【AIの衝撃 人工知能は人類の敵か/小林雅一/15年3月初版】
これまた良書。人工知能の現状と、今後どうなるかがコンパクトに俯瞰できます。
ただこの分野の知識が僕はプアなんで、わかりやすくまとめることが難しかった。
本質である幹の部分は、以下の読書メモで提示しましたが、
枝葉である、理解のための説明部分は端折りました。
そこまで書いてると、膨大なものになる。
ちゃんと理解しようと思えば、本書にぜひあたってください。
かなりいい本なので、アマゾンで買って工学部の長男の下宿に送りつけました。
「暇があったら読むわ。ありがとう」だって。。暇がなくても読めよ^^
以下に読書メモを。
<現代AIのベース>
AI(人工知能)のベースとなっているのは「機械学習」と呼ばれる技術。
音声認識や自然言語処理、画像認識など、現代AIを構成する要素技術は、
すべて「機械学習」という基盤技術の上に構築されている。
<機械学習とは何か?>
ビッグデータを解析し、そこから「モデル」と呼ばれる、
ある種のパターン(規則性、法則性、類似性)を導き出す技法。
線形回帰分析やロジスティック回帰分析が典型的な手法。
機械学習がモデルを導き出すためにはコスト関数が使われる。
モデルと現実データのズレ、つまりコスト関数を徐々に小さくしていって、
最後に最少の値に収束させる。これはモデル(理想)を現実に近づける作業。
人間も日頃やってること。
この結果得られるのは、線形回帰分析における近似直線や、
ロジスティック回帰分析におけるグループ化の境界線。
そしてこのコスト関数を最小化する計算こそ、機械学習システムが実際にやってる作業。
現在スタンフォード大学で学生に一番人気のある講義が、エン准教授の「機械学習」
人工知能と呼ぶには大げさかもしれないが、
現時点のAIは統計(確率)的な計算によって実現されている。
「意識」や「本物の知恵」は現時点ではまだ完成されていない。
<ディープラーニングの衝撃>
ディープラーニング(深層学習)は、
人間の頭脳を構成する神経回路網を人工的に再現した、「ニューラルネット」の一種。
大脳視覚野の認識メカニズムに基づく、一連のアルゴリズムが実装されている。
脳科学との融合によって、AIの研究開発は新たなフェーズに入った。
単なる解析ツールにとどまらず、人間と同じく汎用の知性を備える希望ができてきた。
現時点でディープラーニングの長所は、
「特微量(特徴ベクトル)」と呼ばれる変数を人間から教わることなく、
システム自身が自力で発見する能力にあると言われる。
この能力は脳の視覚野が、
自然界の映像から、特徴ベクトルを抜き出してくるアルゴリズムに基づいている。
問題の変数(特微量)は、従来人間が指定していた。
ディープラーニングは人間という手助けがなくても、
自分で勝手に大量のデータから何かを学び、
ある問題を解く上で何が本質的に重要なポイント(変数)であるかを、
システム自身が探し出してくる。
なぜディープラーニングはそれらの変数を選び出してきたのか?
そこに至るシステムの思考経路を、それを開発した技術者は理解できていない。
問題を解決するために必要な「何かに気付く」という能力こそ、
これまでのAIに欠如していたもの。
ディープラーニングは、その限界を突破した。
今後、脳科学とAIは相乗的に進化し、そのスピードは一層加速すると見られている。
今後数年間でディープラーニングによって大きく進化する分野は、
自然言語処理と見られている。
人間がふつうに話す言葉を、機械が理解する技術。
さらにグーグルが進めているのは、翻訳にディープラーニングを応用する研究。
英語と日本語のようにまったく異なる言語族の間で、かなり正確な機械翻訳が可能となり、
一種の意訳もできるようになる。
すでにマイクロソフトは2014年12月よりスカイプで、
英語とスペイン語の間で自動的に同時通訳ができるようにしている。
<次世代ロボットはトロイの木馬>
米IT企業は、次世代ロボットを使って本当は何をやりたいのか?
彼らの秘めた野望は、ビッグデータの収集。
ロボットにはカメラをはじめ各種センサーが搭載されている。
企業から一般家庭まで次世代ロボットを送り込み、日常データを大量に吸い上げる。
AI技術を独占されていたら、クライアント側もビジネス情報を米IT企業と共有せざるを得ない。
「情報端末としての次世代ロボット」は、グーグルをはじめ米IT企業が、
あらゆる業界の企業や一般消費者について深く理解し、
彼らを内側から支配するために投入する「トロイの木馬」である。
<創造性とは何か?>
「一見異なる領域に属すると見られる複数の事柄を、一つに結び付ける能力」
byアイザック・アシモフ
「創造性というのは物事を結びつけることににすぎない」
byスティーブジョブズ
ダーウィンの進化論も同様と言われる。
ダーウィンはガラパゴスで「ゾウガメ」や「イグアナ」などの奇妙な動物を目にする。
英国に帰国後、これらの存在を合理的に説明する理論を懸命に考えるが、
なかなかそれにたどり着けない。
その後偶然、マルサスの「人口論」を読み、
ダーウィンは長年かなわなかったブレークスルーを成し遂げる。
マルサスが人口の変化を説明するために使った、
「人口過剰」と「経済的弱者の淘汰」という考え方を、
ダーウィンはガラパゴスで目撃した奇怪な爬虫類に結び付け、
ここから「自然淘汰に基づく生物の進化論」を作り上げた。
19世紀中ごろ、ガラパゴスの変種動物の存在は英国で広く知られていた。
また「人口論」は多くの人に読まれていた。
しかし異なる両者を一つに結び付けたのは、ダーウィンとアルフレッド・ウォレスの2人だけだった。
創造性は一見簡単そうなことだが、実は天才にしかできない。
「進化論」を読んだトマス・ハクリーは、
「こんな簡単なことに気付かなかった自分は、なんと馬鹿なんだろう」と嘆いたそうだ。
最近のコンピュータは、
「ある領域で学んだ事柄を、別の領域へ応用する能力を示し始めている」と言われる。
僕は感情のないロボットじゃない♪
僕の心は人間なんだ♪
STYXでミスターロボット♪
この歌のオチは感情のあるロボット、じつはキルロイ(人間)だったという^^;
80年代前半のビルボード1位のヒット曲。あのころLPのライナー読んでると、
80年前後、アメリカのティーンが選ぶ人気バンドでSTYXは1位だったとか。
たしか2位がヴァンヘイレンだったような。
(関連図書)
【ビッグデータの罠/岡嶋裕史/14年11月初版】
http://donhenley.blog.so-net.ne.jp/2015-01-27