【カウンターの中から見えた出世酒の法則/古澤孝之/12年6月初版】
著者は大阪中之島のリーガロイヤルホテルのマスターバーテンダー。
ホテル内の飲食店19店舗の責任者もしているいわゆるサービスの達人。
日本バーメンズ協会理事。

出世酒の法則の部分は、よくある銀座のママがみた出世する男の条件みたいではありますが、
著者の経験が豊富なので、城アラキのバーテンダーを読んでるような気にもなります。
病院でつくったジントニックなんていい話もありますし。

ただ相手にしてる人が高所得者なんですよね。ぼくの場合は高架下なんかにあって安くて、
酒好きのサラリーマンや、高架下のおしゃれな雑貨店の店員なんかがあつまる店が好きです。
バーテンダーは「人生最後の相談者」と言われるだけあって、
流行ってる店は聞き上手の人がカウンターにいたりします。
結局求めてるのは酒じゃなくて人だったりするのかも。

ロンググッバイじゃないけど、人が混んでくる前の早い時間のバーが好きです。
なじみのショットバーでマスターと1時間くらい世間話して、混む前にほろ酔いでサッと出る。
なんていうか、酒と他愛もない世間話で、疲れが癒されます。


以下に読書メモを。


<カクテルを飲む順番>
フレンチのように料理に合わせて、初めシャンパン、白ワイン、赤ワイン、
食後のブランデーやマールというような基本ルールはカクテルにはない。
たださっぱりした味から濃い味への順番がいいというのは、フレンチと同じ考え方。
チョコを食べた後にイチゴを食べることがないように。

度数が低く口当たりの軽いものから入って、徐々にしっかりした味わいのものへ移行し、
最後は甘口のもので締めるのが道理か。

たとえばジントニックやウォッカトニックなどさっぱりした飲みやすいカクテルから入って、
ダイキリやギムレットのような王道カクテルへ移り、最後にブランデーベースのサイドカー、
乳製品を使った甘味のあるアレキサンダーやグラスホッパーで仕上げるのは定番の流れ。
(ブランデーベースのカクテルは価格にご注意)



<ビールの冷やし具合>
ビールは冷やし具合でおいしさが変わってくる。
スーパードライは冷蔵庫から出したてでキンキンに冷えてるのがベスト。
サッポロの黒ラベルやエビスビールは少々冷えがあまくても旨みを感じる。
屋外で飲んでもおいしいので、海や山や花見にはこちらがむく。ビールと泡の黄金比率は7:3.

仕事終わりのビールはなぜうまいか。子供の頃飲まされたビールは苦くてまずかったはず。
人間はストレスがあると苦味を感じにくくなる生き物。
仕事終わりはストレスの塊だから、苦味が深みに感じてビールがうまい。



<赤ワインと生ハム>
まったく合わない。口の中がプラスチックの味になる。
白ワインのほうが合うが、生ハムに合うのは断然シェリー。

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<ダイキリ>
ラムとレモン(ライム)ジュース、砂糖のたった3種類でつくる、
透明感のあるほんのり白色をしたカクテル。カクテルの中では3本の指に入るくらい人気がある。

著者はバカルディというホワイトラムに、絞りたてのレモンジュース、
シュガーシロップを使い、キンキンに冷やすため少し強めのシェイクをする。
口径の広いグラスを使う。口径の広いグラスは口を横に広げて飲むので、
味が均一に広がって旨みを強く感じることができる。

酸味と甘味の絶妙なバランスが最大の特徴なので、
レモンが酸っぱくて尖ってしまっても砂糖が多くて甘ったるくてもおいしくない。
コンマ1ml単位で味が変わる繊細なカクテル。
カウンターでメニューを見ずに「ダイキリお願いします」と言われると、
9割方同業者かなと考えてしまう。

後輩の成長を確認したり、自分の腕を先輩に見てもらうときにも作るカクテル。
うまくつくれないと、スポーツドリンクのような味になる。

ヘミングウェイがよく飲んだダイキリはパパ・ダイキリと呼ばれる、
砂糖を入れないスタイル。晩年キューバに住んでいたときは毎晩のみ歩いて、
フローズン・ダイキリを一晩で17杯飲んだという逸話がある。

「ザ・ヘミングウェイ・クックブック」という彼の好んだカクテルを紹介した本があるが、
そこに書かれたパパ・ダイキリのレシピは以下。ホワイトラム110mlに、
ライム2個分のジュース、グレープフルーツ半個。マラスキーノビター6滴。
これだけでもおよそ300mlで、氷を足すと500mlになる。
日本で一般的につくる量の3倍になる。
⇒ラムは40度なので、17杯飲むとウイスキー4合ビン2本半ですか。ごっついですね^^;



<マティーニ>
世界的にマティーニによく使われてるジンはビーフィーター。
ベルモットはフランスのノイリープラット。
ボンベイサファイアやタンカレーもここしばらく人気があるが、
著者はジンはゴードン、ベルモットはイタリアのチンザノを使う。

他のジンより香りの厚み(ボリューム感)があり、
著者の目指す香りが華やかで口当たりのやわらかいマティーニに仕上がる。
ゴードンは柑橘系の香りが爽やかで、
ジン特有のジュニパーベリー(ねずの実)の香りも併せ持っているジンらしいジン。

マティーニの神様の故・今井清のジンはゴードン、ベルモットはノイリープラット。
一度飲んで衝撃を受けた著者は材料を今井に習った。
ベルモットの銘柄を変えたのは、ゴードンの味わいが今井氏の時代と変わったため、
チンザノをあわせたほうが理想の味に近くなる。
生前の今井マティーニを飲んだことのある客に、
著者のマティーニが一番今井マティーニに近いと言われたときはうれしかったと。

ジンは温度にもこだわる。冷凍、冷蔵、常温と使い分ける。
著者は冷蔵のゴードンを使いステアすることで温度を下げていく。
冷凍ジンを使う人はステアの回数を増やして温度を上げていくと言う考え方になる。
(オリーブ談義は省略・・)



<X・Y・Z>
ホワイトラム、コアントロー、レモンジュースをシェイク。
XYZのラムをブランデーに変えるとサイドカー。ウォッカにするとバラライカ。
ドライジンにするとホワイトレディになる。




Tom Waits - Warm Beer and Cold Women ビールはぬるくなってしまい、女は冷たい♪



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