波のうえの魔術師 (文春文庫)

  • 作者: 石田 衣良
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2003/09
  • メディア: 文庫


ジェレミイベンサム(1748~1832)
最大多数の最大幸福を追求し、功利主義の創始者として知られるベンサムですが、
じつはめっちゃ質素だったそうです。

なにゆえ質素だったか?
ベンサムにとっての快楽の源泉は、書を読み音楽を聴くという精神的営みであって、
俗人にとっての快楽である酒池肉林とは縁遠かったそうです。

なんか吉田兼好(1283~1352)っぽいです。
かれの名言には、
「名利に使われて、閑かなる暇なく、一生を苦しむこそ、愚かなれ」
金や地位を追い求めて、心を労してあくせくするのは、アホや!
というのがありますね。

日本人のベースには、兼好おじさんの精神が流れていて、
清貧でおだやかな生活を永らく好んでましたが、
今後はどうなるのでしょう。

貯蓄を好み、投資をしない日本人の精神性について、
この本を読みながらふと考えてしまいました。


モンテクリスト伯と、ベストキッドと、スティングをたして、
三で割ったようなハッピーエンドのこの小説は、
伝説のメリルリンチトップディーラー菅下氏に、
取材を重ねて書かれたもののようです。

むかしドラマ化もされてる極上のエンターテイメント作品ですが、
なんのために必死で危ない橋を渡ってまで金を稼ぐか?

さすがに石田衣良、本と音楽と、うまいラーメン以外に何がいるのかと言い切るだけあって、
小さな恋心が起点であったとあぶりだしています。


日々、波の上で翻弄される小船のような生活をおくっているぼくの、
STYXでは一番好きな曲です。ボートオンザリバー♪




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