SSブログ

【いい文章の書き方のコツ】~「書く力/池上彰」より [本/ハウツー]


書く力 私たちはこうして文章を磨いた (朝日新書)

書く力 私たちはこうして文章を磨いた (朝日新書)

  • 作者: 池上彰
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2017/01/13
  • メディア: 新書


【書く力/池上彰と竹内政明の対談本/17年1月初版】


名文家とラッパー、必要なものが同じです。
このまえ「フリースタイルラップの教科書」読みました。
1人でできるラップの練習、2人でバトルの練習、バトルで勝ち上がるテクニック論。等々。
文章上達法と似てる気がする。

ラッパーは常にネタを探してます。
アナウンサーなら、「お題を与えて3分間」みたいな練習がありますが、
ラッパーも同じような練習をしてる。電車の中で吊り広告をお題にしたり。
言葉の反射神経の訓練。引き出しを増やすために。

ラッパーにはいろんなスタイルがある。
パンチライン(強い言葉)で勝負する呂布カルマみたいなラッパーもいれば、
ライム(押韻)がしっかりしてるR指定もいる。
名文にはフロウ(メロディのせ)は関係ないけど。



一番大事なものは何か?
宮本武蔵は五輪書で1645年に述べ、谷崎潤一郎は文章読本で1934年に述べてます。
リズムであると。

『何事についても、リズムがあるものだが、
とくに兵法ではリズムが大切であり、これは鍛錬なしでは達し得ないものである。
本書は、どの巻にも、もっぱらリズムのことを記すのである』
by宮本武蔵 地の巻(神子訳1963年)

『兵法では、見た目のスピードを追求するのは本当の道ではない。
リズムにあっていれば、他人にはごく普通に見えるのであって、
物ごとのリズムが合わないから、早く見えたり遅く見えたりするのである。
何の道にせよ、上達した場合は決して見た目に早いとはうつらぬものである。
すべて上手な人のなすことは、いかにも悠々として間をはずさぬものである』
by宮本武蔵 風の巻(神子訳)


『眼や耳からくる感覚的な快さが、
いかに理解を助けるものであるかと云うことは、名文家は皆よく知っている。
既に言葉と云うものが不完全なものである以上、われわれは読者の眼と耳とに訴える、
あらゆる要素を利用して、表現の不足を補って差支えない』
by谷崎潤一郎 文章読本

『調子について。その人の天性に依る。調子は精神の流動であり、血管のリズムである』
by谷崎潤一郎 文章読本



本書でも一番大事なものは、リズムだといってます。
文章論も、巨人の肩にのっかって、みんな結論は同じになる。
ビートルズの肩に立った4枚目のオアシスのように。


以下に要約読書メモを。
いつものことで恐縮ですが、切り貼りしてだいぶ文章を削ってる。
名文が例文としてたくさんのってるし、面白いのでぜひ本書であたってください。


▼広告▼





うまく書けそうなテーマを選んで書く


自分がわかっていることを書く。
読売新聞で毎日コラム(編集手帳)を書いてると、
「ぜひ、これを書きたい」と思う日は、1年のうち20日もあれば多いくらい。
締め切りは迫ってくる。起承転結なんか知ったことか。
とにかく自分がわかってることを書くしかない。

「国際情勢を書けば、ジャーナリストっぽく見えるかしら」
「科学ネタを取り上げれば、格調高いコラムと褒めてもらえるかな」
なんて色気を出すのは禁物。

生半可な知識しか持ち合わせてないテーマでは、
いくら「構成」に工夫を凝らしても、面白く仕上がるはずがない。
テーマと自分をつなぐ「ブリッジ」は必ずあるはず。まずはそれを見つける。

かっこいいブリッジをかける(一見関係のない文章をつなげる)には、
部品を集める感覚で知識をストックする。エピソードや名文、漢文、詩。
ああ、この話はこういうテーマで原稿を書かなくてはいけないときに使えるなと。




とにかく文章を推敲して半分に削る


最初に自分が書いたものを、とにかく半分にする。
それだけで文章が生き生きしてくる。半分は誇張だが少なくとも3分の2に切る。
しつこいものは省略すると、ずっと引き締まる。

版画でも張り切って全部彫ってしまうと、何も浮き上がってこない。
彫りすぎると何も彫らなかったのと一緒になってしまう。
余計なところは彫らないように、ぐっと我慢する。




コラムの構成で気をつけていること


・書き出しを読んだだけではテーマがわからない構成にする。
旧日本海軍の「之字運動」と同じ。目的地がわからないようにジグザグ運転する。

・書き出しとオチを多少なりとも関連づける。
落語で書き始めたら、最後も落語で締めくくりたい。

・1つ1つのセンテンスを短くリズムよく。書き出しは「入りやすい店構えにする」。
すると奥はどうなってるのかな?と覗き込みたくなる。


▼広告▼





文章のリズムを身体になじませる


カッコイイ名文や、人に伝わる文は、いきなり書けない。
自分の文体は、求めて見つけるものというより、
文章の基礎ができたときに、自然と身についているもの。

名文を書き写して練習する方法、丸暗記するわけではない。
リズムをつかむ。自分の身体にリズムをなじませるために書き写す。

島崎藤村とか。

小諸なる古城のほとり
雲白く遊子(ゆうし)悲しむ
緑なす繁縷(はこべ)は萌えず
若草もしくによしなし
・・・(略)

暗記した言い回しより、実際の原稿に役に立っているのは、こうしたリズム感。
身体にリズムを刻み込むこと。名文と接する意味は、ここに尽きる。




大江健三郎の文章についてどう思うか?


