ぶり返す世界恐慌と軍事衝突

  • 作者: 副島隆彦
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2012/11/01
  • メディア: 単行本


【ぶり返す世界恐慌と軍事衝突/副島隆彦/12年11月初版】
副島本はやっぱり面白かったです。9月に書いて11月初版本で、その後の円高・株安予想は見事にはずれていますが^^衆院選を13年3月と予想してるので、アベノミクスを予想してなかったのでしょう。

こういうマクロ本は、短期で当たりはずれが判明するので、著者は大変です。だけどリスクをとって予測している。ファンダメンタルの見方は外れてないと思います。全般を通して面白い話が多いので、つい読書メモが多くなってしまいました。

いろんなものの見方があるということで何かの参考まで。とくに尖閣問題はこういう見方もある。以下に読書メモを。


<キナ臭い時代>
70~80年に一度は、人類はどこの国でも必ず戦争をしてきた。という冷厳な歴史の事実がある。歴史の法則をバカにはできない。



<オバマの病気>
米国のオバマ大統領はすでに2回倒れている。原因は呼吸器性疾患。この病気は胸が詰まる病気で、黒人男性に多くみられる疾病だ。ネルソンマンデラも2011年にこの病気で入院している。この情報は米国政府内でもかん口令が敷かれている。著者はワシントンから入手した。万一の場合は70歳のバイデン副大統領が大統領となる。その場合はヒラリーが副大統領になる可能性が高い。



<ヒラリーの発言>
12年7月5日、ハーバードでの講演で「中国をこれ以上、経済成長させない。元の貧乏な国に戻す」と発言した。米国務省はpivot to asia「軸足をアジアに移す」の大方針転換を決めて、アジア太平洋での軍事衝突までを視野に入れた行動に出ている。その主眼は、日本を中国にぶつけさせる、という戦略である。



<尖閣問題の著者の考え…かなり中国寄りかもしれませんが>
外務省見解は、1895年(日清戦争終結年)に尖閣諸島が無人島であることと、どの国の支配下にもないことを確認した上で、領有を閣議決定した。その翌年に民間人の商人である古賀氏に対して尖閣諸島5つの島のうち4島を貸与した。だから日本政府も新聞も1895年の閣議決定を根拠に、尖閣が日本の領土であると主張している。しかし閣議決定というのは、「国内でそう決めました」というだけのことだ。

1894年の日清戦争に勝利した日本は、日清講和条約を結んだ。これで日本は清国から台湾と澎湖諸島の割譲を受けた。尖閣諸島は、この台湾の一部だったのだ。沖縄県の一部ではない。

現在の世界体制はヤルタ=ポツダム体制である(連合国がドイツ日本を処分した)。ヤルタ会談では台湾の処理問題も話し合われた。「日本の占領地区である台湾は、中華民国に返還する」と決まった。

日本の外務省は、尖閣諸島は台湾と澎湖諸島には含まれないと主張している。ただ世界的な見方からは、尖閣諸島は台湾諸島の一部と認定されていたようである。

1972年の沖縄返還のとき、南西諸島の一部である尖閣諸島も沖縄とともに「施政権」がアメリカから日本に返還された。この海域は米海軍の管理パトロール下にあった。この施政権が日本に返されたのである。この施政権administration rightというのは主権ではない。主権とは国の所有権の事である。この所有権はどう考えても台湾に帰属している。中国は台湾のことを「台湾省」だと考えている。

尖閣諸島の棚上げについて。1972年に日中共同声明が調印された。外務省の公表した会談記録には、

田中総理:「尖閣諸島についてどう思うか。私にいろいろ言ってくる人がいる。」
周恩来:「今これを話すのはよくない。石油が出るとわかったから、これが問題になった。石油が出なければ台湾も米国も問題にしない。」

1978年の日中平和条約(じつは平和条約を結んでようやく両国の戦争状態は終わる)の時、来日した鄧小平は記者会見で以下のように答えている。「72年の日中国交正常化の際に、双方はこの問題に触れないということを約束した。今回、日中平和友好条約を交渉した際もやはり同じく、この問題に触れないということで一致した。こういう問題は一時棚上げしてもかまわないと思う。我々の世代は知恵が足りない。だが次の世代は、きっと我々より賢くなるだろう。その時は必ず、お互いに皆が受け入れられる、良い方法を見つけることができるだろう」



