増補 池上彰の政治の学校 (朝日新書)

  • 作者: 池上 彰
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2013/06/13
  • メディア: 新書


【池上彰の政治の学校/池上彰/12年9月初版】
近いうちの衆院選は、自民党(ケインズ)vs維新の会(フリードマン)の対決が軸かな。
デフレの時代にケインズと新自由主義では、ケインズの方が正論であるのは、冷静に考えればわかることです。
これはシンプルに決着がつくなと思っていたところに、石原慎太郎氏が登場しました。
「日本よ」という記事を読むと、心が動かされる。
(日本よ:http://sankei.jp.msn.com/politics/news/121105/stt12110503140000-n1.htm


かんたんに要約します。
・保身と省益を優先する官僚に、日本を任せておくと駄目になる。
・石原氏や橋下氏は、官僚と日々接しておりそれが痛いほど分かる。
・薩摩と長州は戦までしていたが、倒幕(今回は官僚)のために連合した。
・小異を捨てて大同で行く。真の大同は何であるか。

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ぐらっときました。ここでじっくり考えてみます。
経済活動と社会制度は、どちらが優位か?
もちろん経済活動です。とマルクスはいいます。

下部構造(経済活動)が人間の思想や法、政治の制度などの上部構造を決める。
いわゆる唯物史観です。経済活動が土台となって、それによってすべての社会制度の中身が決まっていきます。
それまでの哲学者は逆で、思想や観念こそが経済のあり方を決定すると考えていました。
石原さんは哲学者かもしれませんね。好きですが。

デフレで土台がボロボロのときに、増税や竹中グローバル資本主義を貫かれると、日本の息の根が止まります。
まずは経済を立て直してから、公務員改革を進めませんか。
とはいえ、憲法9条の改正や、公務員改革を本当に実現してくれるのなら、心はゆらぎます。

近いうちにせまった選挙を前に、ふと政治の基礎をもう一度頭の中で整理しておきたくて読んでみました。
タイムリーな本なので、新書のランキングでも上位におりよく売れてるようです。
選挙、米大統領選、政党、国会、官僚、世界の政治、ネットと政治、ポピュリズムについてまとめてあります。

とくに官僚の世論誘導の仕方や、優秀さを改めて認識できます。シナリオづくりの天才ですね。
国民が官僚を叩くのではなくて、うまく使っていこうと考えるようになることが大事だ、と池上さんは言います。



以下に読書メモを。


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<小選挙区制の問題点>
小選挙区制とは一つの選挙区(中選挙区より範囲が狭い)で一人しか当選者がでない仕組み。
2番手や3番手の票が無駄になる。
見方を変えれば政権交代が起きやすいようにわざわざ導入した選挙制度。
以下に問題点を。

①政党内での新陳代謝が起きにくい
選挙活動は現職優先となり、一度当選すると落選するまでずっとその人が、その選挙区の候補者。
小選挙区制というのは、各政党が党の中で人材の新陳代謝をさせにくい選挙制度。
中選挙区では一つの選挙区から複数の自民党議員が選挙に出て、
若い人が古い人を蹴落とす形で新陳代謝が起きていた。

②国会議員が小粒になる
非常に狭い範囲の利益しか考えなくなり、国会議員の粒が小さくなる。

③チルドレン政治の元凶
単に所属政党の人気によって当選してしまうチルドレン政治家を生み出してしまう。




<中選挙区制の最大の弊害>
いわゆる中選挙区制では、必ず派閥が生まれる。
一つの政党から複数の候補者が当選するが、彼らは選挙区ではライバル。
当選しても仲が悪く、一緒に行動したがらないので、別々のグループに分かれる。
これが派閥で派閥というのはボスを総理大臣にしようという集まりでもあり、
ボスからすると自分のためにがんばってくれる人の面倒はみないといけない。

盆暮れに「もち代」で一人数百万円の金を払う必要もある。
だからむかしの有力政治家は年間に数十億円のお金が必要だった。
今は小選挙区制になって派閥の力は弱くなった。
「金権政治」は小選挙区制を続ける限り復活しないと思われる。




<一票の格差と、老人と若者の格差>
一票の格差は都市と地方の問題にとどまらない。
農村部から選ばれた議員が多いということは何を意味するか。
農村部には高齢者が多いので、高齢者の支持を受けて選ばれた議員が、
本来の人工割合で選ばれるよりも多いということになる。

政治家は自分に投票してくれた人のために働く。
つまり高齢者のために働く議員が相対的に多くなる。世界標準の18歳の選挙権にすべき。




<大安の日曜日>
選挙は験を担いで必ず「大安」の日曜日に行なわれる。
「大安」の日曜日というのは、1年のうちにそれほど数はないので、
選挙が近づくとカレンダーをみながらスケジュールを予想する人が増える。




<チャイナナイン>
中国共産党は全国に支部があり、それぞれの地区の代表が中央に出てくる。
その中で優秀な人物25人が中央大会の中で政治局に選ばれる。
その政治局員の中でさらに選ばれた最後の9人が「チャイナナイン」と呼ばれる人たち。

中国13億人はこの9人が動かしていると言っても過言ではない。
この常務委員の9人にも1位から9位まで序列がある。1位が国家主席となる。
ちなみに2位は名誉職。日本に当てはめると衆議院議長みたいなもの。
中国の政治はこの9人の多数決ですべてが決まる。
国家主席がこうしたいと思っても、9人の多数決で反対されれば、あきらめざるをえない。




<アラブの春はネットでなくテレビの力>
チュニジアにしてもエジプトにしても、パソコンを持っててネットにつなぐことができるのは一握りしかいない。
きっかけとしては利用されたが、ネットのおかがでデモが拡散したというのは間違い。

アルジャジーラが抗議行動をテレビで放送し、
「この集団は来週金曜日に、○○広場で再び集会を開きます」と放送され、
これで情報が一気に広がりアラブ世界を揺るがす大きなデモ活動に育った。

中国でのデモ活動が「北京の春」にならなかった最大の理由は、
中国にアルジャジーラのような政府の検閲を受けない中国語放送がなかったから。

また「アラブの春」を研究し、ソーシャルメディアをあらかじめチェックしていて、
集まりかけたところで次々とデモ参加者を逮捕したり、
予定場所に突然水をまいて大掃除を始めたりしてデモを事前に阻止したりした事が、
「北京の春」が訪れなかった理由。


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