(株)貧困大国アメリカ (岩波新書)

  • 作者: 堤 未果
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2013/06/28
  • メディア: 新書


【㈱貧困大国アメリカ/堤未果/13年6月初版】
3年前の記事を再掲します。
ソネットの運営さんから削除されたので加筆修正。削除の経緯や感想は下段に書きました。
トランプ大統領誕生で読み直すのもいいと思う。


アメリカは1%の富める者に乗っ取られています。
大統領や議員も多国籍企業や資本家に有利な法案をいつのまにか通している。
政治家は99%の貧しい人々のために働いてない。
どこの献金が多いかをみれば誰のために働いてるかが見えてきます。

アメリカはALECというNPO団体があって、そこに巨額の会費を払って参加したグローバル企業は、
議員に立法を提案して州議会でそれがそのまま通ってしまうという。
もちろんマスコミも報道しない。

「自由貿易という発想そのものが、多国籍企業と法治国家の力関係を逆転させる性質をもっている」
「自由貿易条約とは1%(富裕層)のための自由をさすのだ」

反グローバリゼーション、反資本主義(行き過ぎた搾取)の1冊。読むとTPP参加が怖くなります。
TPPは人、物、金、情報などあらゆるものの国境を越えた流動化を目指しています。
実施されればそれぞれの国が持つ規制や独自経済制裁能力といった主権が制限され、
投資家と多国籍企業は完全に法治国家を超えた強力な力を持つことになる。

アメリカが得をしてるわけではなく、99%のアメリカ国民も被害者です。
それは本書を読むと痛いほどわかる。
多国籍企業群はあらゆる規制を撤廃し、いよいよ最終段階に向かっていて、
仮にTPPが頓挫しても、またすぐ別の名前で繰り返し現れます。


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目次は以下。
1章:株式会社奴隷農場
2章:巨大な食品ピラミッド
3章:GM種子で世界を支配する
(GM種子:遺伝子組換えし農薬耐性を強くした作物。結果、農薬まみれ)
4章:切り売りされる公共サービス
5章:政治とマスコミも買ってしまえ


以下に読書メモを。


<アメリカの貧困>
四人家族で2万3314ドル(約230万円)という、
国の定める貧困ライン以下で暮らす国民は現在4600万人。うち1600万人が子ども。
失業率は9.6%(2010年)だが、職探しをあきらめた潜在的失業者も加算すると、
実質20%という驚異的な数字になる。
16歳から29歳までの若者の失業率を見ると、2000年の33%から現在は45%に上昇。
(若年失業率がひどすぎる・・)

SNAP※受給者は年々増加。2012年8月の農務省発表では、
約4667万373人と過去最高に達した。
1970年には国民の50人に1人だったのが、今では7人に1人がSNAPに依存している。

※旧フードスタンプ。アメリカ版生活保護。食費しかもらえない。2008年にSNAPに名称変更。
政府から支給されたカードをSNAP提携店のレジで専用機械に通すと、その分政府から支給される。
嗜好品は買えずあくまで食品のみ。全米平均支給額は月額132ドル(1万3200円)。
1食150円ぐらいか。自炊ならなんとかなる。
月収1180ドル以下(ニューヨーク州の場合)なら支給される。




<復活した農奴制、ケン〇ッキーフライド〇キンの場合>
寡占化は株主至上主義。その最大の特徴は、末端の農家の取り分をより少なく、
客が払う分はより大きくなり、中間業者である大企業群にのみたっぷり利益が出る仕組み。

ケンタッ〇ーフライドチ〇ンで12ピースのチキンを買うと、客がレジで払うのは26ドル。
ここからケ〇タッキーフライド〇キン社に21ドルが入り、その下にいる加工業者に4ドルが入る。
養鶏場には30セントしか入らない。大手と契約する工場式養鶏場の平均年収は150万円程度。




<米国家畜工場の現実>
養豚では上位3%の大規模養豚工場が全米生産の50%以上を占めている。
家畜工場は大量に使われる抗生物質や糞尿で衛生的にもひどい環境。
誰もやりたがらず、低賃金・組合なしのメキシコ系移民労働者が雇われる。
メキシコ系はアメリカの農業労働者の8割を占める。

中小の養鶏場では求人を出しても地元の人間はやりたがらない。
移民労働者もいつも簡単に見つかるわけじゃない。
そいうときは契約している大企業が、地元自治体の刑務所から囚人を連れてくる。
彼らは労働法の適用外。

