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【ラオスにいったい何があるというんですか?/村上春樹】~ヴィレッジ・ヴァンガード訪問記メモ [本/文学芸術]


ラオスにいったい何があるというんですか? 紀行文集

ラオスにいったい何があるというんですか? 紀行文集

  • 作者: 村上 春樹
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2015/11/21
  • メディア: 単行本


【ラオスにいったい何があるというんですか?/村上春樹/15年11月初版】
なんか最近すごいペースで仕事してますよね。
去年の秋に2冊本だして、立て続けに本作。半年で村上春樹3冊目です。

とはいえ今回は過去の旅行記をまとめたもの。

・チャールズ河畔の小径―ボストン1 1995年11月初出
・緑の苔と温泉のあるところ―アイスランド 2004年2月初出
・おいしいものが食べたい―オレゴン州ポートランド・メイン州ポートランド 2008年3&4月初出
・懐かしいふたつの島で―ミコノス島・スペッツェス島 2011年4月初出
・もしタイムマシーンがあったなら―ニューヨークのジャズ・クラブ 2009年11月初出
・シベリウスとカウリスマキを訪ねて―フィンランド  2013年7月初出
・大いなるメコン川の畔で―ルアンプラバン(ラオス) 2014年10月初出
・野球と鯨とドーナッツ―ボストン2 2012年4月初出
・白い道と赤いワイン―トスカナ(イタリア) 2015年6月初出
・漱石からくまモンまで―熊本県(日本) 2015年9月初出

掲載誌はAGORAが多いです。AGORAは日本航空の機内誌。

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彼の紀行文は、「遠い太鼓」「雨天炎天」「辺境・近境」「やがて悲しき外国語」、
「うずまき猫のみつけかた」「シドニー!」なんかがあります。
シドニー!って読んだかな。。あんまり覚えてない。
ま、いいや。

上述のとおり、ほとんどが海外紀行なんですが、今回は熊本がある。
紀行文といえば、司馬さんの「街道をゆく」が有名です。
「街道をゆく」にはぼくの故郷のことが書かれてまして、そこの文章は何回か読み直しました。

司馬さんがとても好意的に書いてくれていて、
ある季節が、「日本で一番美しい場所」とまで書いてくれてた。
それがうれしくてうれしくて、誇らしくて。。何度も読みかえしました。
街道をゆく以外にも、ほかのエッセイでもふれてくれて。

それを読んだ昔の上司が、「一度は君の故郷に行ってみたい」と言ってました。
司馬さんに会ったら、お礼が言いたいぐらいです。


そもそも司馬さんと比較してはいけないのかもしれませんが、村上さんは熊本に愛がない。
とても軽いです。熊本の紀行文は、読んでて数回吹いたので、ユーモアはあるのですが。
これ読んだ熊本の人は、どう思うのかな。

ふと思ったのは、影響力のある人というのは、何かを少しでもからかったりすると、
それにかかわる多くの人が悲しむということ。
影響力のある人は、そのへんのさじ加減が大変だ。



今回はヴィレッジ・ヴァンガード訪問記が面白かった。
以下に読書メモを。

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『今回のニューヨークのジャズ・クラブ探訪の目的のひとつは、
「ヴィレッジ・ヴァンガード」に行って、オーナーのロレイン・ゴードンさんに会うことだった。
ロレインさんはジャズの世界ではかなり伝説的な人である。

娘時代からの熱狂的なジャズファンで、
まずブルーノート・レコードの創始者であるアルフレッド・ライオン氏と1942年に結婚して、
まだまだ設立間もないそのレコード会社の発展に寄与し、彼とわけあって離婚してからは、
ジャズクラブ「ヴィレッジ・ヴァンガード」のオーナーであるマックス・ゴードン氏と再婚した。
そしてゴードン氏が亡くなってからは、女手ひとつでその伝統あるジャズクラブを切り盛りしている



ヴィレッジ・ヴァンガードは文字通りグリニッジ・ヴィレッジにある老舗ジャズクラブである。
マックス・ゴードンが1935年に最初のライブを始めて以来、なんと延々76年間にわたって、
同じビルの同じ地下室で営業を続けている。

最初のうちはフォークソングやコメディなんかもやっていたが、
50年代の半ば以降はジャズ専門のクラブになった。
歩道に張り出したテントと、ネオンサインのロゴがこの店のシンボルになっている。

ニューヨークには数多くのジャズクラブがあるが、
こんなに長いあいだ引っ越しもせずにひとつの場所でやっている店はほかにはない。
もう店そのものが「世界遺産」みたいなもので、そこに入って椅子に座っているだけで、
歴史の中に静かに呑み込まれていくような粛々とした気分になってしまう。

