中国分裂 七つの理由

  • 作者: 宮崎正弘
  • 出版社/メーカー: 阪急コミュニケーションズ
  • 発売日: 2009/09/18
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


【中国分裂7つの理由/宮崎正弘/2009年9月初版】
最近、なんぎで怖い中国。分裂して、民主化してくれないかなぁと読んだ本。
作者は中国ウオッチャーとして中国全33省を踏破した宮崎正弘氏。

かつてソ連も15分裂するとは、誰も予想ができませんでした。

中国は56の民族が共存する多民族国家ですが、漢族が9割を超えているので、
どうやって7つに分裂するのか?


中国分裂のメインシナリオは、「華北」「華中」「華南」
に加えて、チベット、ウイグルの両自治区、旧満州の東北三省。これで6つ。
7つ目はオプションで、四川が重慶、雲南を飲み込んで新「蜀」を形成するか、
福建省が対岸の台湾と結ぶか。(内モンゴルは、モンゴルとの合併を考えているので除外)

ちなみに共産党内は、団派(共産主義青年団)vs上海派+太子党で権力闘争をやってます。
金がすべての上海派と裕福な共産党幹部の子弟の太子党が結んで団派に対抗しています。

以下に読書メモを。

<偽物文化>
偽札は中国の全通貨の20%と見積もられている。
レストランやデパートにはレジの隣に偽札発見機が備えられていて、
偽札がみつかると警察を呼ぶでもなくこれ偽札よとつき返してくるだけ。
中国的日常風景である。



<広東はもともと独立志向>
華南の人々はもともと反中央で独立精神が旺盛。
製造業が密集し、他の地域からの労働者もたくさん流入し、
広東省経済圏単独でもGDPの20%を稼ぎ出している。
さらに広東人は上海人が大嫌い。おなじ中国人という意識がない。
あたかも韓国人と日本人のいがみあいに似ており、
広東人は上海人と食事を一緒にすることさえ嫌がる。



<チベット虐殺>
1950年代以降に虐殺されたチベット人は、120万人と言われていますが、
なぜ中国はチベットにこだわるのか。

①レアメタル
中国は長期的な資源奪取に関心が深く、チベットには、
金銀銅、クローム、鉛、ウラン、鉄鉱石、石油があり色石、オパールもある。
(過去に併合された、四川、青海、雲南含む)

②宗教上の脅威
共産主義は一種カルト的な一神教。毛沢東以外の偶像は不要。

③水源の確保
黄河、長江の水源はチベット高原であるという地政学的基本。
13億の民が水を安定的に得るためには、水源を自分達の領土にしておこうという発想。

④番外編
パンダは中国のパンダと言うべきではなく、チベットのパンダと呼ぶべきだ。
チベットのシンボルである。チベットを55年に四川省に併合したため中国のイメージに。
わずか半世紀の事です。

チベット亡命政府のまとめた、チベット3州の死者数は以下
拷問:173,221
死刑:156,758
戦闘:432,705
飢餓:342,970
自殺:9,002
傷害致死:92,731
合計:1,207,387人



<分裂する7つの理由>
ちなみに、作者の言う7つの理由ですが、あまり新味はありません。

1.地域ブロック化と経済圏
華北、華中、華南の3分裂状態は中国人には常識。

2.金融膨張による、貧富の差の拡大

3.利権による縦割り
上海(華中)の利権は、ハイテク、パソコン、国際金融華南は製造業(自動車産業)、
華北は大型商談の許認可権

4.風化する中華思想
愛国よりも金が優先らしい

5.偽者文化
愛国主義とか中華民族とかのスローガンそのものが偽

6.矛盾する少数民族支配

7.ネット社会
  


<まとめ>
清朝末期の学者の研究によれば、
秦の始皇帝による全国統一から1920年までの2141年の間に160回の内乱があり、
合計896年間をそれに費やしたそうです。

ほぼ2年に1回、中国は内乱を繰り返してきた計算になります。

こういう歴史的背景をみると、抑圧されたものがたまると、分裂に向かうのが、正常な動きだと思われます。

地政学的分裂:
華北(北京)、華中(上海)、華南(香港)をメインに分裂

言語的分裂:
カナダのような言語圏による分裂と言うなら、北京語(一応標準語)、広東語(香港で有名)、
福建語(台湾語も含まれる)、上海語(しゃべれないと田舎者扱いされるらしい)、四川語、
あたりで分裂か

文明的分裂:
狩猟牧畜の匈奴系民族、トルコ系、焼畑のタイ族系、ラマ教のチベット&内モンゴル系、
漢人文明などに分裂

この本を読む限りは、中国の覇権主義は用意周到で恐ろしい。
なんでもいいから、早く分裂して、親日になってほしいです。



ブランキージェットシティの悪いひとたちです。
チベットの穏やかな仏教徒たちが、いつの日か幸せになることを祈念します。


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