金利・為替・株価大躍動 ~インフレ誘導の罠を読み抜く

  • 作者: 植草一秀
  • 出版社/メーカー: ビジネス社
  • 発売日: 2013/03/22
  • メディア: 単行本


【金利・為替・株価 大躍動/植草一秀/13年4月初版】
ミラーマンと揶揄され、小沢&鳩山擁護、安倍批判など、どうも考え方が合わない人かなぁとスルーしていました。中国へのスタンスは、孫崎享と同じで、米国の利益のために衝突させられたと。そういえば最近、鳩山氏も尖閣は中国から日本が奪った、日本はもっと歴史を勉強して欲しいとか言ってましたが…

孫崎享の「戦後史の正体」が説得力があったし、中国との衝突は、たしかに経済の面から見ると国益に適わないので、尖閣はもう棚上げでいいような気がしています。経済発展という果実を得るには、尖閣は次の世代に棚上げで、中国経済成長の恩恵を受ける。北方領土は、面積二分で解決して、LNGをパイプラインで輸入しエネルギーコストを下げる。が現実的なシナリオかもしれません。ただ竹島だけは緊張関係継続でもいいような気もしますが^^

植草一秀の経済本。しっかりした1冊でした。今後の個人投資戦略を構築するには、目を通しておいて損にならない本です。過去のマクロ分析が秀逸です。ただ未来もそのパターンになるかどうかはわかりません。確率論でいうと、そうなる可能性が高いというだけです。「知識とは即ち過去である」という、オハラのクローバー博士の言葉が思い浮かびます。

相場にはたくさんの変数要因があるので、読み解き方も様々ですが、僕なりのこの本のポイントは以下。
・日経平均は1万7000円ぐらいまで行く可能性は十分にある。
・消費税増税が決まる秋口が、相場の難関。
・中国株は、2013年が底入れ反転の年になる。

ぜひ本書を読み解いて、自分なりのヒントをつかんで下さい。

以下に読書メモを。








<日本版 財政の崖>
増税や歳出削減によるGDP比3%の緊縮ブレーキを最近は「財政の崖」と呼ぶ。米国では計画通りに実行すると大惨事になるということで、うまく調整された。

日本では消費税増税が控えているが、増税の規模は13.5兆円。日本のGDPの3%弱に及ぶ。これには景気条項がついており、法律では2013年10月までに決定を下すことになっている。2013年4~6月期の経済成長率が、1~3月期に比べ何%増減したかによって判断を下す。4~6月期のGDP統計の発表は8月だ。経済成長率が高ければ、消費増税にゴーサインが出る。

問題は9~10月に巨大消費増税を最終決定した後の金融市場、経済の反応である。増税なら住宅や自動車などの分野では大規模な駆け込み需要が生まれる。2014年3月までは、駆け込み需要の景気押し上げ効果が強く表れやすい。

2014年4月以降はどうなるか。1997年橋本消費増税の時は、その後ほぼ3年の長期に渡って消費減退の傾向は続いた。

⇒米国ではGDP比▲3%のブレーキを、「財政の崖」とマスコミが大騒ぎをして調整できました。 日本のマスコミは、今回の増税が「財政の崖」レベルであることをおくびにも出さないでしょうね。 財務省が描いた絵だから。


<新聞と財務省>
経済専門紙でも、記者の知識、学識が十分高いわけではない。日本では多くのニュースソースを霞ヶ関官庁に依存している。その中心が財務省。財務省は全国紙の編集局長を集めて、定例の説明会を行なっている。この説明会で財務省が全国紙の論説を支配していると言って過言ではない。

新聞社の経営にとって命綱は、再販価格維持制度だ。新聞の再販価格は公正取引委員会の管轄下に置かれ、公正取引委員会が新聞社の命綱を握っている。この公正取引委員会の委員長のポストのほとんどが歴代財務省OBに握られてきた。新聞社はニュースソースを財務省に握られ、経営の根幹を財務省に握られている。新聞社で働く大半の記者の将来の希望は、この新聞社で役員になること。そして財務省の審議会の委員になることだ。

このような事情も影響して、新聞記者の執筆する記事は、財務省発表の書き写しになる。役所の御用機関に堕落してしまうのだ。記者の中には、正義感をもって信実を追求する者もいる。こうした「力のある」記者は、当然の事ながら社内では煙たい存在になり、処遇もされず、出世することもなくなる。かくして記者の牙は抜かれていく。