<最後の余剰生産物>
いくら安くしても売れないものは、大量に廃却処分される。最後に残された余剰生産物は何か?それは人間である。働く気がある人たちを企業が雇い続けることができなければ、失業者となってあふれ出す。作りすぎた工業製品や農産物なら廃却処分してしまえばいい。この問題をどう考えるか。従来はこのような余剰労働力は駆り集められて、兵隊にして戦争という公共事業ならぬ、公共破壊事業で処理、処分されてきた。だから今のアメリカ帝国は戦争をするのだ。みてると5年に一度は戦争をしないともたないのである。

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<アメリカの住宅ローン事情>
米国の住宅ローン残高は、すべてで12兆ドル(1000兆円)ぐらいである。8000万人ぐらいが借りている。(米人口は2.8億人)アメリカのGDP(13兆ドル。12年実質推計値)とほぼ同じだ。本当はそのうちの半分の6兆ドル(500兆円)ぐらいが、すでに返済不能の腐った住宅ローンになっている。

アメリカの住宅ローンは、ローンで買ったその家を手放して、賃貸アパートに引っ越せば、その家に付いていた住宅ローンごと投げ捨てることができる。これで実質的な損を銀行に押し付けることができるのだ。それでアメリカの銀行の資産の劣化がどんどん膨らんでいった。日本では住宅ローンは、どんなに値下がりしようとも、ローンの支払い放棄はできない。

オバマ政権は、さらに新たな住宅ローンを上層サラリーマン層に組ませて、それを住宅市場の回復と呼んでいる。アメリカのミドルクラスは、1人で3軒から4軒の住宅を持っている。サラリーマン層でも住宅ローンを3つも4つも借りられるのだ。自分の持ってる家でいちばん値下がりの激しい、かつローン残高の大きい物件を、市場で投売りするのではなくて、銀行の住宅ローンごと投げ捨てることで、家ごと銀行に渡してしまう。そうやって借金地獄からいったん逃げて、さらに別個の1個建て(投資用)の住宅ローンを新規に組み立てる。



<欧州の失業>
スペインの25歳未満の失業率が50%を超えている。ポルトガル人はブラジルへ、スペイン人は南米各国へ、すでに100万人単位で職を求めて移住している。旧宗主国だから言葉と文化の壁がないので、移民は受け入れられやすい。



<メガバンクの今後>
日本のメガバンクは今や3つである。①三菱東京UFJ②三井住友銀行③みずほ銀行、である。りそなは2兆円の国家からの借入金で生き延びている。事実上の国家管理銀行である。

だからりそなを、三菱東京UFJに合併させようとして、金融庁や財務省が動いている。そして、みずほ銀行を破綻させて、三井住友銀行と合体させる計画が今も秘かに進行中である。

今や三井住友銀行が非常に財務体質が強い。三菱東京は、アメリカの金融崩れの煽りで、ソロモンブラザースなどの大借金を押し付けられて青色吐息である。社長の永易と元会長の畔柳は今ものたうちまわっている。

幕末明治初年以来の、三菱=ロックフェラーとの150年に及ぶ執念の闘いに、今三井住友=ロスチャイルドが勝利しようとしている。



<野村證券の危機>
野村はどうせ解体処分される。国内営業店舗網だけは、うまみのある資産を持っているから、三菱UFJに投げ渡される。リーマンショックの後、無理やり頼まれて買収したリーマンブラザースのヨーロッパ部門が作ってしまった、国債CDS20兆円ぐらいの「支払い義務」がある。

財務省・金融庁としては、日本政府に打撃が来ないように(日本政府が払えという外国からの動き)、さっさと野村リーマンの跡形を無くしてしまいたい。

ただSBIホールディングスの北尾吉孝(孫とは仲が悪い。ほんとの出資者は雲の上)が、野村證券の株で徹底的に「売り」を仕掛けている。これを日銀ETFが買い支えている。まずSBIに空売りの大失敗を喰わせ先に破綻させた後に、野村を消すという手順になる。



