ヤクザと原発 福島第一潜入記

  • 作者: 鈴木 智彦
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2011/12/15
  • メディア: 単行本


【ヤクザと原発 福島第一潜入記/鈴木智彦/11年12月初版】
このまえ「ニュースの深層」に鈴木智彦氏がでていました。昨年はポストと文春で原発作業員としての潜入ルポを書いてたので話題の人なんでしょう。この人の本では「ヤクザ1000人に会いました」が秀逸で、極道記者歴15年の集大成の1冊として一般人が暴力団のことを知るには、最適な1冊だと思います。
(ヤクザ1000人過去記事http://donhenley.blog.so-net.ne.jp/2011-06-04

鈴木氏は言います。潜入ルポものは危険であればあるほど、ルポの商品価値が高まる。暴排条例で暴力団の活動範囲が狭まり、極道記者の価値は相対的に下がってきた。原発潜入の後は戦場ルポでも書こうかと。

戦場ルポと言えば開高健の「ベトナム戦記」が有名で、200人の部隊で17人しか帰還しなかった掃討作戦にも同行しています。命を懸ける仕事です。鈴木氏はどこまでいくのでしょうか。
(ベトナム戦記過去記事http://donhenley.blog.so-net.ne.jp/2010-07-11

原発とヤクザの関係は、この本によるとむかしほど利権に食い込んでません。暴排条例で恐喝まがいの汚れ仕事はなくなっています。シノギはフロント企業を立てた人足の中抜きがメイン(派遣会社と一緒)です。暴排の取締りは西高東低で東北はゆるいとのこと。

原発ヤクザの源流は炭鉱暴力団で、資本家が荒くれのものの炭鉱労働者をまとめるために、地元のヤクザを利用したのが始まりです。暴力という原始的な手段は有効だったようです。


以下に読書メモを

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<アレバとキュリオン等の外国人技師への不満>
やっぱり装置自体に欠陥があった。日本人は外国製の機械をさわれない。チェックしようにも縄張りがあって無理。海外のものはネジを締めるのも雑。日本だったら接合部から漏れがないようにシールテープをまくけどそれもしない。高い金払ってなんだったのか。

開閉テストの延期のときでも、日本人なら待機するのにいわき市まで帰る。飯や休憩も長くて待ってる日本人はいらいらする。聞いても俺たちの指示通りやればいい、とオーノーの1点張り。

結局巨費を投じた米仏の装置がトラブル続きで、日本製のバックアップ装置が主役となった事実がすべてを物語っている。

ただ鈴木氏の見解では、日本人だけでは村社会の構造で情報の隠蔽があり、その壁は壊れない。外国人が入ることによって、村社会のマフィア的沈黙の掟はくずれた。外国人という異分子が悪役になり、情報の防御壁が壊れた。その点では外国勢は大きなプラスとなった。



<ソープ街は原発バブル>
3月まではがらがらだったけど、震災後は作業員がたくさんきてくれる。いわき市のスナックも同様で震災前の数倍の売上げがある。鈴木氏は取材のため3日おきにソープに通ったが、東電の社員を何度かみかけた。必ず協力会社社員と一緒で、勘定は下請け会社が出していた。




クラッシュでロンドンコーリング。反原発運動の最盛期、放射能に汚染されたロンドンのラジオ局が必死の実況中継を行うという衝撃的な歌詞が、全世界の若者から支持され大ヒットした曲です。訳詩つきの東京公演。




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