中国壊滅

  • 作者: 渡邉 哲也
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2015/07/31
  • メディア: 単行本


【中国壊滅/渡邉哲也/15年7月初版】

中国バブル崩壊の経緯を、簡単に箇条書きにしてみました(本書からの要約)。
リアルタイムに体験し知ってるつもりでいても、まとめてみないと、俯瞰できないもんですね。

・2008年リーマンショック後、中国政府は4兆元に及ぶ大型景気刺激策を行う。

・この資金は、土地開発に流れ不動産バブルを引き起こす。

・地方政府の役人は、自分の地域のGDPをどれだけ伸ばせたかで評価される。

・地方政府は基本的に税収の多くを中央政府に吸い上げられる。

・地方財源の確保と自身の出世のために、土地開発し、その権利を不動産業者に売った。

・2010年末ごろからインフレになり、豚肉は7割高騰し、中国政府は金融引き締めを行う。

・地方政府は困った。金融引き締めで不動産開発の資金調達が難しくなった。

・地方政府はファンドを設立し、理財商品を組成し、銀行や信託で販売した(シャドーバンキング)。

・理財商品は元本保証ではない、高利回りの資産運用商品だった。

・理財商品で集めた資金で、地方政府は不動産開発したが、ゴーストタウンになった。



・地方政府は経済成長を維持するためだけに開発を行った。

・2014年に不動産バブル崩壊。不動産価格が全国的に下落に転じる。

・国内投資にうまみがなくなり、中国人は海外投資に走る。

・住宅や自動車需要の減少で、鉄鋼など生産過剰が深刻化した。

・AIIBの開設は、過剰生産に陥っている中国製品を周辺国へのインフラ投資に向け、
供給過剰を解消する目的がある。

・中国政府は焦り、2014年11月~2015年6月まで相次ぎ利下げ。

・中国の金利は過去最低水準になる。

・土地バブル崩壊と金利低下により、投資先を探していた多くの資金が中国株式市場に流れ込む。

・2014年2000ポイントが、2015年6月に5000ポイントへ。

・実体経済が鈍化する中で2.5倍の株価上昇はバブル。

・その後3000ポイントへ下落。中国政府は下落する株の売りを禁じ、国策買いを増大させる。

う~ん。。株も不動産も上がりようがないし、今後中国はどうなっていくんでしょうね。
中国需要の減少で、今期の業績が悪化しそうな会社は、日本にたくさんあります。
中国は好きじゃないけど、日本が儲けさせてもらったことは確かです。
中国発の不況がやってきそうでこわい。来年のボーナスは減りそうです・・・


その他の要約読書メモを以下に。

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<AIIBになぜイギリスは参加したか>
中国主導のAIIBには西欧諸国も含めて57カ国が参加。G7では日米を除く5カ国が加盟。
参加国が急増したのはイギリスが参加表明したから。

アジアインフラ投資銀行(AIIB)は、参加国が出資した資本金の信用を担保にお金を借りて、
それをインフラ建設する国にまた貸しするという形をとる。
その際は当然、債券発行する。

通常はウォールストリートか、ロンドンのシティの金融機関が債券発行の幹事会社になる。
AIIBはアメリカが不参加なので、ウォールストリートが債券発行することはまずない。

そうなるとイギリスのシティが全部債券発行手数料を手に入れることができる。
たとえば10億ドルの起債があれば、5%手数料だと約60億円が得られる。

債券発行で永続的に得られる手数料と、アジアの安全保障を天秤にかければ、
イギリスは極東のことだから、手数料をとる。

ドイツやフランスにしても、イギリスが参加するなら、
タチの悪いやり方をするだろうという判断のもと、参加すると表明した。

ドイツは当初、AIIBの本部をドイツに持ってくることを提案した。
フランクフルトに本部をもってくることで、ユーロ債の発行比率を増やし、
ドイツが発行手数料を多く取れるよう画策していた。




<G7とは何か>
国連が米ソ冷戦によって機能しなくなった。それにより生まれたのがG7体制。
常任理事国に中国・ソ連が入ってるので、西側諸国の意向だけでは何も決まらない。
そこで先進国が手を結び、西側の経済大国だけで世界を主導していくために、
最初はG5(日米独仏英)、のちにG7という先進国主導体制が生まれた。

冷戦終結後はロシアを加えG8体制へ変化し、リーマンショック後は先進国が弱体化し、
新興国の発言力が高まったので、G20という枠組みも生まれた。

だが2014年ウクライナ問題により、
米を中心とする西側陣営と、ロシア中国を中心とする東側陣営の対立が再び始まった。
そこで西側はロシアを外して、再びG7体制に戻しその役割を増やし、
同時にG20の役割を縮小しようとしている。