<農林中金の危機>
危機は今も続いている。農林中金は農協(JA)系の大銀行(JAバンクグループの中核銀行)だ。農協全部で125兆円の資金があり、そのうちの50兆円ぐらいを農林中金が運用してきた。この運用部門が激しく傷んでいる。フレディマックとファニーメイ(米国の2大住宅金融公庫)から買ってる債券は、合計で20兆円ぐらいはあるはず。すべて返済されず、パーになるだろう。あと数年の命だ。



<ロボットトレーディング>
超高速トレーディング=HFTは、全取引量の8割を占める。売り持ち、買い持ちのポジションも時間的にごく短い。ポジションは1銘柄あたり最長で9秒。9秒以内に売ったものを買い戻すか、買ったものを売るか決める。さらにHFTは売買速度を1000分の1秒から100万分の1秒へ高速化させている。プライシングは1銭きざみ。100円の銘柄を100円で買い、100.01円で売る。0.01円の差益。

HFTはコモディティ市場にも入っている。ここで使われるのは、ブルームバーグやロイターなどのニュース情報。例えばコンピュータに「JAPAN」と入力して検索をかける。ここで「JAPAN」のヒット件数が多いときは、日本市場に「何かある」ことがわかる。こうやってコンピュータは、その「日本で起きてる何か」いち早く自分で見つけ、それが自分にとってプラス材料なのか、マイナス材料なのかを判断する。そしてプラスであれば関連する銘柄を買い、マイナスならば売る。



<金融工学は役に立たないか>
リスク管理には決定的な問題がある。近い将来に変動が起きる確率を正確に求めることで、リスク管理を行なう。この確率と分布が問題。数千年に一度のはずなのに、100年の間に2回も起きてしまった。金融工学のモデルを使った取引と言うのは、「バックミラーを7つぐらい付けて、バックミラーしか見えないのに、真っ暗の前方に向かって走る車の運転」みたいなもの。

フロントグラスは真っ暗で何も見えない。でもこれまで自分がこれまで走ってきた直前までの光景は、バックミラー越しにものすごくよく見える。だからドライバーは「今は砂地だ」とか「ここは水溜りだ」と認識できる。しかし、このままずっと砂地や水溜りが続く保証はどこにもない。もしかしたら1メートル先は、崖かもしれない。



<バリュー投資>
金融工学がインチキだとバレたのは、リーマンショックのあとのここ数年。おかげで市場が死にかけた。そのなかでウォーレンバフェットやジムロジャースといった、高等数学を使ったバクチ理論とは無縁の投資家が生き残っている。かれらがやってるのは「バリュー投資」という手法。


・バリュー投資の計算式:以下の場合は買い。要は「株式時価総額」が、「正味流動資産(現金同等物)」よりも小さければ買いということ。

 流動資産 - 負債(流動負債+固定負債) = 純流動資産
 純流動資産 ÷ 発行済株式数 = 1株あたりの正味流動資産(解散価値)
 1株あたりの正味流動資産(解散価値) > 株価

バリュー投資の「バリュー」とは、その企業に積み上がっているキャッシュのこと。売上やブランドはバリューではない。今後の成長や将来性も冷酷に無視する。

徹底した安物買いのことで、身も蓋もない言い方をすれば「処分価格」、「企業の解散価値」。日本ではバブル崩壊後、自分が持ってる土地などの固定資産を減損でバサバサ切って売却して、しっかりお金(流動資産)を貯めこんで生き残ってる企業はある。



<サハリンの天然ガス>
LNG天然ガスは運搬賃がパイプラインの2倍になる。それでも価格は原油より安価である。本当はロシア樺太の「サハリン2」の天然ガスを日本までパイプラインを引いて買うべき。

ところが北方四島の一括返還を、日本政府が強行に主張するようアメリカが強要・画策している。だからロシアとの外交交渉がうまくいかない。そのため安価な天然ガスを日本は買えない。このことの日本国内での議論は、厳しくタブーになっている。



<次の日銀総裁>
財務省のドンの武藤敏郎(大和総研理事長)が、4月に次の日銀総裁になり「米国債の大量直接買取」をやる。



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