もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『イノベーションと企業家精神』を読んだら

  • 作者: 岩崎 夏海
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2015/12/04
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


【もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーのイノベーションと企業家精神を読んだら/岩崎夏海】
もしドラって社会現象になりましたよね。
セカチューみたいに。
病弱な女子高生が亡くなる、夢をかなえる、甲子園出場、という。
そこにドラッガーを絡めるという斬新さ。

今回は「もしイノ」です。「もしドラ」の続編。

以下にまずは読書メモ、そのあとあらすじを。あらすじはだいたい2000字ぐらいにまとめてます。

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<トムソーヤのペンキ塗り>
人は誰かにそれを勧められたり説得されたりしても、なかなかしたいとは思わない。
しかし誰かがそれを楽しそうにしているのを見たり、あるいはそれを禁止されたりすると、
どうしてもしたくなってくる。

この法則は「トムソーヤのペンキ塗り」といって、誰かを説得する上での「魔法のテクニック」といわれていた。
19世紀、マークトゥエインが書いた「トムソーヤの冒険」。

ある日いたずらをしたトムは、罰としておばさんからペンキ塗りを命じられる。
ところが彼は一計を案じて、友人たちの前でペンキ塗りを楽しそうにやって見せる。
するとそれを見た友人たちは、トムに「自分も手伝わせてくれ」とお願いする。
あまりに楽しそうなので、やってみたくなったのだ。

しかしトムは「罰を命じたおばさんに怒られるから」という理由で、友人たちが手伝うのを禁止する。
おかげで友人たちはますますペンキを塗りたくなる。
結局自分たちの宝物と引き換えに、それをさせてもらうまでになる。
そうしてトムは、ペンキを塗らなくてもよくなったうえに、多額の報酬を得ることに成功する。




<猿飛佐助とは>
白土三平のマンガ「サスケ」に出てくる忍者のこと。
猿飛佐助、じつは個人名ではない。それは「術」の名前。
あるいは「型」の名前といってもよい。

その「型」を習得したものが名乗るのが、「猿飛佐助」という名称。
それゆえ「サスケ」のなかには猿飛佐助が何人も出てくる。
たとえ敵にころされても、また現れる。その意味で猿飛佐助は不死身だった。

現実の例として、桐朋学園で音楽を教えていた斎藤秀雄がいる。
斎藤秀雄は音楽、なかでも指揮の指導に型を取り入れた。それは世界に類を見ない指導法だった。
斎藤は、音楽後進国である日本が世界に追いつくためには、
何かスピードを持った指導法が必要だと考えた。そうしてやがて型の教育にたどり着く。
斎藤は指揮というものの本質を徹底的に解明し、それを1つの型に落とし込んだ。
その型をもとに、生徒たちに指揮を教えた。

するとそこからは小澤征爾をはじめとする世界的な音楽家が幾人も生まれた。
斎藤秀雄の門下生は、文字通り「天才がどんどん生まれてくる組織」となったのだ。




<イノベーション>
・イノベーションを行うためにあたっては、外に出て、見て、問い、聞かなければならない。
このことは、いかに強調してもしすぎることがない。

・イノベーションを魅力的なものにするための第一の段階は、すでに活力を失ったもの、
陳腐化したもの、生産的でなくなったものの廃棄を、制度化することである。




<真摯さ>
それに欠けるものは、マネージャーの資格がない。




以下にあらすじを。読もうと思ってる人はスルーを。



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私立浅川学園高校に通う岡野夢は、
友人の真美に誘われて、野球部のマネージャーになることを決心する。

夢と真美はドラッガーの経営書、「イノベーションと企業家精神」を読みながら、
競争しなくても勝てる、まったく新しい野球部をつくろうとする。

浅川学園の野球部は古豪だけど休部状態。部員はゼロ。
「もしドラ」を読んでマネージャーに興味をもった3年生の公平、
1年生の活発な真美、おとなしい夢の3人からスタートする。
そこに洋子、五月、楓とさらに3人のマネージャーが順番に加わる。

浅川学園には、新任教師として「もしドラ」の元マネージャー「北条文乃」がいた。
文乃は甲子園に出場した経緯を「もしドラ」として本にまとめ、大ベストセラー作家となった。
「もしドラ」がきっかけで北条文乃は、浅川学園の教師として招かれた。

夢や真美たちは、文乃先生に監督になるよう要請する。
文乃はこれを断り、もしドラの程久保高校キャプテンだった、二階正義に監督を要請する。
彼は浪人や留年でまだ大学生だった。