「でもね、トラブル続きでそりゃひどいものよ」とロレインさんは言う。
「なにしろ百年近く前意に建てられたビルだから、雨は漏るし、配管は壊れるし、
消防署は文句をつけるし、次に何が起こるかわかったものじゃないのよ」』

NewYork_VillageVanguard_20110111_02-1-2[1].jpg


『たしかに建物は古い。むしろおんぼろに近いと言っていいかもしれない。
家具調度も決して豪華ではないし、メニューは限られた飲み物だけで、食事もまったく出さない。
・・・天井やかべはけっこうでこぼこしているし、フロアは不規則に折れ曲がった奇妙な形をしている。
まるで意地悪く作られたゴルフコースみたいに見えなくもない。

・・・実際に出てくる音を耳にすると「うん、そうだよな、これがジャズの音だ」と一発で納得させられる。
まるで店の隅々にまでジャズの音がしみ込んでいて、それが演奏される楽器の音に、
みずみずしく共鳴しているみたいにも聞こえる。

だからこそこれまでにこの店で、ソニーロリンズやビルエヴァンズやら、ジョンコルトレーンやら、
キャノンボールアダレイやらの、数々の素晴らしいライブ録音がとられてきたのだ。』



どんなミュージシャンを出演させるかは、今でもロレインさんが決定する。
ほとんど家族経営みたいな状態で、娘さんや娘さんのご主人が店を手伝っている。
出演者のギャラは有名でも無名でもぜんぶ同じ。・・・
・・・それほど広くない場所だし、出演者のランクによってチャージが変わるということがほとんどないので、
払いたくても現実的には払えないのだ。

商売っ気がないというか、素っ気ないというか、いったんミニマム・ドリンクを出してしまうと、
お代わりの注文もほとんどとりに来ない。
しかし「安ギャラでもいいからヴァンガードに出たい」というミュージシャンがたくさんいる。
僕は思うんだけど、そういうのが要するにジャズであり、そういうのが要するにニューヨークであり、
そして言うまでもないことだけど、それが要するに「ヴィレッジ・ヴァンガード」だ。・・・
・・・この店に入って、ウィスキーのソーダ割りを飲みながらライブの開始を待っていると、
ほとんどタイムマシーンに乗って来たような気がするくらいだ。』



『ヘンリー・キッシンジャーがこの店を訪れたとき、入り口にいたロレインさんがにこりともせず、
「うちはミュージックチャージが20ドルと、ミニマムドリンクが10ドル。
カードもチェックも受け取りません。それでよろしいかしら?」と言った話は有名である。
なにしろハードコアな店なのだ。

ロレインさんは1960年代にはジャズを離れて、反戦運動に打ち込み、ハノイにまで出かけた人である。
きっとキッシンジャー氏とはあまり相性が良くなかったのだろう。』



「バードランド」ももちろん古くからある超有名なクラブだが(今を遡る六十年前、
オリジナルのクラブの開店初日はには、チャーリー・パーカーのバンドが出演した)、
そのあと場所は何度も引っ越しているし、経営も様変わりしている。

「古式豊かな」というか、昔ながらの雰囲気を頑固に維持している「ヴィレッジ・ヴァンガード」とは対照的に、
最新の設備を備えたナイトクラブに近い店だ。
店は清潔で広々しているし、おいしい料理も出るし、飲み物のお代わりもちゃんと取りに来る。
サービスもとてもきちんとしている。

女性同伴で、ちょっと気取って、ニューヨークのナイトライフを愉しみに来るのには最適かもしれない。
でも値段はリーズナブルだし、演奏の質も申し分ないし、ジャズがしっかりと鳴り響いている。
ここもお勧めです。』




せっかくなので今回はヴィレッジ・ヴァンガードの映像を探しました。
するとロバートグラスパーに行きついた。ジャズ好きの若い知り合いに、
「なんかお勧めのアルバムある?」と聞くと、教えてもらった人です。
2012年のグラミー賞でベストR&Bアルバム賞を受賞。
今世紀最重要のジャズピアニストといわれてます。

さいしょ「ブラックレディオ」聞いたとき、なんかヒップホップかなという。
このドラムはどう考えても打ち込みだろうと。

今回映像をみて衝撃を受けました。マジですごいドラマーだ、クリス・デイブが人力で叩いてた^^;
個人的なインパクトは、アートブレイキー、スティーブガットに匹敵します。
それ以上かもしれん。5:47ぐらいから叩いてます♪

