メディアは稼げるか/佐々木紀彦/13年8月初版】
今後5年、メディア業界は100年に1度の激震を経験するそうです。メディアは変わる必要があるのでしょうか。紙媒体はウェブにシフトせず、今のままで生きていけるのか。

「東洋経済オンライン」編集長の佐々木紀彦が、ジャーナリストとプレーヤーの両方の視点で今後のメディアを見通す一冊です。東洋経済オンラインは2012年からの1年間で、PVを10倍の5301万PVに到達させたそうです。たしかに日経ビジネスオンラインのように、無料会員登録しなくても2ページ目が読めるのは大きい。(ちなみにヤフーは月間45億PV。マスメディアと言えるには月間1億PVからとか。)

ところでみなさんはビジネス週刊誌は何かお読みでしょうか?ぼくは会社で回覧される日経ビジネスをざっと読んでます。ネット情報並に新鮮で面白い記事が多い。10月14日号では「世界のトップ大学/東大は生き残れるか」東大学長の危機感が半端なかったです。秋入学を推進しないと優秀な学生を集められない、教授の給料を1000万円じゃなく世界レベルの2000万円にして、もっと研究費も潤沢にしないと優秀な教授を集められない。ごもっともです。「Mooc」家にいながら世界の有名大学の講義をネットで受講できるサービス、パソコンがあれば安価にいろんなサービスを享受できます。ふと読みながら佐々木紀彦の語ったエリート教育の本質を思い出していました。「米国製エリートは本当にすごいのかhttp://donhenley.blog.so-net.ne.jp/2011-09-18

非日常の全寮制や優秀な教授というのもエリート育成の要因ではあるのですが、本質は①年間120冊以上の良書を読み②それをレポートし③同レベルの学生と議論する。これさえできれば米国エリート並みの知的筋力は身につきます。ただ大きいのは世界の知識ストックの大半は英語なんですよね。こればかりは英語ができないとアクセスできない。日本のように国力があれば、ある意味言語が「イノベーションのジレンマ」なのか。

話が横にそれました。海外メディアの惨状と新しいビジネスモデルについては、「本当のことを伝えない日本の新聞http://donhenley.blog.so-net.ne.jp/2013-02-09 」にも書かれてましたが、本書の方がより突っ込んで分析しています。これからメディアを目指す人は必読書とも言えるでしょう。


以下に読書メモを。

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<紙の本が日本で残る理由>
電子書籍はアメリカでは普及しても、日本では普及しにくい。米国は書店の数が少ない。米国の国土面積は日本の25倍だが、書店数は日本の3分の2。大阪府の面積に2店しか書店がない計算になる。米国で仕事帰りにふらりと書店に寄るライフスタイルは、よっぽどの大都市でないと無理。車社会の西海岸はその傾向が特に強い。さらに米国の本は重い、そしてハードカバーが25ドルと高く、電子書籍は10ドル前後と価格差が大きい。日本は身近に本屋が多く、本は軽く、元々安価で電子書籍と価格差が少ない。

<デジタルメディアは評価が見える>
デジタルメディアでは個人の貢献度が「見える化」される。どの記者がどれくらいPVを稼いだか、どの編集者の企画がヒットしたか、読者の評価はどうだったか。すべてのデータが白日の下にさらされる。ざっくりとした印象では中年以上のメディア人で給料に見合う働きをしているのは、せいぜい1~2割。

<新聞読者の高齢化>
読売新聞は購読者のうち、50代が28%、60代以上が37%に上る。最先端のビジネスパーソンが読む媒体ではなくなっている。新聞は「若者(記者)が書いて、高齢者が読む」媒体となっている。

<血みどろの米メディア>
米国新聞社のフルタイム職員数は2000年の5.6万人から2012年には4万にまで減った。約3割が職を失った。週刊誌も「ニューズウィーク」が「紙」から2012年末に卒業した。ウェブに特化するのはコスト削減するための苦渋の決断。

<日米の新聞の広告への依存度>
米国の新聞は広告への依存度が高く、収入に占める割合は8~9割。(日本の新聞社は2~3割。宅配システムにより守られる購読料が大きい)その広告収入が、過去5年に半分以下に落ち込んでしまった。

<米メディアの広告単価>
米メディア業界は、広告に関して「1:10:100」の法則がある。これは紙で100万円だった広告は、オンラインでは10万円、モバイルでは1万円となってしまうこと。

<オンライン広告はテクノロジー企業が牛耳る>
2012年時点で5社のテクノロジー企業がウェブ広告の64%のシェアを握る。(グーグル、フェイスブック、ヤフー、マイクロソフト、AOL)伝統メディアに残されたパイは全体の34%しかない。モバイル広告分野ではグーグル、フェイスブックの2社の合計シェアが2013年で約7割。

<どうすればネット広告で儲けれるか>
広告を面白くする。それに尽きる。ブランドコンテンツは新マーケット。企業はモノやサービスを直接売るためでなく、ブランディングや業界全体の理解を深めるための記事を掲載する。古典的な例は、ミシュランの料理ガイド。本業はタイヤであり、料理とはなんの関係もない。しかしこの料理ガイドがヒットしたことで、ミシュランの名前が世界に知れ渡り、タイヤのブランディング、販売にも大きく寄与した。商品を直接アピールせず自社のブランドと認知度を高め、長い目で売上につなげる。これがブランドコンテンツの狙い。

<文章>
文章を書くこと自体が、裸の自分をさらすようなもの。ショーペンハウエルは「文体は精神の持つ顔つきである。それは肉体に備わる顔つき以上に、間違いのない確かなものである」

文章術を学ぶには、谷崎潤一郎の「文章読本」がいちばん。この本で普遍的なテクニックを学んだ上で、論理的で美しい文章をたくさん読み込むのが、わかりやすい文章を書くスキルを磨く王道。



季節や世界のように♪
夢や人生のように
すべては変わる必要がある

ポールヤングでEverything must change




文章読本 (中公文庫)

  • 作者: 谷崎 潤一郎
  • 出版社/メーカー: 中央公論社
  • 発売日: 1996/02/18
  • メディア: 文庫



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