やがて3年生のリーダー公平は卒業する。
その時点の野球部としての成果は以下。

・まずドラッガーの「イノベーションと企業家精神」を教科書にすることに決めた。

・するとマネージャーだけでも6人が集まった。

・野球部の定義を「マネジメントを学ぶための組織」と定めた。

・日本一のグランドをつくることを目標に、7人の整備専属部隊が加入。

・甲子園に出た時の程校のキャプテンだった、二階正義が監督に就任。

・天空グランド(みんなで整備したグランド、古豪だったのでグランドはあった)で、
 強豪校同士の練習試合を開催した。この時点では浅川学園の野球選手はゼロ人。

・野球部の事業として人材の確保に集中、野球の上手い学生を獲得する施策を行った。

・24名の中学生が入部を希望し、12名を試験して入部させる。



やがて2年生になった真美が野球部のリーダーになる。もちろん選手ではなくマネージャー。
そして新監督のもと独創的な練習を行う。

・練習は「型」の習得に集中する。素振り、キャッチボール、ボールの見極めなど。
・リーダーの真美と夢は部員との個別面談を繰り返す。
・ピッチャーは先発2人、抑え2人の分業制とする。上原浩司のフォーム(型)でみんな投げる。

真美や夢が2年生のときは、夏の地区予選でベスト8まで勝ち進むも優勝候補に大敗。
このとき先発予定だった隼人が、腹痛を理由に登板を辞退する。

「逃げるな、投げるべきだ」と詰め寄った真美と衝突し、真美と隼人が野球部をやめてしまう。
野球部のリーダーは夢に引き継がれる。

夢は大敗した優勝候補の監督に話を聞きにいき、
あるヒントをもらい、隼人と真美を説得して野球部に戻す。



夢たちは3年生になる。昨年のベスト8の成績をみて有望な新人も入部してくる。
先発3人、救援2人の5人の投手陣になる。

ここでイノベーションが起こる。
高価なピッチングマシン「トップガン」を購入する。
150キロのフォークや、200キロのスライダーなど、人間には投げられない球が投げれるマシン。

これをバッティング練習で使うのではなく、ピッチングの研究に使う。
監督と戦略担当マネージャーが、そのマシンが投げれるさまざまな変化球を試し投げした。

そのなかで人間が投げれて打者が最も打ちにくいのが、高速ナックルということが分かった。
時速110キロ前後で無回転で投げ出され、揺れながら落ちるボール。

ナックルは通常は80キロから90キロ程度。
それでも打ちにくいが球速を増すとますます打ちにくくなる。
文字通り「魔球」。どうすればそのボールを投げれるようになるか研究した。

ついにはその球が投げられるようになり、その投げ方の「型」を編み出した。
そして5人の投手陣が全員、魔球「イノベーションボール1号」を投げれるようなった。



夢や真美にとって最後の夏、西東京大会が始まる。

2回戦から出場した浅川学園。庸太郎が先発し相手を散発2安打、7対0で7回コールド勝ち。
3回戦は一樹が先発、7回5安打打たれるも救援2人が2回を完璧に抑え、4対0。
4回戦は戻って来た隼人が先発、15人を完璧に抑え、15対0でコールド勝ち。
5回戦は再び庸太郎が先発し、9回をノーヒットノーランし、2対0。
準々決勝は3対0、準決勝は10対0の5回コールド勝ち。

イノベーションは破壊的だ。もはや競争になっていない。
プロでも打てるかどうか怪しい魔球を、高校生が打てるわけなかった。 

そしてついに決勝戦。相手は昨年大敗した優勝候補筆頭、
2年連続甲子園出場、全国に名をとどろかす好投手浦島を擁する滝宮高校。

15回まで行き、結局0対0。滝宮は浦島1人が投げぬき、浅川学園は3人で投げる。

延長再試合は、再び15回まで行き0対0。滝宮はエース浦島が1人で投げ抜き、浅川は2人。
前代未聞の再々試合となる。

滝宮のエース浦島は準決勝から4連投となる。
浅川学園は4日ぶりの先発となる隼人。
さて結果はどうなるのでしょうか?



もし・・・・世界が終わるとしても♪
ぼくは君のそばにいて、最後まで寄りそう♪

ブレッドでイフ♪




BREAD (Original Album Series)

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Warner Music
  • 発売日: 2010/02/27
  • メディア: CD



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ところで今日はグラミー賞の発表日。主要4部門の受賞者は以下でした。

「最優秀レコード賞」  マーク・ロンソン「アップタウン・ファンク feat. ブルーノ・マーズ」
「最優秀楽曲賞」    エド・シーラン「シンキング・アウト・ラウド」
「最優秀アルバム賞」 テイラー・スウィフト「1989」
「最優秀新人賞」    メーガン・トレイナー

ちなみにレコード賞とはシングルに、楽曲賞とは作詞作曲家に。アルバム賞とはアルバムに。

順当な所でしょうか。
たまたまですが、全員このブログでも紹介してた人(楽曲)たちです。
ぼくもけっこうミーハーなのかな^^。
「見える、見えるぞ、私にも音楽が見える」状態だったのか。

クラシックロック中心のおっさんにも、くるものがあった人(楽曲)たちです。
そういえばこのまえ紹介した「サチモス」も、あれよという間にJWAVEの1位になってました。
日本でグラミーがあったら、サチモスが最優秀新人賞でしょうね。グッラッ♪