統計データが語る 日本人の大きな誤解 (日経プレミアシリーズ)
- 作者: 本川 裕
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2013/11/09
- メディア: 新書
【統計データが語る日本人の大きな誤解/本川裕/13年11月初版】
真実が役に立つかどうかは別として、今の日本人は誤解と思い込みが広がって不幸になっています。この本が100以上の統計データで炙りだした日本の現状は、言葉にすると以下の通りです。
『失業率はどんどん高まっているわけではなく、日本の経済力は高く、技術力も世界と比較して向上し続けている。経済格差も貧困も拡大しておらず、相変わらず日本は国際的には平等社会を維持している。また世界一の「小さな政府」が効率的に機能しており、高齢化の割には医療費は非常に低く抑えられている。その中で食べ過ぎや肥満にならず、世界一の平均寿命を達成し、女性は生き生きと美しく暮らしている。これらのことから日本人は、人類全体の希望の星となっている』
しかしこんなに素晴らしい日本を、グローバリゼーションで変えていく必要はあるのだろうか。。。
本書は2014年の新書大賞でいい線いきそうです。毎年2月頃に去年1年の新書からベスト10を決めます。たいていは知的好奇心を満たす、新しい視点や考え方を提示したものが選ばれます。さて今年の大賞は何がとるのか。未読の渋いところが選ばれると、楽しみが増えます。
以下に読書メモを。
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<都道府県のGDP規模、世界の同等国(2010年度)>
・東京都=韓国=91兆円
・大阪府=イラン=36兆円
・愛知県=南アフリカ=32兆円
・神奈川県=タイ=30兆円
・埼玉県=香港=20兆円
・千葉県=イスラエル=19兆円
・北海道=チリ=18兆円
・兵庫県=アイルランド=18兆円
・福岡県=フィリピン=18兆円
・静岡県=パキスタン=16兆円
・茨城県=ウクライナ=11兆円
・広島県=ハンガリー=11兆円
・京都府=カタール=9兆円
<日本は年齢別所得格差が大きいから相対的貧困率が高い>
相対的貧困率とは、国民を所得の高いほうから並べてちょうど真ん中の人の所得を求め、この半分の値を貧困線と仮定し、これ以下の水準にある人を貧困者としてその割合を示す指標である。相対的貧困率の国際比較では、日本はアメリカについて世界2位であり、格差が広がったとされるが実は日本の格差は逆に縮小している。(相対的貧困率以外のデータではそういう結果になる)
なぜ日本の相対的貧困率は悪化したのか?じつは相対的貧困率は年齢別の所得格差によって影響される。日本は年齢別の所得格差が大きいから相対的貧困率が高くなる。生涯所得が同じ国が2つあるとする。一方は若いときは200万円、年配になると800万円で、平均年収は500万円とする。もう一方は年齢にかかわりなく年収が500万円の国であったとする。前者は相対的貧困率は250万円以下になるのでかなりの割合になるが、後者は定義上ゼロである。
また高齢化が進むと働いてない高齢者が増え、年金のみの低所得者世帯も増えるので、相対的貧困率は益々上昇する。日本の場合は終身雇用や年功賃金が見直され賃金のフラット化が進んだが、高齢化がそれを上回る勢いで進展した為、貧困率が上昇している。
<貧しさのため生活必需品が買えなかった経験の国際比較(2013年度)>
順に食料、医療、衣服が買えなかった経験があるものの割合=%を各国ごとに示す。
日本:2、3、3 米国:24、31、27 カナダ:9、11、11 英国:15、10、19 ドイツ:8、10、10 フランス:20、19、23 イタリア:10、15、23 ロシア:23、33、34 中国:8、30、14 韓国:26、26、35 インドネシア:25、37、31 メキシコ:53、51、54
日本ほど貧困者の少ない国はない。幸せな状況は相変わらずである。
<日本人は本当に仕事で多忙なのか・32個のグラフデータで詳細に検証>
国際比較を中心とした統計データが語るところでは、日本は長時間労働の国であり、自殺率の高い国であるが、仕事のストレスは特段大きくはなく(国際比較では中位)、仕事の疲れもあまり感じず(米食が影響)、また「うつ」になる人も少なく、むしろ睡眠を削ってまで自由を謳歌し、おしゃれをしながら楽しく暮らす方向にある。
<日本人の好きな料理ランキング(2007年度)>
1位から順に、すし72%、刺身67%、ラーメン62%、味噌汁62%、焼き魚60%、焼肉59%、カレーライス58%、ギョーザ57%、サラダ56%、豚汁けんちん汁55%、すき焼きしゃぶしゃぶ55%、肉じゃが54%、炊き込みご飯53%、日本そば53%、鳥のから揚げ51%、うどん51%、天ぷら51%、漬物50%、おでん50%、納豆48%
<主要国の1人1日当たり供給カロリー(2009年度)>
国連のFAO調べ2009年度。中国3036、フランス3531、ドイツ3549、イタリア3627、日本2723、北朝鮮2078、韓国3200、米国3688。欧米に先行し日本は反転低下しはじめた。ちなみに農水省作成データでは日本2439。消費時点での消費ロスを差し引いた純食料ベースのため国連と差異が出る。
<OECD先進国の肥満度ランキング(2012年OECDデータ)>
トップは米国、日本は最下位。国際的な肥満の定義はBMI30以上。BMI30以上の人口比率(主要国)は以下。米国36%、英国26%、カナダ24%、ドイツ15%、フランス13%、イタリア10%、スイス8%、韓国4.1%、日本3.5%。
<日本の他殺は半減した>
98年にピークの808人を印した後、14年後の2012年には383人と半数以下となった。日本人の家族関係と人間関係は急速に良好となっている。警察当局はなぜその成果を社会にPRしないのか。推測では警察の人員を減らされては困るから。他殺が半分に減ったのなら、それを取り締まる人員も半分にしたらと政治家に提案されては困るからだ。政治家を選ぶのは国民であり、国民にそう思われるのは不都合である。
ちなみに日本の殺人の半分は家族親族間です。
これまで一人で生きてきて♪
それがどんなものか
わからなかった
いま僕は家族を持ち
これまでのどんなものより
信頼している
私を取り囲む
すべての愛に感謝したい
ともに泣き笑い
家族の一員になる
自分が何かの一部になることは
これまで考えたこともなかった
それは僕を謙虚にさせた
私たちの全てはお互いであり
私の必要な全てはそこにあった
(Joe Walsh ''Family'' 歌詞抜粋訳by don)
70年代にチェーンソーでホテルを破壊しまくった、ハチャメチャなジョー・ウォルシュ。4度目の結婚で彼が到達した心境でしょうか。アナログマンの中の美曲で、ファミリー♪ リンゴスターの義理の弟になってるようですね。
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