ゴーマニズム宣言SPECIAL 脱原発論

  • 作者: 小林 よしのり
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2012/08/22
  • メディア: 単行本


【脱原発論/小林よしのり/12年8月初版】
結局カネかもしれませんが、個人的にはこれまで原子力推進派でした。経済効率が良さそうだったし、仕事にも一部関係します。だけどこの本は破壊力抜群です。「原発のウソ」以上の名作のような気がします。

喉元を過ぎた今だからこそ、読むべき1冊だと思います。この本読んで原発推進派継続できたら大したもんです。

この前飲み会で原発の話になったときに「まずはこの本読んでから議論しましょうよ」と言い放ってしまいました。この本に書かれてることは、すべて事実じゃないかもしれませんが、大筋は間違ってないと思います。両派にとって満足できるソフトランディングへの道はないものでしょうか…。

以下に僕なりの観点で要約。








<今そこにある危機>
みなさんご存知の4号機プール問題。4号機のプールには原子炉のプールに入る燃料の2.8倍にもなる1536本の燃料棒が入っている。そのうち204本は使用してない新燃料である。

この燃料棒が冷やせなくなったら避難区域は数百キロにおよび、日本の半分近くは人が住めなくなる。(その間のステップは省略、詳細は本書で)

このプールは倒壊の危機にあり緊急工事でつっかえ棒をした状態。しかもこのプールの鉄筋とコンクリートは、建設時の設計寿命20年を超えて33年も放射線を浴びて、ドライバーで簡単に削れるほど脆くなっている。

もちろん政府も最重要喫緊課題であると認識し、2013年12月からの燃料棒取り出し工事を計画している。クレーンの設置や搬出先のスペース確保で最短でもその時期になってしまう。

燃料棒の移動にはキャスクという鋼鉄製の100トンのドラム缶を水中に沈め、蓋をして引っ張り上げ、地面におろして横にして運び去る。

緊急補強して支えている腐食の進んだプールで、この作業を50回繰り返さないといけない。1回でも落とせば、1巻の終わりとなる。国も東電も、このような危険な状態であることをマトモに発表しない。



<代替エネルギーはどうするか>
日本の電力10社の発電能力は大震災前で2億KW。環境省の試算では、日本国内での自然エネルギー発電量は、地熱と中小水力が0.14億KW、太陽光が1.5億KW、風力19億KW、九州大の大屋教授によると、いろいろな制約で風車が立てられないところがあるから、実際の発電能力はその1割ぐらいとのこと。それでも風力だけでも1.9億KWとなり、日本の電力は自然エネルギーだけで全部まかなえる。

新技術の「風レンズ風車」は従来の風車にメガホン型の輪っかを取り付けただけで、風車の速度が増し、発電量が3倍になるという。現在実用試験中で、日本のメガフロート技術があれば海上に設置することも可能だ。

経産省は2014年からの発送電分離を決め、ついに日本も電力の自由化に一歩踏み出す。

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<日本が核武装するための布石はどうするのか>
ゴー宣の前作では、小林氏は日本が核武装するまでは、原発は続けるべきだとのスタンスだった。今回は考え方は変わっている。安全保障を考えるなら、日本は脱原発をし、一方で敵国の原発を攻撃する能力を備えればいいと。

原発は潜在的自爆核兵器で、工作員が入り込んだり、海上からの工作船の攻撃にも弱い。

もともと五大国は日本の核武装は絶対に許さない。核拡散条約は1970年に発効したが、発足の目的の大半は、日本と西ドイツの核武装を阻止することだった。

また日本の原発はIAEAの厳格な監視下に置かれている。全国の原発には年に1、2回の国際核査察が入る。IAEA予算の7割が対日監視のためと言われている。



<コスト競争力はどうなのか>
2011年末に発表された内閣府の「コスト等検証委員会」報告書では、石炭やLNGによる火力発電はCO2対策や燃料費上昇を考慮しても、今後の技術向上によって発電効率の上昇が見込まれることなどから、原発とのコスト競争力を持ちうるとしている。さらに風力や地熱も条件次第では原子力と対抗しうると。

そして太陽光は量産効果などにより、コスト低下が見込まれ、石油火力よりも優位となり、条件がよい場所をフル活用すれば、現在ピーク時電源を担っている火力発電に代替していくことが期待できるとしている。

またこの報告書では、原発は従来言われているコストよりも高いとしている。



<人体への影響と現状>

本来の国の基準は、国際標準の年間1ミリシーベルトだ。しかしそれを厳密に適用してしまえば、会津地方を除く福島県全域に人が住めなくなってしまう。ちなみに郡山市は実測値で街中の空間線量が毎時0.9ミリシーベルト(小林氏実測)ある。これは年間8ミリシーベルトになる。

通常は「年間5.2ミリシーベルト」を超える場所は、「放射線管理区域」とされ立入禁止。

女性への影響や子供の奇形の話は省略。詳細は本書で。



<膨大な産廃問題はどうするのか>
大きく廃炉の問題と、使用済み核燃料の問題がある。まず老朽化した原発の廃炉であるが、現在日本の50基の原発のうち、17基が運転30年を超えた老朽炉である。

そもそも原子炉の耐用年数は20年とされていたが、廃炉が著しく困難だから動かしてるのが現状だ。東海原発の解体は実験炉以外では初の解体となるが、現在は2014年まで延期されている。その見積もり費用は885億円。放射性廃棄物の量は6万8000トン見込まれている。これはわずか17万KWの原発だ。全国には100万KW級の原発が32基ある。すべての機器を切り刻んで収納容器に入れ、50~300年遮蔽管理する場所は日本にあるのか。

ちなみに福島原発の廃炉費用について東電は、1兆1510億円と言ってるが、米エネルギー省の「廃炉手引書」の著者は、技術開発に10年、作業に10年かかると言っている。もちろんその間は放射性物質の放出は続く。見積もり金額は東電の申告額の10倍以上になるとのこと。

次に使用済み核燃料について。最初日本は核燃料サイクルを考えていた。六ヶ所村で再処理した核燃料を高速増殖炉でサイクルするという。これが両方とも技術確立できてない。それで、たまりにたまったプルトニウムを普通の原子炉で使おうとした苦肉の策が、プルサーマル。だけど原子炉の設計はプルサーマルに耐えるように出来てない。また再処理後の廃棄物も10万年の管理が必要となる。

内閣府原子力委員による使用済み核燃料処理費用の試算では、原発を維持して再処理を行なうより、原発をゼロにしてすべて直接処分したほうが最もコストがかからないとの結論が出た。

ただし一番安上がりといってもその額は、7兆1000億円。しかも直接処分というのは、使用済み核燃料を再処理せずに、燃料棒の形のまま容器に詰めて地下深く埋めるということだ。そして放射能レベルが下がるのに要する時間は、再処理する、しないにかかわらず、10万年である。


ボサノバの父・アントニオカルロスジョビンの名曲で「三月の雨」
ほんとにたくさんの人が歌ってますが、ぼくの大好きな2人のバージョンで♪

まずはステイシーケント、「パリの詩」から



やっぱりこの人はいいです。ホリーコール、「シャレード」から。




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