スター・ウォーズ論(NHK出版新書 473)

  • 作者: 河原 一久
  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 2015/11/07
  • メディア: 新書


【スター・ウォーズ論/河原一久/15年11月初版】

スターウォーズ・エピソード7見られました?
面白かったですよね。後述しますが、これから毎年スターウォーズがあるようです。
ルーカスフィルム時代は、資本や人手の問題でバンバンつくれなかったけど、
巨大資本ディズニーになりましたから。これからは毎年バンバン。
飢餓感がなくなって、食傷気味になるかも。

スターウォーズは初期3部作(78、80、83年日本公開年)が最高でした。
映像の技術革新を目の当たりにして、ワクワクした。

70年代後半の映像コンテンツで面白かったもの。

・77年: 宇宙戦艦ヤマト、ロッキー
・78年: スターウォーズ、さらば宇宙戦艦ヤマト、ブルースリー死亡遊戯
・79年: スーパーマン、機動戦士ガンダム(テレビ)、ジャッキーチェン酔拳

ブルースリーとジャッキーチェンの新旧交代は、感慨深いですよねぇ。


こうしてみると、後にシリーズ化される超人気作がメジロ押しです。
もちろんビデオなんてなかったので、みんな映画館で見ました。
何日も前からウキウキして、夜も眠れず、早朝から映画館に並んだ。
弁当やらおかしを持ち込んで、入れ替えなしで2回は見た(笑)。

この中でベストを選ぶとしたら、やっぱり「さらば宇宙戦艦ヤマト」か。
あの時の感動を超える映画って、いまだにないんですよね・・


スターウォーズは、世界でのべ約10億人(総人口70億人)が見たそうです。
スターウォーズ1作目は観客動員数で、いまだに全米映画史上2位。
それを上回っているのは唯一、1939年の「風と共に去りぬ」。
あ、アバターは興行収入1位です。チケット代が高くなれば興行収入は増える。動員数とは違います。

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スター・ウォーズ今後の展開について

2015年からはじまった新3部作は2年ごとに新作が公開される。


その間の年はスピンオフが公開される。


・サーガ本編とスピンオフという区別なく、劇場公開作品として見るなら、
2015~2020年は、毎年スターウォーズの映画が劇場公開されることになる。
スピンオフ作品は、現在のところ3本の製作がアナウンスされている。


2016年に公開予定されてるのは「ローグワン」。サーガのエピソード3と4の間の物語。
帝国が建造中のデススターの設計図を奪った反乱軍と、
それを取り戻そうとする帝国軍の攻防を描いた作品になる。

帝国軍が賞金稼ぎを雇って設計図の奪還を図り、そこにはボバ・フェット、
ボスク、デンガー、ザッカス、4ROM、IG-88、キャド・ベインといった賞金稼ぎが登場する。
すでにアナウンスされてるキャストは、主人公にフェリシティ・ジョーンズ(またも女性)、
フォレスト・ウィッカーやマッツ・ミケルセンといった実力派俳優のほか、
ドニー・イェン(カンフースター)がアジア系初の主要キャスト入りを果たした。

(ボバフェット)



・2018年公開予定の2本目のスピンオフは、タイトルは未定だが、
20代前半のハンソロが、いかにして密輸業に手を染めていったのかを描く物語。
若き日のハンソロにボバフェットが何らかの形で絡んでくる話になる。


・2020年公開の3本目のスピンオフは、ボバフェットの物語になる。
これはキャスリーン・ケネディが言及したものだが、正式発表ではないので、
今後変更される可能性がある。その他の可能性としては、オビワンケノービの物語がある。


・サーガについては、ルーカス語録から、6部作、9部作、12部作の説がある。
ディズニーによる買収、新3部作政策決定の背景には、12話分のあらすじの存在が確実にあった。
ただエピソード7は、「ルーカス案」は採用しなかったと。



その他の読書メモを。

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<まさかのディズニーによる買収劇>
2012年10月30日、ウォルトディズニー社は、ルーカスフィルムを3200億円で買収。
系列会社や所有するコンテンツなど全ての権利を手に入れた。

3200億円は大バーゲン価格と言える。
たとえばペプシ社はエピソード1~3のタイアップ権利を、約3000億円でルーカスフィルムと契約した。
つまりたった1社との契約金額と変わらない金額で、ディズニーは全てを手に入れた。
スターウォーズは6作品だけで4000億円の興行成績記録し、グッズの売り上げは2兆円を超えている。
スターウォーズだけでなく、ディズニーが買ったものの中には、「インディジョーンズ」の権利も含まれている。

