【2020年世界経済の勝者と敗者/ポール・クルーグマン、浜田宏一】要約まとめ [本/Biz経済]
【2020年世界経済の勝者と敗者/ポール・クルーグマン、浜田宏一/16年1月初版】
ほぼ三橋貴明と同じことを言ってる本。クルーグマンも浜田氏も。
消費増税は絶対にやるべきではなかった。今からでも5%に戻せ。
ましてや10%なんてとんでもない。日本が沈没すると。
『日本経済をよくする、最も効果的で、なおかつ手早い政策は何か?
増税した消費税を一時的に減税することです。
安倍首相が増税したことは気の迷いだったと一笑にふせばいい。
そうして元の税率に戻すのです。
財政面や金融面で追加的な刺激策をとるべき。
日銀の黒田氏は、日本経済が復活するためには日銀はどんな手でもうつ、
という決意を繰り返し表明すること。
劇的な政策によって国民の期待感が高まれば、それだけで経済は回復する。
国民の期待感が高まると期待インフレ率が上昇する。
つまり実質金利が下がり、財政事情もよくなる』 by ポールクルーグマン
TPPに関して。アメリカ人もみんな反対というのが興味深いです。
有名どころでは、本書によるとクルーグマン、スティグリッツ、バグワティなどが反対。
ラリーサマーズは賛成派だけど、あまり自信がなさそう。
ヒラリーのトップアドバイザーは「TPPを消滅させることはできないのか?」
クルーグマン曰く、「経済学者もTPPについて重要性を説明できない状況で、
なぜ政治的資本を費やさないといけないのか。民主党も民主党幹部もTPPをよく思ってない」
共和党はTPP賛成のはずですが、トランプはこの前、
「TPPはゴミ箱に放り込むことを、みなさんに誓約する」といって拍手喝采となっています。
民主党が全員反対、共和党は躍進するトランプが反対で、もはや風前の灯でしょうか。
日本の旗振り役の甘利さんもいなくなったし。
ちなみに浜田氏はTPP賛成だそうです。理由を要約すると以下。
「TPPは国際法が進歩したようなもの。国際法は政治力学でふつうは決まる。道理で決まらない。
TPPが紛争解決に働くようになると、国際法も力の対決ではなく、ルールによる解決に使われる」
浜田氏の懸念は、「クルーグマンやバグワティが心配してるように、
TPPのルールが、ウォール街や弁護士だけに都合のよいものにならないように」と。
いやたぶん都合のいいものになってると思う。
オバマの大口献金者はゴールドマンサックスです。
そのへんの意向がずいぶん入れられてると思う。
2020年の勝者と敗者が誰か、というようなことは直接的には書かれてません。
欧州は、ユーロの縛りでどうしようもない。独自の金融&財政政策がうてなくて何も解決できない。
中国は崩壊するだろうと。
以下にその他の読書メモを。
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<日本の財政状況は悪くない>
地方公共団体を含めた日本の一般政府の負債は1206兆円。
名目GDP490兆円の246%になっている(2015年3月末)。
ちなみにギリシアは176%。
ただし日本政府は574兆円の金融資産がある。それを負債総額から差し引くとGDP比で130%弱。
また金融資産だけでなく、政府が保有する土地や官庁の建物も相当な額を保有している。
加えて日本は官民を合わせると、世界で最も多くの対外資産を持つ純債権国。
日本の対外純資産は2014年末時点で366兆円。24年連続の世界一。
だから経済危機が起きると、世界の投資資金が円に集まり円高が発生する。
<クルーグマンによる日本国債格付け>
「もし私が日本国債を格付けするなら、AAAです。
アメリカと同じように、自国の紙幣を刷ることができる国には、デフォルトリスクがないから」
「借金は円なのだから円を刷ればいいだけの話。
紙幣を印刷したらインフレにつながり、通貨の下落も招く。と批判する人もいる。
しかしそれこそがアベノミクス。アベノミクスがうまくいけばインフレ率が上がり、
将来の歳入を押し上げ、財政状況はぐんと改善する」
<格付け会社とは何か?浜田氏の見解>
格付け会社とは権威ではない。単に格付け会社の「商売の手段」。
スタンダードアンドプアーズが格付けを引き下げたのは、そこに何らかの経済的なプロセスがあった。
ただそれだけに過ぎない。
自分の虎の子のカネを注ぎ込んでいる、投資家たちが決める市場金利に優ることは、絶対にない。
世界最低金利は、日本とスイスが争っている。
<クルーグマンの日本の生産性に関する言及>
25年前、すでに日本の生産性はアメリカより25%低くなっていた。
日本とフランスは、一人当たりGDPは同じ。しかしフランス人は長期バカンスを取る。
日本人の休暇は多くない。日本人のほうがフランス人より多く働いている。
ということは日本よりフランスのほうが生産性が高い。
日本には人口減少の問題がある。
退職者を誰がフォローするか?労働人口が縮小するのにどうやって人に投資でおカネを使わせるか?
