グローバル経済に殺される韓国 打ち勝つ日本

  • 作者: 三橋貴明
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2012/06/21
  • メディア: 単行本


【グローバル経済に殺される韓国打ち勝つ日本/三橋貴明/12年6月初版】
日本と韓国を対比することによって、グローバル資本主義の本質をあぶりだす一冊。

日本も大変だけど、韓国はもっと大変です。一生懸命に勉強しても、ふつうに生きていくのが難しい状況です。

極端な資本主義は現代の奴隷制度です。会社は株主(資本家)のものとして、会社の利益を増やすには、従業員の給料を下げればいい(労働分配率を下げる)。

増えた利益が国内に留まればいいけど、法人税率は低い、配当性向(株主への配当)は高い、外国人株主の比率が高いとなると、せっかくみんなが働いて増やした利益がすべて外人のモノとなります。

持たざるものからすれば、株主は外人であろうがなかろうが、どちらでもいいかもしれませんが、思うに情けの深さや、長期的なビジョンとかは外人には欠けるので、容赦がない。もちろん国益という観点もない。

日本は労働分配率が高く、中間層がまだ多い。これが徐々に韓国型になっていくかもしれないと考えると、ぞっとします。

僕らにやれることといえば、選挙で竹中平蔵的なグローバル資本主義の考え方を断固拒否することぐらいです。ちなみに維新八策は竹中氏が書いたものと思われます。維新の会の候補者選定委員長は竹中氏です…。橋下さんのキャラは好きなんですけどね。


以下に読書メモを。








<韓国の概況>
寡占化が進み、家電を買うときはサムスン電子かLG電子しか選択肢がなく、しかも似たような商品を同じような価格帯で出してくる。乗用車などは、国内市場の8割超を現代自動車とその子会社の起亜自動車が占めている。

国民はモノを選ぶ選択肢が少なく、価格は高い。さらに大手輸出企業がグローバル市場で戦うため、国内の実質賃金は上がらず、自殺率はOECD加盟国中トップ。大学卒の半分が就職できず、4月前後に配当金が外国人の投資家に支払われ、あげくのはてに通貨安政策で国民はインフレに苦しむ。



<韓国の若者の苦しみ>
韓国のニートは2011年には100万人を突破した(日本以上の数字)。現在の韓国は名門大学を卒業しても就職率は50%を割り込んでいる。2011年3月に4年生大学を卒業した韓国の若者は32万1740人。それに対して2011年8月時点における就業状況は、進学や徴兵を除く就業希望者28万人に対しておよそ14万人だった。

参考に日本の2012年4月に卒業した大学生の就職率は93.6%(文科省、厚労省調査)

ちなみに自営業者も多い。比率は31.8%でOECD加盟国平均の倍。日本は10%、アメリカは7.2%。自営業が多いことは悪いことではないが、理由が問題。40代で早くも定年を意識し「45停」という言葉まである。年金が不十分なので働かざるを得ないが、転職先がない為の自営業なのだ。

韓国の満30歳以下大卒者の平均月収は以下。
(2011年10月12日朝鮮日報、単位:万ウォン、100万ウォン=約7万円)
専門大学:男159、女136
産業大学:男174、女144
一般大学:男209、女163
大学院: 男251、女230

一般大学卒の男30歳以下の月収平均が15万円程度となる。

また韓国の若者で一流企業の社員になれるのは、わずか5%。就職先が見つかっても7割が非正規雇用で、月収88万ウォン(約6万円)が平均という労働環境である。








<外資に牛耳られる韓国>
韓国の輸出企業の株主の多くは外国人。汗水たらして挙げた利益は外国人のものとなる。韓国内にはトリクルダウンの恩恵はない。外資比率は以下。
サムスン電子:54%、現代自動車:50%弱、ポスコ:50%弱。ちなみにこの3社で、韓国のGDPの30%を占める。

主要銀行は、ウリイ銀行だけは11%であるが、国民銀行:86%、ハナ銀行:72%、新韓銀行:57%、韓国外換銀行:74%、韓美銀行99.9%、第一銀行:100%

はたして韓国経済は韓国人のものといえるのだろうか。



<米韓FTAの中身>
基本的に日本が推進しようとして、安倍総裁は反対を表明してるTPPと米韓FTAはほぼ同じようなもの。維新の会はTPP賛成。問題視された中身は以下。