ルーカスが手を引いた理由について。
私生活の問題。長年交際していた実業家メロディ・ホブソンとの再婚が現実味を帯びてきていた。
2人はルーカスフィルムの売却の翌年6月に再婚、その2か月後にルーカスにとって初の実子である、
エベレストちゃんを代理出産で授かっている。


スターウォーズの製作に関われば、間違いなく数年間はそれにかかりきりになる。
最初の3部作製作時に、マーシャ・ルーカスとの夫婦関係が破たんし、離婚に至った過去もある。
ルーカスは子供との生活を最優先させるため、すべてを売却した。




<スターウォーズ1作目でルーカスが参考にした映画>
・意志の勝利(1934年)
ヒトラーの依頼でレニ監督が撮影した、ナチスドイツの宣伝色満載の作品。
ナチスのシルエットが、帝国軍の造形に影響を与えている。


・暁の出撃(1955年)
ドイツのダム破壊の軍事作戦の映画。
3機編隊で突入し、前衛の2機が防御に回り、後衛の1機が爆弾を投下する。デススター攻撃のモデル。


・633爆撃隊(1964年)
これもデススター攻撃の描写で参考にされた作品。


・真昼の決闘(1952年)
ゲイリークーパー演じる保安官のいでたちが、まさにハンソロ。


・用心棒(1961年)
映画の冒頭、三船敏郎がジェリー藤尾の腕を切り落とす場面は、
オビワンケノービが、ポンダバーバの腕を切り落とす場面の参考になった。
帝国の逆襲ではルークが、ジェダイの帰還ではベイダーが腕を切り落とされている。
クローンの攻撃ではアナキンが、シスの復讐ではドゥークー伯爵やメイスなど。
この腕切断がスターウォーズで好まれるのは、
①あきらかに勝負の決着がわかること
②物語をつぎの段階に移行させやすい
といった簡便さによる。
ちなみに用心棒は、ダシールハメットの小説「レッドハーベスト」を参考につくられたオリジナル作品。


以下その他参考とされた作品名を。
・椿三十郎(1962年)、ルークがトルーパーの捜索から逃れるシーン。
・デルスウザーラ(1975年)、タトゥイーンの2重太陽がが沈む様子をルークが見つめる有名なシーン。



・頭上の敵機(1949年)、迫力ある空中戦。
・捜索者(1956年)、ルークが家に戻った際に、家が焼かれるシーン。




<ルーカスの才覚>
第1作製作時、ルーカスの英断として知られる2つ。

続編の権利の確保
グッズ商品化の権利確保

アメリカングラフィティ(1973年)の大ヒットで、大幅にギャラのアップが保障されていたにもかかわらず、
ルーカスはその額を据え置きにし、「続編の権利が欲しい」と言った。

ルーカスはスターウォーズの脚本執筆に3年を費やした。
それは1本の映画には多すぎる量になった。ルーカスは物語を3つに分割した。
撮影に入る前の段階で、彼はすでに3部作という構想をもっていたのだ。

生みの親であるルーカスは、この物語をどうしても映像化したいという願望をもつ。
もしヒットしなかったら、続編の製作にはゴーサインが出ない。それは絶対に避けたい。
ルーカスは「続編をつくるための資金源」とすべく、副収入となるグッズ商品化の権利にこだわった。




<帝国の逆襲、その衝撃のエンディング>
主人公ルークはベイダーとの対決に敗れ、そのうえ「私がお前の父だ」という衝撃告白をされ、
奈落の底に身を投げる。レイア姫は、ハンソロに惚れてしまうが、ハンソロはカーボン冷凍されてしまう。
反乱軍も秘密基地を追い出され、ほうほうの体で逃げ延びる。
まったくいい所なしで映画は終わる。

SF小説の巨匠アイザック・アシモフは、映画が終わった途端に立ち上がり、
「早く続きを見せろ!」と叫んだという。
しかし世界中のファンは、それから3年間待たされた。

なお帝国の逆襲から、オープニングにエピソード番号とサブタイトルが出るようになった。
「エピソード5 帝国の逆襲」といった具合だ。この時点ではシリーズは全9部作とアナウンスされた。



2016年公開の「スターウォーズ・ローグワン」の予告編をどうぞ。



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