勤勉で英語堪能、労働条件に一切文句を言わず、最低賃金の10分の1ほどで雇用できる囚人労働者は、
今全米の企業からひっぱりだこの人材。各州は厳罰化をすすめ、囚人数は猛スピードで拡大している。

雇う側からすると、ホームレスや移民労働者を使うと、
その地域の社会的コストがふくれあがり治安が悪くなるので囚人労働者のほうが良い。


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<モン〇ントのライセンス契約>
モンサ〇ト社のGM種子を使用する農家は、アメリカやカナダをはじめ、
世界中どこでも同様のライセンスを結ばされる。

・自分の農場で採れた種子を翌年使用することは禁止
・毎年種子はモ〇サント社から購入
・農薬は必ずモンサ〇ト社から買う
・毎年ライセンス料をモン〇ント社に支払う
・何かトラブルが起きたときはその内容を他者に漏洩しない
・契約後3年はモンサン〇社の私設警察による農場立入を許可する




<食料は武器だ>
アメリカ政府の主張。食糧供給の企業所有を国内で完成させた後は、
諸外国に「民主主義」「強い農業」「財政再建」「人道支援」などを理由に介入。
約させた広い農地で輸出用GM作物の大規模単一栽培を導入させ、
現地の小規模農民を追い出した後は、株式会社アメリカが動かしてゆく。
インドやイラク、アルゼンチン、ブラジル、オーストラリアなど(詳細は本書で)、
その勢いはとどまるところを知らない。
モン〇ントはじめ一握りのアメリカ系多国籍バイオ企業が、世界の種子の大半を手中に収めると、
次はさらに強力に世界市場拡大の障害を取り除く必要がでてきた。

それを実施するための方法論のひとつが、TPPなどの国家間の自由貿易条約だ。




<完全民間経営自治体サンディスプリングス>
小さな政府を信奉している共和党支持者は思った。
なぜ自分たちの税金が、貧しい人たちの公共サービスに吸い取られるのか?
いつまでこれは続くのか?納得いかない彼らは住民投票を行い、ベストな解決策を打ち出した。

自分たちだけの自治体を好きなように作って独立すればいいのだ。
彼らは自治体の運営に関しては素人だったが、富裕層には大手企業が近づいてくる。
大手建設会社CH2Mヒル社が、2700万ドルで市の運営を請け負うオファーを持ちかけ、
契約が成立した。

2005年12月、人口10万人(平均年収1700万円以上)のサンディスプリングスが誕生した。
政府ではなく民間企業が運営する自治体。
雇われ市長1人、議員7人、市職員7人、余分な税金を低所得層の福祉その他に取られずに、
最も効率よく自分たちのためだけに使えるのだ。

警察と消防以外のサービスはすべて民間に委託し、払った費用に見合った適切なサービスを受けられる。
市には無休のホットラインがあり、何かあれば24時間いつでも対応可能。
外部のものが簡単に入れないよう警備も充実している。

その後周辺地区では、サンディスプリングスに憧れる富裕層が同じように住民投票を実施し、
次々に自治体運営を企業に委託。新しく5市があとに続き、独立特区を形成していった。




僕たちは服やクルマと同じように♪
大統領まで売りつけられている
青春から宗教まで奴らは何でも売り物にして
同じように戦争も売る
黒幕が誰なのか知りたい


ジャクソン・ブラウンでライブズ・イン・ザ・バランス♪ ソロ・アコースティックで。




ジャクソン・ブラウン-ソロ・アコースティック1&2

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: SMJ
  • 発売日: 2010/02/24
  • メディア: CD




(追記)
この記事は、よくツイートいただきました。
それでワンワード検索で上位にいってしまった。目立つと色々と不快感を訴える方がいます。
それは申し訳なかった。<_ _>

ソネットの運営は本記事を削除しました。
運営さんとのやりとりはオープンにできないけど、
加筆修正して新規記事としてアップするのはOKという。
新規記事ならURLも変わるので、グーグル検索で上位に行かないし、影響力もない。
そういう意味でこの記事は馬群に埋もれさせておきたい。本記事のツイートはご容赦ください。

ソネットに迷惑かけるなら、そろそろぼくも独自ドメインに移行する時期かもしれません。
運営の方、お手数かけて、すいませんでした。ありがとう。


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またね♪


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