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海賊とよばれた男・上/百田尚樹 [本/文学芸術]


海賊とよばれた男(上) (講談社文庫)

海賊とよばれた男(上) (講談社文庫)

  • 作者: 百田 尚樹
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/07/15
  • メディア: 文庫


【海賊とよばれた男・上/百田尚樹/12年7月初版】
「鐵造は自分の写真の代わりに仙涯の『堪忍柳画賛』という絵の複製を各支店に送った。その絵は一本の柳が風に吹かれているもので、『気に入らぬ 風もあろうに 柳かな』という賛があった。外地での商いにはさまざまな軋轢や衝突があるだろう、しかしそれらをうまく受け流し、大地にしっかり根を下ろせ、という鐵造の願いを、仙涯の絵に託したものだった。」

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出光は潤滑油は強いですね。高炉系のチャンピオン交渉(新日鉄vs出光)してたと聞いた事があります。

2013年の本屋大賞1位作品。ようやく図書館から回ってきました。2012年の「舟を編む」も面白かったけど、これも別格に面白いです。下手な自己啓発本を読むより、やる気が漲ります。息子らにも読ませたいと思うほどの本です。

なぜか?学生時代から新しい技術に着目し、その成長を直感で信じ、取り組んだというのが示唆に富むから。専門家は当時石油の将来に悲観的でした。ランプ用の灯油の需要は電気に取って代わられ、石炭が花形産業の主役でその座は揺るぎないものと考えられていました。製鉄所も火力発電所も船も鉄道も、富国強兵を支える燃料はすべて石炭でした。その後需要が爆発する自動車は、当時日本に9台しかなく遊び道具としか見られてません。

石炭との比較では熱効率は軽油や重油が石炭を上回りますが、精製コストや輸送(液体は運びにくい)コストを考えると石炭に軍配が上がる。その時点では使えないものの未来を信じ、その世界に飛び込んだというのが素晴らしい。

と、絶賛していますが上巻しか読んでいません。下巻は図書館であと84人待ちです。上巻と同時に予約しとくべきでした^^;「ピアノの森」ほどは待たされないと思うので、気長に待つか。楽しみが先にあるというのは、いいことです。

上巻はハードカバー380pだけど、結構軽かったので出張のお供にしました。移動や打合せの待ち時間がパラダイスとなりました。お、もうこんな時間かぁと。

ところで著者の遊び心でしょうけど、「永遠のゼロ」の宮部が登場するシーンは、なんだかグッと来ました。二つの小説が頭の中で重なり合って、世界観が広がります。

鳥山明のこの前終わった短期連載「銀河パトロールジャコ」の最終回に○○が出てきて、一挙に世界観が広がったのと同じです。頭の中で2つのものが繋がると、テンションが上がって1+1=3以上になる気がします。

前にも書きましたが、1+1=3以上のものはこの世にあるのか。
あります。結婚です!橋下徹なんか1+1=9になりました。
あんまり結婚を持ち上げるのもアレなんで、バランサーとして結婚の名言をついでに。

・結婚とは、当たりくじのない宝くじである。
・ずいぶん敵を持ったけど、 妻よ、お前のようなやつははじめてだ。
・ウェディングケーキはこの世で最も危険な食べ物である。
・あらゆる人智の中で結婚に関する知識が一番遅れている。
・結婚するとき、私は女房を食べてしまいたいほど可愛いと思った。今考えると、あのとき食べておけばよかった。
・女房に愛される技術というものは発明されないものだろうか。
・結婚したまえ、君は後悔するだろう。 結婚しないでいたまえ、君は後悔するだろう。


以下に読書メモを。


<原油の精製>⇒リアクタの原理が、とてもわかりやすい説明でした。
原油を指ですくってみた。どろっとした感触が異様だった。見た目は墨のようだったが、異臭がすごかった。
「臭いですね」
「ああ、硫黄が入っているからね。そのまま燃やすと悪臭で耐えられない。石油が長い間ランプに使われなかったのは、そのせいだ。精製技術ができて初めて石油が利用できるようになった」
「精製はどうするのですか」
「簡単に言えば蒸留だ。いったん気化させてから液体化する。原油にはいろんなものが混ざっているが、蒸留してやれば不純物はなくなる。それをさまざまな種類の油にわけていくんだ。原油から灯油、軽油、重油、揮発油、機械油などができる」
「どうやって、いろんな油に分けるのですか」
「それぞれの油は皆、沸点が違う。だから蒸留すれば、いったんすべての油は気化するが、それを冷やすと、沸点の高いものから順に液化していくわけだ」



