読んでいない本について堂々と語る方法 (ちくま学芸文庫)

  • 作者: ピエール バイヤール
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2016/10/06
  • メディア: 文庫


【読んでいない本について堂々と語る方法/ピエール・バイヤール/16年10月文庫版初版】
タイトルに惹かれました。読書ブログやってるんで^^
ふつうは読んでない本について、語りませんよね。ウソついてる気分になる。
著者は大学の先生。

同僚の教授の書いた献本、読んでないとは言いにくい。
生徒たちに、知らない、読んでないとも言えない。職業柄そうなんでしょう。
みずからの存在意義にもかかわってくる。本読むのが仕事だし。

読んでない本には、以下の種類があるそうです。
・ぜんぜん読んだことのない本
・ざっと流し読みしたことがある本
・人から聞いたことがある本
・読んだことはあるが、忘れてしまった本

まあ、やろうと思えばできますよね。
たとえば映画。予告編で映像美とかを確認する。あらすじを誰かに聞く。
それで過去に見た映画と対比させたり、自説や自分の経験談をとうとうと述べたり。
なんというか、ハッタリといえば言いすぎか。


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どんな状況でコメントするか、ケーススタディです。

①大勢の目の前で
グレアムグリーンの小説では、主人公の作家が、満場のファンの前で、
自分が読んだこともない本について、熱心に意見を求められるという悪夢のような状況に直面する。

②教師の面前で
ティブ族の例が示すように、ある本をまったく読んでなくても、
それについてまっとうな意見を述べることができる。

③作家を前にして
それを書いた作家の前で話さなければならないときは、言葉に気をつけるべし。

④愛する人の前で
ある人を、その人の愛読書だが読んだことがない本の話をして誘惑するにはどうしたらいいか。
その場合の理想的な方法は、時間を止めることだと教える。

コメントする場合の心がまえ。

①気後れしない
デイヴィッド・ロッジの小説にもあるように、読んでない本について語るための第一条件は、
気後れしないことだという話。

②自分の考え(自説)をおしつける
バルザックが示してるように、書物というのは不断に変化する対象であり、
書物について自分の観点を押しつけるのは簡単だという話。

③本をでっちあげる
漱石の「吾輩は猫である」から、お互いが大ぼらを吹くさまを観察する。

④自分自身について語る
オスカー・ワイルドとともに、1冊の本を読むのに適した時間は10分だと結論する。
これを守らなければ、本との出会いはなによりも自伝を書くための口実である、
ということを忘れかねないからである。

以下に本書から2点の読書メモを。


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オスカー・ワイルドの未読についての考察

まれにみる読書家で博識の人だったオスカー・ワイルド。
ワイルドは、「読むべきか読まざるべきか」の中で、書物全体を3つのカテゴリーに分けるよう提案している。



第1のカテゴリーは読むべき書物のカテゴリーで、ワイルドはそこに入れるべきものとして、
キケロの「書簡」、スエトニウス、ヴァザーリの「美術家列伝」、ベンヴェヌート・チェッリーニの「チェッリーニ自伝」、
ジョン・マンデヴィル、マルコ・ポーロ、サン・シモンの「回想録」、モムゼン、グロートの「ギリシア史」、
をあげている。

第2のカテゴリーは、再読すべき書物のカテゴリーで、プルトン、キーツを入れている。
「詩の領域ではヘボ詩人ではなく大詩人、哲学の領域では学者ではなく見者」と付言している。

第3のカテゴリーは、読むべからざる書物のカテゴリー。
時間のない現代では、大学の公的使命にしてもいいぐらい重要、としている。
残念ながらワイルドは、「悪書リスト」は提示していない。

ちなみにワイルドのいう10分でいいというのは、批評家はその教養のおかげで、
本の本質を素早く察知することができる。非読は専門家のみにできることだと。




吾輩は猫である、からの非読の言い訳

先生は美学者に質問する。
「そんなでたらめをいって、もし相手が読んでたらどうするつもりだ」
「なに、その時は別の本と間違えたとかいうのさ」




ちなみに本書は2007年フランスで初版。
NYタイムスで2007年のベスト100冊に、フランス人の本としては唯一挙げられています。
大学の先生だけじゃなくて、プライドが邪魔して、読んでないと言えない人が多いということか。

ところで、ごめんなさい。この本ちゃんと読んでないです。
ふとんの中で、寝る前に10分だけ読みました。目次と、興味深い章だけ拾い読み。
それで翌朝、10分ほどぱらぱらとネタ探ししてから書きました。

いや、いつもはちゃんと読んでますよ。
ちょっとタイトルに挑戦受けた感じがして。寝ながら考えました。やってみようかなと^^

本は読んでも忘れます。
付箋貼ってなかったら、1冊読み終わる前にさえ、テクストを忘れ去ってしまう。
まんぜんと読んでたら、感想文というかブログ記事すらかけない。
で、数日たったらどの本に書いてあったかさえ忘れる。
いつの間にやら、自説になってたりして^^

なので漱石の一言は、心を軽くしてくれました。
それを遠いフランス人が感銘していたことも、時空を超えてすごいことです。
やっぱり本は、いいなあ。水野晴郎みたいですが。




ところで、サチモスの新作が1月25日に発売されます。2ndアルバム。
そこからのリード曲が1月10日にyoutubeに公開。J-WAVEでは2曲連続1位になってましたが、今回はどうかな。
あまりキャッチ―じゃない。ある意味攻めてる。

ボーカルの服について。今回はオールブラックのアディダストラックトップジャージ着てる。
歌詞「波打つ心臓」のところで、同じカラーの葉っぱマークが見える。見たことないトラックトップ。
アディダス2017年新作の「XBYO TRACK TOP」に若干似てる。ひょっとして自作で、染めてたりして^^
Suchmos "A.G.I.T."




THE KIDS(DVD付)

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: SPACE SHOWER MUSIC
  • 発売日: 2017/01/25
  • メディア: CD



2017年新作、ちょっとこれに似てる。




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