<太子党と共青団>
中国では、2つの勢力が5年ごとにトップを送り出す。言わばたすき掛け人事が行なわれていると言ってよい。江沢民は太子党の中心人物で、次の胡錦濤は共青団の中心に位置する。胡錦濤は後継者に共青団系の李克強を据えようとした。これに江沢民が抵抗し、太子党系列に属する習近平が後継者となった。

チャイナセブンと言われる政治局常務委員のうち、今回は江沢民系と太子党人脈が5名、胡錦濤が属する共青団系の人物は李克強の1名のみとなった。しかし5年後の大会では、太子党系の5名が全員定年となる。胡錦濤は5年後を見据えて、江沢民派と妥協を図った。

そして次期政治局常務員候補となる政治局員として、新たに胡春華が起用された。胡錦濤は習近平の次の中国のトップに、この胡春華を登用したいとの考えを有していると見られる。


<為替と景気>
むかし円高は、金利低下を通じて資産価値を上昇させるプラスの影響力を持っていた。しかし現在は円高が進行しても、金利はもうこれ以上下がらない。こうなると経済に与える影響としては、円高がもたらす輸出抑制効果、景気悪化効果が際立つ。これにより円高になると日経平均やGDPは下がる。

GDPに占める製造業の比率は既に17.6%と2割を切っている。しかし様々な産業の浮沈は、製造業の浮沈に連動して形成される傾向が強い。製造業の浮沈が、そのまま経済全体の浮沈を作り出す。


<日本政府のバランスシート>
日本政府の場合、内閣府が発表している国民経済計算統計によれば、2010年12月末時点で資産が1073兆円、負債が1037兆円で、わずかではあるが資産超過の状態にある。ちなみに米国は1000兆円を越す債務超過。日本政府の財務状況は危機とはかけ離れている。

非金融資産(固定資産、土地)579兆円
金融資産494兆円
期末資産1073兆円

負債1037兆円
正味資産36兆円


<米国長期金利に連動する日本長期金利>
主導権は米国にあり、それを映して日本の金利変動が生じる。このような金利の連動が生まれる原因は、「金利裁定取引」である。投資資金が国境を越えてより有利な投資対象を求めて動くことが背景にある。米国の金利が上がれば、資金がドルに流れる。その結果、国内では資金不足が生じて、金利が上がる。


<金融相場と業績連動相場>
金利低下を主因に株価が上昇する株式上昇相場を金融相場と呼び、企業業績拡大を主因に株価が上昇する株式上昇相場を業績相場と呼ぶ。

前者は、銀行、不動産、電力などで、共通する特性は負債の規模が膨大であるということだ。そして不動産価格は金利に連動して変動する特性を持つ。金利低下は価格上昇。金利上昇は価格下落をもたらす。


<この本で明示された注目すべき銘柄>・・・寸評は本書で。
積水ハウス、大戸屋ホールディング、信越化学工業、花王、テルモ、楽天、コマツ、SMC、トヨタ自動車、三菱商事、しまむら、三菱UFJファイナンシャル、三井住友ファイナンシャル、三菱地所、東京急行電鉄、ヤマトホールディングス、ニトリホールディングス、ファーストリテイリング


<米国の軍需産業は戦争が必要>
米国の軍事産業の規模はとてつもなく大きい。米国の国防費はGDPの5%にも迫る規模を保持している。6000~7000億ドルの規模、日本円で60~70兆円。日本の原子力産業が2兆円規模であることと比較しても、その巨大さがよく分かる。

この巨大軍事産業の立場から見れば、10~15年に一度の巨大戦争は、産業として生存し続けていくための必要不可欠な条件である。70年代前半には第四次中東戦争、90年には湾岸戦争、2001年~2003年にはアフガン戦争~イラク戦争が実行された。イラク戦争から10年の時間が経過する。軍事産業の視点に立てば、これから5年以内に、次の大規模戦争が必要となってくる。その最有力候補地はイランであり、次の候補地は、東アジア地区となる。


誰がこの国を戦争に導き#59126;
この国の平和を奪い
利益を得ているのか

誰が私たちを襲う本当の敵なのか
誰が自由と平和の本当の敵なのか

Jackson Browne - The Drums Of War♪





時の征者

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: SMJ(SME)(M)
  • 発売日: 2008/10/01
  • メディア: CD



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