マレーシア航空機はなぜ消えた

  • 作者: 杉江 弘
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/07/08
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


【マレーシア航空機はなぜ消えた/杉江弘/14年7月初版】
災難続きですよね、マレーシア航空。3月に失踪、7月にウクライナ上空で撃墜。航空史上めったにないことが、半年の間に同一の航空会社で起こった。

とくに失踪のほうはまさにミステリー。いまだに納得のいく結論が出ていない。陰謀論(ロスチャイルド利権)やUFO誘拐説まで飛び出してきて^^

著者はJALの元機長で、運航安全推進部にも在籍していたことがあり、現場や安全施策への造詣が深い。

「謎を解くカギは、航空機と地上を結ぶエーカーズにある」

序章:事故発生
・これは事故なのか事件なのか


1章:インド洋南部に消えたMH370便の航跡

・レーダー網をかいくぐって、どのように飛んだのか
・衛星からの墜落地点情報の信頼性


2章:通信手段エーカーズは切断されていなかった
・メディアによる誤訳から切断と報道
・エーカーズでマレーシア政府と交渉が可能であった


3章:ありえない報道の数々と情報操作
・濡れ衣を着せられた人たち
・質問を受け付けない異様なマレーシア政府の姿勢



4章:新手のハイジャックか?パイロットの自殺か?
・なぜ着陸地から離れた海上に向かったのか


5章:飛行の最後はどのように
・着水か墜落か
・要求を拒否され最後は自爆か


6章:ブラックボックスはなにを明らかにするのか
・海底に沈んだ機体とブラックボックス
・真相が解明される範囲と限界


7章:すでにあきらかになった教訓
・トランスポンダーとエーカーズ、CVRの運用改善を
・現在のセキュリティは不十分


終章:事件の全体像と核心に迫る
・マレーシアの政治経済情勢と権力闘争
・これは事故ではなく事件である
・そして最終局面

目次をざっと書きましたが、ご覧のように専門家の立場から様々な検証を行って、あるひとつの結論に達します。最後まで読み通せば推論ではあるけど、これしかないという結論です。他の原因は一冊をかけて潰していってるのでありえない。


以下に読書メモを

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<乗客の内訳>
乗客乗員239名。154名が中国人、台湾人、アメリカの半導体会社の社員(マレーシア人12名、中国人8名)。マレーシア人38名。その他はインドネシアやアメリカ、乗務員12名



<エアラインランキングの問題点>
世界約400社の航空会社の事故率や機材年齢、保有機材数、営業成績などを元にマスコミが発表している。その順位は航空関係者にはピンとこない。安売りの新興エアラインが上位に入ってたり、パイロットの質に問題があり頻繁に事故を起こしてるのに、機材が新しいことが評価され、そこそこのランキングになっていたり。

設立の新しいエアラインは保有機材が新しく、営業成績も悪くない場合が多い。しかしパイロットは寄せ集め、整備は外部委託で、人材育成はされてないし、社の安全哲学は確立されてない。

著者がJALの運航安全推進部で世界中の主要な事故を分析し、安全対策を研究するなかで得た結論は、選択肢があるなら、「アメリカのメジャーな航空会社の、しかも大型機で運航する便」を選ぶべし。どのような緊急事態や想定外のトラブルに遭遇しても、最終的には無事生還を果たしてくれる(実績からも)という信頼感がある。

航空会社はミシュランのように、料理やホスピタリティ、店の内装で選んではいけない。安全性が大切だ。




<バードストライク>
航空機へ鳥の衝突を意味する。雀がエンジンに入ると、エンジン後部から焼き鳥になって出てくる程度だが、雁などの渡り鳥が群れで大量に入ると、エンジンは異常燃焼を起こし最悪は推力を失う。

バードストライクは2007年で日本全国で1320回あり、年々増える傾向にある。抜本対策はなく、大音量で追い払う仕組みは、次第に鳥が慣れてしまう。

ドイツは空港から一定の範囲以内にはゴミ捨て場を設置させない。餌を求める鳥を近づけないために。これは有効なようだが、日本ではなかなか難しい。




<ブラックボックスとは>
一般にブラックボックスと呼ばれているものは、デジタルフライトデータデコーダーDFDRと、コクピットボイスレコーダーCVRの2つ。これらは揃って尾翼付近の胴体に収められている。最も機体のダメージが少ない部位。DFDRは大きさ50センチ重さ7キロ、CVRは大きさ30センチ重さ8キロ。水深6000メートルの圧力と1000度の高温に耐え、長い年月が経っても海水中でも腐食しない設計になっている。オレンジ色なのにブラックボックスと呼ばれているのは、中が封印されており、すべての問題を解明する心臓部にあたるというイメージから。





<新たなハイジャックの手口>
犯人は、どこかの飛行場に降りて当局と交渉しても、失敗することが折り込み済であった。近年はどこの国でもハイジャック犯には譲歩せず、特殊部隊を機内へ強行突入させるという方針が確立しつつあり、犯人側へ譲歩すると、国際的な非難を浴びる風潮がある。

犯人はこのような状況を十分に承知したうえで海上を長時間飛び、その間に当局と交渉をした。多くの乗客乗員を人質に取り、「要求に応えなければ海に自爆するぞ」という脅しだ。




本書は終章で、犯人の個人名、およびマレーシアの政治的背景を元にした明確な動機、などを推論として導き出しています。時間をかけて読むと、それができる人はこの人しかいない、かなりすっきりした結論です。もっとクリアにしたいかたは、本書でどうぞ。


パイロットでスカイブルー♪ 
マジックやジャニアリーなんかのメジャー曲もいいですが、この歌もいい♪



Pilot (From the Album of the Same Name)

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: RPM Retrodisc
  • 発売日: 2009/08/25
  • メディア: CD



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