誰がJ-POPを救えるか? マスコミが語れない業界盛衰記

  • 作者: 麻生 香太郎
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2013/01/22
  • メディア: 単行本


【誰がJ-POPを救えるか?/麻生香太郎/13年1月初版】
CDが売れない。90年代の6000億円産業が、10年代には2800億円産業に縮小しています。売れてるのは、AKBと嵐とKPOPぐらいです。といっても昔のような大ヒットじゃなくて、宝塚のような固定ファンが買ってるだけです。

いろんな見方で分析しています。目次とチョイ約を並べてみます。

1章:SONYがJ-POPを殺した
ソニーミュージックがJ-POPを作ってきた。詳細は本書に譲るがソニーが各時代を設計した。
70年代:歌謡曲黄金時代
80年代:ロック、ライブアーティストの時代
90年代:ミリオンセラー、音楽プロデューサー時代
ソニーがコドモたちの夢や願いよりも、自分たちの会社の都合を優先させた時から、J-POPは水先案内人を失い、失速状態になった。出井&ストリンガーの罪は重い

2章:韓流がJ-POPを殺した
投稿動画サイトを活用し、ミュージックビデオに工夫を凝らす。コアな固定ファンへのチケット販売とグッズで儲ける。知的財産権にこだわるJ-POPは、韓流のような著作権フリーのスタイルになじめるのか。韓流のこういったファンクラブ型のビジネスモデルは、元は宝塚やジャニースを参考にしたようだ。

3章:つんくがJ-POPを殺した
各音楽プロデューサーの全盛期は4年だった。つんくも4年たったときに開放してあげればよかった。通常は4年で蓄えを吐きだしてしまうので、充電期間が必要。

4章:音楽著作権がJ-POPを殺した
官僚の既得権などの問題がある。

5章:歌番組がJ-POPを殺した
テレビ局が利権構造を放置したのが響いた。

6章:圧縮技術がJ-POPを殺した
配信の時代になり、J-POPは1曲単位でしか売れなくなった。

7章:スマホがJ-POPを殺した
配信の時代の特徴は、J-POPを売る際に、これまでのようなテレビの歌番組や雑誌のインタビューなど、マスメディアへの露出がヒットに結びつかないということだ。メインユーザーであるコドモや若者が、メールやチャットをしながらネットばかり見て、テレビや雑誌を見なくなったからである。

8章:世界の不況がJ-POPを殺した
自分がいつリストラされるかもわからないこのご時世に、J-POPの新人発掘どころではない。

9章:マスコミがなくなる、がJ-POPを殺した
マスコミは、若者に見放された。だからテレビや雑誌のマスコミに依存してきた大手メジャーレーベルによるJ-POPは、その余波を受けて、ゆるやかに命脈を絶たれようとしている。

10章:平成10年代生まれがJ-POPを救う
今の日本は、人類史上初体験といっていい、世界のユートピアである。アフリカ諸国は日本がうらやましくて仕方がないという。街にはモノが溢れ、権力のトップがコロコロ変わっても地獄にならない。(アフリカでは権力交代のたびに10年単位の独裁と粛清が待っている)生まれ変わるなら、日本のような国に生まれ変わりたい。この内外の感じ方のギャップを、身をもって知ることになるのが、これから思春期を迎える平成10年生まれだ。「ミュージックビデオの原点、マイケルジャクソンを知らない世代」が、音楽マーケットの作り手になったとき、何かが変わる予感がする。


以下に読書メモを。








<JASRACとは>
JASRACと税務署だけには逆らってはならない。と飲食店連盟の会合で教わった。文化庁の管轄の一般社団法人。「天下り組織」



<印税の仕組み>
はじめから法律で定められている。小売の6%である。シングルCDが1枚1000円だとすると、1枚売れて全員で60円。これを以下の配分で分けている。
新人:作詞家4分の1、作曲家4分の1、音楽出版社2分の1
ベテラン:作詞家3分の1、作曲家3分の1、音楽出版社3分の1