<アメリカの歩み>⇒子どもでもわかるように、すごく端的にまとまってます。
「アメリカちゅう国は、石油が出るまではどんな国やったんや」
「1800年代までは広大な土地を持つ農業国にすぎませんでした。国を代表する産業は綿花と小麦くらいでした。綿花はヨーロッパに輸出できましたが、小麦は無理でした」
「それはなんでや」
「小麦は重いので、帆船で運ぶのは輸送費がかかって、ロシアの安い小麦に対抗できなかったのです」
「なるほどなあ」「商品というのは、運賃も値段の一部なんやな」
「でも、蒸気船の発明によって、輸送費が10分の1になったので、小麦が大量にヨーロッパに輸出できるようになりました。それでアメリカは耕作地を求めて西へ西へ開拓を始めたのです」
「ほう」
「同時に小麦を運ぶために鉄道の敷設がすごい勢いで始まりました。同じ頃、世界で始めての油田開発が始まりました。そして、世界最大の石油会社『スタンダード石油』と世界最大の鉄鋼会社『USスチール』が誕生したのです。鉄鋼産業と石油産業は互いに大きくかかわりながら急成長しました」
「面白いなあ。鉄と石油か」
「アメリカは今世紀に入ってから、鉄鋼業と石油業の発展を背景に、ものすごい量の自動車をつくりました。フォードという会社は世界一の自動車会社と言われています。自動車のエンジンは揮発油です。今、アメリカはすごい勢いで大きくなっています」
「国岡はんの話を聞いてると、石油というのは魔法の水という気がしてくるなあ」



<輸送船の悲劇>
アメリカは日本の工業生産力を殺ぐべく、南方から資源を運ぶ輸送船を狙った。その任務を背負ったのは潜水艦で、彼らの最優先標的は軍艦ではなく輸送船だった。

驚くべきデータがある。財団法人「日本殉職船員顕彰会」の調べによれば、大東亜戦争で失われた徴用船は、商船3575隻、機帆船2070隻、漁船1595隻の計7240隻。そして戦没した船員、漁民は6万人以上に上る。彼らの戦死率は約43%と推察され、これは陸軍軍人の約20%、海軍軍人の約16%をはるかに上回る数字である。

自らの身を守る手段を何も持たない船乗りたちは、命懸けで貴重な物資を日本に運び続けたが、それでも国内の需要を満たすことができず、国民は慢性的な物資不足に苦しんでいた。




柳よ 私のために泣いてくれ♪

Willow weep for me ♪
ジューンクリスティ21歳のとき、スタンケントン楽団での1946年録音です。声がカワイイ。




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コメント 8

獏

仕事で縁はないのですが
石油業界にはとても興味がありますので
読みたいと思っていた本です☆^^)
今は こういう伝説の人物のような人は
登場しないヨノナカになったのでしょうか・・・・。

by 獏 (2013-10-30 07:28) 

song4u

ぼくは化学出身なので違和感なく読み進んでしまいましたが、
普通の人に「リアクタ」は、??な感じだったのではないでしょうか。
蒸留塔や充填塔、懐かしいなあ。^^;
donさんも、ひょっとして、そっち系ですか?
by song4u (2013-10-30 22:39) 

DEBDYLAN

この本のコト、何かで知ってたような気がするんだけど定かでなく^^;
面白そうですね。
読んでみたいです!!
まずは図書館で検索してみます^^。

by DEBDYLAN (2013-10-30 23:30) 

don

獏さんこんばんは~
コメント欄が大変です~。。
伝説の人物、出にくいでしょうね・・
by don (2013-10-31 21:10) 

don

song4uさんこんばんは~
なにか理系の香りがしていましたが、化学でしたか。
たしかに、リアクタは唐突感があったかもしれません。

ぼくは単なる耳学問です。値打ちがなくてすいません[__犬]
by don (2013-10-31 21:26) 

don

DEBDYLANさんこんばんは~
ベストセラーなんで、本屋さんで見かけられたのかも。
図書館、予約一杯でしょう。気長にお待ちください[__犬]
by don (2013-10-31 21:27) 

銀狼

ご無沙汰しておりました。
しばらく更新出来ておりませんでしたが、
またボチボチ始めていきますので、宜しくお願い致します^^
by 銀狼 (2013-11-01 19:34) 

don

銀狼さんこんにちは~
お元気でしたか~
こちらこそ、またよろしくお願いします[__犬]
by don (2013-11-02 12:38) 

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