なぜ、あの会社は儲かるのか? ビジネスモデル編

  • 作者: 山田 英夫
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
  • 発売日: 2012/07/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


【なぜ、あの会社は儲かるのか?ビジネスモデル編/山田英夫/12年7月初版】
ビジネスモデルのイノベーションに関する良書。著者は早稲田のビジネススクールの教授(専門が競争戦略、ビジネスモデル)。三菱総研でコンサルをされていたようで、文章が学者の書く固いものと違って、読みやすいです。

ビジネスモデルのイノベーションは、自分でつくるか、同業者のモデルを模倣するか、異業種にあるモデルを参考に構築するか。本書は異業種をヒントとしたビジネスモデルの構築に着目して、それを発見するための視点を提供する目的で書かれています。

サラリーマンもビジネスモデルを構築する、それぐらいの夢を持ったほうが仕事が楽しくなる。それぞれの階層に応じて、この本を参考に自社のビジネスモデルを考えてみる。考えることは楽しいし、場合によっては社内ベンチャーを任されたりして、貴重な経験が出来るかもしれません。日々忙しすぎて、そんな時間はない!という御仁も多いとは思いますが。

とにかくいろんな事例が詳細に書かれていますが、以下に一部の概要だけ列挙します。

・スター・マイカ:賃借人が住んでいるマンションを売買する「オーナーチェンジ」に特化した不動産業。賃貸に出されているマンションを買い集め、賃借人が退去した後にリフォームし、それを売却して利益を上げる。一種の裁定取引。賃貸中のマンションの価格は、空室マンションに比べると平均25%(日本の場合)安くなる。

・楽天バスサービス:空室をいかに販売するかを手がけていた元ホテルマンが、高速バスをインターネットで予約・販売するポータルサイトを始め、バス業界全体のレベニュー・マネジメントを実現した。

・スルガ銀行:ビジネスを個人サービスに特化し、他行が手がけない(できない)ような商品・サービスで利益を上げている。働く女性向けのローンや銀行員向けカードローンなど。

・コマツ:GPSとセンサーを組み合わせたシステムで、壊れる前日に予防保全する。盗難防止、中国での代金回収(遠隔操作でエンジンが停止できる)、ユーザーのコスト削減支援、需要予測etc。基本的には富士ゼロックスと同様のビジネスモデル。

・星野リゾート:旅館業から再生・運営受託事業へ進出。所有と運営の分離が普通の米国のホテル業界から見れば、星野のやりかたは当然かもしれないが、日本では新しいビジネスモデル。ゴールドマンサックスと提携し、資金はゴールドマン、運営ノウハウを星野リゾートが提供する。

旅館業においては専門職である料理人を採用することが難しい。解決策としてセントラルキッチン方式をとる。千葉県のセントラルキッチンから全国に料理を冷凍して供給する。これで素人でも料理長になれるようになった。ファミレスのセントラルキッチンとの違いは、2割は現地で作ること。地元の食材にこだわったメインディッシュとデザートで食事の評価は決まると考えている。セントラルキッチン比率が8割というのは経験則で決まった。

・パーク24:土地所有者から賃借して機器を設置。土地所有者が事業リスクを負わず土地賃貸料が得られる。
・ブリジストン:リトレッド事業(すり減ったタイヤの表面のゴムを貼り替えて再度使う)
・GEの航空機エンジン事業:航空機エンジンを売り切りからリースへ切り替え。
・青梅慶友病院:患者の家族の顧客満足を考える。
・フランスベッド:介護用ベッドのレンタル。新品のようにリオフォームする。
・トランスファーカ:無料レンタカー。回送を消費者に代行させる。多数のレンタカー会社の乗り捨てデータベースを持ち、最適な回送作業のシステムを組み、その上で回送作業を一般消費者に委ねる。

等々・・

以下にその他の読書メモを。

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<レベニューマネジメント>
需要を予測して価格を変化させながら、販売量と販売価格の積であるレベニュー(収入)を極大化すること。米国の航空会社が発祥。固定費比率の高いホテル業界などでは定着している。過去のデータと需要予測から価格変動させる。バスにも同様の手法を導入したのが、楽天バスサービス。


<インテル・インサイド>
実はインテル・インサイドのブランディングは、インテルの日本法人から生まれた。その動機は新卒採用。採用活動で苦戦したインテルの日本法人は、パソコンメーカーの広告と組み合わせて、インテルブランドを広めることを企画した。「Intel In It」を東芝のダイナブックで宣伝した。この成功を見たインテル本社はインテル全社で展開することを決めた。


<タイヤのリトレッド>
タイヤの表面のゴムを張り替えるリトレッドは、新品より安く省資源だ。使用する資源の量は、新品を100とすると32ですむ。欧米のトラック、バスは新品とリトレッドの比率は半々。日本のリトレッド比率は15%で、ブリジストンは2015年に35%とすることを目標とした。ブリジストン社内ではカニバリゼーション(共食い)を懸念する声があったが、利益率は新品を上回る。


<オフィスグリコ>
貯金箱方式を採ることによって、代金回収の確実性は捨てた。しかし代金回収率は95%。設置数は2011年には11万台を超え、売上は40億円を上回った。30~40代男性という白地需要を開拓し、カニバリゼーションというより需要拡大に貢献した。何よりも定価で売れる仕組みは利益率面で貢献。ちなみに「置き菓子」はグリコの登録商標。


<フリーミアムの例>
アドビ:PDF閲覧は無料、PDF作成は有料
スカイプ:PC同士の通話は無料、電話への通話は有料
エバーノート:1ヶ月60メガバイトまで無料、月額450円で1ギガバイト、広告の非表示etc。初めて使う会員のうち最初の月に有料会員になるのは1%程度、1年半後には6%が有料会員になる。
ドロップボックス:1ヶ月2ギガバイトまで無料で、年間99ドル払うと容量が50ギガバイトまで拡大できる。2011年現在で5000万人いる会員のうち4%が有料会員。利益は2億4000万ドル。


<高速バス>
東京⇔大阪間が4000円


一日バスを待っている♪
給料を持って家に帰る
ぎゅうぎゅう詰めのバスだけど
おれはうれしい
バスは俺を家に帰してくれる

この季節、高速バスで帰省する人も多いと思います。実家へ帰るのは何か甘酸っぱくて、うれしいんですよね。ZZTOPの3枚目で出世作。1973年ビルボード8位のトレス・オンブレスの1曲目です♪このアルバムはカッコイイです。

Waitin' For The Bus♪





Tres Hombres

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Rhino / Wea
  • 発売日: 2006/02/27
  • メディア: CD


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