だから今時珍しい10万枚のヒット曲になったとしても、2曲入りで別々の作詞、作曲の計4名で書いてると、10円x10万枚=100万円にしかならない。

おいしいのはJASRACが鋭意徴収してくれる、二次使用料(テレビ、ラジオ、有線、カラオケ)である。これがヒット曲の場合、CD印税の4~10倍になる。



<放送使用料>
JASRACは世界の慣例に倣って、放送使用料を年間2%と定めている。だがずっと1%だった。なぜ1%だったのか。JASRACを管轄する文化庁(文科省)よりも、民放連を管轄する総務省のほうが力が強かったからだ。

たとえばフジテレビは年間事業収入が約3800億円である。1%なら38億円、2%なら76億円。当期利益が100~200億円程度なので、38億円は大きく総務省に泣きついて当たり前である。

これは2001年にやっと1.5%まで引き上げられる。ブランケット方式(1曲ごとじゃなくて包括使用料を払えば、放送事業者はJASRAC管理曲を無制限に放送できる契約)を守りたかった放送局側の歩み寄りだ。



<80年代テレビに出ないビッグアーティスト>
フォーク、ニューミュージックのアーティストは、テレビに出してもらえない仕組みになっていた。彼らをキャスティングしても、局の音楽プロデューサーに「おいしい」ことは何もなかった。彼らに投票しても審査員たちに「おいしい」ことはほとんどなかった。みんな個人事務所やインディーズ系のプロダクション所属で、利権構造にさっぱり絡んでいなかった。

彼らにもそれを見返す意地がある。「ならばテレビには出てやらない」がビッグアーティスト達の合言葉になった。

賞レース、チャート、音楽プロデューサーへの接待漬けは凄かった。各レコード会社、プロダクションはこぞって接待競争をして、癒着と腐敗が進んだのだ。



<90年代CD黄金期>
シングル歴代ベスト30のうち、23曲が90年代に誕生している。ちなみにアルバムアーティストの時代、80年代のシングル楽曲は1曲もランクインしていない。

90年代音楽産業興隆期。ツールはトレンディドラマとカラオケボックスとCDシングルとCDラジカセだった。ドラマの主題歌をカラオケで人より早く歌うために、扱いやすい8cmのCDシングルを、皆が買い求めたのだ。



<世界の音楽業界事情>
国際レコード産業連盟が2011年の統計を発表している。全世界では1兆3200億円(前年比3%減)これはCDと配信の合算だ。1ドル=80円換算で以下の順位
1位:アメリカ3496億円
2位:日本3272億円
3位:ドイツ1176億円
4位:イギリス1144億円
5位:フランス800億円

じつは二次使用料(著作権ビジネス)は伸びている。2006年80億ドルに対して、2011年は94億ドル(80円換算で7520億円)である。日本と米国の音楽産業を足しても6700億円ぐらいなのに、そこから派生した著作権使用料はそれを超えている。

不況でもデフレでも、世界中で音楽は流れ続ける。この音楽産業不況下、唯一儲けが安定している部署が音楽出版社なのだ。著作権の保護期間は、EUや米は著作権者死後70年で、日本は50年だ。



<EMI買収について>
2011年11月に英国の名門EMIが買収された。レコード部門はユニバーサルに、音楽出版部門はソニーに別々に買収された。レコード部門(製作部門。所属アーティストと社員)の買収額は1520億円。音楽出版部門(著作権)の買収額は1760億円。今や3大メジャーになってしまった。

米国でのシェアは買収前で以下。
1位:ユニバーサルミュージック29.9%
2位:ソニーミュージック29.3%
3位:ワーナーミュージック19.1%
4位:EMIミュージック9.6%
その他:12.1%

EMIの管理楽曲が130万曲、ソニーが75万曲。トータル205万曲という膨大なカタログがソニーサイドに渡った。



<クラシック部門>
クラシック部門が縮小するというのは、レコード会社が滅び行く予兆だ。主要部門の不振から、文化的な部署を支える余裕がなくなったということだ。




あの日の僕のレコードプレーヤーは#59126;
少しだけいばってこう言ったんだ♪
いつでもどんな時でも スイッチを入れろよ♪
そん時は必ずおまえ 十四才にしてやるぜ♪

14才に戻してくれる楽曲はありますか?

ハイロウズで「14才」