<孤立する韓国>
左派のノムヒョン政権時代に、韓国が完全に独立するため、在韓米軍の撤退、
および戦時作戦統制権の韓国への返還をかかげた。

現在でも韓国は北朝鮮と休戦状態で、朝鮮戦争は終戦を迎えていない。
在韓米軍は国連軍の一部として、休戦状態の監視のために駐留しているという状況であり、
同時に非常事態には、米軍が韓国軍の指揮を執る、戦時作戦統制権を保有している状況になっている。

ノムヒョンは米韓首脳会談でアメリカを訪問し、21012年までに統制権を返還するということで合意した。
その後右派政権となったイミョンバク政権では、2012年にアメリカから統制権を返還されても、
韓国は戦時の指揮を執れない、ということで、返還を延期してほしいとアメリカに懇願した。

アメリカはこれを了承し、2015年末までの3年間の時間的猶予を与えた。
その時の条件だったのが、アメリカの高高度ミサイル防衛システム(THAAD)の韓国への導入だった。



米軍と連携するNATO諸国は、すべてアメリカのデータシステムとリンクしている。
アメリカが韓国へ導入を要求した高高度ミサイル防衛システムは、北朝鮮やロシア、
中国本土から発射されたミサイルを、初期段階で迎撃するミサイルであって、
韓国を狙ったミサイルを迎撃するものではない。

韓国にこれを導入することによって、
初期段階の撃墜および、ミサイルの追跡・追尾がしやすい状況になる。
もちろん中国は、このミサイル防衛システムを韓国に配備することに反対している。

2012年にイミョンバクは、この導入を了承したが、
その一方で、中国と安全保障条約をむすぶ直前まで行ったことが発覚した。
日米の反対により阻止されたが、パククネも中国寄りの姿勢を変えてない。

パククネはアメリカへわたり、2020年まで統制権返還を延期するよう懇願したが、
アメリカは同じ条件を提示した。

2013年12月バイデン副大統領は韓国に対して、「アメリカの反対側に賭けるのは良くない」と恫喝し、
2015年5月にケリー国務長官は、高高度ミサイル防衛システム導入について最終通告を行った。

ミサイル防衛システム導入を断れば、統制権は返還され、アメリカの仮想敵国になるんですよね。
二人のジャイアンに挟まれて、パククネは大変です。




<日本のロビー活動の変化>
2015年のゴールデンウィーク、安倍首相が日本の首相で初めて上下両院合同会議で演説を行った。
訪米が成功裏に終わった背景には、日本のロビー活動の変化があった。

これまでアメリカでのロビー活動は中国や韓国に押されっぱなしであった。
だが2014年3月に、アメリカ下院議員において、戦後70年にして初めて、
対日関係を重視する超党派の議員連盟(ジャパン・コーカス)が立ち上がった。

安倍政権において、日本政府の広報予算は民主党時代の3倍まで拡大させている。
ジャパンコーカスは、わずか1年で68人が名を連ねたというが、この中核にいるのはヒスパニックだ。

なぜヒスパニックかというと、ヒスパニックと韓国人中国人は仲が悪い。
ヒスパニックを中核に据えるということは、チャイナロビーや韓国ロビーを潰すという動きにつながる

なぜ中国人韓国人がヒスパニックに嫌われるかというと、
貧しいヒスパニックはクリーニング店や家政婦、雑貨店のような商売をしていたのだが、
中国人や韓国人が入ってきて、それらの仕事を奪っていったということがある。
商売を取られたという恨みがヒスパニックにあるのだ。

彼らの働きによって、上下両院合同会議における、日本の首相初の演説が可能になった。



そういえば2014年のアメリカの国勢調査で、
カリフォルニア州はヒスパニック系人口が白人を上回ったそうです。
ヒスパニック1500万人、非ヒスパニック白人1490万人、アジア630万人・・・
ざっくり37百万人のうち、4割ヒスパニック、4割白人、1割強アジア人、1割弱黒人です。

ビーチボーイズは、アメリカ中の素敵な女の子(たぶん白人)が、
みんなカリフォルニアにいたらいいなあ、と歌いましたが。
アメリカどころか、世界中からカリフォルニアに移民してきています。
今なら、もう来るな!って歌いそうです。ドイツみたいに。




サマー・デイズ

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: EMI MUSIC JAPAN(TO)(M)
  • 発売日: 2008/12/10
  • メディア: CD



関連記事:

【橘玲の中国私論/橘玲/15年3月】
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【中国崩壊前夜/長谷川慶太郎/14年5月初版】
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【テレビに映る中国の97%は嘘である/小林史憲/14年2月初版】
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【戦わずして中国に勝つ方法/矢板明夫/13年5月初版】
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