そして日本経済が世界の希望になる (PHP新書)

  • 作者: ポール・クルーグマン
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2013/09/14
  • メディア: 新書


【そして日本経済が世界の希望になる/ポール・クルーグマン/13年10月初版】
ポール・クルーグマン(ノーベル経済学賞受賞者。NYタイムズのコラムはマーケットを動かすほどの影響力を持つ)へのロングインタビューの書き起こし本。タイトルはアベノミクスへの期待による。

「私はかつて、日本がスーパーマンだった時代、を覚えている。日本がやることに敵うはずがない、と痛感した世代なのだ。その後日本経済が窮地に陥り、もはや日本から見習うものは何もないと考えている人もいる。この政策実験がうまくいけば、日本は世界各国のロールモデルになることができる。アベノミクスによってデフレから脱却できるなら、それは将来への大きな示唆になるのだ」

解説含めて196pの薄い本です。クルーグマンが何者か俯瞰したい方は、3~4時間ぐらいでサラッと読めるので一度如何でしょうか。マクロ経済の話をするときに「クルーグマンが言ってた」という枕詞は、非常によく効きます^^

目次は以下
1章:失われた20年は人為的な問題だ
2章:デフレ期待をただちに払拭せよ
3章:中央銀行に独立性はいらない
4章:インフレ率2%達成後の日本
5章:10年後の世界経済はこう変わる

4~5章にとくに目新しいものはありません。だいたいどの未来予測もいい加減です。そんなものがわかれば誰も苦労しない^^


以下に読書メモを。

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<流動性の罠からの脱出方法>
「流動性の罠」別名「ゼロ・ローワーバウンド」。中央銀行が金利をゼロまで下げても金融政策として十分ではないという状況。そこで中央銀行がインフレ期待を高め、実質金利をマイナスにすれば「流動性の罠」から脱却できる。インフレ目標やマイナス金利に現実味がないというなら、期待インフレ率を高めるため、減税などの財政政策と、ゼロ金利などの金融緩和を組み合わせた政策を打ち出すことが有効。



<金利上昇について>
「流動性の罠」のもとでは、赤字国債を発行しても、民間投資の機会を奪うクラウディングアウトは発生しない。過剰な貯蓄があるからだ。余った貯蓄供給が吸い上げられるまで、経済が「流動性の罠」を逃れるまで、金利上昇が生じることはない。

長期金利は短期金利が上がるだろうと人々が信じなければ上がらない。財政赤字が一時的なものであれば、金利に与える影響はなく、財政赤字が長く続くと思われれば、金利にある程度の影響が出てくる。



<円安は悪か>
円安のデメリットを言う人もいるが、円安効果はいかなる懸念にも勝る。輸入品価格は上昇するが、さまざまな国の例を分析しても、それが経済を縮小させる効果を生むと示唆する結果は得られない。通貨安にはあきらかに経済拡大の効果がある。日本は純債権国であり、円相場が下落すれば、自国通貨建てでみた富の価値は増大する。円相場の下落が日本の産業の競争力を高めるのは明らかだ。日本の製造業の不振は、日本の製造業に問題が起こったわけではない。円が強くなりすぎたためだ。

震災以降高止まりする資源価格のもとで、日本では貿易赤字が基調になった。そうしたなかでの円安進行は交易条件を悪化させるという議論もある。以前から減価された通貨が貿易収支を悪化させるという論調はあった。そうした考え方は「弾力性悲観論」と呼ばれるが、過去50年にわたって弾力性悲観論は幾度となく誤りであることが証明されている。

⇒わかってたことだけど、クルーグマンに言われると、本当にそうなんだなぁと思えます。クルーグマンにも間違いはありますが。



<中央銀行の独立性>
中央銀行の独立性は比較的新しい考え方である。1990年代までイングランド銀行は英財務省の一機関だった。1997年にイングランド銀行は独立性を獲得する。その独立性は「金融政策の運用手段はイングランド銀行に任せる」というもので、政策の目標は政府が決定している。

中央銀行が独立性を有するべきという信奉は、1970年代に起こった問題への反動だ。そのとき多くの政府は失業率を下げようとして、過剰な拡大政策を打ち出すような状況にあった。中央銀行は財政政策による高金利の火消し役になっていて、それが高インフレの原因になった。当時の問題は、いかに高インフレを押し留めるかということだった。だからこそ独立した中央銀行がインフレに対して強硬な態度をとるというやり方が必要だったのだ。

いまの日本で中央銀行が独立していない、という事ならその方がよい。かねてから日銀は独立性をもってるほうが問題視されてきた。



<日本政府の債務削減方法>
イギリスの場合、GDP比200%を超える借金が、1970年代には50%まで下がった。イギリスは何をやったのか。彼らはけっして借金を返済しようとはしなかった。穏やかなインフレと経済成長を両立させながら、少しずつ均衡策を実施していった。年率で名目GDPは7%、実質GDPは3%、インフレ率は4%ほどの上昇を継続させた。日本でも4%のインフレがベストであることは言うまでもないが、2%のインフレ目標を達成し、財政赤字がかなり減少するならば、たとえ借金が完済されることはなくとも、一定の割合で減っていくのは間違いない。



<日本の消費増税について>
消費増税の実施は理解できない。1997年に消費増税にトライし日本は失敗している。1998年リセッションの引き金になった。財政均衡への時期尚早の努力は、回復をかえって遅らせ、経済を弱らせる結果を招く。

⇒なんでデフレ脱却まで待てなかったのか。2014年は日本経済にとって、財政の崖レベルの逆風が吹きます。



風に逆らいながら駆けてきて♪
まだ風に向かって走っている

ボブシーガー&シルヴァーバレットバンドでアゲインスト・ザ・ウインド♪名曲です。歌詞にジェニーが出てくるのと、走り続けるという内容がマッチしてるからか、フォレストガンプのVがあてられています。いい映画ですよね。





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