笑う裏社会 (Forest2545Shinsyo 79)

  • 作者: 島田文昭
  • 出版社/メーカー: フォレスト出版
  • 発売日: 2013/02/08
  • メディア: 新書


【笑う裏社会/島田文昭/13年2月初版】
実話誌のライターは一味違いますねぇ。鈴木智彦なんか命を削って本を書いてるし、この本の島田文昭も、エロやヤクザライター出身として、凡百と一線を画します。「闇金ウシジマくん」のブレーンの一人。1967年生まれ、早稲田出身、出版社を経てフリーライターです。

ノンフィクションの醍醐味は、知らない世界を見せてくれること。そういう意味では抜群に面白い「当たり本」でした。ここ2週間で記事にならない新刊ハズレ本が3冊も続いたので、助かりました。ハズレ本はブログで紹介するのも忍びないし、何より貴重な時間を浪費してしまう。最近はボツ本が増えて時間を効率的に使えず弱っていました。「当たり本」サーチの勘を磨かないと。


ところで、ヤクザのフィルターを通して出てくる言葉は、独特の世界観があり、興味深いです。

「ええか、人生は夜間独居やぞ」相談役クラスの年長者が、若いチンピラに人生を語った言葉。なんかよくわかりませんが、すごそうです。ちなみに夜間独居は刑務所用語です。

「こいつは、いずれうちの宝になる男だから」上司が部下を客前で誉めるときに、ホープやエースという言い方はよく聞きますが、宝とは言わないなぁ。こんど後輩を誉めるときに、拝借します^^


以下に読書メモを。


<半グレ集団とは何か>
関東連合のメンバーからこんな話を聞いた。18歳で暴走族を卒業するとき、みんな別々のヤクザの組に入って将来は関東連合で日本を制覇しようぜと言ってた。つまりそのまま放っておけば、彼らは素直にヤクザになっていたのだ。

そうならなかったのは、暴対法や暴力団排除条例という、ヤクザには銀行口座を開かせないとか、商売をさせないとかヤクザとつきあってる一般人も捕まえるとかいった、無茶苦茶な身分法のせいで、彼らは卒業後の進路を変更してしまったのだ。

半グレを生み出したのは国であり、法案成立に反対しなかったマスコミなのだ。



<北京系マフィア>
90年代後半に来日していたマフィアの中心メンバーは、天安門事件で民主化運動をしていた大学生たちで、日本でいえば亡命中の東大生みたいな人ばかりだった。みな理知的で、ユーモアがあって、どこか悲劇的な匂いがあった。共産党政府があるかぎり、彼らは一生涯世界を漂うしかない。

アメリカ政府は彼らを積極的に受け入れ、社会的に地位の高い仕事(大学の教授職など)まで与えている。その結果、2000年以降、北京系のマフィアは日本を去り、アメリカへ渡った。現在彼らは表の仕事をこなしつつ、裏ではアメリカ政府の意を受けて、中国国内の反政府ネットワーク構築に従事している。

ここでも日本は外交のカードをわざわざ自分で捨てているわけだ。不法滞在者だ、チャイナマフィアだと騒ぎたて、彼らを蔑み、追放してしまった役人とマスコミの近視眼ぶりには脱帽するしかない。

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<治安について>
ぼくたちはおまわりさんに犯罪者を捕まえることを求めているのであって、別に人格者を求めているわけではない。

その昔、江戸時代の「十手持ち」は、ヤクザの親分たちの名誉職だった。表社会にも裏社会にも顔がきく存在だからこそ、治安の維持に役立つはず。それが成熟した大人の知恵というものだ。



<元マル暴刑事の恨み節>
「自分たちは、抗争発生の第一報を聞いただけで、これは○○組とXX組のケンカだってピーンと来たもんなんだよ。それですぐにお互いの組長を呼び出して、実行犯を自首させたうえで話を収めちゃう。日頃から彼らと付き合っているからこそできる芸当ですよ。そういうことを今の若い人に求めるのは酷かもしれんけどね」警察とヤクザの癒着と叩くより、事件をボヤのうちに収めるほうが得策な感じもする。



<公安の嫌がること>
「公安がいちばん嫌がるのは、潜在右翼といって、自分たちが名前とか顔を把握してない人間が、いきなりテロに走ることなんです。いままで何ヤッてたんだって上司に叱責されて、出世に響きますからね。だから、潜在右翼をあぶりだすために、見たことのない新人がいたら徹底的に調査をするんですよ。」著者が公安に尾行されて、行動派右翼に教えてもらった話。



<オタクヤクザ>
ヤクザの世界でもIT化が進んできた。暴対法の関係で飲食店は暴力団にみかじめ料を払わなくてよくなったはずだが、なぜか大半の飲食店は、不可解にも非常に高い料金を支払い、特定の会社にホームページの作成と管理を依頼している。

さらにハッカークラスの凄腕を揃えた組織では、海外のブックメーカー相手に、大々的にアービトラージ(投資の両建て)を仕掛けているところもある。複数のブックメーカーのオッズの違いを利用して確実に収支をプラスにする、というベッドの仕方である。

オッズの違いは小数点以下の違いでしかないのだが、「もっともオッズの高いブックメーカーと低いブックメーカーを瞬時にサーチする独自の検索エンジン」と「10億円以上の賭金」を駆使して配当の低さを補っている。

配当金は巨額になるので、「マネーロンダリング」の技術も必要になり、カタギには手が出せない仕組みになっている。

現在どこの組織でも人材の確保に必死で、不法アップロードや掲示板の殺害予告で逮捕された若者の争奪戦が、全国の留置所や拘置所で起こっているらしい。

著者はそのうちの何人かと地下アイドルのイベントに行って、一緒にサイリウムを振ったことがあると。彼らはみなダサいし、女もいないし、間違いなくコッチ側の人間だそうだ。




元地下アイドル。この歌好きでカラオケでよく歌います。名曲だと思ってます。
Perfume GLITTER #59126;