ISD条項:相手国に投資した企業が、その国の政策によって損害を被った場合に、世界銀行傘下の国際投資紛争解決センターに提訴できる。たとえば韓国が排ガス規制をして、その基準を満たせないアメ車が韓国で売れなかったとしよう。この場合はアメ車メーカーが韓国を提訴し、賠償金の支払いや排ガス規制の撤廃を求めるということが現実に起こりえる。なにしろ訴訟大国のアメリカが相手だし、世銀は米国の傀儡のため、アメリカに有利な判決が出やすい。

ネガティブリスト方式:自国で関税を残す品目をリストアップし、それ以外はすべて自由化するという過激な手法。リストにのってるもの以外はすべて自由化し、新たに出現した分野は基本的に自由化。

ラチェット規定:一度自由化したら、あとで自国に不利だということが判明しても、もとに戻せない規定の事。ラチェットとは歯車が逆にまわらないようにするための「カギ爪」のことで、まさしく後戻りできない規制緩和、自由化。

内国民待遇:自国の企業と対等の待遇を外国企業に保証するというもの



<グローバリズム礼賛者>
経団連に限らず、日本ではいまだにグローバリズム礼賛者の声が大きい。当のユーロ圏や米国がグローバリズムに背を向けようとしているのに、周回遅れの日本がその概念にしがみつこうとしている。

竹中平蔵や大前研一が代表であろうが、日本で知名度のある経済評論家は、グローバル資本主義礼賛から転向した中谷巌氏を除いて、ほぼ全員が現時点でもグローバリズム推進者である。彼らの多くは1980~90年にアメリカで新自由主義経済を学んだという共通点がある。その後こうした概念を日本に持ち帰り、当時の最先端の経済学として、新自由主義の喧伝を始めたのだ。



<日本型経営と韓国型の違い>
日本:長期的な視点にたった投資を得意としてる。得意先や顧客と長期にわたる信頼関係を築くことをめざし、短期であくどく儲けることを嫌う。いわゆる近江商人の「三方よし」を重んじるが、この種の経営戦略は、長期的な視点に立たないと生まれてこない。

一方、手段を選ばずに最終利益をふくらませ、配当金が巨額化し、外国人投資家の貯蓄、あるいはオーナーの貯蓄になってしまうのが、グローバル株主資本主義であり、韓国モデル。

グローバル企業は短期的な利益に走り、しかも厄介なことに政府と結びつく。なにしろ法人税減税などは、政府以外に実現できない。政府と結びついた一部の企業や投資家のための政策が実現されても、果実(所得)は長期にわたって国民にまったく還元されない。この種のスタイルの資本主義を、はたして日本国民は望むのだろうか。



<日韓基本条約>
漢江の奇跡と呼ばれる韓国の経済成長は、日本がパク政権に数億ドルの経済支援を行なったのが発端だ。日本政府がカネを出し、日本企業がインフラを整備して、そのうえで韓国人が働いて高度成長したのだ。

日本の経済支援とは、具体的には1965年に締結された日韓基本条約に基づく供与と、貸付である。日本は無償金3億ドル、有償金2億ドル、民間借款3億数千万ドルを韓国に提供した。当時の韓国の国家予算は3億5000万ドル程度であったので、その数倍の支援を行なったのだ。当時は1ドル=360円だったので日本の支援は巨額だった。

韓国では日本からのこうした経済支援を国民に知らせてこなかった。だからいまだに「日本は韓国人に個人補償していない」と非難するひとがいるが、そもそも日本からの巨額の支援を個人補償ではなく、韓国経済の発展のために使う事に決めたのは、当時の韓国政府なのだ。当時の韓国の1人あたりの国民所得は67ドル。現在の為替レートだと、年収5,300円ほどだ。



<韓国の軍事指揮権>
韓国の軍事指揮権は、朝鮮戦争以来アメリカが握っている。2009年にアメリカが指揮権の返還を韓国政府に打診したところ、韓国側が拒否した。結局指揮権は2015年に返還されることになったが、韓国としては有事のときに自分たちだけでは対応できないとの不安を抱えてるのだろう。

2011年11月ヨンピョン島が北朝鮮に砲撃されたが、これが見事に米韓FTAに利用された。北朝鮮に対する恐怖から「アメリカなしでわが国はどうするのだ」と誰もが考え、多くの反対派が賛成にまわったのだ。

ちなみ日本でTPP参加への動きが本格的に始まったのは、尖閣諸島で中国漁船衝突事故が発生した2010年9月以降のことだ。




やさしく殺して♪
Roberta Flack - Killing Me Softly