生産性の低さと、人口減少が日本の問題。
とはいえ、教育レベルが高く、テクノロジーのレベルも高い。
これから生産性が向上する可能性もある。
生産性が向上すれば、経済成長の可能性も出てくる。
経済成長のための手段は構造改革。
女性や移民、高齢者を積極的に活用することが、経済成長への道の一つ。
⇒生産性向上はいいですが、移民はイヤです。。
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<いまこそ財政投資をすべきとき、クルーグマン>
現在は民間セクターが投資をしたがらず、預金があり余っている状態。
民間はそれを非常に低利で政府に貸すことを強く望んでいる。
そのお金を国民の将来を改善するものの建設に使うというのは、非常に正しい考え。
カナダに注目している。
「金利は歴史的な低さで、わが国の既存インフラは急速に老朽化している。
そして我々の経済は停滞している。いまこそ投資をすべきだ」
カナダの自由党の政策です。
カナダのジャスティントルドー率いる自由党は、上記政策を堂々と主張し、選挙で大勝利を収めた。
<中国を待っているのはバブルの完全崩壊、クルーグマン>
中国の統計数字はまったく信用できない。
あくまで政府によるきわめて政治的な表明に過ぎない。
中国では投資額がGDPの50%に対して、消費が30%という異常な水準。
(アメリカは消費が70%、日本は60%)
この投資のかなりの割合を占めるのが不動産。中国における不動産の値上がりはまさにバブル。
中国では賃金が上昇し、労働力が不足してくる。古い成長モデルはもう通用しない。
これからは投資30%、消費50%のバランスに変えていく必要がある。
それができなければ、バブルは完全崩壊する。
中国バブル崩壊の日本への影響はかなりのものになる。
日本はまだデフレから抜け出すことができていないので。
とはいえGDPに占める内需は60%。
ということは自国のために生産しているのであり、中国以外にも輸出できる。
危険性は残るが杞憂かもしれない。
<黒い日銀、白い日銀>
現在の日銀は黒田総裁。黒い日銀。
前総裁は白川総裁。白い日銀。
日銀の旧主流派は、金融緩和を否定し、デフレを肯定することが「白い」、すなわち「正しい」道とする。
<ラリー・サマーズとジャネット・イエレン、浜田>
FRBの新議長を選ぶ際に2人が有力視された。2人ともよく知っている。
ラリーは財政政策を重視し、ジャネットは金融政策だけでかなりのことができると考えている。
ジャネットはNYブルックリン育ち。ブルックリンは下町。
彼女のお父さんは医師。診ていたのは主に港湾労働者や工場労働者。
偉大な経済学者のポール・サムエルソンとケネス・アロー、
彼らノーベル経済学賞受賞者2人の甥にあたる、ラリーとは好対照。
ラリーは頭が良すぎるところがある。思ったことはズバズバいってしまう。
ジャネットは穏やかな性格の持ち主。相手の話をよく聴くし、自分の意見はゆっくり伝えようとする。
笑顔と共に相手を説得しようとするタイプ。
その人柄が、周囲の学者にFRB議長就任を支持された。
2013年秋、全米の学者やエコノミスト数百人が、
ジャネットの指名を求めるオバマへの書簡に署名した。
署名者にはスティグリッツもいた。
ジャネットの夫君は、「レモンの寓話」で有名な行動経済学の先駆者、ジョージ・アカロフ。
レモンとはアメリカでは中古のポンコツ車の俗称。
中古車は「どこかが悪いのだろう」と考えられてしまい、状態が良くても安くなる。
情報の非対称性に着目した人物。
アカロフ氏はこの業績により、スティグリッツなどとともに、ノーベル経済学賞を受賞した。
今日は、さいきんお気に入りの新世代ジャズボーカル、シリル・エイミーの曲を♪
けっこう癒されるんですよ。もう少し声が高いとステイシーケント並みに素晴らしいのですが。
そこはルックスでカヴァーか。いい子でしょ♪
よく聴くのはこのアルバム。アコギとボーカルのデュオです。
(関連記事)
【膨張する金融資産のパラドックス/吉田繁治/15年12月初版】