もう少しオブラートに包んでますが要旨は以下。
(池上彰)
・なぜわざわざもってまわった書き方をして、わかりにくい文章にしているのか。
・その書き方に必然性があるのか?読み込んでもそれが見えない。
・私からすると、自分に酔ってるだけ。
・文章については悪文と言わざるを得ない。

(竹内政明)
・新聞のコラム書きごときがノーベル賞作家の文章をとやかくいえないが、同じ感覚。
・大江さんの場合は、わかりきったことをわかりにくく書いてるのが恥ずかしい。




悪文の見本


1に裁判官、2に学者、3に新聞記者。
ただし悪文の性質はそれぞれに違っている。




左党とは何か?


職人は右手に槌(つち)を、左手にノミを持つ。ノミ手、すなわち左党。

左党の竹内政明はあとがきに以下のように記している。

『対談を終えたいま、池上さんのポケットからいくつかの秘密を探り当てた幸福感に浸っている。
それは確かにそうなのだが、一抹の憾み(うらみ)もないではない。
気がつけば、「まさぐる」よりも「まさぐられる」ことに時間を費やしてしまった。
(略)
「おい、竹内。お前のなんかどうでもいいんだよ。池上さんのポケットの中をもっと見せろ」
と、ご不満の読者もあろう。ひとえに、わが訥弁の罪である。
今夜は、愚鈍なる舌を飛び切り辛口の吟醸酒に浸し、酒責めの刑に処すつもりでいる。




もはやラスボスのR指定。中居くんもびっくり。
ライム(押韻)がしっかりしてると芸術的なんですよね。
バトルだけなら呂布カルマのほうが破壊力あるんでしょうけど。




フリースタイル・ラップの教科書 MCバトルはじめの一歩

フリースタイル・ラップの教科書 MCバトルはじめの一歩

  • 作者: 晋平太
  • 出版社/メーカー: イースト・プレス
  • 発売日: 2016/12/17
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)




(関連記事)
【五輪書/宮本武蔵・訳者神子侃/1963年8月初版】
http://donhenley.blog.so-net.ne.jp/2013-08-10

【文章読本/谷崎潤一郎/1934年初版】
http://donhenley.blog.so-net.ne.jp/2013-12-14

【ゴーストライター論/神山典士/15年4月初版】
http://donhenley.blog.so-net.ne.jp/2015-06-09

【売れる作家の全技術/大沢在昌/12年7月初版】
http://donhenley.blog.so-net.ne.jp/2012-12-01

【大人のための読書の全技術/斎藤孝/14年7月初版】
http://donhenley.blog.so-net.ne.jp/2014-10-21

【いい文章には型がある/吉岡友治/13年3月初版】
http://donhenley.blog.so-net.ne.jp/2013-05-04

【伝え方が9割/佐々木圭一/13年2月初版】
http://donhenley.blog.so-net.ne.jp/2013-08-20



せっかくなので、過去記事から2人の文豪の文章術を追記。
村上春樹:人の悪口は書かない。言い訳や自慢をなるべく書かない。時事的な話題は避ける。
司馬遼太郎:1つの記事には1つのことしか書かない。自分のこととか思いは抑える。

文豪がいうように、いちばん大事なのは自慢をしないことか。
嫉妬されるし、人を傷つける場合がある、暗転した時には後悔する。
持てる者が、持ってることを書くと、持ってない人がつらい思いをする。

ポジション、収入、学歴、恵まれた家庭環境・・・このへんは抑えるべきなんでしょうね。
すいません<_ _>、たまに書いてるかも(笑)。低レベルやけど。
「小っちゃ、こいつ自慢しいやで」と笑われてるかるかもしれん。

またね♪

▼広告▼



nice!(21)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 21

コメント 2

のべる・K

私も、文章の書き方の本を(電子書籍を含め)たくさん持っています。
読んでみると、普段何気なく書いている文章が、これではマズイ、などと気付かされる事があります。
この本もなかなか興味深いですね。
by のべる・K (2017-04-07 23:52) 

don

のべる・K さん、こんにちは~
ブログ書いたりしてると、つい「文章読本」とか、
読んでしまいますよね。それで少しでも文書の達人になれればと。
[__犬]
by don (2017-04-08 11:24) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

トラックバックの受付は締め切りました

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。