にわかには信じられない遺伝子の不思議な物語

  • 作者: サム・キーン
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2013/10/08
  • メディア: 単行本


【にわかには信じられない遺伝子の不思議な物語/サム・キーン/13年10月初版】
この前赤ちゃん取り違い裁判のニュースがありました。あまりにもひどい偽兄に対して、兄弟がDNA鑑定をしたようでした。親の介護をするということで裕福な家の遺産を相続して、親の介護はせず施設に入れた偽兄。ほんとの兄は貧しい家で育ち満足な教育を受けられず、それでも優しく育ち母や兄の介護までしていたという。

一人だけ資質が違う偽兄に対して、裕福家族はずっと違和感を持ってたようです。それにしても兄弟に対して、DNA鑑定までするとは。。

この本はメンデルからはじまるDNA研究の歴史の雑学本です。


(広告)





目次は以下
1.遺伝子、奇形、DNA:生物はどうやって形質を子どもに伝えるのか?
2.瀕死のダーウィン:なぜ遺伝学者は自然淘汰説を抹殺しようとしたのか?
3.DNAは壊れるもの:自然はどうやってDNAを読み、どうして読み違えるのか?
4.DNAの楽譜:DNAはどんな種類の情報を蓄えるのか?
5.DNAの釈明:なぜ生命はこれほどゆっくり進化し、そしていきなり複雑になったのか?
6.生存者と肝臓:最も古く最も重要なDNAは何か?
7.マキャベリ主義の微生物:ヒトのDNAのどれだけが本当にヒト特有なのか?
8.愛と先祖返り:どの遺伝子が哺乳動物を哺乳動物たらしめるのか?
9.ヒューマンジーなどの惜しい失敗:人間はいつ、どうしてサルから分かれたのか?
10.緋文字のA・C・G・T:なぜヒトは絶滅しかけたのか?
11.サイズが問題:どうして人間はこれほどまでに大きい脳を獲得したのか?
12.遺伝子の芸術:芸術的才能はDNAのどれくらい深いところにあるのか?
13.過去は序章のこともある:遺伝子は歴史的英雄について何を教えてくれるのk?
14.30億の小さなかけら:なぜヒトはほかの種よりたくさん遺伝子を持っていないのか?
15.得やすいものは失いやすい:どうして一卵性双生児はまったく同じではないのか?
16.私たちが知っている生命:それで一体何が起こるのか?


以下に読書メモを。


(広告)





<遺伝子は全DNAの1%>
遺伝子は全DNAのほんの一部、わずか1%を占めるにすぎない。広大な染色体の太平洋に散らばるミクロネシアの島々のようなもの。では余分なDNA「ジャンクDNA」は何をやっているのか。科学者は長い間何もやっていないと思い込んでいたが、実は遺伝子のオン・オフの制御をしている。

⇒基礎知識がないとわかり難い話です。アニメーションもあってとてもわかりやすいサイトを参考まで。広島大学の「遺伝子の部屋 」




<被爆二世の突然変異>
高線量被爆での突然変異はどれほど有害でも、ほとんどが劣性と判明した。両親ともに同じ遺伝子に欠陥がある確率は低い。そのため被爆生存者の子どもについては、片方の健康な遺伝子がもう片方の遺伝子に潜んでいる欠陥を隠す。




<ジップの法則>
1つの言語で最も使われる単語の使用頻度は、2番目に使われる単語のおよそ2倍、3番目に使われる単語の3倍、100番目に使われる単語の100倍といった具合になる。英語では「the」が7%、「of」がその半分、「and」がその3分の1となる。これはあらゆる言語にも当てはまる。

言語だけでなく、所得分布から絵画の色の比率まで驚くほど多様な場所で見られる。どの分野でも最も大きいものは2番目のものの2倍の大きさや頻度であり、3番目のものの3倍の大きさや頻度。音楽でも同様の調査をするとモーツアルト、ショパンからパンクのラモーンズまで、ジップの法則どおりの分布が音色、音量、音符の継続時間にも当てはまることが確認されている。

DNAの表現、すなわちタンパク質への翻訳もジップの法則に従っている。ごく一部の遺伝子が何度も繰り返し表現される一方で、たいていの遺伝子はほとんど会話に出てこない。




<悪魔に魂を売ったバイオリニスト>
ニコロ・パガニーニはすばらしい技量に恵まれていたので、その才能とと引き換えに魂を悪魔に売ったという噂が生涯つきまとった。遺伝子疾患のせいで彼の指は奇妙なほどしなやかだった。小指を手のひらに対して横向きに直角に曲げられた。パガニーニの症候群は深刻な健康上の問題を引き起こした可能性がある。関節の痛み、弱い視力、呼吸能力の低下、疲労感に生涯悩まされた。

ロッシーニはパガニーニの演奏を聴いたとき号泣し、ローマ教皇レオ二世はパガニーニを黄金拍車騎士に任じ、王立鋳貨局はパガニーニの肖像を刻んだ硬貨を鋳造した。史上最も偉大なバイオリニストと賞賛される。

親指をねじって手の甲の向こうの小指に触れさせることができたし、中指の関節を横方向にくねらせることができた。力もあり、皿を片手で割ることができた(親指の力が強い)。

連続で素早く何度も高音と低音を出す複雑なリフやアルペッジョ、重音や三重音を難なく出せた。左手のピッキングも出来たので、右手で弓を弾き、左手でピッキングをし、まるで2つのバイオリンが一度に演奏されているようだった。最大で1分間に1000個の音が出ているとも言われた。

パガニーニはEDSという遺伝子疾患にかかっていた可能性が高い。EDS患者はコラーゲンをたくさんつくれない。コラーゲンが少ないことのメリットはサーカス並みの柔軟性。デメリットは筋肉の疲労、虚弱な肺、過敏な腸、弱い視力、傷つきやすい皮膚。音楽家やダンサーはEDSの罹患率が高い。

有名なPaganini CapriceのNo24です。聴いたことのある人も多い曲だと思います。
パガニーニ国際コンクールで1位を受賞したアレクサンダー・マルコフで。


クロスロードでスティーブヴァイが弾いたPaganini CapriceのNo5もアレクサンダー・マルコフで。




(広告)