http://donhenley.blog.so-net.ne.jp/2016-02-27
【マネーと経済これからの5年/吉田繁治/13年9月初版】
http://donhenley.blog.so-net.ne.jp/2013-09-25
【2016年中国・ユーロ同時破綻で瓦解する世界経済勝ち抜ける日本/三橋貴明/15年11月初版】
http://donhenley.blog.so-net.ne.jp/2015-12-26
【そして偽装経済の崩壊が仕組まれる/塚澤健二/15年12月初版】
http://donhenley.blog.so-net.ne.jp/2016-01-12
【イギリス人アナリストだからわかった日本の強み弱み/デービッド・アトキンソン/15年6月初版】
http://donhenley.blog.so-net.ne.jp/2015-07-25
【ゴールドマンサックスが解れば世界経済を操る大謀略が見えてくる/10年11月初版】
http://donhenley.blog.so-net.ne.jp/2011-06-25
そういえば吉田繁治がマネーボイスで、本書に反論していました。
反論主旨は「異次元緩和リフレ策の誤り」です。
理屈としては、そのとおりなんでしょうけど。
三橋貴明と、吉田繁治の論戦をテレビでじっくり見てみたい。
著書を読んでると、両人とも正しく思えてしまうんですよね。
個人的に思うのは、三橋氏は現役世代の代表、吉田氏は資産家の代表、という感じです。
世代間の所得移転ができないなら、インフレで強引に若手世代に所得移転しないと。
インフレになると、現役世代は住宅ローンの負担感はやわらぐし、企業も設備投資がしやすくなる。
一方でおカネをもってるリタイア世代は、おカネの価値が目減りしてしんどくなる。
どちらもそれぞれの正義があって、主張につなげているのだと思います。
またね♪
先週だかの週刊文春でもエマニュエル・トッドが日本は移民を受け入れなければと言ってました。
外から見るとやっぱり必要なんですかね。
by heroherosr (2016-03-23 17:53)
donさん、おはようございます。
シリルエイミー、素敵なヴォイスですね♬
確かに少し低めですが、ステイシーケントに似てますね^^
このPVで彼女が着てるスカート、可愛いです~。
人口が減っているぶんを移民でカバーというのは、
私もイヤですなぁ。。。 治安が悪化しますね[__ふらふら]
なにか、よい方法はないものか~。
by みかん (2016-03-23 22:17)
heroherosrさんこんにちは~
移民は即効性がありますしね。
人口減少しても、今のままの日本がいいです[__犬]
by don (2016-03-24 12:29)
みかんさんこんにちは~
シリルエイミー、ステイシーに雰囲気似てますよね。
少しの違いですが、ぼくはステイシーの方が好みですけど。
人口増は、よい方法ないんですよね。
時間をかけて増やすしかない。
今日は二日酔いで眠いです。
早く家に帰って寝たいです。
ああ、昼寝したい[__犬]
by don (2016-03-24 12:37)
2020年の経済学者の勝者?
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO54098130X00C20A1000000/
米クラーク賞にナカムラ氏 金融政策の効果を実証研究
2020/1/7 5:56
日本経済新聞 電子版
http://eml.berkeley.edu/~enakamura/
「祖父は生前、東京・台東区で豆腐店を営み、幼少期の夏を日本で過ごした...日本の小学校の掃除当番や給食など、日本ならではのカリキュラムを楽しんだ....」
http://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00030/062100027/
by サンフランシスコ人 (2020-01-07 06:59)
おじさんかと思いましたが、なかなかの美女でした。
by don (2020-01-07 12:32)