あ、@ヴィレッジヴァンガードと書かれてますが、なんか違うような気がします。ま、いいか。




Black Radio

Black Radio

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Blue Note Records
  • 発売日: 2012/02/28
  • メディア: CD




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昨日ヨーカドーに、ぼくの大好きなベルギー発泡酒、
「ベルモルトホワイト」が大量に入荷してました。
ずっとなかったので、うれしくて6本パック買って帰りました。
これからはベルモルトの白と黒は常備してほしい。
またね♪





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コメント 12

DEBDYLAN

イイですね。
ヴィレッジ・ヴァンガードが大好きになりました。
ココで録られたライヴ盤聴きたくなっちゃったな^^;

by DEBDYLAN (2016-03-12 23:46) 

seawind335

確かにこうした紀行文でその土地のイメージが決まってしまうことがありますね。
やはり、影響力を考えないと・・・・
by seawind335 (2016-03-13 09:05) 

heroherosr

donさんは熊本の出身なのでしたか
肥後もっこすですか?
by heroherosr (2016-03-13 11:14) 

don

DEBDYLANさんこんにちは~
いろいろとあるので、ぜひ。
ビルエヴァンスの、「サンデーアット~」は聴きやすいです♪
by don (2016-03-13 17:55) 

don

seawind335 さんこんばんは~
ちょっと前も、北海道の人はタバコを道に捨てる、
とかだったかな、謝罪してましたよね[__犬]

by don (2016-03-13 19:14) 

don

heroherosr さんこんばんは~
いや、違いますよ。ちょっと書き方がわるかったかな。すいません。
神戸の「もっこすラーメン」は大好きです[__犬]
by don (2016-03-13 19:16) 

ヒサ

donさん、こんばんは。

スティーブ・ガットなみのインパクトと聞いて、YouTubeをみましたけど、クリス・デイブ・・・確かにスゴイひとですね!
ダラーンとした姿勢からよくあれだけ正確に叩けるなぁ、と思いました。
世界は広いです(  ̄_ ̄)(笑)

by ヒサ (2016-03-13 22:04) 

don

ヒサさんこんばんは~

キースムーンや、ボンズとはジャンルが違うというか。
スティーブガットの、独特の間というかグルーブも凄いですが。
ちょっと新時代のドラマーですよね、クリスは。

今世紀一番売れたアデルの「21」でも叩いてます。
「He won’t go」
https://www.youtube.com/watch?v=uck1cLwauwE
打ち込みだと思ってましたが、クリスが叩いてると知ったら、
急に温かみを感じて^^;
[__犬]
by don (2016-03-13 23:03) 

みかん

donさん、こんばんは^^

おお~ロバートグラスパー!4年近く前になりますが、
一度ライブにも行ってみましたよ♪
観客はほとんどが黒人、すこし白人という感じでした。

我が家では、あと、ロイ・ハーグルーブという人のアルバムを
愛聴しておりまする~。 ロバートグラスパーの雰囲気に
通づるものがあるような。

街道をゆく、今度読んでみたいです。
自分の故郷をそんなふうに書いてくれているなんて
いいですね☆彡
by みかん (2016-03-14 10:34) 

don

みかんさんこんにちは~
素晴らしい。グラスパーのライブ行かれましたか。
いいなぁ。ぼくもライブで見てみたい。

それと観客は黒人が多いのですか。なるほど。
ジャズというくくりなら、白人も多いと思うのですが、
ヒップホップというくくりなのかなぁ。

「ロイ・ハーグルーブ」知らない人です。
また家でyoutube見てみます。

みかんさん、ツウですね [__犬]
by don (2016-03-14 12:38) 

みかん

donさん、たびたび失礼いたしまする。

Roy Hargroveですが、テキサス出身のようです。
以前、ブルーノート東京に来ていて、行きたかったですが、
なぜかこちらには来てくれません(^^;)

何枚かアルバム持っていますが、特に飽きずに聴いているのが
「Family」(1995年)と、「earfood」(2008年)です。

ロバート・グラスパーは梨さん曰く、
ちょっと前衛的な感じ?のようで、彼はヒューストン出身、
だそうです[__猫]
by みかん (2016-03-15 10:04) 

don

みかんさんこんばんは~
wikiみると、ちょ~大物みたいですね。
知らなかったです。
あんまりトランペットな人は聴かないので、
こんどツタヤで借りて聴いてみます。

梨さんよくご存じですね。
夫婦そろってツウですなぁ
[__犬]
by don (2016-03-15 23:30) 

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